All Chapters of 社長、離婚した奥様が世界的トップモデルになっています!: Chapter 201 - Chapter 210

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第201話 唯一無二の価値

 一弥さんがこの雑誌のすべてを買い取ったことで、神崎さんの撮影したものはなくなり、そのあとからは私メインのCÍYÀの撮影へと変更。そのあとすぐに私だけの撮影に切り替え、用意してくれたドレスに似合うメイクを夏希に仕上げてもらうことになった。夏希は、CÍYÀのドレスを着た私のメイクを出来ることを、とても興奮し心から喜んでくれた。そしてヘアメイクが仕上がり、そのドレスを着て、再度スタジオのセットへと戻ると──。そこには、さっきにはなかったCÍYÀのドレスが更に魅力的に見える素敵なセットが組まれていた。私はそのセットを見て、うっとりする。あの場所で、私はこのCÍYÀのドレスを着て撮影するんだ──。「──杏華」すると、一弥さんがそばまでやって来て声をかける。「一弥さん」後方に来た一弥さんの方へ振り向き、私は返事をする。だけど、振り向いた瞬間、一弥さんが目を見開いたまま、私の姿を見て固まってしまっている。「一弥さん……?  どうかした──?」私が声をかけると、ようやくハッとした顔になり、私と視線を合わす。「いや……。思ってた以上に、杏華が綺麗すぎたから、言葉を失ってしまった──」「──え」ストレートにそんな言葉を言われて、私は驚いてしまう。「杏華。そのドレス姿。よく見せてくれないか──」「あっ、うん」私は少し恥ずかしく思いながらも、少し離れ一弥さんにドレス姿を見せる。「──うん。今までで一番綺麗だ。よく似合ってる」しっかりその姿を見てくれた一弥さんは、満足そうに微笑み私に伝える。「──ホント?」「あぁ」「嬉しい」「CÍYÀを作ってよかったよ──」一弥さんは呟くような声で、そんな言葉を言った。私がこのCÍYÀのドレスを着て嬉しいと思うように、一弥さんも私が着ることで、そんなふうに思ってくれていたらいいのに。
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第202話 誰よりも美しい輝きを

 「杏華。驚かせて悪かった」帰りの車の中、隣の席に座っている一弥さんが、唐突にそんな言葉を告げた。「え、何が?」「CÍYÀのことや財閥のことだ……」「あっ、あぁ。うん。正直ビックリしちゃった」「──すまない。結婚してたのに、そんなことも隠していたなんて呆れるよな……」一弥さんは申し訳なそさうに小さい声で呟いた。「でも……。あなたのその財閥には、いろいろあるんでしょ?」「え?  ……あぁ、まぁ……」「あの頃の私たちは、所詮政略結婚だけの関係だったんだもの。あなたは私への気持ちもなかったし、私は綾乃の代わりで結婚しただけだった。本当のことを言わなくても仕方がないわ」あの頃から秘密の多い人だとは思っていた。だけど、愛されもしなかった身代わりの政略結婚相手の私が彼に何かを言う権利もないし、聞く勇気さえもなかった。しょっちゅう海外に行ったり、仕事で何日も帰ってこなかったり。どこかの社長さんだとは思ってたけど、何の仕事をしているのか父も一弥さんも詳しく教えてはくれなかった。「財閥のことは、家同士の問題だが、CÍYÀに関しては俺がすべて自分でやっていることだ。だからお前の家の父親も綾乃も当然知らない」「そうだったんだ……」確かに綾乃がCÍYÀの存在を知っていたら、血眼になって一弥さんもモデルも奪ってきそうだもの……。綾乃には話してなくて本当によかった……。「正直この業界に杏華が飛び込むことになって、少し戸惑いはあったんだ──」「どうして……?」「ある意味俺はこの業界で手に出来ないことはないし、何だって出来る権力も財力も正直ある」「うん……」「だけど、お前が本気でモデルという仕事に向き合っていると知って、俺はどこまでお前に手を貸すべきか迷った」「そうなの……?」「俺がCÍYÀや財閥の名前や力を出せば、それこそ今回のように何でも出来てしまう。だけど、一人自分の力で新
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第203話 ずっと会いたかった人

 え……。どうしてこんな女性もののピンヒールが……。ということは、一弥さんの家の中に誰か別の女性がいるってこと……?それを見た瞬間、胸がドクンと高鳴る。今の一弥さんに限って、そんなことはないと思いたい──。「あいつ……。戻ってくるの来週のはずだろ。もう今日来たのか──」一弥さんはそれを見て心当たりがあるのか、小さく何かを呟いている。だけど私は、それ以上知るのが少し怖くなって、思わず足を止め玄関の前で立ち止まってしまう。「どした杏華」「一弥さん……あの……私……」「もしかして、この靴を気にしてるのか──?」「私、このまま入っても大丈夫なのかな……」俯きがちに小さく呟く。すると、私をじっと見つめながら「杏華」と、名前を呼び彼はそっと近づく。「大丈夫だ。お前が気にすることは何一つない。俺が大切にしたいのはお前とそのお腹の子供だ」「一弥さん……」「だから安心して、一緒に中へ入ろう」一弥さんは私の背中にそっと手を添え、足取り重くなってしまった私を、優しく部屋の中へと誘導してくれる。だけど、私は中にいるであろうその女性を確かめるのが怖くて、つい目を前方からは逸らしたまま、一弥さんと共にリビングへと歩みを進める。「一弥! ようやく帰ってきた!」リビングから彼の名前を呼び、待ち焦がれていたであろう声が響く。だけど、その声に聞き覚えがある気がして、私はその場で顔を上げる。すると──。「杏華ちゃん!」そこには、一弥さんのお姉さんである真琴さんが立っていた──。「真琴さん──!」私は真琴さんを見た瞬間、口を両手で覆い、そのまま言葉を失ってしまう。一定の距離を取りながら、お互い見つめ合う。真琴さんは、私を見ながら、穏やかに優しく微笑んでいる。「ごめ、ごめんなさい──!」私は少し泣きそうになりながら、真琴
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第204話  瞳の奥の甘い世界

真琴さんは、一弥さんと実の姉弟なのに、今までずっと私の味方をしてくれていた。妊娠がわかったときも、一弥さんに裏切られて酷い言葉を投げつけられたときも、真琴さんは私をかばい一弥さんを責めるほどだった。それほどの真琴さんが、今はハッキリとそう伝えてくれることで、信じていいのだと安心出来る。「真琴さんがそう言ってくれるのなら、私信じたいです……。一弥さんのこれからを──」顔を上げながら、真琴さんに告げる。「──ありがとう杏華ちゃん!」「杏華……」嬉しそうにしている真琴さんの隣で、私のその言葉を聞いて、逆に一弥さんはなんだか切なそうにしている。今の一弥さんと過ごす時間が増えたことで、一弥さんのその時その時の表情が、どんな感情の現れなのかを、少し最近分かるようになってきた。眉や目尻が下がり、切なそうに少し弱々しい表情をするこういうときの一弥さんは、今までの自分を振り返り複雑そうにしているとき。どういう表情をしていいか自分で分からないような、そんな表情。今まではいつだって、自信満々で人の意見も聞かない顔色も伺わない。周りを支配するかのようなそんな雰囲気を持つ人だったのに。今は私の顔色を伺い、私を気にかけ、こんなにも柔らかい表情をしている。そんな一弥さんを見ていたら、私を大切に想ってくれているのだと、もうちゃんと伝わってくる……。私はそんな一弥さんと視線を合わし、柔らかく微笑む。そして一弥さんもそんな私に気づいて、同じように嬉しそうに柔らかく微笑んだ。「あーもう感動しちゃう! 二人のこんな甘い雰囲気をこの目で見られる日が来るなんて!」すると私たちを見ていた真琴さんが急に、勢いよくそんな言葉を叫ぶ。「え!?  甘いって──」「いや、俺はただ──」ストレートにそんなことを言われ慣れてない私たちは、思わずお互いタジタジしてしまう。「私はずっとこんな二人が見たかったの! 視線を交わすだけで、この二人だけで感じる甘い世界! お互いが愛しくてたまんないっていうその瞳!」「えっ!?」真琴さんが思いもしないそんな言葉をどんどん呟きだして、思わず私は恥ずかしくなってしまう。真琴さんの言葉で急に意識してドキドキしてしまう。一弥さんは、真琴さんから見てそんなふうに見えてるってことだよね……?ホントに一弥さんがそんなふうに思ってくれているなら、
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第205話 彼が隠していた本当の想い

「えっ!? CÍYÀのトップデザイナー!? 真琴さんが!?」真琴さんの衝撃の言葉に、私は唖然とする。「そうよ。今日杏華ちゃんが着た特注のドレスも私がデザインしたの」「嘘ッ……。あの服を真琴さんが……?」「実はあのドレスは、杏華ちゃんをイメージして作ったの」「え……私を……?」「そう。一弥から杏華ちゃんがモデルになって活躍していることを聞いて、その瞬間イメージがぶわぁ~って浮かんで、気づいたら作り上げてたわ」「え……」「どうしても杏華ちゃんに着てほしくてね。今回の撮影に急いで間に合わさせたわ」「そこまで……してくださったんですか……?」「えぇ。まさか杏華ちゃんに私がデザインしたドレスを着てもらえるなんて……。本当に嬉しいわ」「こちらの方こそです! 私、CÍYÀの服がホントにすごく好きで憧れてて……! 一つ一つ細部まで丁寧にこだわる作りや、その人の魅力を引き出すような素敵なデザインとか……、見てるだけですごく勇気や元気をもらえるんです。でもあまりにも手の届かないブランドだから、私にとってはホントに憧れるだけのブランドで……」「杏華ちゃん……。そんなにCÍYÀの服を気に入ってくれてたなんて──。ホントにありがとう。何より杏華ちゃんが、私が大事にしているそんな部分を気づいてくれて好きでいてくれるのが、すごく嬉しいわ」「今日のドレスもホントにすごく素敵で……。あんなドレスを着れて私ホントにすごく幸せでした」「うわぁ~そのときの杏華ちゃん、この目で生で見たかったわ!」「私も真琴さんに見てもらいたかったです──!」「雑誌に載るまでは、少し時間がかかるが──。姉さん。この写真でよかったら」そう言いながら一弥さんが自分のスマホのカメラフォルダを真琴さんに見せる。「えっ! 一弥、写真撮ってくれてたの!?」「あぁ。すごく綺麗だった──」一弥さんはその写真を見ながら嬉しそうに穏やかに微笑む。「一弥さん──! いつの間に写真撮ってたの!?」「そりゃ撮るさ。雑誌が発売されるまで、俺も待ちきれないし、何度でもこの綺麗な姿は見ておきたいからな」照れもせず一弥さんがそんな言葉を平然と呟き、私は一人動揺してしまう。一弥さんのフォルダの中に私の写真があるなんて……。恥ずかしいけれど、すごく嬉しい……。「うわぁ~ホントすごく綺麗! 私
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第206話 秘められた未来への約束

 「あの……。一弥さんが私のためにお願いしてくれたって、どうして……?」一弥さんがいなくなるとすぐに、、私は気になっていたことを真琴さんに尋ねる。「あのバカ弟がね。パリに直接私に頭を下げに来たのよ」「え……どういうことですか……」「あの子、あれでもすごく反省してるの。『自分は本当にバカなことをした。結婚してるときも一切杏華のことをちゃんと見ずに、酷く傷つけてしまった。その罪はどれだけ後悔しても消えることはない』って。何度も過去の自分を悔やんでた」「一弥さんが……?」「うん。だけど、これから一生かけて杏華ちゃんと双子の子供たちを全力で愛して守っていきたいって。無事杏華ちゃんが子供を産んだら、そのときは杏華ちゃんが許してくれるのであれば、また新しい家族として杏華ちゃんにプロポーズしたいって。──そのときに杏華ちゃんが着る世界一のドレスを私に作ってほしいって、そうお願いしてきたのよ」「──っ!」まさかの真琴さんの言葉に、私は胸がいっぱいになって、その嬉しすぎる事実に一気に涙が溢れてくる。私は声を抑えようと必死で手で口元を抑え、涙をこらえる。「でも今はまだあの子なりに葛藤してるのよ。過去のことを考えると、おこがましくて復縁してほしいって今すぐには伝えられない気持ちがあるみたい。だけど、子供が産まれたときは必ずそれを伝えると、私には決意を伝えていたわ──。だからそれまでは、全力であなたとあなたの子供を守ると心からあの子は願っているから、杏華ちゃんもあの子の気持ちを安心して信じてやってほしい」そう言いながら真琴さんは優しく微笑む。真琴さんが、一弥さんを想う気持ちが伝わってくる。昔、真琴さんに聞いたことがあった。一弥さんは、滅多に自分の気持ちを話さないのだと。何を考えているかもわからないし、自分へお願いすることや頼みごとなどはプライドが高く、一切することもなかったと──。そんな一弥さんが、今はそこまで深い気持ちを真琴さんに隠すことなく伝えている。そして、真琴さんに自分のプライドなど
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第207話 不器用な彼の特大の甘い優しさ

 「一弥。採寸終わったわよ」別の部屋で仕事をしていた一弥さんに真琴さんが声をかけにいき、リビングへと一弥さんが戻ってきた。「じゃあ、私次の仕事が詰まってるから、このまままたパリに帰るわね」「えっ! もうですか!?」「えぇ。一弥がどうしてもって聞かないもんだから、実は無理やりこの日だけスケジュール調整して戻ってきたの。また改めて日本にはゆっくり帰ってくるけど、今回は一度向こうに戻るわね」「えっ! このために無理やり合わせて来てくださったんですか!?」そこまでの弾丸スケジュールとは思わなくて、私は驚いて言葉を返す。ただの採寸だけでパリから数時間の滞在だなんて……。普通じゃなさすぎて、現実味の無さに衝撃を受ける。「姉さん、忙しいのにわざわざ悪かったな」「いいのいいの! 可愛い弟と杏華ちゃんのためだもの~。今まで二人のために何もしてあげられなかったから、私もようやく姉らしいこと出来るのが嬉しいわ」「真琴さん……」真琴さんの優しさがありがたくて嬉しくて……。昔から頼りがいある素敵な女性で、たくさん力になってくれる人だった。本当の姉のように慕っていたけど、今また改めてこういう関係になって、真琴さんがどれだけ素敵な人なのかをまた実感する。「そうね。次は杏華ちゃんの出産辺りに合わせて帰ってこれるよう今から調整しとくわ。二人の可愛い双子を、私も一日でも早くこの目で見たいもの。あ~この手に双子ちゃんを抱けるのが今から楽しみで仕方ないわ!」「はい! ぜひそのときまたお会い出来るのを楽しみにしてます!」「じゃあ、二人このまま仲良くするのよ!」「あぁ。わかってる。これから、うんと杏華も子供たちも甘やかせてやるつもりだから心配するな」「えっ?  一弥さん!?」平然とさらっとそんな言葉を呟く一弥さんを思わず見つめて、私一人戸惑ってしまう。「じ
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第208話 何気ない幸せを一緒に

 ピンポーン。翌朝。家のインターホンのチャイムが鳴った。前日に一弥さんが宣言していた朝食の手配だろうと、私はドアを開ける。すると──。「杏華。朝食だ」そう言いながら銀のトレイに乗せた朝食を持った一弥さんが、玄関の前に立っていた。「え!  一弥さんが届けてくれるの!?」「当たり前だろ。こんな役目他の奴にさせられるか。この朝食はうちの桐生家御用達の一流栄養士とシェフに作らせた栄養たっぷりの朝食だ。初期の妊婦に必要な栄養素やカロリーすべて計算して作らせてある。毎朝、俺がこうして届けて、お前がちゃんと食べ終わるまで見届けさせてもらう」「え!?  食べるのも見届けるの!? 」「もちろんだ。お前は二人分の命を育てるんだからな。しっかり毎日見守るのが俺の役目だ」「フッ。何、その役目」「ほら。冷めないうちに食え」「あっ、うん。でも食べるのを見守るって、一弥さん、朝食は?」「あぁ。まだこれからだ。とにかくお前の朝食が優先だ。俺は適当に食うから問題ない」「ダメよ。時間あるなら、あなたもちゃんと食べないと」「忙しくて一日食事を抜くくらいのこと今まで何度でもある。俺にとったらお前たちのが大事だ」「え?  一日!?」「あぁ。そんなの日常茶飯事だ」「私を優先して食べないなんてダメよ!  朝食を持ってきて見守る時間があるなら、あなたも朝食をちゃんと食べて」「だから大丈夫だと言っているだろ」彼の想いは嬉しいけれど、自分の食事を犠牲にしてまでなんて、そんなの良くない。「じゃあ……こうしない?  あなたの部屋で、毎朝一緒に食事をするというのはどうかしら」「……え?」「一緒に食べるなら、あなたもその時間見守りながら、ちゃんと食べることが出来るでしょ?  私もあなたが私を優先して食事を抜くことは嫌なの。あなたもあなたの時間を、ちゃんと大切にしてほしい」
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第209話 ストッパーなしのヤキモチ

 今日は新しい現場で雑誌の撮影。朝食を取ってから、一弥さんがまたいつものように現場まで送ってくれて、一弥さんは同じスタジオで見守ってくれている。自分の急ぎの仕事がない限りは、またこうやって一緒に同行してくれるらしい。「杏華さん、紹介します。今日一緒に撮影していただくモデルのレイさんです」スタジオに撮影スタッフやモデルが集まり、今日の相手のモデルさんを紹介してもらう。「レイです! よろしくお願いします!」名乗ってくれたその相手のモデルさんは、私より少し年下っぽい子犬のように可愛らしい青年だった。「杏華です。こちらこそどうぞよろしくお願いします」彼が差し出してくれた手に、私は挨拶しながら握手をする。「うわ~感動!  俺、杏華さんのめちゃめちゃファンなんです!」そう言いながらキラキラと目を輝かせながら私を見つめ、全開の笑顔を向ける。「え?  私ですか?  ありがとうございます」「俺。杏華さんの、どこか儚く見えて凛とした美しい強さを感じる雰囲気がすごく好きで! 杏華さんの写真初めて見たとき、もう『うわ~このモデルさん好きだー!』って速攻思っちゃったんです! だから、共演出来る日をホンットにずっと夢見てて!  もうすでに俺めちゃ幸せです!」「え? そんなに!?   なんか照れちゃうな。でも、すごく嬉しいです。ありがとうございます」今まで出会ったことないほどストレートにそんな気持ちを伝えられて、少し戸惑うけれどモデルとして認められるのは素直に嬉しいと思う。「あ~ヤバい! 俺緊張しすぎて、ちゃんと撮影出来るかな!?」ホントにそんなに好きでいてくれるなんて嬉しいな。ワンコのようにソワソワしながらウロウロする彼が可愛くて、クスッと思わず笑う。──すると。スッと一弥さんが私たちの前に割り込んで、レイくんの前に立ちはだかる。私と一弥くんは、その勢いで手が離れる。「俺は
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第210話 譲れない距離感

 「じゃあ、二人は同じ部屋で仲良く過ごしてる設定です。杏華さんはそのソファーに座ってもらって。レイくんはすぐ隣の床に座っていただいて、杏華さんの膝に両手を乗せて下からキラキラした目で見上げる感じにしてもらっていいですか?   で、杏華さんは上からそんな年下くんをスマホを片手に可愛くて、つい見下ろしながら微笑むみたいな感じで」スタッフさんの指示通り、ソファーに座りスタンバイする。レイくんも同じく床に座り、私の膝に手を置こうとすると──。「おい! ちょっと待て! それ膝に手を置く必要ないだろ!」一弥さんがすぐそばまで近づいてきて、抗議しながら撮影を中断する。「え?  一弥さん?」「社長! ただの撮影のポーズですから! 落ち着いてください!」すると、夏希がピリついている一弥さんを止めに入る。「だが──!  じゃあ、膝じゃなくソファーに肘つく感じでいいだろ!」「それって、どういう……」スタッフさんがそのポーズがよくわからないような反応をみせると──。「どうしてわかんないんだ!  おい、若者! ちょっとどけ!」「えっ?  はい!」一弥さんの勢いに、思わずその場をどくレイくん。すると、一弥さんがレイくんと同じように床に座り私を見上げる。目が合い、思わずドキッとする。「ソファーに片肘つきながら杏華の方に向いて、頬杖しながら下からこうやって見つめればいい」一弥さんがそう言いながらそのポーズをして、私を見つめる。下からそんなふうに見上げられることなんて今までなくて、真下でそんな一弥さんに見つめられて更に私の胸が高鳴る。やだ。一弥さんに今トキめいてどうするの!これはレイくんとの撮影なのよ!「そうすれば、無駄に触れ合わずに仲いい感じが表現出来るだろ。微妙な二人の関係の距離感なんだ。あえて距離をそこまで近づけない方がその雰囲気が出る。これで行け」「えっ?
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