All Chapters of 社長、離婚した奥様が世界的トップモデルになっています!: Chapter 211 - Chapter 218

218 Chapters

第211話 隠されていた優しさの正体

 「お疲れ様。杏華」一連の撮影が終わり、夏希が声をかけてくれる。「お疲れ様~夏希」「……お疲れ」「お疲れ様。一弥さん」少し気まずそうに小さく呟く一弥さん。「無事終わってよかったね。杏華」「あっ、うん」「いやぁ、社長今回も途中で大暴れして、この撮影ぶち壊しちゃうんじゃないかとハラハラしてたよ」すると、いきなり夏希が少しニヤニヤしながらそんな言葉を呟く。「えっ? ぶち壊す?   どうして?」「いや、だってレイくんと杏華が近づいたり微笑み合ったりするたび、今にも飛び出しそうな勢いで、思わず私必死に止めてたからね」「えっ! そうなの!?」「うん。でも『大人げないですよ社長。ただの撮影ですから』って、冷静になるようになだめておいた。そしたら社長、ピリピリしながらも悔しそうに、なんとか耐えてた(笑)」「おい!  そこまで言わなくても!」夏希がケラケラと笑いながら私に暴露すると、一弥さんは少し照れくさいのか気まずそうに反応する。「いやぁ~私はめちゃめちゃ面白かったですけどね。杏華に一喜一憂する社長を見てて!」こういうときは上手になる夏希に、一弥さんはもう何も言わなくなってしまった。「でも。さっきスタッフさんから耳にしたんだけど、今回のレイくんとの撮影は、あえて社長がキャスティングしたらしいよ?」「えっ? そうなの……?」「私もそれビックリしたんだけどね。そんなにヤキモチ妬きまくるくらいだから、社長この仕事不本意で受けたのかなって思ってたんだけどさ。──社長、ホントの理由、杏華に伝えてあげてください」「ホントの理由──?」「──いや、うん。彼……レイくんは、最近売り出し中で、人気があるモデルだ。実はレイくんが杏華のファンだというのはずっと公言してるみたいで、彼のファンや世間的にも有名らしくてな。ずっと杏華と共演出来ることを本人もファンもホントに願っていたそうなんだ。それを彼の
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第212話 初めての特別な朝

 翌朝。いつも以上に目が早く覚めた。ちゃんと寝れたような寝れてないようなフワフワしたような感覚。こんなに朝が楽しみな日が来るなんて、いつぶりだろう……。今までは期待するだけ期待しても裏切られた毎日。同じ家に住んでいても、ほぼ顔を合わせることがなくて、朝を迎えることに嬉しさなんて感じることもなかった。広いリビングで、一人で食べる寂しい朝食。かろうじて、そこに現れた彼は、一緒に朝食を食べるはずもなく、忙しく家を出て行く背中を、ただ寂しく見つめていただけ──。そんな記憶しかない私たちが、本当に向き合って同じテーブルで朝食を食べることが出来るのだろうかと、今でもまだ半信半疑になってしまう。彼が優しくしてくれるたび、私に想いを向けてくれるたび、今までとあまりにも違いすぎて、これは夢の中で、いつかまた元の現実に戻ってしまうんじゃないのかと、ホントは毎朝不安になるほどなのに──。目が覚めてほしくないような、目を覚ましたいような、そんな気持ちが、ゆらゆら揺れ動く。だけど早く起きてしまったことで、私はそれがまだ夢の中なのかもわからないまま、彼と初めて過ごす朝食の時間に向けて、メイクやヘアセットをいつもの朝より入念にし、その時間を待った。彼に伝えられた時間になり、私は彼の部屋のドアの前に立つ。改めてそんな時間を過ごすと思うと、朝からこの心臓もうるさくなって、私は胸を手で抑え、深呼吸をゆっくりして落ち着かせる。そして、インターホンを鳴らすと、一弥さんがドアを開け顔を見せた。私の顔を確認すると、明るい表情になり、じっと私を見つめる。「おはよう──」私は彼を見ながら、小さく呟く。「おはよう。杏華──」彼は私をそのまま見つめながら、優しい声で微笑む。その言葉を聞いた瞬間、私は嬉しくて思わず俯きながら、その喜びを噛み締める。彼と、『おはよう』を言い合える日が来るなんて──。しかも、それは、こんなもに穏やかで柔らかい──
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第213話 生まれて初めて

 え……、今ので彼はそんな不安に感じたってこと……?最近の彼は、私への想いが確かめられないとき、こんなふうに子犬のように寂しそうな目をして私を見つめてくるようになった。番犬のドーベル犬のように強くたくましい彼が、私の前ではこんな子犬のようになるなんて……。こんなふうにさせてるのは私なのかと思うと、すぐにでもその気持ちに応えたいとそう思ってしまう。「そんなの……、楽しみにしていたに決まってるじゃない……。私もなかなか眠れなくて、今朝も予定よりすごく早く起きちゃって、待ちきれなかったんだから……」私は少し照れくさくて、彼から視線を少しはずし、モジモジとしながら伝える。その瞬間。「ハハッ。そうか──!  杏華も待ちきれなかったのか! そうか、お前も楽しみにしてたんだな! そうだよ!  この朝食は俺たちにとって特別だもんな──!」今度はまたいつもの自信満々な彼に逆戻りして、嬉しそうに微笑む彼。「そうね。私たちにとっては、特別な時間ですもの。──こんなにも楽しみな朝を迎えたのは生まれて初めてよ」嬉しそうな彼を見て、私も自然とその嬉しさを言葉にして伝える。「──そうだな。俺も、次の日の朝が来るのが、こんなに眠れなくなるほど楽しみだったのは生まれて初めてだ──」一弥さんが、その言葉を噛み締めるように言いながら、私に優しく笑いかけた。「じゃあ、さっそくいただこうか」「うん。いただきます」「──いただきます」私は目の前に並んだ豪華すぎる朝食にうっとりして目移りしてしまい、どれから食べようか思わず迷ってしまう。「──どうした。食べないのか」「あっ、こんなに豪華で美味しそうな朝食生まれて初めてで……。どれも美しくて美味しそうで、つい迷ってしまって」「──可愛いな」「えっ!?」すると一弥さんが、私を優しく見つめながら、そんな言葉を静かに呟き、彼から生まれて初めて聞くその言葉に、私は驚いて顔を上げる。
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第214話 気づいてもらえた苦しみ

 あぁ……どうして私はいつもこうなんだろう。こうやって私は今まで彼をずっと困らせてしまっていたのかもしれない。だけど、今まではホントはずっと我慢して堪えていた。どんなに辛くて寂しくて悲しい理不尽なことがあっても、私は彼と結婚していたときは、一度も彼の前では泣いたことはなかった──。だけど……、彼が私に優しくしてくれるたび、嬉しい言葉をかけてくれるたび、私はこうやって堪えきれず想いが溢れて涙を流してしまう。辛いことはどれだけでも耐えられたのに、幸せなことは、ほんの些細なことでも耐えられなくなってしまう。それほど私はこんな幸せも喜びも今まで一度も経験したことがなかったから──。どうしよう。彼を困らせるとわかってるのに、涙が止まらない。さっきは幸せで涙が溢れていたのに、今はこんな自分が情けなくて涙を止めることが出来なかった。黙って席を立った彼の顔が、そのときどんな表情をしていたのか、私は怖くてそれ以上彼を見ることが出来なかった。私は涙を流しながら、そのまま俯いて必死に涙を堪えようとしていると──。後ろから、ギュッと彼に抱き締められた──。「──杏華。すまない……」「……え。一弥……さん……?」私は何が起きているのかわからないまま、言葉を返す。「俺が……不甲斐なかったばっかりに、今までお前にはこんな当たり前の幸せもしてやれなかった……。ホントに俺は、大バカ者だ……」私を抱き締めながら、彼は絞り出すような声で、辛そうに呟く。私は、そんな彼の言葉とぬくもりに驚きつつも、また嬉しくて涙が溢れてしまう。すると、俯いていた私の頬に流れた涙を、一弥さんが指でそっと拭う。それに気づいて顔を上げると、至近距離で一弥さんが横から私の顔を覗き込んでいた。お互いの顔が、数センチほどしか離れていないその距離で、心配そうに見つめる彼に、また私の心臓は激しく高鳴る。「杏華……。お前は、これほど、どれだけ寂しい想いをして、辛い想いをしていたん
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第215話 一緒に感じていく幸せ

 「必ず俺がどんなことがあっても、これからは命懸けで、全力でお前を守る──」抱き締めながら呟くその彼の声が、少し震えながら少し切なそうに、そしてそれと同時に力強くその言葉を噛み締めるように、私の心に直接届く。彼の抱き締めるその腕から、一ミリの隙間もなく私の体に触れ耳元で囁くその声から、彼の後悔する想いや、これからの決意を感じられて、私の胸はいっぱいになる。「杏華。これからは、どんな小さな些細なことでも一緒の時間をわかち合おう。俺たちが今まで築いてこれなかった当たり前の幸せを、これからは一緒に感じていくんだ──。俺はこれからお前のためになら、どんなことだってする。お前を守るためなら、俺は自分を犠牲にしても構わない。お前を幸せにするために、俺はすべてをお前に捧げる──」彼は、私を見つめながら優しく力強くそんな誓いを告げてくれた──。「一弥さん……」ここまで伝えてくれる彼の言葉に、私はもう迷いも疑いも感じることはなかった。どんなときよりも伝わってくる彼の想いが、胸に響いて苦しくなってしまうほど──。「ありがとう……一弥さん……。……私も、一弥さんとこれから当たり前の幸せをいっぱいいっぱい感じていきたい。あなたがここにいてくれる喜びを、一緒にいられる幸せを、これからずっとずっと大切にしていきたい──」「あぁ──。嫌というほど感じさせてやる。今まで味わえなかった分、その時間以上の喜びと幸せを、これからは一緒に感じていこう──」「──うん」眩しいほど優しく微笑む彼に、私の心は陽だまりのように温かくなり心いっぱい満たされる。「フッ。すっかり朝食が冷めてしまったな」彼は抱き締めていた腕をそっと離し、私の肩にポンッと手を置きながら呟く。「あっ、ごめんなさい──!  私が余計なことをしてしまったばっかりに──!」私は焦って彼にそう伝えると、そんな私を見て今度は私の両肩に手を置きながら、私に視線を合わし、しゃがみながら目の前からじっと彼が見つめる。「いや。これからは辛いことや悲しいことがあれば、そうやって
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第216話 予期せぬ不調

 【杏華side】 「杏華さん!  おはようございます!  今日も一緒ですごく嬉しいです!  またよろしくお願いします!」彼との甘い朝食の時間を過ごしたあと、レイくんとの二日目の現場にやってきた。レイくんは今日も子犬のように可愛い笑顔で尻尾を振って可愛く挨拶してくる。「こちらこそ。今日もよろしくお願いしますね」そして私も笑顔でそんな彼に応える。それから衣装に着替え、スタッフさんから今日のテーマの撮影の説明を受け、撮影が始まる。今日はレイくんの次の仕事が控えている夕方までに、三本の撮影をこなさなければならないスケジュール。だけどそんなときに限ってカメラや機材の調子が悪かったり、運ばれてくる衣装が渋滞に巻き込まれてまだ届いてなかったりと、ちょっとしたアクシデントがいくつか重なってしまう。機材のアクシデントを待つ間に熱い照明の中、季節外れの衣装を着込み、ただ待機する時間や、いざというときのために、今ある衣装でとりあえず数だけこなす撮影を続けていく。いつも以上に時間と勝負のような状況が一日中続き、忙しさと疲れで、私はお昼を食べることも出来なかった。唯一救われたのは、一緒に撮影しているレイくんが、そんな状況でも一緒に過ごしてくれ明るくその場を盛り上げて癒してくれたことで、私はその疲れを大きく感じることもなく、なんとか撮影を続けることが出来ていた。だけど、そんな時だった。三本目の撮影をしているとき、照明が眩しく感じ、少し眩暈を感じたような感覚に襲われ、ふらっとしてしまう。「杏華さん?  大丈夫ですか?」少し足元がおぼつかなくなったことに、隣にいたレイくんが気づき声をかけてくれる。「あっ、うん。大丈夫。ちょっと照明が眩しく感じちゃっただけ」「照明、ですか?」レイくんは少し不思議そうに反応する。そしてしばらくすると、目の前が少し霞んでくる。あれ、おかしいな。
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第217話 ただ、側にいてほしい

 【一弥side】「おい! どうなんだ!  杏華は大丈夫なのか! 子供に影響はないだろうな!  無事杏華も子供たちも助かるんだよな!」「一弥落ち着け! 大丈夫だ!  杏華さんも子供も心配はない!」「ホントだろうな! こんなにぐったりしているのにホントに大丈夫なんだな !? 日本でも有数の医者のお前が誤診なんてしてみろ!  一生お前を医者の道に戻れないようにしてやるからな!」俺は同級生で昔から仲のいい、うちの家の専属医で日本でも有数の名医でもある友人の羽山恭介を自宅に呼びつけ杏華を緊急で診てもらう。「そう言ってるだろ。杏華さんは連日の緊張と疲れ、それに栄養不足による一時的な貧血と軽い脱水症状だ」「それは杏華は助かるんだよな!  お腹の子供の命はどうなるんだ!」「双子の子供も心配はない!  但し今後は絶対に無理をさせるな! 彼女が嫌がってもお前がついているなら絶対無理させないようにしてやれ!」俺が必死に確認すると、恭介は俺を抑え込むように医師としての言葉を力強く返す。「……わかった」「はぁ~一弥。心配するのはわかるが、とりあえず落ち着け。忙しい中、俺をわざわざ自宅に呼びつけるなんてお前くらいだぞ。たまたま今時間が空いてたから良かったものの──」「……わかってる。助かった。杏華や子供に何かあると思ったらどうしていいかわからなくなって──」「ハハッ。あの天下の桐生一弥がそんな弱気になるときが来るなんてな。しかも、あんなに冷たくしていた別れた奥さんに対して、今じゃこんな溺愛しているとか、昔のお前からは信じられないよ」「溺愛……?  あぁ……今の俺はそういうやつになるのか──」俺の部屋のベッドで寝かせ、静かに今は眠っている杏華を見つめながら呟く。「いや、それ以外ないだろ……」「そうか。こういうやつが溺愛ってやつか──。ハハ。案外悪くないな──」「えっ?  お前マジ血でも入れ替わった?  別人
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第218話 強く実感する想いの深さ

【杏華side】その言葉は、今の私が何より彼に伝えたい言葉だった。何度も何度も願った想い。口に出来なかったその言葉。応えてもらえなかった過去。結婚しても、目の前にいる私をまったく見てくれなかったときも、私ではない別の女性の元へ冷たく私を見捨てて去っていったあのときも、ホントはずっと願ってた。ただ、私の側にいてほしかった。それだけだった。そんな些細なことでさえ叶わなかったあの頃。だけど、今の彼になら、もしかすれば届くかもしれない。叶わなかったあの頃の想いと共に、そんな願いを受け止めてほしいと、強く願った──。【一弥side】「ただ、ここに……、このまま、側に……いてほしい……」杏華がそう呟いた瞬間、俺の胸は苦しくて押し潰されそうになった。その言葉に杏華のどれほどの想いが隠されているのだろうかと。杏華の切なそうな表情を見て、今までずっとそんなことに気づくことさえも出来ずにいた自分の愚かさを痛感する。もしかしたら今までこの言葉をずっと俺に伝え続けたいと願っていたのかもしれない──。贅沢も我儘も今まで一度だって、自分から望むことも口にすることもなかった杏華。だが、それ以外の些細な望みでさえも決して言葉にすることはなかった。それはきっと今に始まったことじゃない。過去も今も、そんなことを望む訳ではなく、何より『俺に側にいてほしい』と願う。そんな杏華が、今この瞬間俺に素直に伝えてくれたその想いと言葉。俺はその言葉を聞いて、今更だが、どんな願いでも叶えてやりたいとそう心に強く思い、そして、そんな杏華を心から愛しく感じた──。「──あぁ。わかった。どこにも行かない。ずっとお前の側にいるから安心しろ」そう言って、不安そうに見つめる杏華の片手をそっと取り、ギュッと両手で包み込むように握り締める。どうしてか、そんな杏華を見て、俺は切なくて泣きそうになった──。「嬉しい……。ありがとう。一弥さん……」すると、杏華は、ふわっと柔らかく微笑み、ホントに嬉しそうな表情をした。──あぁ、俺はこんな当たり前で些細な簡単なことを、杏華にしてやれていなかったのかと、自分が情けなくて腹が立って仕方がない。出来ることなら今すぐ過去に戻ってやり直したい。杏華が幸せそうにするたびに、俺も幸せな気持ちになると同時に、今までその幸せを与えてやれなかった後悔
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