All Chapters of 殺人容疑をかけられた悪役令嬢: Chapter 51 - Chapter 60

68 Chapters

第51話

 思っていたよりも大変な状態だがエリアスとアシュリーは、温厚で物腰の柔らかい性格をしているのでセレスティンは安心する。 その後、地下を出て階段を上っていく。到着すると、エリアスとアシュリーは案内を侍女に任せて去ろうとした。しかし、その時だった。「あ~エリアス。ちょっと聞いてよ~」 大きな声を上げた人物が現れる。誰かと振り向いたら、長身で腰まである黒髪のロングヘアをなびかせた令嬢がバタバタとエリアスに向かってきた。「メリッサ!? どうしたんだい?」「今日他の令嬢たちとお茶会をしたんだけど、凄く嫌なことがあったの。私のドレスにお茶をこぼしてきて。これ凄く高かったのに~最悪」「そうなんだ……それは最悪だったね。でも、今は大事なお客様の前だから、おしとやかにね?」 愚痴をこぼしてくる令嬢に優しく注意をするエリアス。すると、その令嬢はセレスティンたちに気づくと慌ててドレスの裾を上げてきた。「えぇっ……あ、ごめんなさい。失礼しました。ラッカム侯爵家のメリッサですわ。若き太陽にご挨拶を申し上げます」 ラッカム侯爵家の令嬢だったようだ。美しい漆黒の髪は、レンデルと同じだ。 身長は170センチ近くあるのだろうか? それに胸も大きくてスタイルもよく、華やかと色気のある美女という印象だ。目元もタレ目で綺麗な紫色をしていた。 いきなり現れたのは驚いたが、礼儀はしっかりしているようだ。「こちらは、話していた隣国・アルバーン帝国のレンデル皇帝陛下とセレスティン皇后陛下だ。先ほどは失礼しました。彼は私の幼馴染みでして」 エリアスは、自己紹介をするために間に入ってくれた。しかしメリッサは、ニコニコしながらエリアスの腕に手を絡ませて引っ付いてきた。「そうなんです~私はエリアスとは幼馴染みで。幼い頃から一緒に育ってきたんですよ」 無邪気にそう言ってくるが……これはいかがなものか。 メリッサは、婚約者のアシュリーが居る前で、堂々とエリアスにベタベタしてきた。(もしかして、彼女はエリアス殿下のことが好きなのかしら?) そうだとしても場を弁えないといけない。これでは誰が婚約者なのか分からなくなってしまう。 チラッとセレスティンはアシュリーの方に目をやると、モジモジしながら複雑な表情をしていた。何か言いたげになりながらもグッと口を噤んでいる。 セレスティンは、他人が
last updateLast Updated : 2026-04-19
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第52話

 どうやらこの2人が王弟夫婦みたいだ。オスカーは騎士団長だけではなく、公爵の爵位をもらっているようだ。 金色の短髪でキリッとした目元をしていて男らしい。どことなく兄であるエリアスの面影があるので兄弟だと言われても納得だ。 逆にオスカーの妻であるミリア公爵夫人は、燃えるような赤色の髪が特徴的な美女。 目元もつり目で意志の強さが出ている。するとミリアはアシュリーに対してギロッと悩みつけてくる。「あら、そこに居るのはアシュリー公爵令嬢様ではないですか。彼女は、まだ皇妃ではありませんよね? そんな皇妃の席に座らせてよろしいのですの?」 まるで、その席に座るのは場違いと言わんばかりにそう言ってくる。「えっ? ああ……私から頼んだんだ。婚約者だからね」 エリアスは、さりげなくフォローするが、ミリアはクスッと笑う。「そうなんですか? 私はてっきり、まだ式も挙げていないみたいですし、皇妃にするつもりはないのかと思いましたわ。陛下はお優しいから、突き放すことが出来ないのかと」 言葉の1つ1つに棘のある言い方をするミリア。まるでアシュリーは、皇妃に向いていないと言わんばかりに。(この2人は仲が悪いのかしら?) 特に彼女はアシュリーのことを良く思っていない様子に見える。「ミリアよさないか!? 他国の皇帝までお見えになっているんだぞ」「あらあら、随分とアシュリー公爵令嬢様にはお優しいのね? アシュリー公爵令嬢様が羨ましいわ。いろんな男が優しくしてくれるんですもの」 随分と皮肉を込めた言い返し方をしてくるミリア。自分の敵かのように。 まるでアシュリーが男たらしのように聞こえてしまう。アシュリーは何も言い返せず黙って下を向いてしまった。周りもそれを聞いてざわめき出す。 これではまずい。少しでも話の流れを変えないと。 セレスティンが慌てて間に入ろうとした、その時だった。「ミライダ王太后陛下、第3王子・レオネル殿下の入場です」 司会者の声に周りは後ろの方を振り向いた。扉が開かれると堂々と入ってきたのは、エリアスとオスカーの義母。ミライダ王太后陛下だった。 そういえば話で聞いたことある。グリーンフィールド王国ではエリアスとオスカーが幼い頃に実母が不慮の事故で亡くなったと。 その後ぐらいに2人の父親である国王が再婚した。その相手が現王太后だ。 不慮の事故は
last updateLast Updated : 2026-04-19
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第53話

 オスカーに関してはミライダを睨んでいたが。 その様子を見ながらセレスティンは深く考え込む。敵が多いような気がすると。 どう考えても、エリアスとアシュリーの結婚を祝う雰囲気ではない。そうなると、この中には『王族の家宝』を盗んだ犯人が居てもおかしくはない。 チラッとレンデルの方を見るとジッとミライダたちを見つめていた。彼もどうやら疑っているのだろう。これは少し探ってみた方がいいかもしれない。 しばらく悶々とミライダたちに視線を向けていると、アシュリーが人酔いしたから少し外の空気が吸いたいと言って、席を立った。 フッと見た彼女の表情は随分と疲れていて落ち込んでいるように見えた。この表情には見覚えがある。セレスティンは以前の自分を重ねた。 元婚約者だったウィルモットの言動に振り回せたり、皇后の嫌味を受けた後は酷く疲れた。悲しさと虚しさが襲ってきて、よく外の空気を吸いに向かったものだ。 セレスティンは、レンデルに外の空気を吸ってくると言い残して、彼女が向かった方向に行ってみることにした。 ダンスホールを出ると、外の庭にあるベンチに腰を下ろしていたアシュリー。中の光がほんのりと漏れているので顔は見えやすい。 やはり相当落ち込んでいて、目尻に涙が溜まっている様子だった。セレスティンは、ソッと彼女の近くまで歩み寄ることにした。「隣に座ってもよろしいかしら?」 ハッとしてアシュリーは、思わず立ち上がってしまう。「あ、すみません、気が付きませんで。席を代わります」「ああ、いいのよ。私も外の空気を吸いたかっただけだから。それよりも一緒に座りましょう?」「えっ……あ。はい。あの……失礼します」 アシュリーは急に話しかけてきたから動揺をしているようだったが、それをセレスティンは一緒に座ろうと引き留めた。 モジモジと下ばかり見て緊張しているようで、耳まで真っ赤だった。「気を使わなくても大丈夫よ。それよりも落ち込んでいるようだったけど、悩みでもあるの?」「い、いえ……そんなことは」 焦っているようで図星だろう。余計にモジモジしてくる彼女にクスッと笑う。 こういうところもで自分に似ている。「分かるわ~私もそうだったから」「えっ? セレスティン様……も?」「えぇ、よくこういう場所で落ち込んだものよ? 私も立ち振る舞いとか下手だったから、よく前皇后陛下
last updateLast Updated : 2026-04-19
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第54話

 周りに応えられるほどの才能も優秀でもない自分が情けない。「本当は……分かっているんです。人に認められるほどの才能も美貌もない私なんかよりも、メリッサ様の方がエリアス様の相手に相応しいってことぐらいは」 泣きそうになりながらも必死に話すアシュリー。 それを黙って聞いていたセレスティンは、やはり自分と似ていると思ってしまう。 あのメリッサがエリアスに向ける態度が彼女を余計に不安にされているのだろうと。 メリッサ自身が、どういう魂胆でやっているのか分からないが、好意を向けてやってきたとしたら別の恐ろしさがある。 アシュリーの話だと、彼女は令嬢の中でもミリアの次に、かなり目立つ存在らしい。 色気のある美しさもだが、優秀。語学力が堪能で、ダンスも刺繡も完璧。 その上に明るくて社交的な性格は、周りの令嬢たちから人気が高い。父親は宰相を務めており、彼女がエリアスの婚約者候補だと噂になったこともあるとか。「父親が宰相だからって、その令嬢が結婚相手になるとは限らないわ」 実際に婚約者の座を射止めたのはアシュリーの方だ。 自分だって婚約者は聖女の方が相応しいと何度も言われたことがあったが。「……どうして私が婚約者候補に選ばれたのか分かりません。たしかに公爵令家の出ではありますが、そこまで権力が強いわけではありませんし。メリッサ様の方が幼い頃から、ずっとエリアス様と一緒に過ごされていて、彼のことなら何でも知っています。『婚約者はメリッサ様の方がいい』と言われているのも知っております」 周りの発言に、かなりこじれてしまったのだろう。それが、彼女の自信を下げさせている。「それなのに……家宝の宝石まで無くなってしまって」 ポロポロと涙が溢れ出すアシュリーをセレスティンは、ギュッと抱き締めてあげた。「……セレスティン……さま?」「大丈夫よ。自信を持って。たしかに彼女は凄いかもしれないけど、それだけでは王妃になれるわけはないわ。大事なのはお互いに思い合って、国をどれだけ愛せるかよ」「……そうなんですか?」「ええ、私たちがそうだったから間違いないわ」 セレスティンも元婚約者・ウィルモットのためにと必死に頑張ったが、相手に興味を示してもらえなかったら、何の意味もなかった。 それよりも本当に愛してくれて、誰よりも自分を信じてくれたレンデルと居た方が、何倍も価
last updateLast Updated : 2026-04-19
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第55話

 あの辺も引っかかるところだ。 そのことは部屋に戻った時に、レンデルに話した。今回の件に、メリッサは関係しているかもしれないと。 レンデルは、う~んと考え込んでいた。「たしかに、その可能性はあるな。今後メリッサ令嬢のことで、色々と調べてみよう」「はい。お願いします」 事実かどうかは分からないが、疑わしいところは、きっちりと調べた方がいいだろう。もしかしたら何かヒントがあるかもしれないと思った。 翌日。レンデルの協力のもとで周りに、それとなく聞き取り調査をする。あくまでも昨日の様子を見て、気になったという感じで。 そうしたらメイドたちから、アシュリーが言っていたこと、と同じことを話してきた。やはり周りもメリッサが婚約者になるものだと思っていたらしい。 しかも2人は恋仲だという発言まで出てきた。「それは本当なの?」 セレスティンが聞き返すと、メイドたちはお互いに顔を見合わせる。「はい。幼い頃から、ずっと一緒居りますし。それに陛下はメリッサ様には特に気遣っておいででした」「それに2人でよく密会をしておりましたわ。あれで恋仲ではなかったら、逆に驚きですよ」 力説するメイドたちにセレスティンとレンデルは衝撃を受ける。まるで、浮気を疑わせる内容だった。(そんな……エリアス陛下に限ってはないと思ったのに) ウィルモットみたいに女好きで不誠実には見えなかった。アシュリーを大切にしているように見えたから、ただの誤解だと思ってのに、これでは真逆だ。 どれが、彼の本当の顔なのだろうか? 他にもないかと聞いてみると、メリッサ自身も過去に「私が王妃になるんだ」と言い張っていたらしい。それでエリアスに猛アタックしていたとか。 ますます好意があっての犯行の可能性が高いだろう。 またミライダも「結婚するならメリッサ侯爵令嬢が良かった」とアシュリーに向かって言ったこともあったそうだ。(王太后陛下にまで言われたら、さすがにアシュリー様も相当堪えるわよね。もしかしたら犯人はメリッサ様か王太后陛下?) セレスティンは、うーんとレンデルと考えていると、何処からかガサッと物音が聞こえてきた。 気になり音のする方向を振り向いてみると、木から小さな影が見えた。(子供の影?) また視線をレンデルの方に戻すが、ジッと様子を伺っている視線を感じる。チラッと分からないよう
last updateLast Updated : 2026-04-23
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第56話・最悪なお茶会。

 その後も、レオネルからの視線が続いた。特に王宮を移動している時などに。 最初は物珍しそうに見ているのかと思ったが、何か言いたいことがあるのか、小さな口をパクパクさせているのをよく目にするようになる。 今もずっと様子を伺ったように離れた範囲から柱に隠れて見ている。一緒に連れてきた侍女のハンナも苦笑いしていた。(本当は私たちに言いたいことがあるんだけど、大人だから話しにくいとか? それとも言うのをただ戸惑っているのかしら?) 前者だとむやみに聞くのは逆に怖がらせてしまうだろう。何か良い方法はないかと考えるセレスティン。 そうしたら、ある方法を思いつく。「そうだわ。大人だと言いにくくても子ども同士なら言えるかも」 セレスティンは薬を使うことを思いついた。以前レンデルが助けるために魔塔から買い取った子供になる薬。これがあれば。 あれからレオネルは新たな薬の発展や改善を魔塔に要求した。前は内密にやっていたが、王命として出したから、魔塔もかなり驚いたらしい。 セレスティンは役に立つかと思い、あれから改善した薬の方をこっそりと持ってきていた。どうやら、正解だったようだ。 セレスティンはハンナに部屋に戻ると言い、その場を後にする。 ハンナには呼び戻す際に、薬のことを話してあるので理解はしてくれている。「本当に、またお飲みになるのですか?」「うん。子供とコミュニケーションを取るためには自分も小さくなった方がいいと思うの。それに前みたいに副作用がないから安心よ」 セレスティンは、そう言ってゴクゴクと飲み干す。 改善された薬は副作用はないらしい、その代わりに元に戻すためには、解毒剤を飲まなくてはいけなくなったが。 すると体中が急に熱くなり、あっという間に子供の姿になってしまった。しかしドレスまでぶかぶかに。「ねぇねぇ、ハンナ。たしか一緒に小さなドレスも入れたわよね? それを出してちょうだい」「あ、はい」 ハンナに子供用のドレスを大きなカバンから出してもらう。そして着替え終わったら、早速部屋を出てレオネルが居た方角を探し歩く。 もし怪しまれたとしてもベージュ色にギンガムチェックの柄が付いており可愛らしいドレス。もしバレそうなっても自分の姪だとか言って誤魔化そう。 でも質問されたら答えられないので、なるべく行動には気をつけないといけない。 しば
last updateLast Updated : 2026-04-23
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第57話

 本当は1人っ子なので兄弟は居ないが、隠し通せばバレないだろう。 そのように答えるが、レオネルはパッと表情が明るくなる。「2人と話せるんだ? あ、あの……じゃあ」 しかし途中から何かに気づいたのかゴニョニョと言葉が小さくなって何も言えくなってしまった。顔色が赤から青白くなっていく。「えっ? どうたの? なにか、つたえたいことでもあるの?」 「やっぱりいい。何でもない」 またもやそう言ってレオネルに走って逃げられてしまった。 あの子の中では、どうしても伝えたいことがあるのかもしれない。だけど人見知りなのか、結局何も言わずに逃げてしまう。 もし事件の真相に大きく関わることなら、そのまま見過ごすわけにはいかない。 セレスティンは諦め切れずに、次の日も構わずにレオネルに声をかけに行く。 急にその話を持っていくと逃げられてしまうので、なるべく日常会話を入れながら。 居ない時もあったが、大体は庭近くに居るで、もしかしたら勉強などは気になりすぎて勉強に身が入らないのかもしれない。 現に「そとばかりいてもだいじょうぶ? べんきょうは?」と聞いたら、ビクッと肩を震わせていたし。顔を真っ青にさせながら。「だ、大丈夫だよ……」 曖昧な返事をするので、多分周りに黙ったやっているのだろう。 最初は警戒していたレオネルだったが、回数を重ねていくうちに少しずつだが、打ち解けていく。 それでもレンデルのことは、なかなか話してくれなかった。 今日も庭でコソコソとしているレオネルを見つける。(隠れて誰を見ているのかしら? 私ではないとなると、レンデル様?) 子供の姿のセレスティンは、気になってレオネルの方に近づいていく。しかし夢中で見ているため、まったく気づかない様子。「ねぇ、なにをみているの?」「ひっ……ぐっ。いいから、隠れて」 レオネルは一瞬肩を震わせて驚いていたが、必死に堪えて、セレスティンを大きくなっている草むらの中に隠した。「ど、どうしたの?」「今、取込み中だから」「……えっ?」 セレスティンは意味が分からなかったが、レオネルが見ている方向を覗いてみる。 そうしたら衝撃的なシーンに遭遇することに。 オスカーとメリッサの密会現場だった。(えっ? どういうこと!? どうして……オスカー様とメリッサ様が) 2人も幼馴染みなので親しいのは
last updateLast Updated : 2026-04-23
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第58話

「うん……そうだよ? お母様がミリア様にそう言っているところを聞いたよ。だから『あの2人を警戒した方がいい』って。でも、僕知っているんだ。オスカーお義兄様の相手は、メリッサ様だって」 そうなると、また話が変わってしまう。ミライダが言っていることが、度々矛盾しているからだ。  アシュリーには『エリアスの相手はメリッサ侯爵令嬢が良かった』と嫌味を言ってきたのに、ミリアにはオスカーとアシュリーが恋仲だと疑わせることを話したり。  でも実際は、まったくの真逆。「ねぇねぇ、オスカーさまとミリアさまって、なかはいいの?」 恐る恐るだが、セレスティンは子供らしい感じで聞いてみた。「ううん。よく喧嘩しているよ。仲悪いの僕知っているし」「……そうなんだ。おしえてくれてありがとう」 これは思った以上に、深刻な状況かもしれない。  だが、これでミリアがアシュリーにキツく当たる原因がハッキリした。彼女は夫との仲を疑っているせいだろう。  自分の夫と不倫をしておきながら、エリアスと結婚して王妃に即位しようとなれば、たしかに嫌味の1つや2つは言いたくなるだろう。  宝石を盗んだのもミリアの可能性がグッと高くなってきた。 その夜。レンデルに、そのことを説明する。  レンデル自身も独自で調査をしてくれていたようで、たしかにオスカーとミリアは家同士が決めた政略結婚だったようだ。つまりは愛し合っているわけではない。「政略結婚でも上手くやっているところもあるが、彼らは表向きは上手くやっているように見せた、仮面夫婦みたいだな。特にミリア公爵夫人はプライドも高いから、なるべく表に出さないように気をつけていたらしい」「まぁ、セレスティン皇后陛下。ようこそいらっしゃいました。私のお茶会に来て下さって嬉しいですわ」 ミライダは気にすることなく、セレスティンを歓迎してくれたが。「お招きいただきありがとうございます」 スッとドレスの裾を上げて挨拶をするが、チラッと周りを見渡した。メリッサはニコニコしながら、まったく気にしていない様子。  しかしミリアに限ってはアシュリーが居るのが相当気に食わないのか、ずっと彼女を睨みつけていた。腕まで組んでいるし。  アシュリーもいたたまれないのか、下ばかり見て気まずそうな表情をしている。  空気だけでも分かるほど険悪ムードに出来上がっていた
last updateLast Updated : 2026-04-23
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第59話

 ミリアはバンッとテーブルを思いっきり拳で叩きながら立ち上がった。  周りはシーンと静まり返るが、ミライダはハンカチで口を拭きながら「まぁ、セレスティン皇后陛下が居る前ではしたない。無礼な態度は恥ずかしいから辞めてちょうだい」と一喝する。「ですが……」「ミリア公爵夫人」「は、はい。申し訳ございませんでした」 ミライダの言葉にミリアはグッと歯を食いしばりながらも大人しく席に座った。だが、まだ納得はしていないのか肩を小刻みに震わせていた。(これは……また余計に険悪なムードになってしまったわ) あんな言い方をしたら、余計に機嫌が悪くなるだろう。それにアシュリーが、もっと居心地が悪くなるだけだ。  チラッとセレスティンはアシュリーを見ると、顔色が真っ青になっており、今にも泣きそうな雰囲気に。(これはまずいわね。少しでも話を逸らさないと……) セレスティンは、慌ててテーブルの置いてある豪華なケーキなどを見る。「まぁ、美味しそうなケーキがあるわね。それに、この紅茶も爽やかな甘味があって美味しい。何の紅茶かしら?」 話題をお菓子や飲み物に変えて、気を紛らわせようとした。そうしたら、それに1番に反応したのはメリッサだった。「本当ですか!? その紅茶の葉は私が用意したんです」「そ、そうなんですか?」「隠し味に、はちみつ漬けのレモンを入れてあるんですよ。そうすることで、レモンの爽やかな酸味とはちみつの甘さがミックスして美味しいんです」 ニコニコしながら説明してくれた。本当に気さくで人懐っこい性格のようだ。 しかし、それを聞いたミライダはフフッと笑った。「本当にメリッサ侯爵令嬢は良く気が利くし、こうやって色々と持ってきてくれるんですのよ。2人のプレゼントも素敵でしたが、やはりメリッサ侯爵令嬢みたいな気遣いが出来た方が世のため、国民のためになるのかしらね?」 そう言いながら紅茶が入ったティーカップに口をつける。その瞬間アシュリーとミリアがピリッとした空気になる。  メリッサは喜んでいるが、それを感じ取ったセレスティンはゾッと背筋が凍るような気持ちになった。怖すぎる。  褒めているにしては皮肉が強く出ている。これでは、メリッサの方が2人より優秀で王妃に向いていると言っているように聞こえるだろう。  だが、それでも飽き足らずミライダは、さ
last updateLast Updated : 2026-05-02
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第60話・お互いの誤解。

 結局、最悪なお茶会として終わってしまった。 セレスティンは、そのまま部屋に戻るとレンデルに詳しく説明する。 ますますミライダの犯行が濃くなっていると。「これは計画的な犯行に違いないわ。ミリア公爵夫人をワザと煽らせて、アシュリー様に危害を加える気だったみたいだし」 今回の件が原因でアシュリーとオスカーが愛人関係だと公に出てしまった、誤解なのだが、こういう噂は広まるのが早い。 それをミリアと揉めたとなると、格好の噂の的になるだろう。アシュリーの立場が悪くなる一方だ。「これ以上に悪い噂が独り歩きすれば、エリアス陛下の評価にも影響するだろうな。それに彼自身もショックを受ける」「だとしたら、それが目的なのでしょうか? エリアス陛下をとことん追いつけるつもりとか、アシュリー様との仲を引き裂くためとか?」「ああ、その可能性はあるな。彼が国王になった途端に婚約者に浮気されたあげく、揉め事が多いなんて、国民は良く思わない。王族が傾けば、国の繁栄に関わるから、排除しろとうるさいだろう。そうなれば大臣も黙ってはいない」 冷静なレンデルの言葉に納得する。そうなれば得するのは、ミライダと実子のレオネルだ。問題だらけの国王をまとめて排除しやすくなる。(これでは、私の時と同じじゃない) 可愛い1人息子のウィルモットを皇帝にするために、起こした殺人事件。元皇后の策略が、あんな恐ろしく悲しい事件を生んだ。 セレスティンは頭を抱えて悩んでいると、ドンドンと大きな音でドアをノックしてくる。侍女のハンナが警戒しながらドアを開けてくれたらエリアスだった。「急にすまない。アシュリーが部屋から出て来なくなったんだ」「えぇっ!? どういうことですか?」 まさか、今回のお茶会のことがショックで籠ってしまったのだろうか? セレスティンが慌てて聞くと、エリアスが困惑した表情をしていた。「お茶会で、なにやら揉めたと聞いたので、彼女に事情を聞こうと思って部屋に訪れたら、誰にも会いたくないとベッドから出てくれないのです。私が話しかけても答えてくれなくて」「分かりました。私が行ってみます」 自分では答えてくれるか分からないが、事情は知っている。それに悩みを打ち明けてくれたこともあるから、もしかして話しやすいかも。 セレスティンは1人でアシュリーの部屋に向かった。 部屋に着くと、彼女
last updateLast Updated : 2026-05-03
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