All Chapters of 殺人容疑をかけられた悪役令嬢: Chapter 11 - Chapter 20

24 Chapters

第11話

 すると何を思ったのか、カトリーヌはセレスティンの隣に移動してくると、ギュッと抱き締めてくれた。「悲しいときは泣いてもいいのよ」「でも……それだと、殿下の婚約者として、みっともないわ」「いいえ、みっもなくないわ。泣いたり、嫌なことを嫌だと言うのは、勇気がいることだけど大切なことよ。そこに平民や皇妃は関係ないわ。これは誰もが持っている権利よ」「……誰もが持っている……権利?」 カトリーヌの言葉にセレスティンは衝撃を受ける。今までそんなことを言ってくれる人は一人もいなかった。(泣いても……いいの?) 泣くことさえ、悪いことのように思えて、ずっと1人で耐えてきた。それでも悲しくてやりきれない思いだけが残っていたが。 そんなセレスティンを抱き締めながら優しく背中を叩いてくれるカトリーヌ。「大丈夫。私はあなたの味方よ。だから、聞かせてちょうだい。あなたの悩みや悲しみを」「……ううっ」 セレスティンは余計に涙が溢れてくる。 そして泣きながらも、一生懸命話し始める。カトリーヌにどうして嫉妬してしまったのか。皇妃としてのプレッシャーと孤独感。なによりウィルモットとの関係制。 こんなに自分の心の中を打ち明けることができたのは初めてかもしれない。 最初は恥ずかしさや罪悪感でいっぱいだったが、話しているうちに楽になっていく。 カトリーヌは嫌な顔をせずに、うんうんと黙って聞いてくれた。「ごめんなさい。私ばかり」「ううん、いいの。私は、セレスティン様のことが知れて嬉しかったわ。これからも、悩みや辛いことがあったら私に聞かせてください。時々でいいから、またこうやってお話が出来たら」 カトリーヌは優しそうに笑うと、そう言ってくれた。 自分は酷い誤解をしていたようだ。 彼女は、正真正銘の聖女だった。優しくて、思いやりがあって。なによりもセレスティンに対して、真っ直ぐに向き合ってくれた。 その後もカトリーヌは時々セレスティンの部屋に訪れてくれるように。 セレスティンに対してウィルモットの態度は相変わらずだったが、日頃の愚痴をカトリーヌに聞いてもらえるようになって、少しずつ気持ちが軽くなっていく。 またカトリーヌ自身もフレンドリーに自分の悩みやウィルモットに対しての行動に疑念を持っており、お互いに愚痴を言っては笑い合う。 また軽率な行動も注意をすれば、
last updateLast Updated : 2026-04-04
Read more

第12話

 カトリーヌと同じ銀髪で肩ぐらいの長さの女性。年齢もセレスティンとカトリーヌと同じか、1つ下ぐらいだろうか。「カトリーヌ、大丈夫?」「ええ、大丈夫よ。ちょっと、痛かっただけ」 平気そうに笑う彼女だったが、頬も赤く腫れあがっている。見るからに痛そうだ。「あのメイドは誰なの?」 見たところ知り合いみたいだったが。 セレスティンが聞くと、カトリーヌは苦笑いする。「彼女はアンナ。私の父方のイトコです」「イトコ!?」 まさかカトリーヌの親戚関係の子だったとは。「あの子は昔から気が強くて野心家で。あの子の母親が学校の教師の仕事をしていたから、幼い頃に私と一緒に習いに行っていたの。頭が良くて、いつか皇族と繋がりを持って、平民から、はい上がってやると言っていたわ」「だから、メイドを?」「ええ、なんとか皇族のメイドとして雇ってもらったみたい。でも、私が聖女として皇族に来たから、それに対して怒っていて。『何で、あんたみたいなのが聖女として選ばれるのよ? 不公平だし、ズルい』と言いがかりをつけられちゃって」「酷い。そんなのただの八つ当たりよ!?」 セレスティンはカトリーヌから聞いた事情を聞いて驚いたが、腹が立った。 カトリーヌが聖女に選ばれたのは、あくまでも彼女が特別な力に目覚めたからで、けしてズルさではない。「そうね、ただの八つ当たりだわ。彼女から『どんなに頑張っても平民が聖女になるのはおかしい。さっさと辞めろ』と言われて……私が自分で辞める権限は持っていないと言ったら、思いっきり叩かれてしまったわ。本当のことなのに……ね?」 そう言いながら苦笑いするカトリーヌ。セレスティンはギュッと胸が締めつけられそうになる。自分も彼女に嫉妬していた身だからだろうか? それに、聖女を辞める権限は、たとえ本人でも持ていない。それを決めるのは皇族と教皇たちだからだ。 カトリーヌ自身も辛いところだろう。落ち込むセレスティンの手を取ったカトリーヌは「大丈夫よ」と言おうとした。 しかし、その瞬間だった。「セレスティン。貴様、また性懲りもなくカトリーヌをイジメているのか!?」 またもやタイミング悪く、その現場をウィルモットが目撃してしまった。 「う、ウィルモット……さま!?」 驚く2人に関係なく、ウィルモットがズカズカッと、こちらを歩いてくる。そしてカトリーヌか
last updateLast Updated : 2026-04-04
Read more

第13話

 ウィルモットの言葉にセレスティンだけではなくカトリーヌも衝撃を受けてしまう。 土下座をして謝れと要求してきたのだ。無実の罪なのにも関わらず。 謝ればいいと言う問題ではなくなっている。皇太子の婚約者で、次期の皇妃であるセレスティンが土下座をすれば大問題になる。 それこそ聖女より格下。いや、それ以上に惨めなことに。「どうした? さっさと謝るんだ。聖女を叩いて、すいませんと」 自分の罪でもないのに、そのためだけに謝るなんて出来ない。 これはアーノルド公爵家の名に傷がついてしまう。「……出来ません。私はしていません」 セレスティンはグッと拳を握って堪えながらも言い返した。皇太子に口答えするのはあってはならないが、どうしても従えなかった。 ガタガタと気刻みに震えながら言い返したが、それがウィルモットの感情に火をつけてしまった。「貴様。俺がこんなに優しく言っているのに、調子に乗りやがって」 そう言って、セレスティンの頬を向かって手を上げようとしてくる。 叩かれると思った、セレスティンは恐怖で目を閉じてしまう。しかし、いくら経っても痛みを感じない。 恐る恐る目を開けてみると、衝撃的な光景が目に飛び込んできた。 それを止めてくれたのは、レンデルだった。「れ、レンデル!? なぜ止めるんだ?」「……婚約者に手を上げるとは、随分と乱暴になったな? ウィルモット」「な、何だと!?」 ウィルモットは強引に掴まれた手を振る払う。だが、レンデルは気にすることもなくセレスティンの方を向いた。「……怪我は?」「あ、ありません。ありがとうございます」 慌ててお礼を言うが、だがウィルモットは余計に食ってかかる。「何でお前が、俺の婚約者を庇うんだ!?」「……庇ってはいない。叩こうとしていたからか弱い令嬢を守っただけだ」「はっ? それがおかしいって言っているんだ」 セレスティンを悪者だと思い込んで罵倒するはずが、憎いレンデルに庇われてしまったから余計に分が悪いのかもしれないが。 ウィルモットは余計にイライラしたのか、「もしかしてお前ら、デキているのか!? この浮気者」 それだけ言って立ち去ってしまった。三人は啞然としたまま取り残される。 レンデルは呆れたように、ため息を吐くと、そのまま立ち去ろうとした。「あ、レンデル様。さっきはありがとうござい
last updateLast Updated : 2026-04-04
Read more

第14話

(どうしたものか……)と思いながら。 しかし、さらに大変なことが起きてしまう。皇帝陛下が倒れたと連絡が入ってきて、慌てて眠っている寝室に向かった。 寝室に入ると、皇后がベッドの傍で泣き崩れていた。他にもカトリーヌとウィルモット。そしてレンデルと宰相など大勢の人が集まっていた。 処置をした医師からは危篤状態だと言われる。もともと体が弱っていたが、さらに心臓に負担が来ている。このままだと命にかかわると。 セレスティンは、動揺をしながらも皇帝の寝ているベッドを見る。病人のように青白く、弱々しいほどにぐったりとしていた。「私は人の寿命まで変えることは出来ませんが、やれるだけのことはやります」 カトリーヌはそう言うと、皇帝に近づき手をかざした。すると手から金色の輝きが皇帝の体を包み込む。(これが聖女の力!?) 聖女の使える治癒能力は凄いと聞いていたが、実際に見るのは初めてだ。 優しく眩しい光を操るカトリーヌの髪はゆらゆらと揺れていて、まるで女神のように綺麗だと思った。 その後もカトリーヌは毎日のように決まった時間に治癒能力を使って皇帝を治そうとする。そのお陰が危篤状態からは免れる。 だが意識が戻ったり、戻らなかったりするので、いつ何が起こってもおかしくない状況だ。 そのせいもあって大臣や関係者たちは次の皇帝を早く決めるべきだと言い出した。  しかし皇太子にも関わらず、ウィルモットが皇位を継ぐことに反対する声も多く、揉めている。レンデルの実績が評価されているせいだろう。(このままウィルモットが皇帝になっても大丈夫かしら?) ウィルモットと皇后は、すぐに決まらない状況にイライラしているのは見て分かる。 セレスティンは不安に思いながらも、神殿に足を運んだ。神殿の礼拝堂でカトリーヌが祈りを捧げていた。 治癒だけではなく、毎日に余った時間を皇帝の祈りに使っているとか。彼女の聖女としての真面目さが出ている。 セレスティンは彼女の傍まで行くと、カトリーヌは気づいて振り返った。「セレスティン様!?」「お祈り最中に邪魔をしてごめんなさい。どうなの? あれから陛下の様子は」 セレスティンは心配そうに言うと、カトリーヌは立ち上がり、何かを言いかけたがグッと黙る。顔色が青白く、様子がおかしい。「どうしたの? 私に出来ることなら、相談に乗るわよ?」 いつ
last updateLast Updated : 2026-04-04
Read more

第15話

「さあ……? ですが、力を込めた時に、陛下の体から強い邪気が溢れ出ていました。ゾッとするぐらいに」 思い出しただけでもブルブルと震えるカトリーヌ。 その言葉にセレスティンは考え込む。 そうなると、皇帝に強い恨みを持つ者ということになるが。または、その方が利益になる者。皇帝陛下を邪魔に思っている人は多くいるだろう。 皇族は国の関心が高い故に標的になりやすくなる。「大丈夫。きっと犯人は見つけてみせるわ。私に任せて」 カトリーヌを慰めるために彼女の手を握り締めながら、そう言った。 しかし、それが悲しい幕開けになるとも知らずに。 その頃、皇后は自分の執務室で側近であるテリーにお金がたくさん詰まった小袋を渡していた。小袋を受け取ると、皇后はフフッと笑う。「いい? このお金で腕のいい代筆者を依頼して」「承知しました」 側近のテリーが部屋から出ていくのを確認すると、皇后はデスクの引き出しから取り出したのは透明の液体が入った小瓶だった。「フフッ……どうやら気づかれていないようね。この薬は、即効性はないけど、少しずつ気づかれないように飲んだ者の体を蝕んでいく毒薬。これで陛下の体は長く持たないでしょう」 皇后は立ち上がると、窓から外の景色を見る。夕焼けの空を見ながら皇后はニヤリと不敵な笑みをこぼした。「これでいいわ、最期の仕上げよ。大丈夫よ……ウィルモット。お母様がなんとかしてあげるから」 その表情は何かを企んでいるかのよう。赤紫色に染まった夕日は、これから起きる台風接近前のような怪しげな色だった。 次の日の夜。外は嵐のような激しい雨が降っていた。 雷まで鳴っていて嫌な予感がする。セレスティンは寝室で本を読みながら過ごしていると、深夜の遅い時間にも関わらず、ドアのノック音が。「こんな時間に誰かしら?」「私が出ます」 そう言って侍女のハンナが代わりに出てくれた。訪ねてきたのは、この前カトリーヌと揉めていたメイドのアンナだった。(どうして彼女が……ここに?) 交流のある侍女や騎士が来るならまだしも、どうしてほとんど交流がない彼女が来るのだろうか? セレスティンが疑問に思っていると、アンナは、「皇帝陛下から伝言です。今から寝室に来るようにと」と言ってくる。「陛下がこんな時間に? 私に何の用かしら?」「……さあ? 私は言われただけなので分か
last updateLast Updated : 2026-04-04
Read more

第16話

 どうしてか、ハンナを一緒に連れていくことに反対してくるアンナ。それに、なおさら疑問を抱く。「だったら外で待ってもらうようにするわ」「そ、そんなのダメです!? 陛下は絶対に1人で来るようにと言われたんです。そうじゃないと、私が怒られます」 それでもセレスティンを1人に行かせようと、必死になって声を上げるアンナ。まるで、そうならないと困るかのように。 ハアハアッと息を切らしながら、言ってくるアンナの顔色は見る見るうちに青白くなっていく。よほど焦っているのだろう。「……分かったわ。私、1人で行くわ」「セレスティン様!? 本当にお1人で行かれるのですか?」 ハンナも違和感に気づいたのか、心配そうに言ってくる。しかし、本当に皇帝陛下からの呼び出しだったら、行かないと失礼に当たる。 それに今は大変な状況。もしかしたら何か伝えたくて……。(とりあえず皇帝の寝室まで行って確かめよう) セレスティンは、違和感はあるものの、それが真実なのかと確かめることにする。 上着だけ羽織り、アンナに案内で寝室に向かった。 皇宮は左右が3階建てで、中央が4階建てになっている。 その最上階に皇帝の寝室と執務室がある。夜になると警備の騎士か専属の侍女しか出入りを許されていない。 長い階段を上って行く時に、チラッとアンナを見る。さっきよりも青白くなっているような気がする。彼女のことを気にしている間に皇帝の寝室まで来てしまった。 ふぅ~と息を整えていると、アンナはドアをノックして部屋を少し開けた。「どうぞ」「えっ? あ、はい。失礼致します」(そんな急に)と思ったが、セレスティンは言われた通りに寝室の中に入っていく。 しかし、目に飛び込んできたのはベッドの上で眠っている皇帝と、その下で倒れているカトリーヌの姿だった。「か、カトリーヌ!?」 セレスティンは慌ててカトリーヌの傍まで駆け寄っていく。どうして彼女が倒れているのだろうか? 傍まで行くと、起こそうとする。しかし、あたたかいはずの彼女の体は冷たくなっていた。息もしていない。よく見ると、カトリーヌの首には絞められた跡が。「えっ? カトリーヌ?」 セレスティンは動揺する。頭の中が一瞬真っ白になって、どういう状況になっているのか判断が出来なかった。(ま、まさか……そんな) だが、その時だった。背後から何者か
last updateLast Updated : 2026-04-04
Read more

第17話

 ガチャッガチャッとドアをこじ開けようとする騎士たち。でも、丈夫にドアになっているため、そう簡単には開かない。  するとウィルモットの声が聞こえてきた。「お前ら一体何をしているんだ!? それにあの声は何だ? 悲鳴のようだったが」「それが……鍵がかかっていまして、悲鳴もこの中から聞こえてきました」「何だと? お父様の部屋に……とにかく、鍵を持って来い」「は、はい。鍵は宰相である父がマスターキーとして持っているはずです」 トリスタンの声も聞こえる。慌てて予備のマスターキーを取りに行く。  鍵は、部屋の持ち主か宰相しか持っていないはずだ。  しかし、このままでは自分が犯人にされてしまう。  セレスティンは動揺を隠せないながらも、必死にキョロキョロと辺りを見回す。騒ぎになっても目を覚まさない皇帝。窓もしっかりと閉まっていた。  これでは完全の密室だ。  そうこう言っているうちに、鍵を開けられる。そしてウィルモットが中心になって中に入ってきた。  目の前には血まみれで倒れた聖女のカトリーヌと、血が付いたナイフが落ちた密室現場。そして手に血をつけたセレスティンが。「か、カトリーヌ!?」 ウィルモットは大声を上げながら、カトリーヌの傍まで駆け寄り、急いで抱きかかえた。冷たく遺体となってしまったカトリーヌ。「お前が聖女を殺したんだ!? セレスティン」 ウィルモットは涙を流しながら怒鳴り散らした。そしてセレスティンが犯人だと決めつけてきた。(そんな!? 違う……私じゃないのに) セレスティンは慌てて否定しようとする。このままでは殺人事件の犯人にされてしまう。 ち、違います。私は、殺してなんていません」「じゃあ、誰がカトリーヌを殺すと言うんだ!?」 誰が殺したと聞かれても犯人は分からない。一瞬アンナの顔が浮かんだが、彼女がやったという証拠はない。  戸惑うセレスティンにウィルモットは、さらに冷たい目をしてくる。「答えられないのがいい証拠だ。貴様以外はいないのだからな。早く、この女を牢にぶち込んでおけ」 ウィルモットは容赦なく、そう言い放った。騎士たちは、セレスティンを押さえ込む。必死に抵抗するが強く腕を掴むので痛い。  自分は無実だと言いたいのに、周りの空気は冷ややかだった。まるで犯人を見るような目で、誰も話を聞こうとはしなかった。
last updateLast Updated : 2026-04-04
Read more

第18話・殺人容疑。

「そんな……」 まだ、弁解もなにもしていないのに。急に決まった死刑判決に啞然とする。  セレスティンは檻の鉄格子に掴まり、必死に訴えようとする。このままでは、本当に無実の罪で殺されかねない。「皇后様。ですが……これは」「ああ、本当に残念だわ。でも……聖女が亡くなった以上は、仕方がないことよね」「えっ……?」「明日は、その足で死刑台に上がってちょうだい。いい? どうせ逃れられないのだから、余計なことは言わないこと。そうすれば、あなたの家族だけでも助けてあげるわ」「ま、待ってください!?」 セレスティンの表情は青白くなっていく。助けてくれるどころか、余計なことを言うなと言われてしまった。しかも家族を人質にされて。  皇后はボソッと何かを呟くと、そのまま帰ってしまう。取り残されたセレスティンは、ただ頭が真っ白になり絶望していた。(このまま私は死刑台に上がって、皆が見ている前で首を吊らないといけないの?) カトリーヌを殺してはいない。それどころか、いつも優しくて、悪女と呼ばれていたセレスティンにとっては、初めて出来た親友だった。  もっと仲良くなりたかった。  お茶を飲みながら、たくさんお喋りをして、笑い合いたかった。  そう思ったセレスティンの目尻には涙が溢れてくる。どうしようもなく悔しくて、切ない。  遅くの時間まで泣き崩れていると、また誰かが入ってくる気配が。すると近くにいた看守の人は悲鳴を上げて倒れ込んだ。  セレスティンは恐怖で顔を上げると、その人影はレンデルだった。「……助けに来た」「レンデル様。どうして?」 まさか第2皇子である彼が助けに来てくれるとは夢にも思わなかった。  レンデルは倒れている看守から鍵を奪うと、牢の扉を開け、手を差し出してくれた。「君は、こんなことをする女性ではないはずだ。助けてやるから、一緒にここから出よう」 レンデルはセレスティンの無実を信じてくれた。それは思いがけないことで、セレスティンは動揺を隠せない。  戸惑いながらも、その手を受け取り、牢の外に出るとレンデルは透明の小瓶を取り出した。「これを飲むといい。魔塔に作ってもらった体を小さくする薬だ。これを飲めば、一時的でも正体を隠すことが出来るはずだ」 手に渡されたのは、体を小さくする魔法の薬だった。(こんなものを私のために? 本当
last updateLast Updated : 2026-04-04
Read more

第19話

「凄い……本当に魔法みたいな薬って、実際していたのね!?」 その効果に驚くも、セレスティンは事実だったことに感動する。しかしレンデルは慌てるように近くに置いてあった大きめの袋を取ってくる。「詳しい話は後で聞く。とりあえずこの中には入って。子供が入るぐらいの大きさだから、疑われずに済むだろう」 レンデルは持ってきた袋は、確かに小さな子供が入れるぐらいのサイズだ。これなら他の人たちに見つからないように逃げられるかもしれない。 セレスティンは恐る恐る、その袋に入る。 レンデルは、袋を持って肩に抱えると地上に上がっていく。暗くて狭い袋の中では、外の様子がどうなっているのか分からない。だが、安全には行けているようだ。 馬車までたどり着くと、それに乗り込みと走り出す。身の安全を確認した後に袋の中を開けてセレスティンを出してくれた。「とりあえずこれでも羽織っておけ」 その効果に驚くも、セレスティンは事実だったことに感動する。しかしレンデルは慌てるように近くに置いてあった大きめの袋を取ってくる。「詳しい話は後で聞く。とりあえずこの中には入って。子供が入るぐらいの大きさだから、疑われずに済むだろう」 レンデルは持ってきた袋は、確かに小さな子供が入れるぐらいのサイズだ。これなら他の人たちに見つからないように逃げられるかもしれない。 セレスティンは恐る恐る、その袋に入る。  そう言ってレンデルが黒いローブを頭に被せてきた。「えっ? あっ……キャアッ」 よく見たら小さくなったせいでドレスが脱げてしまい、生まれたままの姿になっていた。危うく恥ずかしい姿を見せるところだった。 セレスティンの頬を赤くしながらローブを羽織っていると、馬車は森の奥に入っていく。「あの……どちらに向かわれているのでしょうか?」 セレスティンの実家がある方向ではないようだが?「ああ、俺の実家。つまり母が住んでいる離宮に、一時避難しようと思ってな」「離宮ですか!? シャノン様が住んでいる……あの?」 離宮といえばレンデルの母親で皇帝の側室であるシャノン・アルバーンが住んでいる屋敷だ。 側室なのだが、もともと体が弱く、病弱のために病養として離宮に移り住んでいるとされているが、本当は皇后が嫌っており、森奥に追い出したと噂がある。 レンデル自身は騎士になってからは寮に住んでいるら
last updateLast Updated : 2026-04-04
Read more

第20話

 カトリーヌとの仲や、このような事態になったことまで詳しく話した。 しかし話につれて、ある疑問に気づく。(やはりおかしいわ。あの時に呼びにきたのはアンナなのに、なぜ彼女は黙秘しているの?) 一緒に来たはずのアンナの姿はどこにもなかった。本当なら同じ現場を目撃しているか、何か情報を掴んでいるはずだ。(それに皇帝の呼び出しと言っていたのに、私があれだけ騒いでも起きてこなかった。意識があったのなら気づくはず……だとしたら彼女がカトリーヌを?) うーんと考え込んでいると、それに気づいたレンデルは、「どうした? 何か悩みことか?」 と、心配そうに聞いてくれた。セレスティンはハッとして首を横に振るう。 まだ確証が持てない以上は、下手に話さない方がいいかもしれない。向こうに気づかれたらシャノンの身も危険にあわせてしまう。 するとシャノンは何かを思いついたようにニコッと笑った。「そうだわ。このままだとまずいから。偽の身分を作りましょう。私の友人の子で、しばらく預かっていることにして。名前は……そうね。『キャサリン』がいいかしら?」 身を隠す間の仮の名前をつけてくれた。 確かに『セレスティン』という名前のままだと怪しまれる。子供になったとしても、身分がハッキリしていないと不自然に思われてしまう。 特に皇宮の人たちには少しでも疑われないようにしないと。「とりあえず君は、ここの生活になれるまで俺も泊まり込んでサポートしよう。あと犯人探し。疑わしい人物を見つけて、動機や、その日の行動を調べる」「は、はい」 まさかレンデルが泊まり込みでサポートしてくれるとは思わなかった。 少し何を考えているのか分からなくて戸惑っていたが、本当は優しい人なのでは? と思ってしまう自分がいた。(私は、まだレンデル様のことを何も知らない) 外からの得た情報や噂話ぐらいでしか彼がのことを知る機会はなかった。(これから知っていけるかしら? レンデルの本当の性格や本心とか) しかし、今はそんなことを考えている暇はない。 セレスティンは、そう自分に言い聞かせて事件の真相を解いていく決心をするのだった。 その後、キャサリンと生活をすることになったセレスティン。 何処で情報が漏れるか分からないので、とりあえずレンデルとシャノン以外には警戒することに。 メイドと執事長でも明ら
last updateLast Updated : 2026-04-04
Read more
PREV
123
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status