All Chapters of 殺人容疑をかけられた悪役令嬢: Chapter 41 - Chapter 50

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第41話

「こういう時は、大体こういう場所に隠れるものだ」 側近をしているだけあって、勘が鋭いテリーは、すぐに用具入れの物置きに気づいてしまった。セレスティンは、あまりの恐怖に腰が抜けそうになる。 だが、内側から鍵をかけていたので開けられない。チッと舌打ちをされる。(た、助かった……) そう思った瞬間だった。ガンッとドアを蹴りつけてきた。一度じゃなく、2回、3回と容赦なく蹴り上げてくる。 鍛え上がった足を力強く蹴るせいで、ドアが大きな音とともに凹み始めてきた。このままでドアが壊れるのも時間の問題だろう。 セレスティンは驚きと怯えてしまい、全身がガクガクと震え上がった。顔面蒼白な表情で必死にドアを押さえる。 もうバレていると思ってもいいだろう。そう思うぐらいに力が強い。 セレスティンは泣きながら必死にレンデルの名前を叫んだ。「た、助けて……レンデル様。レンデルさ……ま」「やはり、ここに居たか」「お願い……気づいて!!」 もうバレるとかの問題じゃない。とにかく助けを呼ぶしかなかった。 絶体絶命だと思った。 しかし、その時だった。テリーの叫び声が突然聞こえてきた。(えっ?) ドカッと地面が叩きつけられる音がする。そして凹んでしまったドアが開いてしまった。真っ暗な物置きから外の光が漏れだす。 恐怖に怯えていると、顔を出してきたのはレンデルだった。「大丈夫か!? セレスティン」「……レンデル……さま」 ずっと助けを待っていた彼が目の前に居た。 セレスティンはホッとしたのと、その嬉しさでレンデルに倒れ込むように抱きついてしまった。あたたかい彼のぬくもりに自然と涙が溢れてくる。 レンデルもギュッと抱き締め返してくれて、胸をなで下ろしていた。「良かった……無事で。目を覚ました後、君がいないから探したんだぞ」「ごめんなさい。本当に……ごめんなさい」 何度も泣きながら謝るセレスティン。こんな怖い思いは二度としたくない。 倒れたテリーは、レンデルの率いる騎士団に取り押さえられることになった。 レンデルは指示を出した後に馬車に乗って離宮に向かうことに。その間も、ずっとセレスティンを抱き締めてくれた。 するとグズグズと泣いていたセレスティンに異変が。「どうした? セレスティン」「くっ……体が熱い」「えっ? まさか」 そのまさかだった。体
last updateLast Updated : 2026-04-18
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第42話

 自分は、とっくにレンデルのことが好きになってしまったのだと。ウィルモットとの時とは違う、激しくも胸が苦しくなる気持ち。 やっと気づいたセレスティンは無我夢中で、それを受け入れた。 その恋だけは、絶対に離してなるものかと思いながら。 次の日。取り調べで、皇后の側近・テリーの犯行が明らかになった。自白剤を効果だが、その内容はゾッとするものだった。 まさか、ここまで身勝手な人だったなんて。「もう……言い逃れは出来ないだろう。今夜にでも真犯人を捕まえる。セレスティン……それでいいな?」「……はい」 セレスティンは怒りと悲しみで、頷くのが精一杯だった。 自分も覚悟を決めないといけない。それがカトリーヌの無念を晴らすことになるのだろう。 そして運命の夜。レンデルは皇帝の寝室に皆を集めた。 皇帝は、まだ眠った状態だったが。集まられたのは皇后、ウィルモット、そしてトリスタンの父親で宰相であるラルフ。それと侍女だったハンナと他のメイドやレンデルが率いる騎士など数人。 セレスティンは今回、本来の姿で登場した。無実を晴らすために、隠す必要がなかったからだ。 しかしウィルモットはセレスティンを見るなり「早く捕まえろ」と暴言を吐いてきた。それはもう、殺気に満ちた表情で。「ウィルモット黙れ。それをお前が言う権利はない」「はっ? 何だと~俺は皇太子だぞ!? それにコイツは聖女を殺した悪女だ。捕まえて、死刑になるのは当然だろう?」 悪びれることもなく、まだセレスティンを殺人犯だと言い張るウィルモット。 するとレンデルは、深いため息を吐いた。「だから言っただろう? お前がそれを言う権利はないと」「はぁ? どう意味だ? それは」 レンデルがそう言っても、納得のいかないウィルモットは、ふて腐れたように言い返してきた。「それは、私がお話します」 そう言ってレンデルより前に出てきたのはセレスティンだった。「あら、あなたが何の権利があって話すのかしら? 婚約破棄されて、殺人容疑をかけられた令嬢ごときが」 やはり息子の肩を持つ皇后。そう言えば怯むのだと思ったのだろうか。「えぇ、だからこそ話すのです。今回の事件の真相を」 もう昔の自分ではいられない。周りはざわつくが、それでもセレスティンは口を開いた。「今回の事件の最初の真相は、皇帝陛下の殺害でした。陛下に毒
last updateLast Updated : 2026-04-18
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第43話

 ハンナをチラッと見ると、大きく頷いてくれた。「は、はい。アンナというメイドが呼びに来ました。私も行こうとしたのですが、彼女はセレスティン様1人で来いと陛下から命令されていたらしくて」「はっ? だから何だ? そんなのは何の証言にもならんだろう。お前の侍女なんだから、口裏を合わせることなんて容易いだろう」 ハンナの証言を全く意味のない言葉だと嘲笑うウィルモット。それでも、セレスティンは毅然とした態度で話し続ける。「まだ続きがあります。私はアンナと一緒に陛下の寝室に行きました。その時は鍵はかかっていませんでした。しかし中に入るとカトリーヌが倒れていて、慌てて駆け寄ってみると、既に殺されている状態。そのすぐ後に私も何者かに、後ろから殴られて気絶をさせられたのです」「そんなの貴様の言い分だろ? 俺たちが見た時は、密室だったし、カトリーヌの傍には貴様しか居なかった」「……そう私しか居なかったのです。呼びに来たはずのアンナも。それに近くで警備をしていたはずの騎士までもが」 セレスティンの言葉に周りは、どよめく。 普通に考えてもおかしいはずだ。アンナが居たことは噓だと思われても、警備に居るはずの騎士達が居ないのは、あまりにも不自然だ。 いくら夜の警備だとしても、相手は国を背負う皇帝陛下。 体も弱っている状態だ。敵だって忍び込んでくるかもしれないのに。「そ、それは、お前が買収したんだろ? その騎士に」「私に買収させたとしても、受け入れるとは限りませんよ? 私は、ここでは嫌われ者でしたから。悪役令嬢として」「うっ……」 ぴしゃりと放った言葉に、たじろぐウィルモット。悪役令嬢は、自分で蒔いた種だ。 メイドや周りにも、その呼び名は広まり陰で嘲笑われていた。 騎士たちも例外ではない。 レンデルの率いる騎士団の人たちは、レンデルが厳しく指導したせいもあってか、馬鹿にはしてこなかったが。今回の警備の騎士は無関係だ。「アンナも買収には手を貸すはずはありません。あの子はカトリーヌに嫉妬していたから。今回の事件には、アンナも深く関係しています。犯人は罪を私に着せるために、呼びに行くように命じました。あの子は共犯者です」 セレスティンの言葉にウィルモットの顔色は変わる。すると皇后まで口に出してきた。「でも、それだとアンナが犯人でもおかしくないじゃない!? 私は
last updateLast Updated : 2026-04-18
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第44話

 いつもより興奮気味に言うウィルモット。まるで、そうじゃないと許さないと言っているように聞こえる。「ち、違うのよ……ウィルモット。お母様は、あなたが心配で」「心配なら聖女の結婚のこと、早めに許してほしかった。そのせいで……カトリーヌは遠慮して、俺に冷たくなったんだ」 ウィルモットの言葉にセレスティンは悲しい気持ちになった。そこまでしてカトリーヌと結ばれたかったとは。 下を向きながらギュッと手を拳にして震えるのを我慢する。 レンデルは、それに気づいたのか、セレスティンの手を握ってくれた。ハッと彼を見るセレスティン。(こんなことで動揺していてはダメ。私には、まだやるべきことがある) セレスティンはグッと踏ん張って前を向いた。「お話のところ失礼します。続きを話してもよろしいかしら?」「な、何だと?」「その話は別の時にしてくださいまし。私たちが言いたいのは、その先です。アンナと手を組んだ人物こそ真犯人。私が見た時に、カトリーヌの首には絞められた跡がありました。カトリーヌの死は、本当は絞殺。しかも凶器は手。彼女みたいな力の弱い女性では人を殺す腕力はありません。ヒモなど使わない限りは」 初めてカトリーヌの死の真相を話す。「そ、そんな馬鹿な。カトリーヌは血まみれで死んでいたんだぞ!?」「たしかに、最終的にはナイフで刺しましたね。私の犯行に見せるためだけに」「そ、そんなわけ」「事実そうです。絞殺されたカトリーヌをナイフで刺したのはアンナでしょう。彼女の部屋から血がついたエプロンが出てきました。きっと捨てることも、燃やすことも出来ずに隠していたのでしょう。ひたすらバレるのが怖くて。日記にも恐怖と、殺したのは私ではないと書いてありましたし、命令だったのでは。その後に、犯人は隠れて待機、アンナに私を呼びに行かせたのでしょう」 だから、あんなに怯えていたのだ。いくら死んでいたとしても、ナイフで人を刺すのは正気ではいられない。 彼女にやらせたのは彼女に恐怖心を植え付けて、大人しくさせるため。 そして血が自分の服につくとマズいから。「だったら彼女が犯人だろ!?」「だから言っただろう? 女の彼女ではカトリーヌを殺せない。既に絞められて殺されていたんだからな。相手は男だろうな」「はっ? じゃあ、犯人は、警備の騎士だ。そうに違いない。それに、どうやって隠れ
last updateLast Updated : 2026-04-18
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第45話

 慌てて反論する皇后とウィルモットだったが、顔色は病人かと思うほど真っ青だ。「それは、私が説明します。1番はカトリーヌを殺せるのは男性だったこと。2番はアンナが、どうして犯罪までして手を貸したか? それはウィルモット様にそそのかされたからでしょう。彼女は、あなたの皇妃になりたいという野望がありましたから。それに皇后様にもカトリーヌが陛下殺しの犯人にしようと思って指示を出していた。証拠は日記。アンナは、二重スパイだったのです」 セレスティンは告げる。だからこそアンナは、犯行の手助けをした。 皇后には、陛下に毒を盛ったことをカトリーヌの犯行には見せかけろと命令させる。 褒美は『ウィルモットとの婚約』 そしてウィルモットは、アンナを仲間に引き込んだ。多分口裏を合わせるために、だがそうなる前に誤ってカトリーヌを殺してしまった。そのため『皇妃』の座を盾に、共犯者として従わせたのだろう。 アンナもカトリーヌを邪魔に思い、嫉妬で憎んでいた。都合のいい相手だった。「だからって俺が犯人っていうには不十分だ。確かな証拠がない」 それでも言い訳をするウィルモット。「はい、でもまだ共犯者がいます。トリスタンです」「トリスタン!? 私の息子だが?」 宰相のラルフが驚いて声を上げる。まさか自分の息子が犯行に絡んでいるとは思わなかったようだ。 ちなみにトリスタンは、現在行方不明のままになっている。 まだ状況をラルフには言ってはいない。ギャンブルをするために仕事だからと噓を言って外泊をしていたから、居ないことにも気づきもしなかったのだろう。「彼がギャンブル依存症です。たくさんの借金もあり、お金に困っていました。だからアンナと同じく、二重の犯罪に手を染めたのです。皇后様から毒薬の入手。そしてウィルモット様からは、合い鍵を作るようにと」 セレスティンの言葉に絶句するラルフ。だが、ウィルモットは諦めない。「はっ? だからって何なんだ? なら犯人はトリスタンだ。アイツは、聖女につきまとっていたからな」「それでしたら、違いますわ。彼には自白剤を飲ませました。そうしたら素直に自白してくれましたわ。あなた方に依頼されたと」「はっ? 何だと?」 セレスティンの言葉に啞然とするウィルモット。まさか捕まっているとは思わなかったらしい。黒色のフードを羽織った暗殺者も送ったのに。
last updateLast Updated : 2026-04-18
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第46話

 彼は傲慢だが臆病で疑い深い性格だ。母親の言うことばかり聞いてきたが、人をそこまで信用していない。だからこそ、隠すことは不安で仕方がないだろう。 一番安全で誰にも見つからない場所。それは自分の中に隠すことだ。「馬鹿を言うな。そんなところにあるわけがないだろう!?」「だったら、調べてみればいいだろう? 無実なら見つからないはずだ。おい、皇太子の衣服などを徹底的に調べろ」 言い訳をするウィルモットの衣服を調べろと、レンデルは、自分の騎士団の人たちに指示を出す。だがウィルモットは必死に抵抗をする。「皇太子の俺に触るとは大罪だぞ!? 貴様ら死刑になりたいのか」「大人しくしていてください」「うるさい。触るな!? やめろ」 無理やり触ろうとするため、必死になって暴れるウィルモット。しかし、その時だった。「いい加減にしないか。ウィルモット」 突然大声で怒鳴りつける人物が。それは意識がないはずの皇帝陛下だった。「へ。陛下……ご無事だったんですか!?」 セレスティンは驚くが、陛下はゆっくりと起き上がる。青白く、弱弱しいが意識はハッキリとしている様子だ。「ああ、聖女のお陰でなんとか助かった。だが意識を戻ると、また毒を盛られるかもしれない。だから意識が完全に戻らないふりをして様子を見ていたんだ。この馬鹿息子のせいでな」 怒りをあらわにする皇帝。「ち、違います。俺は、そんなことしておりません」「そうですわ。あなたの可愛い息子が、そんなことをするわけがありません」 必死に弁解するウィルモットと皇后だったが、皇帝は眉間にシワを寄せて、怒りで体を震わせていた。「いい加減にしないか。体は動かなかったが私は全部見ていたんだぞ。ウィルモットが私に何度も毒薬を飲ませようとしたこと。その前に聖女に見つかり、口論の末に殺してしまったこと。それを婚約者のセレスティン公爵令嬢に罪を擦りつけたことも全部だ」 ハッキリとした口調で言い切ってくれた皇帝。 これ以上は言い逃れはできないだろう。自ら皇帝が証言してくれたのだから。ウィルモットはショックで座り込んでしまう。 しかし涙を流しながらも必死に訴えてきた。「全部コイツらが悪い。俺をコケにしたレンデルもセレスティンも。なによりカトリーヌもだ。あの女が聖女として現れなかったら、こんなことにはならなかった。あの女が俺を狂わせた
last updateLast Updated : 2026-04-18
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第47話

 すると皇帝は咳ばらいをすると、真剣な表情に。「ウィルモット。今回の件でお前の罪は明らかになった。私に毒を盛った罪。聖女を殺したの罪。それをセレスティン・アーノルド公爵令嬢に罪を擦りつけたことなど含めて、お前を皇太子の座から廃嫡するとする」 皇帝からウィルモットに皇太子廃嫡を言い渡される。 これで、彼は皇太子ではなくなった。もちろん皇帝の座もない。「……そんな~」「あ、あんまりですわ。陛下……」 泣き崩れるウィルモットと皇后だったが皇帝は、さらに重い発言を言い渡してきた。「それだけではないぞ。この罪は重大だ。死刑を言い渡されることになっても仕方がないことだ。なにせ偉大な聖女を殺したのだからな。皇后……お前もだ」 その言葉に絶句する2人は、大声を上げて泣き叫んだ。「あああっ~助けてくれ~」 そう叫ぶウィルモットの姿は醜いものだった。 その後。ウィルモットと皇后は、皇帝の命令でレンデル率いる騎士団に捕らえられた。牢屋に入れられ、今後は裁判によって決められるが死刑は確定だろう。 ウィルモットは皇太子を廃嫡。皇后も離婚とその座を廃嫡された。 それに協力したトリスタンとテリーも同じくだが、自白剤を使われたので普通のではいられず。牢獄で笑ったり、妄想に憑りつかれている様子だ。 そして皇后に対しては、どうしても気になることが。どうして、息子のウィルモットに皇帝に毒を盛るように指示を出したのだろうか? 毒を盛るぐらいなら暗殺者や側近にやらせる方法はあったはずだ。その方がリスクになることもなかったし、このような事件にはならなかったはず。 なのに、そこまでして彼にやらしたのは、何か意味があったのだろうか? 後日。それを含めて事情聴取として自白剤を飲まされることに。 そしてレンデルが質問をする。すると、皇后は笑いながら話し始めた。「だってあの子は、臆病で誰よりも繊細な性格をしているのよ? 今だって側室の子のせいで自信を無くして……本当に可哀想に。だから私がチャンスをあげたのよ。自分の父であり、皇帝を蹴落として上に立てたら、それはもう誰もが恐れる立派な王になれるわ。あの子の誇りや自信にもなる。誰もあの子を馬鹿にしない……最強の王に。フフッ……」 それでは、まるで反逆者の王だ。 皇后は何処かで、それを履き違えてしまったようだ。自分の息子を皇太子とし
last updateLast Updated : 2026-04-18
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第48話

 裁判の結果、ウィルモットと皇后は死刑と判断が決まったのだった。 それから1ヶ月後。 平和を取り戻したセレスティンは、カトリーヌの墓の前に居た。埋葬された墓にユリの花束を添える。生前で彼女が好きだった花だ。「カトリーヌ。全てが終わったよ……これで浮かばれるはずだよね?」 悲しい最期になってしまったが、セレスティンにとったら無二のない親友と言えただろう。誰よりも純粋で優しかった彼女は、本物の聖女だった。 あんな出会い方をしていなかったら、もっとお互いを理解し、仲睦ましい未来が待っていたはずなのに。 そう思いながら手を合わせていると人の気配が。目を開けて、振り返るとレンデルだった。「やはり、ここに居たか」「レンデル様。あ、いや……レンデル皇帝陛下」 慌てて立ち上がり、ドレスの裾を上げて挨拶をする。 レンデルは、あれから皇帝陛下に即位することが決まった。父親である皇帝の病状が重く、これ以上は長くないと判断したからだ。「いや、まだ皇太子だぞ。それに、君だって皇后ではないか」「あ、あの……私なんかで本当にいいのでしょうか? 皇后だなんて」 あれから話し合いを重ねてセレスティンはレンデルとの結婚が決まった。一度は皇太子の婚約者だった身だ。それが一番相応しいと落ち着く。 しかし婚約破棄までされたのも事実。そんな自分が本当にレンデルの妻として、皇后になってもいいのだろうかと、悩んでいた。「俺は……それでいいと思う。いや、そうであってほしい」「レンデル……さま」 真っ直ぐとセレスティンの顔を見るレンデルは、真剣な表情だ。「俺は、ずっとセレスティン……君が好きだった。ウィルモットの婚約者だったから諦めていたが、もうその、しがらみがなくなった。俺の妻として一生に国を支えてほしい。俺と家族になってくれないだろうか?」 彼はそう言って、セレスティンの手をギュッと握ってくれた。いつものように、あたたかく優しい手。「……はい。よろしくお願いします」 セレスティンの目尻には涙が溢れてきた。とても嬉しい。 涙を拭うセレスティンをレンデルは、優しく抱き締めてくれた。「さぁ、戻ろう。ハンナが心配をしているだろうから」「はい」 レンデルはセレスティンの肩を優しく抱き寄せると、その場を後にする。 墓の周りには小さな花が咲き、そよ風が吹いている。 その時
last updateLast Updated : 2026-04-18
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第49話・隣国の依頼。

 聖女殺人事件から1年後。 そんなある日、隣国で友好関係であるグリーンフィールド王国から手紙が届いた。 パーティーの招待状かと思ったら、事件の活躍を聞いた若き国王・エリアスからの調査依頼だった。 グリーンフィールド王国の王族の血縁は、代々生まれた時に流した一滴の涙が宝石になるという伝説がある。その宝石は『王族の家宝』として大切に扱われる。 いずれ迎える婚約者に、宝石を結婚指輪に加工して渡すことが古からの伝統とされており。その宝石が何者かの手で盗まれてしまったらしい。 そのせいで婚約者であるアシュリーと結婚が出来ない状況だと。活躍を見込んで、力を貸してほしいという内容だった。 グリーンフィールド王国は宝石の発掘が多い産地で、アルバーン帝国も多く輸入したりと古くからお世話になっている。だからレンデルは、依頼を受けることに。「それでしたら、私も一緒に行っても構わないでしょうか?」 レンデルだけでも良かったのだが、セレスティンもその国に興味があった。まだ皇后として訪れたこともなく、国王のエリアスとは結婚式で一度会ったきり。 その時は婚約者は同席していなかったので一度会っておきたいと思っていた。今後の交流にも繋がるから。「分かった。君は観察力が鋭いから、俺も助かるよ」「ありがとうございます」 セレスティンは喜んだが、それが新しい事件の幕開けになるとは、その時は思わなかった。 そしてグリーンフィールド王国に調査に向かう日。 依頼は極秘にしたいという希望から、視察という形の名目で国の中に入る。 宝石の産地なだけあって森が多く、緑が溢れている。鳥や動物がたくさんいて、平和な印象が強い。 また宝石だけではなく、狩られた動物の肉や山菜なども輸入されているため、商売など活気がいい。そんな国に盗難騒ぎがあったのだから驚きだ。 馬車で移動し、城の中に到着すると国王自ら出迎えてくれた。隣には婚約者のアシュリーも一緒だ。 エリアス・グリーンフィールドは早くに父を亡くし、18歳の若さで即位。 キラキラした金髪に柔らかい表情で笑うのが印象的。鼻筋もスッと高く、端正な顔立ちをしている。性格も穏やかで優秀。落ち着いていると評判だ。「我が国にお越し下さり本当にありがとうございます。アルバーン帝国に比べたら小国ではありますが、精一杯おもてなしをさせてください」 そ
last updateLast Updated : 2026-04-18
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第50話

 するとレンデルは直球で、今回の事件のことを口に出してきた。まわりくどい言い方が嫌いな彼は早く本題に入りたいらしい。「あ、はい。説明は歩きながら案内します。こちらです」 そう言ってエリアスが自ら案内してくれた。『王族の家宝』が保存されているのは地下にある大きな金庫の中だった。二重扉になっており、厳重に警備されていた。 出入り口も一つしかなく、隠れる場所などはない。「この中には宝石が保管されています。それ以外にも、いくつかの貴重な宝石や肖像。お金などもここに。しかし盗まれたのは私の宝石のみ。中を荒らした痕跡もなくて、謎に包まれているのです」 たしかに不思議だ。こんなに宝石やお金があれば、少しぐらい減っても気づかないだろう。なのに何故、他のモノは盗らずに『王族の家宝』だけ盗んだのだろうか? ただの物取りではないような気がする。「どんな特徴の宝石なんですか?」「私のはエメラルドです。と言っても他のエメラルドのような感じではなくて、光を当てると色が変化してきます。夕方の光だと赤色だったり、オレンジ色になったりします」「へぇー不思議な構造ですね」「それ以外にも持ち主だけが手に宝石が触れると光ります。宝石の種類もバラバラですし。それがを持つことを許された花嫁は国王の次に権限と権力を持つことが約束されます」 エリアスの言葉に納得する。それは狙われるわけだと。 貴重なだけではなく、国王と次になれるだけの力がある家宝なら泥棒が思わず手が出るほど欲しいだろう。「他にその家宝を持っている人は?」「実弟のオスカーと義理の弟であるレオネル。現在は妻であるミリア公爵夫人が持っておりますが。あと義理の母であるミライダ王太后陛下は父から贈られました」 そうなると全部で4つ。「他の家宝は無事なんですか?」 セレスティンが口を挟むとエリアスはコクッと頷いた。「……はい。多分ミリア公爵夫人とミライダ皇太后は、結婚指輪に加工して付けているので無事だったみたいです。でも義弟のレオネルの宝石はそのままでした」「……義弟の宝石はそのまま?」 何故、それは盗まなかったのだろうか? 別に盗んでもおかしくはないし、いらなければ別の国にでも高く売ることも出来たはず。金銭目的ではないのだろうか?(国王の家宝だったから? だとしても、どうやって?) 考え込むセレスティンに、レ
last updateLast Updated : 2026-04-19
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