夜になり、彼はついに一つの決断を下した。父親に電話をかけ、瀬戸グループとの政略結婚に同意する旨を伝えたのだ。清音は知る由もなかったが、当時の御堂グループはかつてない経営危機に見舞われていた。彼女が姿を消す数日前、峻は父親から社長室に呼び出され、一時間にわたって話し合っていた。父親は、峻を夕凪と結婚させ、瀬戸グループの支援を取りつけることで御堂グループを救おうと考えていたのだ。当時の瀬戸グループは、前会長の宗正が亡くなり、慎一郎が実権を握ったばかりだったが、それでも涼崎で唯一、御堂グループと肩を並べるほどの大企業だった。ただ、慎一郎がトップに立ってからというもの、瀬戸グループの業績は坂道を転げ落ちるように悪化し、日に日に傾き始めていた。峻は夕凪との結婚を断固として拒絶した。彼の態度は強硬で、親子の口論は一時間にも及んだ。結局、父親は峻を説き伏せることはできなかった。峻は自らの手で別の活路を見出し、御堂グループの危機を乗り切るつもりだった。夕凪と結婚するなど、絶対にあり得ない。妻に迎えるなら、清音しかいない。その数日間、彼は京央県から海外に至るまで各地を飛び回った。息をつく暇もないほどの激務と焦燥感に、心身を削り続けていた。その夜、彼が疲労困憊の体で涼崎に戻ってきた時のことだ。何一つ成果を上げられず、深い徒労感と苛立ちに苛まれていた彼の目に、机の上に置かれた清音からの手紙が飛び込んできた。そこには短い言葉が綴られているだけだったが、彼女がどれほど深く傷ついたかが痛いほど伝わってきた。手紙にはこう書かれていた。峻の父親から電話があり、峻がまもなく夕凪と結婚することになったから、身を引いてほしいと告げられた、と。だから別れを告げる。あなたと夕凪の幸せな結婚を祈っている――そう結ばれていた。文字の上では気丈に振る舞っていても、便箋は明らかに湿っており、涙の跡で文字がひどく滲んでいるのは一目瞭然だった。峻には手に取るように分かった。この手紙を書きながら、彼女がどれほど悲しみ、絶望の涙をあふれさせ、その雫を便箋に落としたのかを……その瞬間、峻の心は刃物でえぐられるように痛んだ。彼はすぐさま、狂ったように清音を探し始めた。電話をかけても、電源が切られている。メッセージを送っても、すでにブロッ
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