しかし紫月は、いつまでも夕凪の行く手を塞いでつきまとった。「夕凪さん、私に何か手伝えることはありませんか?遠慮なく言ってくださいね!」そう言い終えた瞬間、夕凪は紫月をまっすぐ見据え、冷たく言い放った。「あるわ」紫月は一瞬、呆気にとられた。まさか夕凪が本当に自分に頼みごとをしてくるとは思っていなかったのだ。だがすぐに、明るく白々しい笑顔を取り戻した。「いいですよ!夕凪さん、私に何をすればいいんですか?」「ど・い・て」夕凪は一文字ずつ区切って冷酷に言い放った。紫月の顔が引きつる。夕凪がその隙に脇をすり抜けて立ち去ろうとしたとき、紫月が背後から声を落として言った。「夕凪さん、正直言って意外でした。私より年上なのに、考え方が私よりずっと単純で幼いんですもの」夕凪の背中がピタリと止まった。彼女は振り返り、冷たさと困惑の入り混じった視線を紫月に向けた。紫月は片眉を上げ、にこにこと笑ってみせた。「職場のルールも知らないんですか?でも、正直な話、大学にだって夕凪さんほど単純な人はいませんでしたよ!」紫月は言葉を切ると、さらに声を落とし、ほとんど夕凪の耳元で囁くように続けた。「残業したあの夜、あなたのパソコンがフリーズしたから、私のパソコンを使いましたよね。設計図を仕上げて、そのまま私のパソコンに保存した。自分のスマホにファイルを送ってバックアップを取っておくことすらしなかった……ねえ、あなたみたいに単純で愚かな人が、あとになってみんなに誤解され、罵られたからって……それが私に何の関係があるんですか?だから、今こんな状況に陥っているのは、私が残酷だからではなく、あなたが愚かだからですよ」紫月は相変わらずにこにこと笑いながら言った。他の同僚たちの目には、明るく誠実な笑顔に映るだろう。だが夕凪には、色鮮やかで美しい毒蛇にしか見えなかった。夕凪が何か言い返すより先に、紫月は嘲るように続けた。「でも、あなたみたいに単純で愚かな人なんて、本当に珍しいですよ。まさか自分のことを、世間知らずで能天気な社長令嬢だとでも思ってるんですか?」最後の言葉を口にしたとき、紫月の顔にはあからさまな侮蔑の色が浮かんでいた。――夕凪が社長令嬢?そんなこと、信じられるわけがない。紫月の目から見れば、頭のてっぺんか
Read more