少しだけ。今日は良い一日になるような気がした。そう思ったのは朝だけだった。昼前。事務所へ着いた唯は、美咲と一緒に仕事を進めていた。記者の件も気になる。けれど。いつまでも怯えているわけにはいかない。仕事は待ってくれないのだ。パソコンへ向かっていたそのとき。スマホが震えた。高倉からだった。唯は反射的に画面を見る。そして。すぐに表情を引き締めた。『打ち合わせが終わりました』その一文のあとに続く文章を読む。『少し進展がありました』唯は思わず姿勢を正した。進展。その言葉に胸がざわつく。昨日から気になっていた問題だ。すぐにメッセージを開く。『週刊プライム側へ正式な抗議を行いました』『また、事実と異なる内容については訂正を求めています』唯は小さく息を吐いた。やはり本格的に動いていたらしい。高倉のメッセージは続く。『先方も一部については認識しているようです』『ただし、すぐに解決するとは限りません』冷静な文章だった。期待させすぎない。それでいて状況は伝える。高倉らしいと思った。そのとき。事務所のドアが開く。美咲が戻ってきた。近くのコンビニへ行っていたらしい。「何かあった?」唯の表情を見て察したようだった。「少し進展したみたい」美咲は目を丸くする。「本当に?」唯は頷いた。そして。高倉から届いた内容を簡単に説明する。話を聞いた美咲は腕を組んだ。「じゃあ、少なくとも会社は本気ってことだね」「うん」「良かったじゃん」
Last Updated : 2026-06-09 Read more