デートから三日後のことだった。唯は事務所で仕事をしていた。記事の件は少しずつ落ち着きを見せ始めている。週刊プライム側も表立った動きを見せていない。もちろん安心はできない。それでも、少し前までの張り詰めた空気に比べればずっとましだった。パソコンへ向かいながら、唯は小さく息を吐く。窓の外はよく晴れていた。こんな穏やかな日が続けばいいのに。そんなことを思う。 その頃。駅前のカフェでは、美咲がコーヒーを飲んでいた。仕事帰りだった。窓際の席でスマートフォンを眺めながら、のんびりとした時間を過ごしている。すると。ふいに一人の男が近づいてきた。三十代後半くらいだろうか。スーツ姿の男だった。「失礼」聞き慣れない声に、美咲は顔を上げる。男は営業マンにも見えた。だが。その目を見た瞬間、何となく違和感を覚える。「少しお話を伺ってもよろしいですか」美咲は眉をひそめた。「どちら様ですか?」男はポケットから名刺を取り出す。そこに書かれていた社名を見た瞬間、美咲の表情が変わった。週刊プライム。その名前に見覚えがないはずがない。唯の記事を書いた週刊誌だった。美咲の警戒心が一気に跳ね上がる。「お断りします」即答だった。男は慣れているらしい。表情一つ変えない。「少しだけで構いません」「構います」美咲は冷たく言った。店内の空気が少し張り詰める。男は苦笑した。「高倉専務とお知り合いですよね」その言葉に、美咲の背筋が冷たくなる。なぜ。
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