All Chapters of 冷徹CEOとの離婚後、私は夫の忠実な部下と恋に落ちた: Chapter 161 - Chapter 170

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すれ違う日常

翌朝。唯はいつもより少し早く事務所へ着いた。鍵を開け、窓を開ける。朝の空気が部屋へ流れ込み、昨夜までの蒸し暑さを少しだけ忘れさせてくれた。パソコンを立ち上げながら、ふと窓の外へ目を向ける。向かいの喫茶店はまだ開店したばかりらしく、店内には数人の客しかいない。昨日見かけた男の姿はなかった。唯は知らず知らずのうちに肩の力を抜いていた。「……本当に考えすぎだったのかな」そう呟いて、小さく笑う。高倉にも言われた。思い込みだけで不安になってはいけない、と。美咲のことがあったから、少し神経質になっているだけなのかもしれない。そう思うことにした。そのとき、スマートフォンが震える。美咲だった。『おはよう』短いメッセージのあとに、猫のスタンプが送られてくる。唯は思わず頬を緩めた。『おはよう。今日は大丈夫?』すぐに返信する。ほどなくして返事が届く。『今のところ平和』その一文を見て、胸をなで下ろす。少なくとも今日は何事もないらしい。それだけで十分だった。 ◇◆◇ 同じ頃。週刊プライム編集部では、若い記者が資料を机へ置いていた。「昨日は引きました」石田は頷く。「それでいい」「ただ……」若い記者は少し言いづらそうに続けた。「桜井さん、途中から周囲を気にしていました」石田は腕を組む。「こちらに気づいたか」「確信はありません」若い記者は首を振る。「でも、偶然ではない気がします」石田は少し考え込んだ。ここで無理をすれば、相手は警戒を強める。
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静かな駆け引き

「やはり気づいていましたか」法務担当は、高倉の話を最後まで聞き終えると静かに口を開いた。会議室には二人だけだった。窓の外では午後の日差しがビルの壁面を照らしている。高倉は静かに頷いた。「おそらく昨日から、私の動きを見ています」法務担当は資料へ目を落とす。「専務を追うこと自体は、現時点では違法とは言えません」「承知しています」高倉も最初からそのつもりだった。自分は企業の専務だ。一定の範囲で取材対象となることは避けられない。問題は、その先だった。「桜井さんや美咲さんへ接触するための手段として利用されることです」法務担当は静かに頷く。「そこは会社としても看過できません。」机の上の写真へ視線を落とした。「今後も一般の方への接触が続くようであれば、これまでどおり記録を残してください。」「抗議はできますか」「状況次第です。」法務担当は落ち着いた口調で答えた。「現時点では、警告以上の対応は難しいでしょう。ただ、接触が繰り返されるようであれば、会社として正式に抗議する余地はあります。」高倉は小さく頷いた。「わかりました。」法務担当との話は、それで終わった。法律としてできること。できないこと。必要なことは整理できた。あとは、自分がどう動くかだった。 ◇◆◇ 会議室を出た高倉は、廊下をゆっくり歩きながら考えていた。唯の顔が浮かぶ。昨日も、不安そうに笑っていた。きっと今も、自分が迷惑を掛けていると思っているだろう。そんな性格だからこそ、放っておけない。だが。今、自分が頻繁に会えば。それだけで週刊プライムへ新しい材料を与えることになる。
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少しだけ遠くなった距離

週末を挟んで、数日が過ぎた。仕事は相変わらず忙しい。週刊プライムも表立った動きを見せることはなく、美咲も「今のところ何もない」と連絡をくれていた。少しずつ、日常が戻ってきたように思えた。けれど。唯には、一つだけ気になることがあった。「最近……」パソコンから顔を上げ、小さく呟く。「高倉さん、来ないな」以前は、資料を届けるついでに事務所へ立ち寄ることが時々あった。仕事の確認をして、少しだけ雑談をして帰る。そんな時間が、ごく自然に日常へ溶け込んでいた。それがここ数日は違う。資料は宅配便で届く。打ち合わせも電話かオンライン。必要な連絡はきちんと来る。仕事に支障はない。だからこそ、不思議だった。「忙しいのかな……」そう考えるのが一番自然だ。週刊プライムへの対応もある。専務という立場なのだから、もともと多忙な人でもある。それでも。胸のどこかに、小さな引っ掛かりだけが残っていた。そのとき、スマートフォンが鳴る。高倉からメールだった。 資料をお送りしました。明日には到着すると思います。ご確認をお願いいたします。 いつもどおり。仕事の連絡だけ。唯は画面を見つめ、小さく微笑む。 承知しました。ありがとうございます。 返信してスマートフォンを置く。それで会話は終わった。以前なら。「近くまで行くので、お届けします」そんな一文が添えられることもあった。けれど今は、それがない。「私、何かしたのかな」
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偶然という名の再会

翌日の午後。唯は高倉から送られてきた資料を確認していた。ページをめくりながら赤字を入れていく。内容はよくまとまっている。確認事項もあと少しで終わりそうだった。そのとき、電話が鳴る。受話器を取ると、取引先からだった。打ち合わせの日程を一日前倒しにできないかという相談である。手帳を開き、予定を確認する。「あ……」その日は少し厳しい。別件の打ち合わせが入っている。唯は申し訳なさそうに答えた。「申し訳ありません。その日は午後から予定が入っておりまして……」先方も困っている様子だった。しばらく日程を調整し、ようやく折り合いがつく。電話を切る頃には、時計は午後三時を回っていた。「コピー用紙もなくなりそうだったな」机の横を見る。残りは一束ほど。今日はこのあと郵便局へ行く予定もある。ついでに文房具店へ寄ってしまおう。唯は事務所を出た。 ◇◆◇ 一方その頃。高倉も取引先との打ち合わせを終え、会社へ戻る途中だった。今日は珍しく外出が続いている。信号待ちをしながら腕時計を見る。次の予定までは三十分ほど余裕があった。会社へ戻る前に、近くの文具店へ寄ることにする。会議用のファイルが足りなくなっていたのを思い出したのだ。自動ドアをくぐる。店内は平日の午後らしく、人はまばらだった。高倉は文具売り場へ向かう。そのときだった。少し離れた通路で、聞き覚えのある声がした。「これかな……」唯だった。コピー用紙を抱え、棚の前で立ち止まっている。高倉は思わず
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決定的な一枚

「偶然、ですか」若い記者はカメラのモニターを見つめながら呟いた。画面には数枚の写真が映し出されている。文具店の前。店へ入る高倉。数分後、店から出てくる唯。そして、店先で短く言葉を交わす二人。最後は、それぞれ別の方向へ歩いていく後ろ姿だった。「ずいぶん短いですね」編集部へ戻ると、石田が写真を一枚ずつ確認する。若い記者は頷いた。「五分も話していません」「食事は」「していません」「車には」「別々です」石田は写真を机へ置いた。決定的なものは何もない。むしろ、高倉が意識して距離を取っているようにすら見える。それでも、一枚だけ気になる写真があった。店の入り口で向かい合い、互いに笑っている写真。ほんの一瞬を切り取っただけだ。だが、静止画とは恐ろしい。その一瞬だけを見れば、親しい二人に見えてしまう。石田は小さく息を吐いた。「これだけじゃ記事にはできないな」若い記者も同意する。「ええ」「だが」石田は写真を封筒へ戻した。「保管しておこう」今は一枚でも。後から別の事実が見つかれば、意味を持つことがある。記者という仕事は、そういう積み重ねだった。 ◇◆◇ 一方その頃。唯は事務所へ戻り、買ってきたコピー用紙を棚へしまっていた。「まさか会うなんて」思い出すと、少し笑ってしまう。本当に偶然だった。それだけなのに、不思議と心が軽くなっていた。最近、高倉は忙しいだけだった。そう思えたからだ。そのとき、美咲から電話が入る。「もしもし?」『
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もう一つの糸口

「これでは記事にはできません」石田は資料を閉じた。編集部の会議スペースには、文具店で撮影した写真が並んでいる。高倉と唯。笑顔で言葉を交わす一枚。それだけを見れば親しげに見える。だが、その前後の写真まで見れば話は別だった。二人は店内で別々に買い物をし、別々に会計を済ませ、別々の方向へ帰っている。「偶然会ったようにしか見えませんね」若い記者が率直な感想を口にした。石田も頷いた。「その可能性は高い」記者は首をかしげる。「でも、高倉専務は桜井さんを気に掛けていますよね」「それは否定しない」石田は写真を見つめた。「だが、『気に掛けている』ことと、『男女関係にある』ことは別だ」そこを混同してしまえば、記事としての信用を失う。週刊誌は推測だけでは書けない。少なくとも石田はそう考えていた。「別の角度から調べよう」静かな声だった。「桜井さんではなく、高倉専務の周辺だ」「会社ですか」「ああ」石田は資料を鞄へしまう。「社内で二人の関係を知っている人間がいるかもしれない」若い記者は頷いた。「わかりました」   翌日。唯は昼休みに、美咲と近くのカフェへ来ていた。久しぶりに仕事の手を止めて、ゆっくり昼食を取ることにしたのだ。「最近、少し落ち着いたね」サンドイッチを口に運びながら、美咲が言う。「うん」唯も頷く。「週刊プライムも静かだし」「それが逆に不気味だけど」美咲は苦笑した。「まあ、それはそうなんだけど」二人は顔を見合わせ、小さく笑う。以前のように心から笑えるわけでは
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変わった日常

文具店で唯と偶然会ってから、数日が過ぎた。週刊プライムは静かだった。美咲からも、「今日は何もなかった」という連絡が続いている。少しずつ、騒動は落ち着き始めているように見えた。だが、それは表面だけだった。「専務、こちらの資料です」総務部の社員が書類を差し出す。「ありがとうございます」高倉は受け取ると、そのまま目を通した。今日の予定は取引先との打ち合わせが二件。夕方には社内会議。以前なら、その合間に桜井事務所へ立ち寄ることもあった。資料を届け、打ち合わせを済ませる。効率もよかった。だが今は違う。「この資料ですが」高倉は書類を閉じる。「発送の手配をお願いします」「承知しました」部下は何の疑問も持たず部屋を出ていく。高倉は静かに窓の外を見つめた。これでいい。会わない方がいい。自分が動けば、それだけ記者へ材料を与えてしまう。そう考えると、自然と足が遠のいていた。 ◇◆◇ 一方、唯は届いた宅配便を受け取っていた。「ありがとうございます」伝票へ判を押し、箱を机へ運ぶ。差出人を見る。高倉の会社だった。箱を開ける。中には依頼していた資料が丁寧に梱包されている。その上へ、一枚の付箋。『追加資料を同封しております。ご確認をお願いいたします。』高倉らしい、簡潔な字だった。唯は思わず微笑む。その一方で、小さな違和感も覚えていた。以前なら。こういう資料は、高倉自身が持ってきてくれることも少なくなかった。「忙しいのかな」独り言のように呟く。専務という立場なのだから
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仕事の時間

「動きがありません」若い記者は手帳を閉じた。高倉を見始めて一週間近くが過ぎていた。会社と取引先を往復する毎日。役員との打ち合わせ。社長の代理としての外出。資料を抱えて会社へ戻る姿。どれも秘書として、ごく当たり前の仕事ばかりだった。「例の女性とは」石田が尋ねる。「確認できていません」若い記者は首を横に振る。文具店で偶然会った日以来、それらしい接触は一度も見ていなかった。石田は小さく息を吐く。「本当に偶然だったのかもしれないな」写真だけでは記事にならない。推測だけで書けば、こちらの信用を失う。「もう少し様子を見よう」静かな声だった。「高倉専務は外へ出る機会が多い。そのうち、仕事で例の女性と顔を合わせることもあるだろう」若い記者は黙って頷いた。焦る必要はない。事実は、待っていれば動く。◇◆◇数日後。午後から、進行中の案件について打ち合わせが行われた。会議室の扉が開く。先頭を歩く涼が、穏やかな表情で頭を下げた。「本日はよろしくお願いいたします」唯も立ち上がり、丁寧に一礼する。「こちらこそ、よろしくお願いいたします」ほんの一瞬だけ、視線が交わる。かつて夫婦だった二人。あの頃とは違う距離が、今はそこにあった。過去を引きずるような空気はない。だからといって、何もなかったように振る舞えるほど軽い関係でもなかった。その短い沈黙を、高倉が静かに埋める。「資料をお配りいたします」落ち着いた声とともに、出席者へ資料が配られていく。高倉は涼の隣へ控え、議事の進行に合わせて必要な書類を差し出し、ときおり議事録へ視線を落とした。会議は終始、仕事の話だけで進む。案件の進捗。今後の予定。追加資料の確認。唯も担当者として意見を述べ、高倉も必要な補足だけを加える。余計な私語は一切なかった。約一時間後。予定どおり打ち合わせは終了した。「本日はありがとうございました」「ありがとうございました」互いに挨拶を交わし、会議室を出る。涼は取引先の責任者に声を掛けられ、そのまま廊下の先で話を始めた。高倉は会議室へ戻り、机の上へ残った資料を手際よくまとめる。そこへ、唯が歩み寄った。「あの、高倉さん」「はい」「先ほどお話ししていた追加資料ですが、来週中にいただければ十分です」高倉は一つ頷く。「承知いたしまし
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それぞれの一歩

「どうだった」編集部へ戻るなり、石田が顔を上げた。若い記者はカメラバッグを机へ置き、撮影した写真を表示する。会議室へ入る涼。その後ろを歩く高倉。取引先の担当者と言葉を交わす唯。どの写真も、ごく普通の仕事の場面だった。石田は無言のまま写真をめくっていく。会議室へ入る様子。会議を終えて廊下へ出る様子。そして最後に、高倉と唯が立ち止まり、短く言葉を交わしている写真が映し出された。「この場面は?」石田が尋ねる。「会議が終わった直後です」若い記者は答えた。「時間は三十秒ほどでした。そのあと、女性は取引先の担当者のもとへ戻り、高倉専務も社長と合流しています」石田は小さく頷く。「内容は聞こえなかったか」「距離がありましたので」「そうか」石田は写真を閉じた。決定的なものは何もない。仕事の確認をしていただけかもしれない。そうでない可能性を否定する材料もない。だからこそ、記事にはできなかった。「保管しておけ」静かな声だった。「はい」若い記者は写真を資料ファイルへ綴じる。一枚では意味を持たない。だが、事実は積み重ねていくものだ。それが記者の仕事だった。会議を終え、高倉は涼とともに車へ乗り込んだ。車が静かに走り始める。しばらくは会議内容の確認だけが続いていた。「来週中には追加資料もそろいそうです」高倉が手帳を見ながら報告する。「そうか」涼は短く頷き、窓の外へ視線を向けた。流れていく街並みを眺めながら、不意に口を開く。「唯、元気そうだったな」高倉は一瞬だけ涼へ視線を向ける。その声に、かつての執着は感じられなかった。ただ、昔を知る相手の近況を気遣うような、穏やかな響きだった。「はい。お変わりないようでした」高倉が静かに答えると、涼は小さく笑った。「それならよかった」その一言だけだった。以前の涼なら、会議が終われば何か理由をつけて唯へ声を掛けていただろう。少しでも長く話そうとしていたかもしれない。けれど今日は違う。仕事の相手として礼を交わし、会議が終われば、それぞれの立場へ戻る。ただ、それだけだった。高倉は窓の外へ目を向ける。唯のことしか見えなくなり、自分を見失っていた涼。その姿を、誰より近くで見てきた。だからこそ、今の穏やかな横顔に胸をなで下ろす。社長は、本当に前へ進んだのだ。そ
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変わらない毎日

週明け。唯はいつものように事務所へ出勤すると、届いていた荷物を机の上へ運んだ。取引先からの資料。印刷会社からの見本。そして、高倉から送られてきた封筒。封を開けると、先日の打ち合わせで話題になった追加資料がきれいにまとめられていた。必要な箇所には付箋が貼られ、修正点も分かりやすく整理されている。思わず苦笑が漏れた。「相変わらず丁寧……」以前と変わらない仕事ぶりだった。だからこそ、不思議だった。以前なら、こうした資料を届けるついでに顔を出すこともあった。短い打ち合わせを済ませ、仕事の話をして帰っていく。その時間が自然となくなっている。もちろん、不満があるわけではない。仕事はきちんと進んでいる。高倉が忙しいことも分かっている。それでも、ふとした瞬間に思ってしまう。――最近、少し会わなくなったな。唯はその考えを振り払うように首を振った。「仕事、仕事」小さく呟き、資料へ視線を戻す。考えても答えは出ない。今は目の前の仕事を片付ける方が先だった。昼過ぎ。美咲から電話が掛かってきた。「もしもし?」『お疲れー』いつもの明るい声に、唯の表情も自然と和らぐ。「今日はどうしたの?」『近くまで来たから、ご飯でもどうかなと思って』唯は時計を見る。ちょうど昼休みに入る時間だった。「いいよ。駅前のお店?」『うん。先に入ってるね』電話を切ると、唯は鞄を持って事務所を出た。駅前のカフェでは、美咲がすでに席を取って待っていた。「お待たせ」「全然」注文を済ませ、料理が運ばれてくるまで他愛ない話をする。仕事のこと。最近見た映画のこと。ようやく以前のような時間が戻ってきた気がした。「そういえば」美咲がふと思い出したように言う。「高倉さん、相変わらず忙しそう?」唯は少し考えてから頷いた。「うん。最近は資料も全部送ってくれるし」「前みたいに来ないんだ?」「そうなの」言ってから、唯は少しだけ照れくさくなった。「別に困ってるわけじゃないんだけどね」美咲は唯の顔をじっと見つめる。「寂しい?」「えっ?」思わず聞き返す。「いや、その……」唯は言葉に詰まった。そんなつもりはない。そう答えようとして、口が止まる。会えなくなって寂しい。そう思ったことが、一度もないと言えば嘘になる。美咲は小さく笑った。「
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