昼食を終えた唯と美咲は、店を出て駅まで並んで歩いていた。夏の日差しは強かったが、風が吹くたびに少しだけ暑さが和らぐ。「今日はありがとう」「こっちこそ」美咲は笑いながらペットボトルのお茶を口にした。「たまにはこういう時間も必要だよ」「そうだね」唯も微笑む。ここ最近は仕事ばかりだった。週刊プライムのこともあり、美咲とゆっくり食事をする時間すら減っていた。「じゃあ、私はこっちだから」駅前で足を止め、美咲が手を振る。「また連絡するね」「うん、気をつけて」美咲の背中を見送りながら、唯は小さく息を吐いた。少し気分が軽くなった気がする。やはり、一人で抱え込むより誰かと話す方が楽だった。そのまま事務所へ戻ろうと歩き出した、そのときだった。スマートフォンが震える。画面を見ると、高倉からだった。唯は少しだけ目を丸くする。『先日お約束した追加資料について、一点だけ補足がございます。お手すきの際にご確認いただけますでしょうか。』仕事の連絡だった。唯は歩きながら画面を開く。添付された資料には、補足説明が丁寧に書き込まれている。ほんの数行の説明だったが、疑問に思っていた点がすぐに理解できた。「さすが……」思わず笑みがこぼれる。仕事になると、高倉はいつも先回りして準備をしてくれる。返信を打つ。『ありがとうございます。ちょうど確認していたところでした。助かります。』送信すると、すぐにスマートフォンを鞄へしまった。仕事のやり取り。それだけなのに、不思議と心が落ち着いた。事務所へ戻ると、そのまま資料へ赤字を入れていく。高倉が補足してくれた部分のおかげで、作業は思っていたより早く進んだ。
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