電話を切ると、高倉はすぐに立ち上がった。「社長」執務室へ顔を出す。涼は書類から目を上げた。「どうした」「唯さんの事務所へ、差出人不明の郵便物が届いたそうです」高倉は手短に説明した。送り主は不明。中には唯と自分が写った写真。そして、一枚の紙。『まだ気づいていないのですか。』涼の表情が険しくなる。「週刊誌か」「分かりません」高倉は首を横に振った。「少なくとも、断定はできません」もし週刊誌なら、記事を書くための材料として保管する方が自然だ。わざわざ本人へ送りつける理由が見当たらない。「法務には」「これから連絡します」「分かった」涼は短く頷いた。「唯を頼む」「承知しました」高倉は一礼すると、すぐに部屋を出た。唯は机の上へ写真を並べたまま、じっと見つめていた。文具店。取引先のビル。どちらも仕事中の写真だった。だからこそ、不気味だった。仕事をしている姿を、誰かがずっと見ていた。その事実だけが、胸を締めつける。ほどなくして、事務所のチャイムが鳴った。唯は立ち上がり、ドアを開ける。「失礼します」高倉だった。いつもどおり落ち着いた表情だったが、その足取りは普段よりわずかに速い。「ありがとうございます……」唯は安堵したように息をつく。高倉は軽く頷くと、すぐ机の上へ視線を向けた。「こちらですね」写真には手を触れず、封筒の宛名や消印を順番に確認していく。「封筒は開封されたままですか」「はい」「ほかに入っていたものは」唯は印字された紙を差し出した。
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