法務担当へ電話を掛けたあとも、高倉はしばらく写真を見つめていた。デスクライトの光が机の上へ落ちる。部屋は静かだった。エアコンの低い動作音だけが聞こえている。高倉はスマートフォンを手に取り、再び画像を拡大した。画質は良くない。顔も鮮明とは言えない。それでも。胸の奥に残る違和感は消えなかった。どこかで見ている。確かに。記憶の中に引っ掛かっている。そのときだった。不意に、一ヶ月ほど前の光景が脳裏をよぎる。会社の正面玄関。受付ロビー。週刊プライムの記者が押しかけてきた日のことだ。あの日は取材を断った。法務担当も同席していた。かなり揉めたのを覚えている。高倉はゆっくりと目を閉じた。そして。ようやく記憶が繋がる。「あのときの……」小さく呟く。同じ男だった。もちろん確証はない。だが。高倉の記憶が間違っているとは思えなかった。玄関ロビーで見た男。法務担当と言い合いになっていた男。写真の人物と重なる。高倉はすぐにパソコンを開いた。社内記録を確認する。来訪者記録。取材申請。受付対応履歴。いくつかのファイルを開いていく。やがて。一つの名前へ行き着いた。週刊プライム。記者・佐伯健二。高倉は画面を見つめる。添付されていた身分証写真。完全に一致とは言えない。だが。十分だった。少なくとも偶然ではない。美咲の周囲へ現れていた男は、週刊プライムの関係者である可能性が高い。胸の奥が静かに冷えていく。
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