秘書室のメンバーが次々と出社してきて、誰もが三久のほうへちらりと視線を投げていく。亜衣里は三久の姿に気づくと、バッグを置いてすぐさま駆け寄ってきた。「あれ、こんなところで何をしてるの?」「社長の出社を待っているんです」三久はそう答えてから、問いを重ねた。「あとで投票があるそうですけれど、秘書室のみなさんは……」言い終わらないうちに、エレベーターの扉が開く音がした。薄いグレーのスーツに身を包んだ由樹が、すらりとした長身を揺らしながら、遠くからこちらへと近づいてくる。足取りは落ち着いており、深く沈んだ瞳には、刃のような鋭い光が宿っていた。その瞬間、三久は周囲から情報を聞き出そうという考えをすっぱりと捨てた。亜衣里はこちらに背を向けていたため由樹に気づかず、話を途中で止められて思わず尋ねる。「何の投……」言いかけて、その足音に何かを察したのか、彼女はすぐさま口を閉ざし、脇へと退いた。「おはようございます」「おはようございます」二人の声が、綺麗に重なる。由樹は一瞬だけ立ち止まり、扉を押し開けて執務室へと入っていった。亜衣里は気を利かせて、その場を離れる。「私、仕事に戻るわね」三久は頷き、身を翻して由樹の後に続き、執務室へと足を踏み入れた。朝の光が室内いっぱいに差し込み、冷たい色調で統一された内装を、柔らかな金色のヴェールで包み込んでいる。三久はデスクの前に、まっすぐな姿勢で立った。由樹はまぶたをわずかに持ち上げ、彼女を見やる。「戻ってきたところで、今後の仕事について何か考えはあるのか」三久の瞳がかすかに揺れ、少し躊躇ってから答えた。「支社での経験も、確かに貴重なものにはなりました」「どうやら、自分の立場が分かっていないようだな」由樹は彼女を、冷ややかに値踏みするように見た。執務室には針の落ちる音さえ聞こえそうな静けさが漂い、彼から放たれる圧倒的な威圧感が、三久をじわじわと追い詰めていく。三久は察して頷いた。「社長のご判断に、すべてお任せいたします」「秘書室の投票を経て、お前に秘書として復帰してもらうことになった。それでいいか」尋ねるような口ぶりではあったものの、実際にはこう問うているに等しかった――唯一残された生き延びる道を、選ぶか選ばないか、と。三久はとうに、最悪の事態を覚
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