太陽の光が由樹の首元をやわらかく照らしていた。椅子の背もたれに気だるげに体を預けたその姿は、どこまでも余裕に満ちており、気品すら漂わせていた。さっきまで会議室で厳しい表情を崩さなかった人物とは、まるで別人のようだった。「ここに書類がある。片付けておいてくれ」三久は彼のデスクにうずたかく積まれた書類へと目をやった。コーヒーをそっと置き、ついでに書類をぱらぱらとめくる。どれもさして重要ではない案件ばかりだ。それでも三久は黙ったまま、すべてを手に取った。「社長、アシスタントをつけていただけませんか」由樹はすらりとした指先でコーヒーカップを持ち上げ、口元へ運んで軽く啜った。数秒思案してから、彼は言った。「構わない。秘書室から好きに選べ」「ありがとうございます」三久は小さく頭を下げ、書類を抱えてオフィスを後にした。彼女が選んだのは理紗だった。理紗の主な役目は、由樹が丸投げしてくる、どうでもいい「後始末」を手伝うことだった。それだけでなく、三久が淹れたコーヒーを上へと運ぶのも彼女の仕事になった。理紗にはずいぶん助けられていた。秘書の仕事のほとんどを、彼女が肩代わりしてくれていると言っていい。それでも、三久がチームを率いて会議を開くたびに、何度も中断させられた。決まって、由樹が用事を言いつけてくるのだ。最初はどうでもいい些細な用件で、三久はそれをそのまま理紗に任せていた。そのうち、三久本人でなければ対応できない案件を振ってくるようになった。そうやって三久はいくつもの用事に振り回され、チームの作業進捗が目に見えて遅れていった。結局、彼女は残業せざるを得なくなった。その日の午後、チームの数人であの政界関連のプロジェクトを一通り振り返り、九洲グループの担当者と初めて打ち合わせを行ったうえで、提携案にひとまず調整を加えた。三久は調整後の内容にひと通り目を通し、さらに何箇所か手を入れてから、九洲側担当者のメールアドレスへ送信した。送信した直後、スマホが鳴った。洲人からのラインだった。【例のプロジェクトの担当、君なのか?】三久は【はい】と返信した。洲人はにやりと笑うスタンプを送ってきた。【よろしく頼むよ】このプロジェクトは九洲グループにとって最重要案件だから、洲人自らが直々に担
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