注文を取りに来たウェイターをそっちのけで、梨々香はさっきから高崎家の話に夢中だった。真相を突き止めるまでは、食事どころではないようだ。見かねた三久が梨々香の腕を引いて立ち上がらせ、ウェイターに申し訳なさそうに告げた。「すみません。急用ができたので、これで失礼します」梨々香は引かれるまま素直に車へ乗り込んだものの、知り合いという知り合いに片っ端から連絡を入れ、高崎家について訊き回っていた。少し離れた物陰から、二人が車へ乗り込むのを温子がじっと見つめていた。やがて振り返り、四十歳前後の女に声をかけた。「聡子さん。あの二人、お見覚えがありませんか?」「一体どういうおつもり?」高崎聡子(たかさき さとこ)は信じられないという顔で温子を見た。「わざわざ私をここまで連れてきて、あの女たちを見せて、何の真似かしら」温子は迷いもせずに言った。「あなたが昔お産みになったあの子、本当は死んでなどいないんですよ」「何を馬鹿な!」聡子はますます信じられないという顔で遮った。「馬鹿な話かどうかは、調べてみればわかることです」温子はわざとらしく思わせぶりに言った。「もっとも、あの二人は私が手塩にかけて育てた子ですから。調べるおつもりなら、私を通さなければなりませんけれど」聡子は眉を寄せたが、ふっと表情を緩めた。「知らないとでも思っているの?あなた、昔は賭博で高崎家を追い出された身でしょう。それを今さらこんな出鱈目な作り話で、私からお金でも巻き上げようという魂胆?さっさと消えなさい。でないと警察を呼ぶわよ!」言い捨てて、聡子は踵を返した。車に戻ってからも、つい三久と梨々香の乗った車が去った方向へ目をやってしまう。温子の言葉など信じてはいなかった。けれど、あの二人のうち片方には、確かに見覚えのあるような妙な感覚があった。「さっきの二人の車を追って」聡子は運転手に命じる。「かしこまりました、奥様」温子が追いすがり、車の窓を叩いた。「どうか、信じてください。私の言ったことは全部本当なんです」車はゆっくりとその場を離れていった。置き去りにされた温子は、聡子の車が消えていった先をしばらく見つめたあと、身を翻して別の方角へと歩き去った。レストランの二階では、由樹が窓辺に立ち、その一部始終を見下ろし
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