由樹の表情は、依然として重苦しいままだった。三久は視線を落とした。「分かっています、すみません……」「俺に謝る必要はない。自分の子供なんだろ?」由樹はそう言った瞬間、胸の奥がちくりと痛み、ひどく不快な気分になった。彼はさっと身を翻し、そのまま歩き出した。背後から足音が聞こえてくる。三久が追いついてきたのだ。小刻みな足取りで急ぎながら、なんとか彼に追いつく。「社長……」「お前が乗っているのは会社の車だ。何かあれば会社にも責任が及ぶ。だから注意しただけだ」由樹が彼女の言葉を遮る。三久は一瞬言葉に詰まってから、また続けた。「分かっています、私……っ」「お前に何かあったところで、俺には関係のないことだ。俺に謝る必要はない、自分自身に責任を持っていればそれでいい」由樹は彼女が必死に追いついてくる様子を見て、思わず歩調を緩めた。三久は少し声を張って言った。「急いで出てきたので、スマホを持っていないんです。タクシーを呼んでいただけますか、病院まで行きたくて」車は牽引されてしまい、梨々香とも連絡が取れず、手元には一銭もなかった。由樹の足がぴたりと止まり、振り返って彼女を見た。彼女はそこに立っていた。灰色の綿のロングワンピースが、妊娠で丸みを帯びた彼女の体のラインにぴったりと沿っている。妊婦であっても、目を奪われるほどの色香があった。下着のラインまでうっすらと浮き出ている。普段の三久なら、こんな服装で外を歩くことはない。今日は急いで出てきたせいだった。由樹は自分の上着のボタンを外し、脱ぐとそのまま彼女を包み込んだ。「俺についてこい」三久の体はふっと温もりに包まれ、彼の匂いがふわりと鼻をくすぐった。由樹は道端でタクシーを止め、ドアを開けたが、彼女がまだその場に立っているのを見て、不機嫌な声で言った。「乗れ、何をぼやぼやしてる」「はい」三久は雑念を振り払い、足早に乗り込んだ。腰を下ろした直後、隣に影が差した。由樹が上半身を車内に入れ、「奥に寄れ」と言った。彼女は、彼が助手席に座るものだと思っていた。三久は慌てて体をずらし、場所を空けた。「お二人、どちらまで?」運転手が尋ねた。由樹は黙り込んでいた。三久が代わりに答えた。「病院までお願いします」「この辺りは走りにく
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