結局千歳自身が車から降りて、幸子をなだめた。「お母さん、由樹さんと結婚すること以上に大事なことなんてないの。もう少しの辛抱よ、あと一歩なんだから!」幸子は娘が不憫でならなかった。「由樹は一体何を考えてるの?あなたが今日自分一人で車を降りて中に入っていったら、あの奥様方に陰で何を言われるか分かったもんじゃないわ!これは由樹が心変わりして、あなたに諦めさせようとしてるんじゃないの?」「大丈夫。おばさんがついてる限り、由樹さんが心変わりしようとしたって、そうはさせないから!」千歳は、由樹がすべてを知ってしまったのではないかと疑っていた。だが、それでも由樹と結婚する、という歩みを止めるつもりはなかった。幸いにも摩美はずっと自分の味方だった。摩美さえ味方につけておけば、必ずあの家に嫁ぐことができるはずだ。「体が手に入っても、心が手に入らなくて、もし将来離婚することになったらどうするの?」幸子はここ数日、ますます不安を募らせていた。千歳を嫁がせたいという気持ちに嘘はない。だがそれは名声のためではなく、ただ千歳に幸せな暮らしを送ってほしいという純粋な思いからだった。由樹が最近まったく姿を見せない態度を見て、彼女は千歳を後押ししたことを後悔し始めていた。「おばさんが間に入ってくれてるんだから、由樹さんと私を離婚させたりしないわよ」千歳は幸子の腕を引いた。衆目の中で、すでに何人もが異変に気づき始めている。これ以上話し続ければ、余計にみっともない事態になるだけだ。幸子はしかたなく、彼女を支えながら披露宴会場へと入っていった。披露宴会場は人でいっぱいで、記者たちに幾重にも取り囲まれていた。この後の出来事はすべてメディアに撮影され、ネットに流れることになる。千歳は夢にも思っていなかった。最終的にこの式をぶち壊したのが由樹ではなく、摩美だったとは。千歳は控え室でウェディングドレスを脱ぎながら、大粒の涙をこぼして泣き崩れた。幸子は追いかけて摩美の車を止め、説明を求めた。摩美は車の窓を開け一枚の紙を投げつけると、そのまま走り去っていった。幸子はその紙を拾い上げる。それは検査報告書だった。彼女は目を大きく見開き、走り去る摩美の車を恨めしげに睨みつけると、慌てて階段を駆け上がり千歳のもとへ向かった。その紙が千歳の手に
Read More