名前は「聡子」で、アイコンに表示されたのは、生まれたばかりの赤ん坊の写真。色褪せて黄ばんだモノクロの一枚は、とても最近のものとは思えないほど古びている。「この子、私の娘なの」三久が写真に目を奪われていると気づいたのか、聡子がぽつりとこぼした。「生まれてすぐに、亡くなってしまってね」三久は目元を微かに震わせ、そっと画面を消した。「……申し訳ございません。心よりお悔やみ申し上げます」「いいの、もう吹っ切れているから」聡子はそう言って、三久のタイムラインを開く。中身は驚くほど何も投稿されていなかった。「今どきの若い子って、マメにSNSを更新するんじゃなかったの?」「仕事に追われていて、気づけば更新する習慣自体がなくなってしまって」三久のタイムラインは、拍子抜けするほど綺麗だった。一番新しい投稿は、梨々香が出産して母になったことを知らせるものだった。もっとも、その公開範囲は由樹一人に設定されている。「あなたのそのお友達も、あなたに負けないくらい優秀な方なんでしょうね」聡子はそう言って、スマホを置いた。その一言に、三久は一瞬言葉に詰まる。聡子が付け足すように言った。「類は友を呼ぶって言うし、あなたと親しくなれるのは、それ相応に優秀な人だけってことよ」「本当に優秀な人なんです。私なんかとは比べ物にならないくらい」三久と梨々香は、互いの足りないところを補い合うような間柄だった。三久には梨々香が持つあの裏表のない明るさがなく、梨々香には三久のような落ち着いた大人の雰囲気がない。時々、自分も梨々香みたいになれたらと思うことがある。「それなら、良かったわ」聡子は小さく呟いた。三久には、その言葉がうまく聞き取れなかった。いや、音としては確かに耳に届いたのに、真意だけがどうしても掴めなかったのだ。きっと、深い意味はないのだろう。……一方その頃、食事の席では、由樹がちょうど三久から視線を外したところだった。「どうして酒井社長を訪ねたのか、もうお分かりのはずです」恒雄は表情を引き締めた。「酒井社長にお力を貸していただきたい。ご希望があれば、何なりとおっしゃってください」由樹は瞳の奥に思考を隠したまま、言葉を継ぐ。「こっちの望みは単純です。高崎武司とその妻が、三久に対し
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