現れたのは仁哉だった。今日は仕立てのいいダークグレーのスーツに身を包んだ、いつも穏やかな仁哉の表情は険しく、普段の柔らかな雰囲気は影も形もなかった。そして彼の半歩後ろに立っているのは、深津市の政財界で多大な影響力を持つ正国。正国は厳しい表情で、美紀や充たちを鋭く見据えている。仁哉は周囲のどよめきなど意にも介さず、2通のDNA鑑定書を皆の前に掲げた。「1通目は、僕と美紀との子供のDNA鑑定書です。結果は、僕との親子関係なし」続いて2通目を開き、声を張る。「2通目は、奈緒さんの子供と充のDNA鑑定書です。結果は、充との血縁関係があることが証明されました。そして、今日わざわざ須藤本部長をここにお招きしたのは、この2通の鑑定結果が間違いなく本物だと証明していただくためです」正国が一歩前に出た。鋭い眼差しで会場を見渡し、威厳に満ちた声で告げる。「栗原さんのおっしゃったことに間違いはありません。私が今夜ここへ来たのも偶然ではなく、このチャリティーパーティーの場でDNA鑑定書を偽造し、他人を陥れようとしている者がいるとの通報を受けたためです。事実であれば、文書偽造や名誉毀損など、刑事責任を問われる可能性があるため、極めて悪質な行為。さらに、チャリティーの会計にも重大な疑義があるとの情報が寄せられておりますので、慈善事業を名目に騒ぎを起こし、他人を悪意をもって中傷した件も含め、第三者にこの後入ってもらうつもりです。私は、偽りで人を欺き、善人を装う者が何より嫌いです。だから、今夜ここへ来たのは、仁哉さんの証言を裏付けるためだけではなく、法を軽んじることは決して許されないということを、ここにいる皆さんに知っていただくためでもあるんです」正国がそう言い切ると、会場は水を打ったように静まり返った。仁哉が充を見据え、低い声で問いかける。「それで、充……君が持っているDNA鑑定書は、一体誰が偽造したんだ?奈緒さんを陥れるためなら、自分の娘まで実の子じゃないことにするなんてな。よくそこまでやれたな。僕はもう呆れてものが言えないよ」その一言をきっかけに、会場が一気に騒然となった。「嘘でしょ……青木家、いくらなんでもひどすぎない?」「やっぱり栗原家が言ってたことが本当だったのね。あんな恥になる話、よほどのことがな
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