All Chapters of RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~: Chapter 91 - Chapter 100

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第91話 決勝で会おう

 闘技祭は着々と進んでいく。 トーナメント進出者は八人しかいないので、三位決定戦を含めても試合が全部で八回しか無い。いま二試合目であり、知らないプレイヤーとニキが戦っている。ニキが試合を優勢に進めていた。 ニキが勝利すれば、トウマの次の相手はニキである。 出場者控え室テントの椅子でトウマとウミは腰掛けていた。ベルフラウは三人分のドリンクを買いに出かけている。ふと、犬の使い魔であるところのアイギスが遊びに来た。大盾と槍を背中に担いでいる。歩み寄り、ウミに右手を掲げた。「ウミちゃん、やっほ」「アイちゃん! ようこそですぅ!」 ウミは尻尾をぶんぶんと振って歓迎していた。唇を開いてチャーミングな八重歯を覗かせている。隣の椅子を勧めた。「アイちゃん、ここへどうぞ」「ありがと」 アイギスが腰かける。 二人で試合を眺めながら会話を始めた。二人分の尻尾が仲良く揺れている。 ウミには良い友達ができたようだ。昨日の前夜祭はアイギスに世話になったという。主人として、ここは礼をしなければいけないだろう。 トウマはステータス画面を開き、ベルフラウからもらったところのSランクのカレーライスカードを二枚取りだした。ウミに差し出す。「ほらウミ、友達と食え」「トウマ、ありがとうですぅ! 気が利きますぅ」「何? そのカード」 アイギスが金色のカードをちらりと見やる。 アイギスの前のテーブルにウミが金色のカードの一枚を滑らせた。「Sランクのカレーライスですよ! 師匠が作ってくれたものですぅ」「師匠って誰?」「師匠っていうのは、ご主人様の恋人で、ベルフラウって言う人ですぅ」「ベルフラウさんって人は料理ができるの?」「あ! ……え、えっと、そうなんですぅ。えっと、ご主人様?」 ウミが説明しにくそうにトウマの顔をうかがう。 料理システム情報は秘密である。 トウマは両手を胸に組んでアイ
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第92話 真帆ちゃんを守れよな

 アイギスは危なげなく勝利を掴み取った。 カウンタースキルで敵を圧倒するような戦い方は圧巻である。敵の攻撃の全てを大盾で防ぎ、ダメージの一切を受けなかった。それぐらい彼女の戦い方は卓越している。最後、アイギスはウミに顔を向けてふわりと笑った気がした。ウミは盛大な拍手で応える。 問題は次の試合だった。 クレナイvs知らない女性プレイヤー戦。クレナイは女性の喉首を掴み、宙づりにして派手な殺人パフォーマンスを行った。「さあさあさあ、観客の皆さんは手拍子をお願いするのであーる。この腐ったゲームからの解放の瞬間を、刮目してしかと見届けるのだ! あ10! あ9! 8! 7! 654321、ゼエロォウ! ゴートゥーヘヴンなのだあぁぁああああ!」 ボキと喉の骨の砕ける音が鳴ったと思う。 女性プレイヤーの仲間の応援者たちが場外から「やめろ」と必死に叫んでいた。それはもはや悲鳴に近かった。 観客たちは口元を両手で覆ってその凄惨を眺めていた。 無惨にも地面に叩きつけられる女性プレイヤーの身体。 苦痛に歪められた顔。 HPを無くして姿が消えた。 クレナイは悪魔のように高笑する。「だあーっはっはっはっは! やってやったのであーる! 我が輩は正義の味方なのだぁあ! ウルトラマンも尊敬の眼差しなのであーる!」(それは無いだろうな) トウマは心の内で苦々しく吐き捨てた。 そして試合場からクレナイが退場する。左手にタバコの煙をくゆらせながら優雅に歩いていた。リズムを刻むように肩を揺らしている。だけど誰も拍手をしない。 呆然としていた審判が気を取り直して、第五試合の開始を告げる。 次は、トウマvsニキ。 拡声器で呼ばれて、トウマとウミは椅子から立ち上がる。 二人の肩にベルフラウが手を置いた。力強く声をかける。「二人とも、勝ちなさいよ」 ウミが振り返りニカッと笑った。尖った八重歯が覗く。「師匠、必勝です!」「任せろ」 ト
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第93話 好きな人の前で

 準決勝だった。 アイギスは目を血走らせて試合場の入場口に立っている。対戦相手は、絶対に負けられない相手、クレナイだった。お客さんのガヤガヤとした声が響いている。四月の終わりの空気は暑すぎることも冷たすぎることもなく丁度良い。 アイギスは配信ドローンを飛ばしていない。そのせいで視聴者コメントは空中に流れていなかった。 試合場に入り、アイギスは槍と大盾を構える。 目の前ではピンクスーツのクレナイがいて、左手の指にタバコの煙をくゆらせていた。彼が馬鹿にしたようにつぶやく。「ほほお、これは良い相手に巡り合ったものである。禍々しき犬のAIなのだ。よって、我が輩の拳で闇に葬り去るのであーる」「……絶対に負けない」 アイギスは歯をぎりりと噛みしめる。 ハチマキを巻いた女性審判が拡声器を掲げて宣言した。「それでは準決勝、試合開始です!!」 審判員席でゴングが打ち鳴らされる。 アイギスは右手の盾を構えた。 利き手に盾を持つことには理由がある。このゲームは相手の攻撃をタイミング良く盾で弾くことによりパリイ(相手の体勢を崩しスタンさせる)を発生させることができる。隠されたシステムであり、アイギスが気づいたのも最近のことだった。 気づいて以来、利き手に盾を持つことにしている。パリイを発生させることに全神経を集中させるためだった。 クレナイがタバコを吸って煙をぼおおと吐き出す。「犬のAIよ。主人の女はどうしたのだ?」「……話しかけるな」 アイギスは嫌そうに頬をひきつらせる。「つれないのであーる」 クレナイは短くなったタバコを捨てて靴で踏んだ。両手の拳を構える。声を紡いだ。「それでは行くぞ? 犬のAIよ」「……来い」「ふっ」 クレナイは鼻で笑った。身体を左右に振り、地面を滑るようなステップで動き出す。石畳と靴が擦れてぞおおと音が鳴った。「さあさあさあ、観客席のみなさん! これよりAIの処刑サービスを始めるのであーる。期待に胸を膨らませて観賞しよう!」 クレナイが右に滑る。流れるような動作で回し蹴りを放った。「せいはーっ!」「ふっ!」 アイギスは後ろに跳んで躱す。すぐにクレナイの連続攻撃、右拳のフックが来る。アイギスは狙いを澄ませて盾をタイミング良くぶつけた。「何と!」 クレナイが体勢を崩す。0.5秒ほどのスタン状態になった。パリイが
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第94話 一筋の灯り

 残すは決勝戦と三位決定戦のみになった。 三位決定戦。 アイギスは暗い顔で試合場に立っていた。いま相手選手が来るのを待っている。だけど本当は、優勝して一位賞品のアビリティの書が欲しかった。それはもう叶わない。(晴恋が帰ってきた時のために、強くならないといけないのに) 現実は思い通りにならない。 まだ強さが足りないんだ。 ふと観客席を眺めると、夢中になってわたあめをかじっているNPCの少女がいた。両親に付き添われており、心から嬉しそうな表情を浮かべている。底抜けに明るいその笑顔に違和感を覚えた。同じAIなのに……。 アイギスが眉尻を下げる。(どうして君はそんなに幸せそうなの?) ずるい。 ふっと風が吹いて、場外からウミの声が響いた。手を振っている。「アイちゃーん、頑張ってくださいですぅ」 右耳のイヤーカフが太陽の光をキラりと反射する。 アイギスの胸が温かくなる。あごを縦に動かしてイエスのサインを送った。 ウミちゃん。(頑張るからね) アイギスにとって、ウミの存在はこの冷たいゲーム世界を照らす一筋の灯りである。 やがて正面に、白銀のキャノンを持った男が現われた。ソフトモヒカンの髪型。裸の上に黒のチョッキを着ている。HPMPバーを見る。ニキという名前のようだ。 ニキが険しい顔つきで言い放つ。「最後だけは負けないさ」「……ふーん」 アイギスは油断無く盾を突き出して構える。 ハチマキの女性審判が拡声器を掲げて宣言した。「それではこれより三位決定戦です! 行ってみましょう! 試合開始です!」 審判員席でゴングが打ち鳴らされる。 ニキが後退して距離を取りつつキャノンを撃った。三連続で弾丸が射出される。アイギスは集中してパリイした。飛来する弾丸を大盾で弾き返す。弾丸に大盾をタイミング良くぶつけ、ニキをスタンさせる。
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第95話 明るい未来

決勝戦前、一旦昼休憩となった。 ユウマと真帆は現実に戻り、昼食となる。ウミは闘技祭会場に残してきていた。ユウマとウミは30mほど離れると、彼がログアウトをした後で連動が切断される。真帆に協力してもらい実験をすることでその事実が分かった。今頃ウミはアイギスと共に楽しくおしゃべりをしているだろう。 今、ログネストからほど近い食堂、福来軒に来ていた。築三十年は経っているような建物であり、年寄りの夫婦が経営をしている。掃除は行き届いており、木製のテーブルは何度も拭かれたせいか色が薄くなっていた。客は少ない。ユウマたちはわざと客の少ない店を選んでいた。静かなところの方がくつろげる。 ユウマは緊張を胸に抱えつつカツ丼を食べていた。次は決勝戦である。勝てるだろうか? 相手はクレナイだ。それにしてもこのカツ丼は出汁が効いていて美味い。そして肉がジューシーな上にでかい。 真帆はるんるんと麻婆麺を食べていた。すごく辛そうな赤い色をしている。汁の硬い麺をすすりながら、真帆はユウマを勇気づける。 「ダーリン、決勝は絶対勝ってね」 「おう」 「緊張してる?」 「まあな」 「大丈夫なの?」 「大丈夫だ」 正直、決勝戦のことで頭がいっぱいだった。勝率を上げるためには、やはり防御力の高い水着をウミに着せないといけない。そのことを話した。 真帆がおかしそうに吹き出す。 「ぷっ、そうよ。ウミちゃんに水着を着せないと」 「どうすればウミは着るんだ?」 「私からも話してみるわ」 「頼む」 「着てくれれば良いけれど」 「本当だな」 緊張のせいでユウマは口数が少ない。だけどそれも仕方の無いことだった。 真帆は気にしたふうもなく、麻婆麺の汁をレンゲですする。 「ねえ、ユウマ」 「どうした?」 「あたしたちさ。いつまでログネストに住んでいるの?」 「それは、いつまでだろうな?」 「思ったんだけど」 真帆が両手を膝に置く。照れたような顔で提案した。 「あたしたち、ログネストの近くにアパート借りない?」 「アパート?」 「うん」 「同棲っていうことか?」 「そうよ?」 真帆がぷっくりと笑顔を浮かべる。ユウマは思わず顔をひきつらせた。 「それは、一緒に暮らすという意味か?」 「他にどんな意味があるのよ」 「そうか
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第96話 絶体絶命

 昼の休憩を早めに終えてゲームへと戻る。 闘技祭会場の白いテント前に戻ると、トウマはびっくりとした。なんと、ウミがラヴリー天使の水着を着ていた。 ピンクのラインが入った白い水着である。胸元とおへその部分には大きなハートマークの穴が空いていた。肩にはピンク色のフリルがついており、背中には可愛い天使の羽。猫耳の上にも天使の輪っかが浮かんでいる。それは彼女にすごく似合っていた。:ウミちゃん、俺、鼻血出ちゃう。:それな。:ウミちゃんの小さいお胸にはこれからの成長に期待。:ここの視聴者さんたちは馬鹿なんじゃないの? ウミはテーブルの椅子に座っており、隣にいるアイギスと談笑していたようだ。ジュースを買ってきたようでストロー付きのカップが並んでいる。 会場にはお客さんが大分少なくなっていた。昼食を食べに行っているのだろう。観客席の隣にあるグリーンの戦車が太陽の光に照らされて鈍く光っている。 トウマが近寄るとウミが右手を掲げる。「ご主人様、お帰りなさいです」「ウミ、水着を着たのか?」「こ、これは、防御力を上げるために仕方無いんですぅ。決勝戦は絶対に負けられません!」「そうか、良かった」 どうやってウミに水着を着せようかと思っていたが、(説得をする手間が省けたな) トウマは胸をなで下ろす。 やがてベルフラウもログインしてきた。彼女も気づいたようで尋ねる。「あれ、ウミちゃん着替えたの?」 同じことを思ったようだ。 トウマは薄く笑って、それからステータス画面を出した。海鮮グラタンの料理カードを取り出す。現実でカツ丼を食べたばかりだったが、自分にバフをかけるためにはまた食べなければいけない。ウミの隣に座ってオープンと唱えた。スプーンですくって口へと運ぶ。 ちなみにログアウト前、ウミにはカレーライスカードを渡してあった。すでに食べ終えていたようだ。 ベルフラウがトウマの隣に腰掛けた。彼女が心配そうな顔を向ける。「トウマ、何か
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第97話 逆転の一手

「フィールドハック」 トウマの視界が朱に染まる。 Enemy ground. Explode. Are you ready?「Ready!」 瞬間、クレナイの地面が勢いよく隆起した。爆発のような衝撃であり、彼が三メートル上空に吹き飛ばされる。掴んでいたウミの首を離した。「何とおおおっ!」 ウミの体が地面にどさっと落ちた。げほげほと咳をしている。 すぐにクレナイが着地し、また紙タバコを吸った。煙を吸って吐いている。「何と骨のある敵なのであーる。しつこいのだ!」 トウマは考えていた。(勝つためにはどうすればいい?) 激しい苛立ちが思考をめまぐるしく回転させる。 自分を奮い立たせてくれる感情は、いつも怒りだ。 相手は余裕げにタバコを吸っている。 ……タバコ?(……これは有りなのか?) 閃きがあった。 やってみる価値はあるだろう。「ステータスオープン」 トウマは水色の画面を呼び出す。 クレナイが怪訝そうに眉を寄せた。「貴公、ステータス画面なんかを出してどうするのであるか?」「来てみろ」「悪あがきはそこまでにするが良いのであーる」 ウミが剣を地面に突いて立ち上がる。「ご主人様!」「ウミ、もう一度防御しろ」 トウマの声には覇気がこもっていた。「今度こそご主人様を守るですぅっ」「頼んだぞ!」 トウマが表情を険しくする。 クレナイは唇にタバコをくわえて左右に体を振る。石畳と靴が擦れてずぞおおと音が鳴った。「さあさあさあさあ、次の一撃で片方に死をくれてやるのであーる。行くぞ行くぞ行くぞ行くぞ?」 クレナイがウミに向かって動いた。回し蹴りを繰り出そうとしている。
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第98話 悪意の足音

 闘技祭が終わった。 観客たちの熱気は次第に冷めていく。帰宅していく者もいるようで、席にすきまが空き始めた。涼やかな風が吹いてトウマの青い髪がサラサラとなびく。隣にいるウミの尻尾がゆらゆらと揺れた。時刻はまだ午後二時過ぎである。 いま試合場では授賞式が行われていた。トウマとウミ、それにアイギスが並んで立っている。三位までがもらえるようだ。二位のクレナイはいない。先ほど試合で死亡したせいでデスペナルティが発生している。一時間のログイン制限がかかっていた。 クレナイがいなくとも授賞式は執行された。闘技祭実行委員長の男性が出て来て賞状と賞品を手渡す。トウマはアビリティの書を入手してほくほくだった。ウミの分も合わせて二つもらえるかもと思ったのだが、現実は甘くない。一つだった。 アイギスは賞品として悪魔の宝の地図を手に入れていた。 余談だが、クレナイも後で賞状と賞品を授与されるらしい。(クレナイはもらえないと良かったのにな) トウマは心の中でつぶやいた。 闘技祭実行委員長が拡声器を持って観客席を眺める。声を張った。「闘技祭を勝ち抜いた三組の戦士たちに、いま一度大きな拍手をお願いします!」 まだ残っているお客さんたちが盛大な拍手を送ってくれた。 それは一際盛大な音であり。 ウミがトウマの顔を見上げる。「ご主人様、えへへー」 タンポポのような笑顔だ。 トウマがウミの猫耳にぽんと手を置いた。撫で撫でしてあげる。 試合場の近くにはベルフラウもいる。鼻が高そうな笑顔でこちらを見つめていた。 闘技祭実行委員長は、お客さんたちが集まってくれたことに対する感謝を述べた。そして闘技祭は閉会となる。 それから、 広場は大忙しとなった。 実行委員たちがテントや椅子の片付けを始める。闘技祭会場だったアストラブール広場は宴会会場へと作り替えられていった。いくつもの丸テーブルが出されて、近くの屋台から食事が運び込まれる。楽器を弾く人たちも出て来た。軽やかなメロディーに包まれて、広場にうっとりとしたムードが漂い始める。食事は無料だった。 テーブルの椅子に座り、トウマとウミ、ベルフラウは宴会を楽しんでいた。トウマがアビリティの書、その金色のカバーの分厚い本をウミに差し出す。「ウミ、これを使ってくれ」「わ、私が使うですかぁ? 一つしか無いですし、もったいないです
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第99話 最悪の召喚

 アイギスがダンジョンの階段を下っていく。 中は暗かった。けれどアイギスは犬の亜人であるため夜目が利いた。ダンジョン内部は紫色の天井と壁と床である。既視感があった。闘技祭予備選の時のようなフィールドである。 出現するモンスターはヴィプスだ。 紺色の体躯をした人型であり、頭や手足の先は丸みを帯びている。そして両腕がやけに太い。 このモンスター、(攻撃力が高い) アイギスは右手に大盾を持って油断無く距離を詰める。敵が一体出る度に立ち止まって戦った。ゆっくり進めば危険は薄い。コンスタントにパリイを発生させて、ヴィプスに槍を思い切り突き出す。敵は五発で床に崩れた。 ダンジョンを慎重に進む。ヴィプスを10体も倒した頃、やがて最奥にたどり着いた。紫色の床が終わり、白と黒の大粒の砂利の地面が広がっていた。その中心に石造りの台座がある。(何だろう?) アイギスは近づいていく。 瞬間、石造りの台座が光り輝いた。台座の上にボスモンスターが出現する。 ドンと音がした。 ――高級クエスト、ディアボロスの撃破 ディアボロスは、ドラゴンの顔をした人型だった。背中には赤い翼を生やしている。身体も赤い鱗で覆われていた。神々しい姿である。だけどこいつは多分悪魔だ。ここは悪魔の宝の地図が指し示すダンジョンなのだから。 ディアボロスが喋った。「貴様、力が欲しいか?」 アイギスは静かに返答する。「……欲しい」「では俺を倒してみせよ。俺に打ち勝ったのなら、力をやる事にする」「君を倒せば、力をもらえるの?」「そうだ」「ふーん」「貴様、名は?」「アイギス」「ではアイギス、行くぞ」「来い」 アイギスは大盾を構える。 ディアボロスは赤い翼を広げて浮き上がり、口を大きく開けてブレスを吐いた。火炎のほとばしりがアイギスを襲う。盾にぶつかり火炎が放射状に広がった。 アイギスは火炎を防ぎきると台座の上に駆け上がった。 ディアボロスは空中を飛び回り、円を描くような軌道でアイギスに突っ込んでくる。敵が右手のかぎ爪で引っかこうとした。 アイギスは大盾を突き出しタイミング良くぶつける。「ふっ!」「何!?」 パリイが決まった。ディアボロスは0.5秒のスタン状態になり、台座に落ちる。アイギスは槍を振りかぶって何度も突いた。「ぐおっ、ぐおっ!」「簡単」「何だと!」
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第100話 晴れのち晴恋

 午後三時過ぎの海の防波堤。 ニキは釣りをしていた。地面に座り込んで悲しみに暮れている。釣り竿は一度海に落っことしてしまったのだが、砂浜に流れ着いていた。それを拾ったのである。木の棒に糸と針をつけたものでしかない釣り竿を海面に伸ばしていた。餌は道具屋で買った小エビである。 海風の強い日だった。太陽の眩しい光を反射して海面がキラキラと輝いている。カモメが飛んでおりクエーと元気に鳴いている。だけど、ニキの心は重く沈んでいた。 もう、(真帆ちゃんなんてどうでもいいさ) 意識してそう思うのだが、どうしても彼女の事が頭に浮かぶ。 真帆の笑顔も、 ニキの名前を呼ぶ声も、 怒った時の様子でさえ、 昔から大好きだった。 未練たらたらである。 彼女と愛し合いたい。 だけど、真帆はユウマのものである。 今頃キスをしているかもしれない。 そう考えただけでニキの心に暗雲が立ちこめる。 もう死んでしまおうか。 このまま海に落ちて――。 だけどこれはゲームだ。 死んでも死ねる訳ではない。 ニキはもう何度目になるか分からないため息を吐き出した。「はぁー……」 ふと後ろから静かな足音が近づいてくる。ニキの眉がぴくっと跳ねた。「こんにちは! 釣れますか?」「え?」 ニキが振り返る。 女神がいた。 いや、違う。気のせいだ。女神では無い。それほどに美しい女性プレイヤーがいた。HPMPバーを見る。晴恋と書かれてある。はれん、と読むのだろうか? きめの細かい栗色の長髪を左手で押さえている。リスを連想するような可愛らしい顔立ち。赤い唇は小さく尖っていた。白いワンピースを着ている。彼女のスカートが海風になびいてひらひらと揺れた。 どうしてか彼女の笑顔が眩しかった。「君は誰さ?」「私は晴恋と言います。晴れて晴
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