All Chapters of RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~: Chapter 71 - Chapter 80

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第71話 スーパー真帆ちゃん

今、ベルフラウが来るのを待っていた。 少し前、トウマたちはギースに頼み、ベルフラウを海底に連れてきてもらうように頼んだ。彼女とギースはアストラブールの浜辺で待ち合わせだった。 マーマン村の入り口の地面。そこでトウマとウミとニキは手持ち無沙汰に佇んでいた。とは言ってもトウマはステータス画面を出しており、色々とチェックをしている。 海水の色は依然として紫がかっている。チョウチンアンコウや巨大ヤドカリのモンスターがゆっくりと横切っていく。温和な性格のモンスターなのか、こちらが手出しをしない限り襲ってこない。砂地には背の低い海草が生えており、海流に揺られてなびいていた。美しい景色にトウマはため息をこぼす。 見えた。 マーマン村長、ギースに手を引かれてベルフラウが海中を泳いでくる。彼女もポセイドンの祝福をギースからもらって飲んだようで、水中で呼吸ができていた。地面からウミが手を振って呼んだ。 「師匠ー!」 「ウミちゃん」 海中でベルフラウも手を振り返している。 やがて村の入り口にたどり着き、ベルフラウが砂地に足をつけた。彼女が歩いてくる。 ウミがパタパタと駆けて行ってベルフラウの腰に抱きついた。 「師匠、海底へようこそですぅ」 「ウミちゃん、来たわよ」 ベルフラウはよしよしとウミの肩をさすった。 トウマが右手を掲げた。 「ベルフラウ、来てくれてありがとう」 「お待たせ、ダーリン」 ベルフラウがにっこりと微笑む。彼女は海中を眺めて感動したように声を紡ぐ。 「すごい景色ね。海底って」 「凄いだろ」 トウマが口角を上げて返事をした。ベルフラウに近づき、その頭にぽんと手を置く。 「トウマ、さっきダイオウイカがいたわ」 「それはモンスターじゃないか?」 「美味しそうだったわ」 「食べたいのか?」 トウマは苦笑をこぼす。 ギースが右拳を口元に掲げてごほんと咳をした。具合の悪そうな咳である。みんながギースに顔を向けた。 「それじゃあ、ベルフラウ。お主にもエンディコマグロの角煮のレシピを渡す。受け取ってくれるかの」 ギースはステータス画面を出し、中から羊皮紙を一枚取りだした。ベルフラウに差し出す。彼女は受け取ってステータス画面に入れた。彼女の料理項目に新たなレシピが追加される。 ベルフラウ
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第72話 効率だけじゃない

 ギースに先導されて海底を歩いていた。 マーマン村の西へと向かっている。その先に月海竜ダルシャランの巣があるという話だった。ギースの隣にはニキが肩を並べていて、途中に出てくるモンスターをキャノンで倒してくれている。海の景色は綺麗であり、紅藻類に隠れるようにしてオレンジ色の小魚が泳いでいた。岩にはダンゴウオが張り付いており、ちょこまかと動いている。頭上からはキラキラとした太陽の光が降り注いでいた。 トウマとウミとベルフラウは横一列で歩いている。前を行くギースたちの背中を追いかけていた。ベルフラウは感動したようにつぶやく。「見て見てウミちゃん、ダンゴウオがいるわ!」「師匠、ダンゴウオって何ですか?」 ウミが興味津々といった瞳で聞いた。 ベルフラウが人差し指を岩に向ける。「ほら、そこの岩に張り付いている黄色をした魚よ」「それ、ダンゴウオって言う名前なんですか?」「そうよ! 可愛いわね」「本当ですぅ! 食べられますかね?」「それはどうかな?」 ベルフラウが微笑をこぼす。 トウマは苦笑しつつ吐息をついた。海底の景色を観賞する二人に声をかける。「おい二人とも。楽しんでいるところ悪いが、少しは緊張感を持て。これからダルシャランを倒しに行くんだからな」「ダーリン。せっかくこんな素晴らしい景色なんだから、楽しまないと損よ」 ベルフラウが言って唇をすぼめる。 ウミも頷いた。「そうですぅ。ご主人様は口うるさいですぅ」「口うるさい男はモテないわよ」「その通りですぅ。男たるもの、もっとどんとした寛大な心で構えるべきですぅ」「「ねー!」」 ベルフラウとウミが顔を向け合ってぷっくりと笑みを浮かべる。 トウマは頬をひきつらせて二度頷いた。「俺が悪かった」「そうよ?」「そうですぅ」 女性陣がしたり顔であごを引く。 ウ
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第73話 もっと褒めて

 トウマたちはマーマン村の入り口へと戻って来た。 太陽の光が揺れる海中を見上げる。青いリスの形をしたモンスター、ラズリーフが上方から群れで泳いできていた。ラズリーフは砂地に足をつけると、体から黄緑色の霧を発した。水質浄化スキルである。紫がかった海水が黄緑色と溶け合い、鮮やかな青色へと変わっていく。海水が少しずつ綺麗になっていく。 ラズリーフが戻って来てくれたことにより、村のマーマンやマーメイドたちは歓声を上げていた。村人はラズリーフの体を抱きしめて涙を流している。ラズリーフも甘えるように鳴き声を上げて顔面を押しつけていた。これで村人たちの病気も治るはずだ。 ギースが振り返り、トウマに右手を差し出した。「お主たち、助かった、ありがとう! 村は救われた。感謝が尽きん」「良かったな」 トウマはギースとの握手に応える。 だけど悲しいことに、(これはゲームだからな) やがて、他のプレイヤーたちもこのクエストに挑戦できるように、元の状態に戻るのだろう。 つまり、月海竜ダルシャランはまたやってきて村のそばに巣を作る。そしてラズリーフは海底からいなくなる。海水は紫色に濁り、村人たちは病気をする。 だけど、すぐにでは無いと思った。今ぐらいは喜びに浸っても良いだろう。 ギースは深く頭を下げる。「ありがとう、ありがとう」 ふと、村の入り口からマーメイドのノフィアがひょっこりと顔を見せた。頭には貝殻の冠を載せている。相変わらず胸が大きい。ホタテの貝殻から乳房がはみ出している。 ベルフラウが嫌そうに顔をしかめた。 ノフィアはギースの隣に進み出る。口を開いて色っぽい声を響かせた。「トウマ様、どうか私にもお礼をさせてください。気持ちの良いマッサージをして差し上げます。天に昇る心地です」 空気が変わった。 トウマの後ろにいるベルフラウが顔をぎょっとさせている。眉間にしわを寄せてトウマの後頭部を睨みつける。ベルフラウは唇を硬く引き結んでいた。 やばい。 ベルフラウの怒っている気配がした。(……最悪だ) トウマは身の危険を感じて首を振った。「いや、マッサージは必要無い」「マッサージはお気に召しませんか? ではパフパフをして差し上げます。王様気分の一時間コースです」 ノフィアは頬を染めてつぶやく。 トウマは顔をぶんぶんと振る。「
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第74話 釣りのロマン

転移石を使ってアストラブールの町へと戻ってくる。 いまトウマとウミとベルフラウは町のカモメレストランに来ていた。海を一望できるオシャレなレストランである。ブラウンの木製の壁と床。壁の所々には燭台があった。昼ということで燭台には火が灯されていない。プレイヤーの客は多く、各々の同伴者と会話に花を咲かせている。 ベルフラウとウミは今、イチゴパフェを食べていた。トウマがウミにおごってあげるという約束である。ウミがスプーンでイチゴとクリームをすくって口に入れる。満面の笑みを浮かべた。左手を頬に当てる。 「うーんっ、美味しいですぅ!」 「本当ね!」 :ウミちゃんの笑顔好こ。 :ベルお姉様、私にも分けてくださいまし。 陸に戻ったことで配信が復活していた。視聴者コメントが頭上を流れている。 イチゴパフェの中身は段々になっており、食べ進めるにつれてクリームの色と味が変わるようだ。 トウマはコーヒーのエスプレッソを飲んでいた。強烈に苦い味わいである。だけどそこが美味しかった。香ばしい匂いにほっとため息がこぼれる。 ちなみにニキはいない。ウミの話によると、ニキはノフィアに着いて行ったらしい。今頃王様気分のパフパフを受けているのかもしれなかった。最低野郎である。 トウマが落ち着かなさそうに口を開いた。 「二人とも、早く食え」 「どうしてですかぁ? こんなに美味しいのに、早く食べたらもったいないですぅ」 ウミが不満げに唇をすぼめる。 ベルフラウがウミの肩に手を置いた。 「ウミちゃん、トウマは釣りがしたいのよ」 「そうなんですか?」 「うん。トウマは釣りが趣味だから」 「でもぉ、こんなに美味しいパフェ、味わって食べたいですぅ」 「少しだけ早く食べてあげましょ?」 「あうー、師匠がそう言うのなら、仕方無いですぅ」 ウミのスプーンを動かす手が早くなる。 トウマはベルフラウに心の中で感謝した。はっきり言ってさっさと釣りがしたい。トウマはエスプレッソのカップをあおってゴクゴクと飲み干した。苦さがたまらん。 すでにパフェを食べ終えたベルフラウが海を眺めてつぶやく。 「トウマ、綺麗ね」 「ああ、そうだな」 トウマも水平線を見つめて目を細める。太陽の光が当たって海面がキラキラと輝いていた。午後の三時半過ぎの海は、波が穏やかに揺れ
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第75話 俺っちじゃダメか?

 太陽が水平線に落ちていく。 道具屋前の石畳の地面だった。近くにあるツツジの赤い花と葉が風に揺られている。今、アストラブールの道具屋前は即席の市場と化していた。トウマとウミとベルフラウが火剣バフ料理屋をしている。トウマが調理ダンスをしてバフ料理を作る。ベルフラウとウミは売り子をしていた。人々と売り子の声が飛び交い、辺りは賑やかだった。 頭上に視聴者コメントが流れる。:海鮮グラタン美味そう。:俺も食べてみたい!:今度買いに行きます! 男性客が前に進み出て注文をする。「こんにちは。火剣と海鮮グラタンっていくらなの?」「いらっしゃいませ。海鮮グラタンはBランクで一つ2000ヴァルよ」 ベルフラウが笑顔で応対する。 ウミも声を張った。「火剣は一回100ヴァルですぅ」 男性客は眉を寄せて、それから納得したように頷いた。「ちょっと高いね、まあいいや。じゃあ火剣と、海鮮グラタンを三つもらえる?」「はい! 6100ヴァルになります」 ベルフラウが返事をしてお金をもらう。代わりに海鮮グラタンの料理カードを三枚渡した。ウミが唱える。「フレイムウェポン!」 男性客の頭上に赤い剣のマークが灯る。彼がお礼を述べた。「ありがとう! これで狩りが捗るよ! また買いに来るね」「「ありがとうございましたー」」 ベルフラウとウミが声を合わせて腰を折った。 火剣、100ヴァル Bランクカレーライス、900ヴァル Sランクカレーライス、2000ヴァル Bランク海鮮グラタン、2000ヴァル Bランク海鮮グラタンのバフ効果。満腹度全回復。最大MP上昇率1.5倍。MPの自然回復力上昇(中)。スキル効果増幅(小)。効果時間、二時間。 強すぎる。 海鮮グラタンは飛ぶように売れていた。 料理の原価は200ヴァル。 そして以前と同様だが、ベルフラ
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第76話 紅

 ドンと音がした。 ――対人戦クエスト、殺人プレイヤークレナイの排除「ギャラクティィィック、フィジカルアッパーカァァァット!」 クレナイの右拳が赤い光を帯びる。彼は蛇がうねるような変則起動を描いて接近し、ニキの顎を突き上げた。「がっ!」 ニキは宙に吹き飛ばされる。ノックバック効果があった。その際、釣り竿を海に落っことしてしまう。ニキの体が堤防に落ちて、ごろごろと転がって止まる。重たいダメージがHPを激しく減らしていた。 夜であり、辺りはすっかり暗くなっていた。海の波が静かに揺れている。ザザーという音が響いていた。ニキは何とか立ち上がる。だけどしまった、キャノンは堤防に置いたままだ。そのキャノンをクレナイが踏みつける。バキと音が鳴った。クレナイは狂ったような瞳でニキを見下ろしている。タバコを指でつまみ、煙を深く吸って吐いた。:ニキさん、大丈夫!?:おい、こいつ殺人プレイヤーだぞ!:逃げた方が良いんじゃない? ニキはぶるぶると震えたまま両手を構える。「お前、いきなり何するさ」「何、この狂ったゲームから、お前を解放してやろうと思ってな」 クレナイがぷかっと煙を吐き出した。「どういうことさ?」「このゲームは狂気なのであーる。ヴァルを換金して現実の金を得ることができるだと? そのせいで日本には今、無職のゲーム熱狂者が増えているのであーる。不健康! あまりにも不健康なのだ! これではゲームプレイヤーと日本の未来が危ういのである。よって、我が輩が殺すことにより、ゲームからプレイヤーを解放へと導くのだ」「お、お前、何を言ってるさ」「分からんか? 我が輩はお前をこのゲームから引退させる者であーる」「く、くそっ」「さあさあさあ、戦うのであーる。我が輩は戦うのが大好きなのだ」「この、戦闘狂!」「何とでも言うが良いのだ」 クレナイがタバコを口にくわえて、地面に足を滑らせるようにして前後左右に動く。速い。まるで地面をスケートしているような動
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第77話 守らなきゃいけない

 夜になりゲームをログアウトする。 ユウマと真帆は現実の飲み屋に来ていた。ログネストからほど近い小さな建物。店内は掃除が行き届いていて綺麗である。だけどその造りはちょっと古めかしい。壁には壁掛けメニューがあった。カレンダーも貼られてある。席はテーブル椅子と小上がりに分かれている。二人は小上がりの畳みに座って会話をしていた。テーブルを挟んで対面にいる真帆がビールジョッキをあおってゴクゴクと喉を鳴らす。ぷはぁと息をついてジョッキをテーブルに置いた。 ユウマが感心したようにつぶやいた。呆れ半分である。「真帆、良い飲みっぷりだな」「そうよ? あたしはビールが大好きなの。ユウマも飲みなさいよ。ほら、一気一気」「一気飲みはきついな」 ユウマは苦笑しつつ、ホッケの肉をハシでつまんで口に運ぶ。脂がのっていて美味い。「何言ってるの。明後日は闘技祭なのよ。景気づけに一気飲みしなさい」 真帆はヒレカツを頬張ってむしゃむしゃと咀嚼した。 ユウマはビールジョッキの持ち手を掴み一口、口に含む。 真帆が両手をリズム良く叩き合わせた。「ほら、一気、一気」「一気飲みはしないぞ」 ユウマはビールジョッキをテーブルに置いた。「何よ。つまらないわねー。そんなんじゃ闘技祭に勝てないわよ」「まだ出るとは言ってないけどな」「出ないの? あたしは出るけど」「いや、俺も出るが」「じゃあ一気飲みしなさい」「ビールの一気飲みと闘技祭は何か関係があるのか?」「大ありよ。ビールの一気飲みもできない男は予備選で敗退なのよ」「……予備選があるのか?」「あるのよ。だって、闘技祭参加者は毎回100人以上いるわ。ふるいに掛けるために、予備選があるのよ」「ふーん」 昔、こんなことがあった。 中学校に上がったばかりのこと。ユウマと真帆で進学のお祝いパーティーをする事になったのである。大人風を吹かせた二人はコンビ
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第78話 削除

 翌日の朝。 トウマとウミとベルフラウはアストラブール町の広場を訪れていた。広場の片隅には背の高いクロマツがあり青々と茂っている。広場には白いテントが設営されている。白いテントの下には長机と椅子が並び、明日の闘技祭の受け付けカウンターだった。 エントリーするために、トウマたちは受け付けカウンターへと来ていた。そこに座っていた女性NPCにトウマが代表して声をかける。「おはようございます」「おはようございます。闘技祭のエントリー希望者でしょうか?」 眼鏡をかけたNPCの女性が顔を上げる。 トウマは頷いた。「ああ。二組の出場を頼みたい」「分かりました。お名前をどうぞ」「トウマだ」「ベルフラウよ」 隣にいたベルフラウも名乗った。 NPCの女性は眼鏡をくいと上げて、トウマの後ろにいるウミに視線を向ける。「そちらの茶髪の女性は使い魔ですね」「ああ。ウミは俺の使い魔だ」「かしこまりました。使い魔は主人と共に出場が可能です。では、トウマ様、ベルフラウ様、二組のエントリーを受け付けました。明日の午前九時から予備選が始まりますので、またこの広場にお集まりください。それと闘技祭について、いくつか説明をします……」 眼鏡の女性は詳しく話した。トウマたちは集中して聞く。賞品をもらえるのは三位まで。一位はアビリティの書だった。トウマはそれが欲しい。 説明を聞き終えたところで、後ろから底冷えするような低い声が響いた。「貴公らも、闘技祭へ出場するであーるか?」 トウマたちは振り返る。 そこに立っていたのは、ピンク色のスーツを着たあご髭の男だった。身長は高くトウマと同じくらいである。右手をズボンのポケットに突っ込んでおり、左手で紙タバコを吸っていた。一見するとダンディな中年の男である。 HPMPバーの名前を見る。クレナイと書かれていた。 クレナイからは肌がひりつくような雰囲気が発せられている。 危険を察知
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第79話 戦車と恋心

 アストラブールの中央を横断する桜花川。 大きな川だった。向こう岸まで10m以上ある。河川敷には桜の木々が立ち並んでいた。花はすでに散っており、葉っぱが青々としている。四月の上旬であれば桜の花が咲いて見事な河川敷なのだろうなとトウマは思った。風が吹いて、トウマの青い髪がサラサラと揺れる。 今、川釣りをしていた。トウマたちは間隔を空けて並び、川に釣り糸を垂らしている。もちろん戦車の鍵を釣ろうとしていた。しかし釣れない。さっきからヤマメが何匹もかかっていた。 距離を置いて左にいるウミが大声で呼んだ。尻尾がゆらゆらと揺れる。「ご主人様、戦車の鍵が釣れないですぅ!」「こっちも釣れないわ!」 右の方でしゃがんで釣りをしているベルフラウも声を張った。「……ふむ、どうするか」 つぶやいて、トウマは首をかしげた。 もう一時間以上釣りをしている。ここはポイントが違うのかもしれない。 戦車の鍵はもっともっと流れて行った、ということだろう。(川で釣れないのであれば……、川が続いている先へ行けば良い) トウマは左右にいるベルフラウとウミに視線を配った。「二人とも、海へ行こう!」「そうね! 川じゃ釣れないもの」「海に行くですぅ!」 三人は釣り糸を引き上げて釣り竿に巻き付けた。また歩いて移動する。 砂浜にやってきた。三人は昨日と同じ堤防の先端へと歩く。波が静かに打ち付けている。海面に糸を垂らした。 ウミが祈るようにつぶやいた。「戦車の鍵よー、戦車の鍵よー、釣れるですぅ」「ここで釣れなかったらアウトね」 ベルフラウが真剣な瞳で海面を見つめている。 トウマはゆっくりと二度頷いた。「その通りだな」 すぐに反応があった。ウミの両手に持っている釣り竿がピクピクと揺れる。「来たですぅ!」 ウミが木の竿に釣り糸を巻き付けな
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第80話 初めての友達

 今日は、ウミにとって初めての大規模なお祭りだった。 ベルフラウとトウマが現実での昼食を終えてゲーム内に戻ってくる。 アストラブールの石畳の両脇には出店の屋台が並んでいる。午後になり営業を始めたようだ。らっしゃいらっしゃいという威勢の良い声が響いていた。屋台の種類は、わたあめ、焼きそば、お好み焼き、射的、他にもたくさん。アストラブール名物のポロポージュという煮込み料理も売られていた。美味しそうな香りが漂っており、ウミのお腹がぐーと鳴る。そういえば今日はまだ何も食べていない。ステータス画面を出して眺めると、ウミの満腹度は20%以下だった。 ベルフラウとトウマは見つめ合って照れたように笑う。トウマから右手を差し出した。「真帆」「うん」 二人が手をつなぐ姿がとても自然だった。 ウミの心は切なくなる。 この二人、(羨ましいですぅ) ドンと音がした。 ――高級恋愛クエスト、お祭りデートで恋人と熱いキスをする トウマが頭上を見上げて、左手で頬をぽりぽりとかいた。「クエストが出たな」「ダーリン、頑張るわよ」「そうだな!」「うん! ほら、ウミちゃんも行くわよ」 ベルフラウがウミを振り返る。ウミもデートに連れて行くつもりのようだ。ウミはさすがに両手のひらを振った。顔をひきつらせている。「ご主人様、師匠。今日はお二人でお楽しみください! 私は良いですぅ」「何言ってんだ。ウミ。お前、一人で祭りを回るつもりか?」 トウマが眉を寄せる。 本当にウミを連れていくつもりのようだ。 その気持ちはとても嬉しいのだけれど、(この二人と一緒にいたら、胸がむずむずして落ち着かないですぅ) ウミは殊勝な顔をしてつぶやいた。「ご主人様、今日は、私は良いです」「良いって……じゃあお前はどうするんだ?」「私は一人でお祭りを回るです! お二人とも、また明日な
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