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第5話

福満
慎吾は残酷だった。

柚の特許を蛍のものにしただけではなく、翌日のグループ表彰式にも蛍を呼び出したのだった。

表彰式の会場へ向かう車の中で柚は慎吾に詰め寄り、会場に着いては跪いてまで「特許を返してほしい」と頼み込んだ。

しかし、慎吾は耳を貸さなかった。

柚はただ舞台の下で、蛍が自分の栄光を奪う様子を指をくわえて見ているしかなかった。

蛍は感極まった様子でスピーチをした。「私の努力が認められて、本当に嬉しい限りです。そして、姉ともこの幸せを分かちあって、姉にも私と同じように社会に貢献できる人になってほしいと思います」

会場中の全員が、蛍を称賛する――

「こんなすごい特許を開発するなんて、才色兼備だね」

「養女なのに実の娘さんよりもご両親に可愛がられてるだけあるね。本当に優秀」

「蛍さんこそ、西村社長にふさわしい相手だよ」

「お姉さんは学生時代にいじめをしたり、蛍さんを虐げたり、男遊びも激しかったっていう噂だよね?それに、西村社長にも薬を飲ませて無理やり結婚したんだから、どうしようもない女だよ」

「あの女、西村社長にも相手にされてないんだから。だって、子供までいるのに結婚式挙げてもらってないんだよ?それに、パーティーとか同伴が必要な時は、いつも蛍さんを連れてっているし」

表彰式では蛍が持ち上げられるほど、柚への評価は冷ややかなものになった。

あかぎれだらけの手、骸骨のように痩せ細った体でドレスを着る柚は、まるで場違いな場所に来てしまった滑稽なピエロだった。

勇太は柚を見ることさえ嫌がり、笑顔で蛍を「自慢の娘」と紹介した。

彩花は、そんな柚を見るのが恥ずかしくて顔を赤くし、駆け寄ってくると、柚の手からカップケーキを取り上げ、怒鳴りつけた。

「早くこの場から消えて!そんな格好して、恥ずかしくないの?あなたがここにいたら、私が恥ずかしいんだから!」

「お父さんもお母さんも、私のことがそんなに恥ずかしいなら、今すぐ縁を切ってもいいから。私はそれでも構わないよ」

柚は新しいケーキを手に取り、虚ろな目で次々と口に詰め込んだ。

「辛いときは甘いものを食べれば元気が出るよ」と梨花が言っていた。

なのになぜ、どれだけ食べても、胸の苦しみは消えないのだろう?

彩花はさらに真っ赤になって怒り、ケーキを奪い取って床に叩きつけ、わざと足で踏みつけた。

「食べてばかりで……その態度はなんなの?こんな娘を産んだ覚えはないわ!この恩知らず!」

彩花はそう言い残し、激しく怒りながら立ち去っていった。

彩花の背中を見送った柚は、小さく呟く。「私が死にそうになったって気にしなかったのに、今更何を怒ることがあるの?」

心の中でシステムを呼び出す。「任務を早く開始することはできる?」

あと5日もここに留まらなければならないなんて。もう一日でも、限界だった。

システムは変わらず無機質な声で返す。「任務開始時刻の変更は不可能です」

表彰式が終わるまで耐え、ようやく慎吾の許しが出て離れることができた。

「少しは懲りたか?」慎吾は言った。

疲れ切っていた柚は、車の中で言葉を発する気力もなく、ただ頷いた。

もう十分懲りた。もうここから出ていくことしか考えていない。

慎吾は柚の頭を撫でて、珍しく柔らかな声で言った。「最初からこうして素直していれば良かったんだよ」

「うん」

慎吾など、もうどうでもいい。

しかし、こんなにも自分を嫌い、過去の話をするのをあからさまに避けていた慎吾が、急に過去のことを口にし始めた。

「8年前、お前は俺に薬を飲ませるべきじゃなかった。だって、いくら実家に反対されようとも、俺はお前結婚するつもりだったから。

なのにお前は、蛍に手を出すような卑怯な真似をしたんだ。俺の命の恩人である蛍に、お前がそんなことをしたら、俺がどんな気持ちになるか考えなかったのか?

まあ、すべて過ぎたことだ。

8年も経った。俺は、もうお前と争うのは疲れたんだ。

蛍のための手術が終わったら、もう大人しくしていろ。そうすれば結婚式も挙げてやるし、これからの日々は一緒に過ごしていこう」

以前の柚なら、この言葉を聞いて泣いて喜んでいただろう。

しかし今では、その言葉があまりにも滑稽に聞こえた。

「これからなんてないの。手術が終われば、私はもうこの世にいないんだから」と自嘲気味に笑う。

その言葉を聞いた途端、慎吾の顔から表情が消えた。

慎吾は急ブレーキを踏み、叫んだ。「医者も問題ないと言っていただろ?なのに、いつまでも死ぬ死ぬって……いい加減にしろよ!もう車から降りろ!」

財布もスマホもない、薄いドレス一枚だけの状態。

追い出されたら、寒さと疲労に震えながら、徒歩で病院へ向かうしかない。

しかし、抵抗する力も残っていなかった柚は、されるがままに車から放り出された。

慎吾は嫌悪感を露わにしていた。

「慎吾!

慎吾!」

諦めきれなかった柚は車を追いかけようとしたが、足元がふらつき、道端で倒れ込んでしまった。

しかし、車は止まることなく走り去った。

柚は絶望に呑まれたまま立ち上がり、寒さで震えながらも、通りすがりの人にスマホを貸してもらった。

最初にかける相手は、親友の梨花しか浮かばなかった。

しかし、繋がらなかったので、次は両親へとかけた。

電話は繋がったのだが、相手が柚だと分かると、両親は即座に電話を切った。

通りすがりの人々の不憫そうな視線を受け、最後には息子の颯太に電話をかけた。

「颯太、ママよ。今、中央通りのスマイルチキンの向こうにいるんだけど、お金がなくて帰れないの。運転手さんに迎えにきてくれるように、言ってくれる?」

颯太はまだ6歳だったが、家の運転手に伝えてくれさえすれば、絶対に迎えがくるはず。

しかし颯太は「僕、今は蛍さんと遊んでるの。ママを迎えに行く暇なんてないから!」と拒んだ。

柚は言った。「でも、ずっと外にいたら、ママは風邪を引いちゃうの」

すると、颯太はくすくすと笑い、無邪気に返した。「ならママは病気で死んじゃえばいいんだよ!ママが死んだら、蛍さんが僕のママになってくれるんだから!」

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Aktuellstes Kapitel

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