少し離れたクルーズ船の上では、ウェディングドレスに身を包んだ須藤寧(すどう ねい)が、満面の笑みで篠原辰也(しのはら たつや)と誓いのキスを交わしている。参列者たちの祝福の歓声に紛れるように、俺の頭の中にシステムの無機質な電子音が響き渡る。「水瀬凛(みなせ りん)様、攻略失敗を確認。半月後、強制的に対象をデリートします」俺の口元から、自嘲気味な笑みがこぼれた。この世界に赤ん坊として転生して以来、システムは俺に四人の攻略対象を提示してきた。誰か一人でも俺への好感度が百に到達すれば、元の世界で不治の病に侵されている俺の体は完治する。だからこの何年もの間、俺はプライドを捨てて、必死に彼女たちを攻略しようとしてきた。なのに毎回、好感度が最大になる一歩手前で、いつも決まって辰也が現れ、すべてがゼロに戻されてしまうのだ。そしてついに、最後の希望だった攻略対象までもが、辰也と結ばれようとしている。そう思うと、俺は迷わずきびすを返し、甲板の端から暗い海へと身を投げた。冷たい海水が体を包み込む。両腕を広げ、そのまま海の底へと沈んでいくのに身を任せた。その時、誰かの手が俺の体を引き寄せ、水面へと引っ張り上げた。再び肺に空気が流れ込む。状況が飲み込めないうちに、頬に重い平手打ちが飛んできた。「わざと辰也の結婚式を狙って死のうとするなんて!どこまで周りに迷惑をかければ気が済むの?」口元の血を拭い、冷ややかな視線を受け止めると、胸の奥からどうしようもない痛みがこみ上げてくる。姉の水瀬静香(みなせ しずか)だ。彼女が、この世界における俺の最初の攻略対象だった。この体の両親が他界して以来、俺と静香はずっと二人きりで支え合って生きてきた。あの交通事故の時、俺はためらわずに彼女をかばい、そのせいで内臓破裂という重傷を負い、集中治療室に運ばれた。彼女は俺を抱きしめて泣きじゃくり、こう誓ってくれた。「これから何があっても私が守るから。私たちは、世界でたった二人の家族なんだから」なのに俺が退院した日、彼女は辰也を家に連れ込み、「今日からこの子が私たちの弟になるの」と言い放ったのだ。彼女は俺の部屋を辰也に譲り、あろうことか俺が八年間大切に育ててきた犬を、あいつが虐待して殺した時さえ、見て見ぬふりをした。俺と辰也が揉めるた
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