All Chapters of 乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも私、男性恐怖症なんですけど…。外伝!: Chapter 41 - Chapter 50

83 Chapters

第三十三話⑳ ※※※

「鈴ちゃん。魚の玩具一通り持って来たけど」帰って来た葵お兄ちゃんの手にはリュックがあり、その中を覗くと大量の魚の玩具が入っていた。一先ず床に全部出して、それぞれ確認してみる。うぅ~ん?それらしいのは一つも…ないなぁ。適当に一つずつ投げ入れて見る?ってあれ?「葵お兄ちゃん?これは何?」「うん?あれ?こんなの僕入れたかな?そこにあった魚の玩具をガサッと取って入れて来たから横にあったのも入ってしまったかも」「そうなんだ。…これってあれだよね?」私はリュックからセーラー服の女の子のフィギュアを取りだした。「あ、制服の色が違うだけで同じフィギュアだね」「うん。ゲームで言う所の2Pカラーみたいな?」「え?」「いや、なんでもないです。はい」私が持っていたのは青と白のセーラー服。葵お兄ちゃんが持って来たのは赤と白のセーラー服。「……あ、もしかして…」さっきのケンタウロスと同じで神話繋がりじゃない?私は手近にあった水槽にセーラー服の女の子を付けてみた。すると…。「これは…凄いね」「うん」セーラー服の女の子のフィギュア2体が光を放って、足が魚に…要するに2体とも人魚になった。「…うん?見て、葵お兄ちゃん」「どれ?」「水槽の下の方に何かいる」「…ヒドラ?」「にしては形がおかしいよ…えっ、ちょっと待ってっ」嫌な予感がして私は大慌てで、人魚に変わったフィギュアを取りだす。そして水槽から距離を取る。水槽の中にいる何か。最初は黒い影にしか見えなかったそれがどんどん膨らみ大きくなって行く。影は人の形を成型して行き…やがて肩と思わしき場所から何匹もの蛇が現れて…。顔の目の位置に赤い火の様な目が…これ絶対ヤバい奴っ!「間違いなくテュポーンじゃんっ!」「テュポーンは諸説あるけど、確か倒したのはゼウス…」「ゼウスと言えば…」周囲を確認して何か、【電化製品】を探す。ゼウスと言えば雷神でもあると言う。あぁ、もうこれで良いかっ。水槽に酸素を送り込む機械を水槽から取り外して、コードが繋がれたままその水槽の中に放り込んだ。水槽の中に一気に電気が走る。バチバチと火花を散らして走った電気はテュポーンを見事感電させ、もう一度影へと戻し霧散させた。するとその影の代わりに現れたのは、またしても水槽一杯のメダルが現れた。葵お兄ちゃんが確認すると、そ
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第三十三話21 ※※※(樹視点)

―――美鈴が最後の謎を解き明かす数刻前。「……こいつで、百体目ぇっ!」「よいしょーっ!」俺が蹴り飛ばした奴を心愛が更に蹴飛ばして穴へと放り込む。この穴は俺が落ちたあのクローン処理場へ一直線の穴だ。「後、どのくらいだ?」「えーっと、残り数体くらいでしょうか?外にいるのがいーち、にー、さーん…五体いますね」「一階のは全て落としたよな?」「二階三階の奴らも恐らく、一階のクローンの溶けた匂いに反応して大分戻って来てますから、ここにいるクローン達の殆どは落としたと言っても良いんじゃないでしょうか?」「…地下の処理液はどのくらいだ?」「さっき、監視カメラの映像を確認してきましたけど、もう処理場からは溢れてます」「そうか」なら、次の段階へ移るか。「…まずはアイツが解かないであろう謎を解きに行くか」「え?解かない?でもさっき脱出するには、【全ての謎を解く必要がある】って」「あぁ。そうだ。だからこそ、美鈴は俺とお前を助ける為に【全ての謎を解かずに屋上の鍵を開ける道】を進む筈だ。だが、さっきも言った通り鍵を開ける為には【全ての謎を解く必要がある】んだよ。下手に頭が回る分だけ安牌を選ぼうとする」「それじゃ、ダメなんですか?脱出出来るならその方が…」皆で助かる方が良いんじゃないですか?と心愛の目が語っている。…助けたく、ない。誰を…と聞かれたら、こう答える。【俺を】と。美鈴は、俺を助けようとするだろう。だけど、…今までの俺がやって来た事を考えると、俺は美鈴の側にいるべきではないんだ。だってそうだろ。前世の俺は言うなれば屑だ。自分の好きな女を襲う男を、例え自分と言えど誰が許せると思う?ただ…俺は美鈴と約束をした。俺も必ず脱出する、と。自分程美鈴にとって邪魔な存在はいなと言うのに。。けど…邪魔な存在だったからこそ、せめて…せめて、美鈴が願った事は叶えてやりたい…。ハハッ…今俺の脳内ぐちゃぐちゃだ。美鈴への想いって事は変わらない筈なのに。何だろうな、この複雑な感情は…。思わず浮かぶ苦笑いに心愛は首を傾げていたが、俺はそれを気付かないふりをした。「まずは書斎の奥に行く。黒猫の鍵で開けた場所だ」走る俺の後を心愛は問題なく付いてくる。「黒猫の鍵の奥…。あれ?でもそこは白鳥総帥が謎を解いていましたよ?」「一つだけな」「え?もしか
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第三十三話22 ※※※

中央の吹き抜けを飛び降りて、三階の手すりに手をかけて、そっから更に飛び二階へ。二階から今度は掴まれそうな出っ張りに手をかけて着地した。これなら一気に降りて来れるとは思ったけど、素面だったら絶対やってない。怒りって凄いね。恐怖を凌駕するね。一階に降り付くと、そこには大量にいたクローンの姿はなく、必死に誰かを探している心愛さんだけがいた。「心愛さんっ」慌てて呼ぶと、焦っておろおろしている心愛さんが、私に気付いて急いで駆け寄ってきたかと思うと、私の両腕を掴んで縋ってきた。「白鳥総帥っ!樹総帥が、樹総帥がいないんですっ」「……やっぱりね」だと思ったんだ。私は態と全ての謎を解かないように動いていた。それでも装置が起動するって事は樹先輩がその謎を解いたと言う事。そして、樹先輩は私との約束を違えるつもりはなくとも、【私達と一緒にいる】つもりないのではないかと、私は予想していた。…外れて欲しい予感程当たるんだよね。「…心愛さん。葵お兄ちゃんが上の階にいます。二人で屋上を目指して下さい。私は、樹先輩を発見次第連れて行きますから」「だ、駄目ですっ。それじゃあ、白鳥総帥がっ」「大丈夫。私は樹先輩とは違って裏を作らずに約束を守りますから」ニッコリと微笑み、もう一度大丈夫と答えると、心愛さんは頷いてくれた。その後上の階に向かって階段を駆け上って行く。逆に私は建物が揺れる中、地下へと向かった。上の階は私達が走り回ってたし、心愛さんも探していただろうから、多分いないんじゃないかと思うんだ。となると、残るは地下しかないでしょ。地下から上へ上がった階段を今度は駆け下りて行く。バシャンとクローンが溶けてせり上がった薬液の中に足を突っ込む。さっきまでぐらぐらと揺れていた建物が地下に入った事によって安定した。その代わり膝上まである薬液に足を取られるけれど。樹先輩、何処にいるんだろう?見渡す限り姿はない。~~~ッ!!隠れてたりしたら許さないんだからっ!地団駄踏みたいような衝動をグッと堪えて、私は大きく息を吸って叫んだ。「樹先輩っ!!樹せんぱぁーいっ!!」このまま姿を消すなんて許さないんだからっ!!「樹せんぱぁぁぁーいっ!!」奥に進みながら叫ぶ。何処にいるんだろうっ?「樹先輩っ!!何処にいるのぉーっ!?」声の限り叫ぶ。叫びまくる。「いぃー
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第三十三話23 ※※※

コンコン。ドアがノックされて、返事をする前にドアが開いた。「……樹先輩?毎度思うんだけどさ。ノックしたら返事を待ってから開けてよ」「お前だって返事待たず開けるだろうが」「いやいや。私はちゃんとタイミング見計らってるから」「俺だって見計らってる」ぎゃんぎゃんと言い争う私達。そんな私達をこれはもう何時のもの事と見守る葵お兄ちゃんがいた。「鈴ちゃん。準備は出来てる?」「大丈夫。いつでもオッケーだよ」ドレスの裾が足に絡まないように丁寧に椅子から立ち上がる。「龍也も準備は出来てるね?」「あぁ、問題ない。だからこうして美鈴を迎えに来たんだ」「なら良いけど。いい?龍也。もし、鈴ちゃんに少しでも嫌がる事をしたら…」「あーあー、もう耳が蛸になるくらい聞いたっての。解ってる。ちゃんと守るから」「……じゃあ、二人共。こてんぱんにやって来ちゃって」葵お兄ちゃんに背を押され、私と樹先輩は目を合わせて互いに口の端を上げて不敵に笑って、私は差し出された樹先輩の手の上に手を重ねた。「行くか。美鈴」「うん。私と樹先輩を。…経済を回している二大巨頭の総帥を敵に回した事。後悔させてあげるんだから」私はするりと樹先輩の腕に腕を絡めて、歩き出した。私達が今いる場所は、とある白鳥財閥の系列高級ホテル。その最上階のパーティホールへ向かっている。赤い絨毯に足をとられないように樹先輩が横でフォローしてくれるからとっても助かる。…は、いいとして。何で私が今ここに居るかと言うと。実は、あの後…あの後って言うのは、葵お兄ちゃん、心愛さんと合流した後ね?樹先輩と私は二人に引き上げて貰って何とか陸地に上がる事が出来て。直ぐに樹先輩は、DEL薬液の中にCOLD∞薬液の瓶の蓋を開けて中へと投げ入れた。すると、樹先輩が投げ入れた場所からDEL薬液はどんどん凍結していった。しかも、その薬液の効果が強過ぎて、貯まった液だけでなく、液の染み込んだ土まで凍らせ始めたので私達は慌てて、葵お兄ちゃんが乗ってきた船へと飛び込んだ。で、どうにかこうにか私達は宿泊していたホテルへと帰還。ホテルに着く前に葵お兄ちゃんが皆に連絡していてくれたのか、華菜ちゃんと桃が全力で出迎えてくれた。あの時の二人の飛びつき…もとい、頭突き…もとい、抱き着きを私は忘れる事はないだろう。ふっ…滅茶苦茶痛かったの
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第三十三話24 ※※※(樹視点)

新しいパーティ会場へ向かう美鈴達の車を見送った後、俺は足を新しいパーティ会場へではなく、勿論今の会場に戻る訳でもなく、違う場所へ向けた。 俺には都貴の、都貴だった前世の記憶がある。 都貴はこの後銀川の手から逃れ、ある場所へと逃げ込む。 そこならば誰にも見つからないだろうと踏んで。 …だが、これは…。 いや、今は都貴の所へ行くのが先か。 ホテルスタッフに用意させた車に乗りこみ、シートベルトを締めて、アクセルを踏んだ。 一人車を走らせ辿り着いたのは、都貴が所持している別宅だ。 (俺の家の近くにあるってんだから、また腹が立つ) 車を邸宅の前に停めて、降りる。 灯りが点いているからきっと家政婦か誰かがいるのだろう。 しかもヤバい事に中から何かが叩きつけられたり、何かが割れたりする音が聞こえ、その度にキャーッと女性の叫び声が響き渡る。 ……ふぅ。何を遠慮していたんだ、俺は。こんな輩に遠慮する必要はないだろ。 靴を脱ぐのも嫌で、俺はそのままずかずかと玄関のドアを開けて土足で入る。 「いやあああっ!!」 何処から声が…あぁ、リビングか。 リビングのドアを開けて俺が中に入るのと同時に家政婦が叫びながら飛び出して行った。 「……何だ。息子だけかと思ったら親父もいたのか」 「樹の小童がああああっ!!」 割れた花瓶の欠片を握り俺に向かってくる都貴社長を軽くいなして、俺は懐から瓶を取りだして社長へとかける。 「うぐっ!?うぁ、うあぁぁぁっ!!何故、わしが溶けるぅぅっ!?」 「簡単だろ。アンタがクローンだからだよ」 「はっ?わしがクローンっ!?そ、そんな訳、そんな訳ある、わけ、ナイ…」 完全に溶け切った液体を俺はただただ見降ろし、そしてそのまま顔を上げてその先の椅子に座っている都貴静流を見た。 「……来ると思ってたぜ」 「…来ると【知っていた】の間違いじゃないのか?」 「…………まぁな」 「……それで?お前の【前世の姿である都貴静流】は何処だ?」 「邪魔だったんでな。とっとと殺した。お前だって見ただろ。あのクローンホテルの地下に骨があったのを」 「………今回の転生はまた面倒な事をしたものだな。俺達は同じ人間に転生する事が出来ない。なら、前世の記憶を持った奴と都貴静流とが入れ替わ
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第三十三話25 ※※※

「ハニーっ!!」「ダーリンっ!!」ガランガランッ。鐘の音が消されるくらいの声で愛を伝えあっている二人を私達はとぉーい目で眺めていた。今日は結婚式だ。…………樹財閥の幹部社員の。じゃあ最初の声は何?ってそれは勿論、桃と巳華院くんの声である。で、何で桃と巳華院くんの言葉が聞こえるかと言うと。隣で、「いつかこんな結婚式がしたいねー」「そうだねー」「でも私は神社、和風でもいいなー」「私もそう思うー」「じゃあ、二つやっちゃう?結婚式なんて何回あってもいいよねー?」「そんな事したらダーリンの格好良さが皆に伝わっちゃう」「それを言ったら私だってそうだよー」「ダーリンっ!」「ハニーっ!」ぎゅー。って流れが隣で繰り広げられているからである。「おい、美鈴。主役を食うなって言ってやれよ」「樹先輩こそ言ってあげてよ」「いや、無理だろ。あれ」「うん。無理だよね。あれ」私と樹先輩は再びとぉーくに目をスッ飛ばした。「…さて。俺の役目は果たしたし。俺は行くが、美鈴はどうする?」「皐月さんのお見舞い?行く行く」結婚式に顔を出した事で義理は果たせたと、私と樹先輩は盛り上がってる二人に後を任せて会場を出た。樹先輩の車に二人で乗り込んで、私がシートベルトをしたのを確認して樹先輩が車を発進させる。「美鈴。次の会合なんだが…」「だから、何度も言ってるけど、この会社は絶対、専属契約しておいた方がいいよ。二年、ううん、もしかしたら今年中にヒット商品を出すよ」「……だが、あそこの社長は…」「大丈夫っ!樹先輩のお尻触られても私は痛くも痒くもないよっ!どやっ!」「お前はなっ!」「あははっ。冗談だって。大丈夫。私もこの会合には顔出すよ。丸め込もう」「……はぁ、分かった。やるからには徹底的にやるぞ」「おーっ!いだっ」「お前、車内だって忘れて思い切り、手あげただろ」「うんっ!」「あほか」丁々発止しながら、それでも互いに笑いながら私達は病院へと向かった。何で病院に向かっているのか。それはさっきの会話で出て来たとおり、皐月さんが入院しているからだ。何で皐月さんが入院しているのか。これは樹先輩から後で聞いた話なんだけど、皐月さんはあの都貴静流って奴に刺されたらしいんだ。そもそもね?そもそもどうして樹先輩も皐月さんも都貴家にいたんだろう?って当然思うじゃない?
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外伝小話 樹編 財閥総帥の夢

出張が続きに続き、今日こそは早く帰れるはずだ!そう希望を込めて仕事へ向かっていたが、まぁ、そうは問屋が卸さず。今日も今日とて、接待飲みが待っていた。そもそもこのご時世に接待飲みが未だにあるのがおかしい。ただでさえ忙しいんだから、下らない事で時間を潰させるなっ!そう叫びたいのだが、そうもいかず。俺は素直に接待を受け、何とかオッサン共の二次会の誘いを振り切って銀川の用意した車に乗りこみ、後部座席に体を沈めた。「…少し寝る。着いたら起こせ」「かしこまりました」今日は絶対に家に帰る。帰って美鈴の顔を見るんだ。ネクタイを緩めて、俺は腕を組みゆっくりと瞼を降ろした。暫くして体が揺すられる。「龍也様。龍也様。到着しましたよ」「ん?あ、ぁ、悪い」目を軽くこすって、開けて貰ったドアから鞄を持って降りる。「では、本日はこれで失礼いたします」「あぁ。明日は六時に頼む」「かしこまりました」言いながら俺は真っ直ぐ家の玄関へと向かう。念の為に時計を見ると、時間はまだ夜の九時。ワンチャンあるかもしれない。そう思い、玄関のドアを開けるとそこには、「お帰りなさいっ!父上っ!」パジャマ姿の我が子の姿があった。きっと風呂上りなのだろう。両手を広げて駆け寄ってくる我が子を抱き上げると、ほかほかだった。「お帰りー。龍也さん。珍しく早く帰ってきたねー?」同じく風呂上りの美鈴がお腹を支えながら歩いてくる。「お、おまっ、なんで歩いてるんだっ!?」「え?じゃあどうやって出迎えるのよ?スライディングでもしろと?」「そうじゃないって解ってて言うなっ!臨月なんだぞ、お前っ!」「うん。そうね」「だったらもっと慎重にっ、家政婦はどうしたっ!?」「お仕事の時間は終了だからねー。ちゃんと残業させずに帰って貰ったよ?」「させろよっ!残業っ!金は出すからっ!」「いけませんっ!ブラック企業、ダメ、絶対っ!」「ああーもう!」なんでこいつは毎度毎度俺の言う事を聞かないんだっ!兎に角、美鈴を暖かい居間まで連れてかないとっ!「美鈴っ。俺が手を貸すから」「さー、居間に戻ろうねー?」俺の言葉は無視かっ!「父上?母上をあまり怒鳴っちゃ駄目ですよ?」「うぐっ」怒鳴りたくて怒鳴っている訳じゃない。と言うかそもそも怒鳴ってない。心配してるだけだ。俺を無視して
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外伝第三章 白鳥家ルート 第三十二話① 純粋な片翼、夏に芽吹く恋(白鳥棗編)

※ このお話は本編である『乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも私、男性恐怖症なんですけど…』の三十一話から続くお話です。まだ本編をお読みで無い方はまずは本編からお楽しみください。目を覚まして、視界に映ったのは見知らぬ天井。一体ここは何処ーーーっ!?天井は木っ!床は木っ!ドアも木っ! 完全に私の部屋じゃないっ!!ここは何処ーーーーっ!?……や、待て私。落ち着け、私。 まず確認すべきは、私の存在だよね。だって、確かに私の視界には天井が映ってるよ?ただね?近すぎだよね? 手を伸ばせば、触れそう。 ほーら、手を伸ばして…そうすれば手がすり抜けて…えええっ!? 手が、腕が透けてるーっ!? なぁーんだ、私今霊体なんじゃーん、納得………出来る訳ねぇわっ!! ふみーーーっ!! どゆことーっ!? ここどこなのーーーっ!? 私死んだのーっ!? ……もう一度、落ち着け私。心を落ち着けて。くるっと体を反転させてみよう。 あれ…?ベッドに誰か寝てる? 誰だろう?あの女の人。金髪ウェーブ?かかっている毛布越しにも凄くスタイルが良さそうなのが解る。顔見えないけど、きっと美人さんなんだろうなぁ。 あれ?って事は、私不法侵入してるの?この女性の部屋に? 突然部屋に浮いてるって事?それはどうなのー? ここが何処かは今一まだ理解出来てないけど、雰囲気的に、なんだろう。こう…古代ギリシャ建築、って言うのかな?中世より前の…そうそう、例えて言うなら漫画とかで見る異世界物の神々の時代、見たいな、ギリシャ神話、見たいな?感じだ。 よしっ。折角の幽体なんだから、この部屋から出て周辺を調査してみようかな。 ここにこうして浮いているだけじゃ何も解決しないしねっ! っと、これどうやって動くんだろう?手足は動かせるんだけど、移動となると話は別だよね? 空中歩いてみる? 浮かんでるんだし歩くと言うよりかは泳ぐ? 思考錯誤の上、どうにかこうにか移動感覚を掴み、私は上昇してみる。 案の定天井をすり抜けて、外に出た。キョロキョロと辺りを見渡してみる限り、私の想像は案外間違いではなかったみたい。 木より石や岩が多い。 一般的な家は木で。公共の建物は石を削って建てられている。 さて。どうしようかな? 私は何処に行ったら良いんだろう? 状況は掴めないけど、私は俯い
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第三十二話② ※※※(棗視点)

事のおこりはきっと二週間とちょっと前。 僕達がこうして飛ばされた理由を語る前にそのもう少し前の流れから説明しようと思う。都貴社長との会食があったあの日。 鈴は間違えてお酒を飲んでしまい、僕と葵は会食の部屋に呼び出された。 そこには鴇兄さんが片手であぎあぎと腕を齧る美鈴を抑え、都貴社長とその息子を睨みつけている姿があった。 鴇兄さんがあんな冷え切った瞳をして睨むと言う事は余程の事があったんだと察しが付く。 慌てて駆け寄ると、都貴の息子が青い顔をしてその場を逃げだした。逃がすかと追い掛けようとしたが、鴇兄さんの待ったが入った。 「あいつは俺が追う。棗、お前は美鈴を頼む。葵はここの後始末を」 「解ったっ」 「了解だよ、鴇兄さん。気を付けて」 僕は鴇兄さんから鈴を受け取り、そのまま背負う。 「えへへ~、棗お兄ちゃ~ん」 うん。完全に酔っぱらってる。一方葵は都貴社長と対面して笑顔で威圧。こう言う時、葵は素直に凄いと思う。どんなに年上の人間でも、自分が認めない相手には一歩も引かない。そして容赦がない。その容赦のなさは多分鴇兄さんや鈴以上だ。だからこそ、一度認めた相手にはどこまでも優しいんだけどね。 鈴を背負ったまま、視線だけで葵に帰る事を告げ、僕はその部屋を後にした。 料亭を出て、真珠さんと会う。どうやら車は鴇兄さんが乗って行ってしまったらしい。 代わりの車を用意してくれると言っているが…酔いを醒ます為にも少し夜風に当たらせた方が良いかも知れない。 僕は真珠さんの申し出を断り、背負ったまま歩いて帰る事にした。 幸い、鈴は凄く軽い。片腕で持てると断言出来るくらいには。だから背負って帰るのになんの問題もない。 のんびりとゆっくり帰路を歩く。 「なつめ、おにいちゃん。ぎゅー」 首に回った腕に力が込められるけど、痛くも苦しくもなくて、ただただ微笑ましい。そして可愛い。 どうやら鈴は酔っぱらうと可愛さが上がるらしい。すれ違う男達がこちらを見て顔を赤らめている。うん。見るな。 ギリッと睨みつけると、蜘蛛の子が如く散っていく。 「なつめ、おにいちゃん…」 「うん。どうしたの?鈴」 「しゅきぃ…」 呂律が回ってない。それでも好きって言ってくれたのは解ったから。僕は苦笑しつつ、僕も好きだよと告げる。 僕と鈴の【好き】には大きく違いがあると分
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第三十二話③ ※※※

屋根をすり抜けて、家の中へと戻ると、棗お兄ちゃん曰く、リョウイチさん?って人が何かを書き綴っていた。 『リョウイチ』 棗お兄ちゃんが呼ぶと、戻って来た私達に気付いたリョウイチさんがこちらを見て微笑んだ。 「お帰り。話は出来た?」 『うん。出来たよ。と言っても僕が知っている情報と鈴が知っている情報に大差はなかったけどね』 「ハハッ。それはそうかもしれないねっ。所で、そろそろそちらのお嬢さんの事を聞いても?」 はっ!?そうだったっ。私まだ自己紹介してないっ。 『申し遅れました。改めて、白鳥美鈴と申します』 『僕の妹だよ』 「妹?…それにしては」 『あぁ、似てないのは仕方ないよ。血は繋がってないんだ』 「へぇ~。成程。それでか~」 『ふみ?』 何がそれでなんだろう? 首を傾げてしまう。 するとそんな私の姿を見てリョウイチさんは微笑んだ。ほんわかと微笑む、その笑い方…どっかで見た事があるような…? どこで見たんだろう? 誰かに似てるとか? だってこんな明らかな異世界に来た事ってないし。 ふみみ…?誰に似てるんだろう?むむー…全く思い出せないっ! 「それで?二人は恋人同士なの?」 『そうだよ』 「………いいなぁ」 『?、もしかして、リョウイチさん。好きな人いるのっ!?』 「うん。実は」 少し顔を赤らめて微笑む。やっぱり既視感があるんだけど、今はいいや。それよりも、 『詳しくっ!』 『…鈴は、ほんと昔から恋バナ好きだよねぇ』 『三度の飯のおかずになるくらい大好きですっ』 椅子には座れないので、正面に浮かびながら正座する。 『相手はどんな人なの?』 「どんなって…美人で、強くて、優しくて、強くて、微笑んだ顔が可愛くて、それでいて強いんだっ」 うん。…気の所為かな? 強いって単語が三回程出て来たような? や、これは彼が日本語を間違えて話している可能性がないとは言い切れないしっ。 『えっと、もう一度聞いても良い?その、詳しく』 「勿論っ」 『どんな風に美人な人なの?』 「そう、だな。…生命力の溢れる美しさがあって、強くて」 『ふむふむ』 健康美人、って感じなのかな?だとしたら強いってのも納得出来る? 「それから、自分より弱いものに手を差し伸べる優しさがあって、強くて」 『ふむふむ』 って事は、こう
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