(俺……今まで誰かに対して、ここまで必死で、夢中になったことなんてあったか?) 中学、高校、大学と、いわゆる「モテる」タイプだという自覚はあった。 けれど、相手に告白されて、なんとなく断りきれずに付き合う――そんな消極的な理由で関係を始めることが多かった。 本当の意味で、人を愛するとか、その人の中身を好きになる。そこまで至らない、要するに「恋人もち」というステータスを満たすための、着飾るような恋愛。 愉しくなかったのかと問われれば、そうじゃない。けれど、本質を突きつめていくとそういうことだ。 けれど、俺の恋愛観に大きな転機が訪れたのは、大学三年生の夏。 自分がバイセクシャルであると自覚し、初めて同性と付き合ってみた。しかし、その最後に交際した相手はとんでもなく我儘な相手だった。「月記念日は必ずお祝いしてよ!」「透利とペアでつけたいから、新しいアクセサリーが欲しい」「こういう景色も嫌いじゃないけどさ……もっとSNSで映える場所に連れて来てほしかったなー」 そんな要求は、日を追うごとにエスカレートしていく。 俺の好意を当然の権利のように踏みにじられ、ただ尽くすだけの毎日に疲れ果てて、別れを告げた。 社会人になってからも、なぜか好意を寄せてくるのは気の強い男女ばかりだ。 彼らは俺の才能や顔を求めてやってくるけれど、その先にある「俺自身」を見ようとはしない。 そんな関係にどこか冷めていた俺にとって、珠依さんのような反応はあまりに新鮮で、眩しすぎた。 俺の何気ない一挙一動に「嬉しいです」と微笑んでくれる珠依さんの反応が、三歩後ろをさがってついてくる楚々とした雰囲気に見えて、どんな反応も愛おしい。 元彼の毒を飲み込みながら、必死に心を守って生きようとする彼を、どうにか支えたい。 そう思う一方で、俺自身が抱える「男としての欲望」も隠しきれなかった。「……絶対に、変なことはしないって約束します。なので……一晩、雨宿りさせてもらってもいいですか?」 ――我ながら、悪どいオオカミだと思った。 「俺は安全です」なんて顔をして、実際は彼の側に少しでも長く居ようとしたのだから。 けれど、彼はそんな俺の必死な演技に気づくこともなく、か細い声で『はい』と答えてくれた。 次の撮影が終わるまで、どんなに早くても一ヶ月は会えない。だから、少しでも話をし
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