元彼に「赤ちゃんが欲しい」と言われて、タオルをお腹に詰めてたら振られましたが、有名フォトグラファーの彼に愛されています♡

元彼に「赤ちゃんが欲しい」と言われて、タオルをお腹に詰めてたら振られましたが、有名フォトグラファーの彼に愛されています♡

last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-07-27
โดย:  五慈あおいจบแล้ว
ภาษา: Japanese
goodnovel18goodnovel
คะแนนไม่เพียงพอ
82บท
1.5Kviews
อ่าน
เพิ่มลงในห้องสมุด

แชร์:  

รายงาน
ภาพรวม
แค็ตตาล็อก
สแกนรหัสเพื่ออ่านบนแอป

カウンセラーとして働く珠依(しゅい)は、長年連れ添った同性の恋人から『やっぱ赤ちゃんって可愛いよな。あーあ、珠依が子供産めれば、俺たち完璧だったのにな』と告げられる。

 その言葉に影響され、バスタオルをお腹に詰め「妊婦の真似事」をしていた姿を彼に見つかり、別れを切りだされてしまう。 

心身ともに限界を迎えた珠依は休職し、カウンセラーとしての理性で自分の異常性を理解しながらも、現実逃避のために赤ちゃんの人形を相手に育児の真似事を始める。 そんなある日、赤ちゃんを抱いて外出中、自転車に乗った男性・浅野と衝突事故を起こしてしまう。 そこで差し出されたのは彼の「とんでもない優しさ」で……。

ดูเพิ่มเติม

บทที่ 1

第1話 崩れ去った幸せ

珠依しゅい、お前マジで何考えてんの? ガチでキモいんだけど」

それは、まるで目を背けたくなるほどの汚れを見つけた時ような、嫌悪感を丸出しにした言葉だった。

高校のクラスメイトだった、早霧さぎりに告白された日から始まった交際は、思い返せば奇跡の連続だった。

人目を盗んで繋いだ指先の熱。

放課後の静まり返った教室で、心臓の音を競い合うように重ねたキス。

『珠依、マジで可愛い。好き。俺だけ見てて』

大学合格を機に始まった二人暮らしは、狭いワンルームに並んだ二本の歯ブラシだけで、ふたりの世界が完成したような。とにかく幸せな充足感があった。

『お前の飯最高だわー、美味すぎる』

金欠で節約ごはんを分け合う夜も、テスト前の静かな徹夜明けも。

社会人になり、すれ違う時間が増えても、この関係は摩耗しないと信じ込めるほど、マンネリなんて感じたこともなかった。

デートも、肌を重ねる頻度さえ、学生時代よりむしろ色濃くなっていたくらいだ。

『んっ……はぁ、っ……早霧……』

『珠依、中出していい?』

『……で、でも……この前も、お腹が……』

『愛してる、だからお願い』

そんな風に激しく求められて、互いの体温を確かめるたび、俺と彼はこのまま一生を添い遂げる仲なのだと、微塵の疑いもなく過信していた。

――そう、思っていたのだ。この瞬間までは。

「……いや、あの……これは、その……」

言い訳にならない震えが喉にへばりつく。

早霧は俺を一瞥もせず、手慣れた仕草で煙草に火をつけた。

カチッ、というライターの金属音。

一度深く吸い込み、肺を満たした煙をゆっくりと吐き出す。白く濁ったカーテンが天井へ溶けていくのを、早霧は冷めた目で見つめて、トントン、と指先で灰を落とす動作をした。

学生時代はその大人びた横顔に見惚れ、この背中についていけばどこへだって行けるのだと盲信していた。

けれど今、同じはずのその仕草が、恐ろしいほど冷酷な断絶に見えた。

いつからだろう。愛しているはずの恋人を、こんなにも「怖い」と感じるようになったのは。

「普通にヤバくね? その発想は」

俺はたまらず、Tシャツの中から詰め込んでいたバスタオルを引き抜いた。

「ごめん、つい……出来心っていうか……」

どうして、こんな滑稽な真似をしたのか。

分からない、と言えば嘘になる。

二週間前、彼が零した言葉が、毒のように回って胸の奥を焼き続けていたからだ。

『やっぱ、赤ちゃんって可愛いよな。……あーあ、珠依が子供産めれば、俺たち完璧だったのにな』

あの日、昼下がりのカフェの窓の外で、ベビーカーに乗っていた赤ちゃんが偶然、早霧に向かって小さな手を振った。

それに応えるように、ひらひらと手を振る彼。

頬杖をつき、その無垢な仕草を見つめていた早霧の目は、これまで俺に向けてきたどんな視線よりも優しく、慈しみに満ちていた。

『ご、ごめん……そうだよね、早霧だって、子供とか……欲しかったよね』

『んー、まぁそれなりに。お前と俺の子供だったら、バチボコに可愛い顔面してただろうしな』

なぜか、謝っていた。俺が男であることは、彼が一番よく知っているはずなのに。

それでも「与えられない側」である自分を、欠陥品だと言われたように感じて、惨めさが止められなかった。

子供が欲しいなら、女性と付き合えばいいだけの話。

それを選ばず俺といるのだから、自分は大好きな早霧に、特別に選ばれた幸福な立場なのだ――そう自分に言い聞かせてきた。

けれど、それからを境に、早霧の態度は目に見えて削げ落ちていった。

『早霧、どこ行ってたの?』

『は? 普通にバンメンと朝まで飲み。いちいち詮索してくんなって』

増える朝帰り、簡素になるメッセージ。

『明日は友達と温泉行くから。明後日の夜帰る』

 疑いたくない。

けれど、芽生えた不安は勝手に育っていく。

街で家族連れとすれ違うたび、心臓が握り潰されるような錯覚に陥った。

 俺には、逆立ちしても与えられないもの。

早霧が、本当は心の底で渇望しているかもしれないもの。

海外での代理母、あるいは養子。

選択肢がないわけじゃない。

でも、早霧が求めているのはきっと、そういう「形」じゃない。

――それに。

もし、もしも奇跡が起きて、俺の腹に彼との命が宿るのなら。俺はどんな痛みも、どんな苦しみも喜んで受け入れたと思う。

それくらい「俺たちの子供」を、この腕で抱いてみたかった。

そんな叶わない願いは、日を追うごとに膨張した。

ベビー用品店の前を通るたび、吸い寄せられるように足が止まる。

淡い色彩のスタイ、柔らかくて小さな洋服、優しいタッチの物語の絵本。

(すごく、可愛い……)

ガラス一枚向こうにあるそれらは、手を伸ばせば届きそうな距離にあるのに、俺にとっては一生辿り着けない世界の果てのようだった。

(……自分と愛する人の子供がお腹にいるって、どんな気持ちなんだろう)

早霧が風呂に入っている間。

本当に、ただの魔が差しただけの出来心だった。

鏡の前に立ち、バスタオルを丸めてTシャツの下に潜り込ませる。

いびつで、重みもなくて、鏡に映る自分はどこまでも滑稽だった。

それでも、両手でそっとその膨らみを包み込んだとき。

「……俺と、早霧の赤ちゃん……」

一瞬だけ、張り詰めていた胸の奥に、温かな幻影が灯った気がした。

絶対に叶わない夢を、指先でそっとなぞるような、自傷に近い安らぎ。

ただ、それだけで終わらせるはずだった。

なのに。

不意に風呂場のドアが開く音がして、振り返った瞬間ーー冷え切った早霧の瞳と、鏡越しに目が合った。

『何してんの?』

その時、俺は悟った。

俺たちの「完璧」な時間は、今、この音を立てて崩れ落ちたのだと。

แสดง
บทถัดไป
ดาวน์โหลด

บทล่าสุด

บทอื่นๆ
ไม่มีความคิดเห็น
82
第2話 蝕まれる心
その一件のあと、早霧は必要最低限の荷物だけをボストンバッグに詰め込み、黙って家を出ていった。 パタン、と閉まった玄関のドアの音は、七年の終止符にしてはあまりに軽かった。 まるでコンビニにタバコでも買いに行くような、日常の延長線上の音。 その数時間後、静まり返った部屋で受信したメッセージは、わずか三行だった。 『友達に告られてから 半年以上二股してた』 『この前の旅行で 相手の子、妊娠させちゃって』 『やっぱ自分の子どもが欲しいから 籍入れる』 絵文字も、句読点もない。 謝罪なのか、単なる事務報告なのかも判別できない、平坦で無感情な文字列。 スマホを持つ手が震えて、何度も画面を上下にスクロールした。けれど、白い空白が広がるだけで、その先に言葉が続くことは二度となかった。 たったそれだけで、俺たちの恋は終わった。 あまりに呆気なさすぎて、涙さえ出なかった。 裏切られた怒りも、彼への憎しみも、すぐには湧いてこない。ただ、左胸のあたりに穴を開けられて、吹き抜ける風のような冷たさだけがあった。 ◇ それからの俺は、逃げるように仕事に没頭した。 スクールカウンセラーとして、複数の中学校を慌ただしく飛び回る毎日。 「珠依先生、今日って相談室空いてますか?」 「うん、構わないよ。……来てくれてありがとう」 教室に行きたくないと言って膝を抱える生徒の隣に座り、親との関わりに怯える子の震える手に言葉を重ね、保健室登校の子の沈黙に寄り添う。 「大丈夫だよ」 「君は一人じゃないからね」 「自分のペースで、少しずつでいいんだよ」 唇から滑り落ちる言葉は、皮肉なほど穏やかで慈愛に満ちていた。けれど、導く側の俺の心だけは、あの日から鋭く折れたまま。 折れた心に添え木を当てるように、必死で理屈を並べてみる。 ――時間が、いつか解決してくれる。 ――もっと誠実な人に出会えるはずだ。 ――早霧にとって「子作り」は抗えない本能だったのだ。 言い聞かせるたび、心に走った亀裂は塞がるどころか、深く、深くなっていった。 (もう、子どもの性別とか、分かる頃なのかな……) 次第に、食事が「粘土を食べるような」感覚に変わった。冷蔵庫の中身は減らないまま、賞味期限の数字だけが過ぎていく。 サラダとゼリー飲
อ่านเพิ่มเติม
第3話 俺の赤ちゃん
「……今日は良い天気だから、先にお買い物に行こうかな」 休職届を出してから、数ヶ月が経った。 心療内科の門を叩くべきか、何度も迷った。 けれど、いい大人が失恋で寝込んでいると告白する気恥ずかしさと、何より自分自身が「心の専門家」であるというプライドが足枷になった。カウンセラーがカウンセリングを受ける――その滑稽さに耐えられず、俺は未受診のまま、沈没した日々を自力で漕ぎ出した。 それでも、泥のようにベッドに張り付いていた時期は脱した。こうして天気のいい日には、外へ出ることもできる。 霞くん、抱っこひもでお出かけしようね」 リビングに置かれた、黒色の抱っこひも。 俺は手慣れた動作でベルトを通し、一切の返事をしない「霞くん」を胸元へ抱き寄せた。どこか頼りないその重みを抱えながら、ケープを被せ、小さな帽子を整える。 財布とスマホ、エコバッグだけを入れたショルダーを肩にかけ、玄関のノブを回す。 スーパーへ向かう道すがら、春の名残の風に舞う桜を眺めた。抱っこひもの中の「彼」に、その淡いピンク色を見せてやるように囁く。「綺麗だねー……もうすぐ散っちゃうけれど……来年もまた、一緒に見ようね」 ぽんぽんと、帽子の膨らみを優しく撫でる。 寝息も、笑い声も発さない「霞くん」を一瞥してから、その表情がきゃっきゃっと笑うのを想像して、俺は行きつけのスーパーに向かった。 タイムセールを告げる店内放送の喧騒の中で野菜や牛乳をカゴに入れ、手早く精算を済ませる。「あら、今どきの若いパパは抱っこ紐で赤ちゃんと買い物にくるのねぇ。私の時代なら信じられないわ、何ヶ月なの?」「あ……えっと、まだ……4ヶ月で……」「まぁ! そんな小さいうちからお外に出して大丈夫? 男の子? 女の子? お顔、見せてもらえないかしら」 年配の女性に微笑まれ、俺は一歩後ずさる。「お、お昼寝してるので……ごめんなさい」 手早く荷物をまとめて、俺はぺこりと軽く頭を下げて店の外に出た。 話しかけられるのは初めてじゃないけれど、出来ればそっとしておいて欲しい。世の中の子を持つお母さんたちは、どんな気持ちで赤の他人と道端でこういう会話をしているのかまでは、俺には想像がつかなかった。「霞くん、おうち帰ろうね。ミルク飲んだら、絵本読んであげるね」 とん、とんとその背中をリズムを刻むように
อ่านเพิ่มเติม
第4話 抱っこ紐の中身
「……あの。俺、絆創膏は持ってるんで。せめて手当だけでもさせてもらえませんか? そこのベンチでいいので」 彼は桜の木の傍らにある古びた木のベンチを指差した。断る上手い口実も見つからず、俺は促されるまま、自転車を押して歩く彼と並んで腰を下ろした。「じ、自転車……キズとか大丈夫ですか? 俺がちゃんと前を見てなかったせいで、本当にすみません」 弁償とかしなきゃいけないかも、とチラリとその高そうな細いフレームの自転車を見やる。 けれど、男性は首を左右に振って否定した。「何言ってるんですか。自転車なんてどうにでもなりますけど、命に替えはきかないですよ」 困ったように眉を下げて笑うと、彼は近くの水道で自分のハンカチを濡らし、俺の手に付着した砂と血を丁寧に拭ってくれた。染みる痛みに身を縮める俺に、手際よく絆創膏を貼っていく。「は、ハンカチ代、お支払いします……」「いいですから」 洗濯したとしても、一度赤の他人の血がついたハンカチなんか使いたくはないだろう。 慌てて財布を取り出そうとする手を、彼は穏やかに制した。そして、ふと視線を落とす。俺が片時も離さず抱きしめている「霞くん」へ。「……あの、さっきから全然……その、泣いたりしてないみたいですけど。大丈夫ですか? お子さん」 心臓が跳ねた。唇を噛み締め、視線を泳がせる。 霞くんの後頭部に手を添え、俺は逃げるように立ち上がった。「この子、一度お昼寝すると、なかなか起きないんです。……もう、うちに帰らないと。それじゃ――」 背を向けて一歩を踏み出した瞬間、手首を力強く掴まれた。 驚いて振り返ると、彼は真剣な眼差しで俺を見つめていた。「ちょっと、いいですか」「……っ、はい」「これ、俺の名刺です。もし、このあとお子さんの容態が変わって受診した時は、ここに連絡をくれませんか? 通院費や慰謝料、俺が責任を持ってすべて負担しますから」 差し出された名刺には、『浅野透利』という端正な文字。 あまりに誠実すぎる対応に、毒気を抜かれて立ち尽くしてしまう。 けれど、受診することも、連絡をすることも、この先一生ありえない。そう確信しているからこそ、その紙切れ一枚がひどく重く感じられて、上辺だけでも受け取ることができなかった。「……丁寧に対応してくださって、ありがとうございます。でも、本当に、
อ่านเพิ่มเติม
第5話 せめてもの償い
「あ……」 彼を見ると、そこには軽蔑も、気味悪がる色もなかった。 ただ、大切なものを届けに来た、ということを伝えてくれるような穏やかな表情。「ありがとう、ございます……」「いえ。靴下って、片方なくなっちゃうと結局買い直しになっちゃいますもんね」 はは、と至って普通の調子で笑う浅野さん。その屈託のなさを前に、俺は自嘲を隠せないまま、消え入りそうな声で問いかけた。「……気持ち悪くないんですか? 俺のこと」「え、どうしてですか?」 浅野さんは、本気で心当たりがないという風に首を傾げた。「どうしてって――客観的に見て、おかしいでしょう。大の男が、抱っこひもをして、中に人形を入れて歩き回ってるなんて……」 一瞬、この人の方が俺よりどこか「ズレて」いるんじゃないかとさえ思った。けれど、浅野さんは俺の言葉にふっと柔らかな笑みをこぼすと、俺の腕の中の「霞くん」を見つめて、至極当然のことのように言った。「気持ち悪くないですよ。……あなたの、大切なもので、趣味なんでしょう? 誰かが好きだと言っているものを、よく知りもしないうちから侮辱するような真似は、しませんよ」 その言葉に、俺は弾かれたように顔を上げた。 信じられない。 本当は、単なる社交辞令なんじゃないか。 俺を傷つけないための、その場しのぎの嘘なんじゃないか――。 疑う心とは裏腹に、長く冷え切っていた心の奥底に、小さな熱が灯るのを感じていた。「…………あ、ありがとうございます」「いえ。あ、あと、やっぱり名刺は受け取ってください。その……お子さんはともかく、あなたの怪我があとから分かったり、体調が悪化するのが怖いので。……どうしても嫌だったら、帰ってから捨てても構わないですから」 そうじゃないと俺の気が済まないんです、と苦笑いして頭をかく彼に圧され、俺は小さく頷いて名刺を両手で受け取った。丁寧に財布のスリットに差し込むと、ようやく彼は満足そうに目を細めた。「重ね重ね、すみませんでした。それじゃあ……」「いえ、こちらこそ……」 わずかな沈黙と、気まずい空気。俺たちは互いに会釈をし、別れを告げる。 じんじんと膝が痛み出すのを感じながら、俺は不格好に足を引きずり、再び歩き出した。(あー……今頃になって痛くなってきた。膝、派手に擦りむいたかな……) 重い足取りをさらに重くさせるのは、カゴ
อ่านเพิ่มเติม
第6話 ベビーベッドと揺れるメリー
「……あ、あそこのマンションです。エントランスまでで大丈夫ですので」 指し示した先は、かつて早霧と選んだ、日当たりのいいマンション。「あそこですね。了解です」 浅野さんは軽快に頷くと、歩調を俺の痛む足に合わせてゆっくりと刻んでくれる。 早霧が出ていってから、この道はいつも一人だった。 冷たい風に吹かれ、孤独に耐えながら、ただ消えてしまいたいと願って歩く道だった。 けれど今、隣に他人の体温がある。 人形を抱く自分を「気持ち悪くない」と言い切り、片方だけの靴下を全力で届けてくれた、お人好しすぎる赤の他人の体温が。 エントランスに辿り着き、彼から重い荷物を受け取る。「本当に、助かりました。……ありがとうございました、浅野さん」「いえ。俺の方こそ、大事な時間を邪魔しちゃってすみませんでした」 彼は最後に、もう一度だけ俺の腕の中の霞くんに視線を送り、それから俺の目を真っ直ぐに見た。「お大事に。……足も、その、貴方も」 そう呼ばれた瞬間、自分でも信じられないような衝動がせり上がってきた。 彼が自転車に足をかけ、その背中が遠ざかろうとしたとき、俺の口は勝手に動いていた。「……あのっ!」 浅野さんが驚いたようにブレーキをかけ、振り返る。 心臓がうるさい。 冷たい汗が背中を伝う。 何を言っているんだ。 早く部屋に帰って、笑いも喋りもしない人形を抱きしめて、一人で泣いていればいいのに。 カウンセラーとしての理性が「これは依存の転移だ」と警告している。 けれど、自分を思いやってくれた、この温かい人との繋がりを逃してしまったら、俺は二度とこの日々から這い上がれない気がした。「あの……送り届けてくださったお礼に、お茶……とか……。あ、でも、あの……キモいって思ったら全然、帰ってもらって大丈夫で…………あーもう、ごめんなさい! 誰かと話すの、本当に久し振りで……」 浅野さんは一瞬だけ呆気にとられたような顔をしたが、すぐにあの困ったような、優しい眉の下げ方をして笑った。「……じゃあ、お言葉に甘えて。消毒くらい、手伝わせてもらってもいいですか?」 エントランスを抜け、エレベーターの狭い空間に、自分以外の男の匂いが混じる。 ちら、と顔を見上げると、彼もまた俺の方を見下ろす形で目があって、お互いにぱっと顔を赤らめてぎこちなく逸らす。 早霧以外の
อ่านเพิ่มเติม
第7話 人形という代替
 浅野さんに膝の手当てをしてもらい、「何から何まですみません」と謝罪を重ねる俺に、彼は「いや、怪我させたのは俺ですし……」と心配そうな目でガーゼと包帯に覆われた部分を見つめた。 キッチンでお茶を用意し、テーブルにカップを置く。 「霞くん」の前にも中身の入っていない淡いブルーのストローマグを無意識に置くと、彼はそれに視線を移し、俺の部屋の本棚の背表紙を無言で眺めながら、お茶を一口飲んで言った。「あの……珠依さんって、大学生ですか?」「えっ」「心理学の本がたくさんあるので……そういう専攻なのかなって思って」 あれ、と彼が指さす先には、分厚い専門書の山。 俺は愛想笑いを浮かべながら、ぶんぶんと手を左右に振った。「ち、違います。あ、厳密に言えば確かに心理系の専攻はしましたけど……俺、社会人です。スクールカウンセラーとして働いていたんですけど、今はその……休職していて」 その返事が予想外だったのか、浅野さんは目を丸くして慌ててお茶を置いた。「すみません……すごくお若く見えたので。あー、俺、マジで失礼なことばっかり……」 自分に呆れたように額を押さえる彼がどこか憎めなくて、俺は思わず笑みをこぼす。「気にしないでください。大学生の頃なんて、高校生に間違われるくらいでしたし」「いや、本当さっきも……あの、赤ちゃんを抱っこしてるのに、めちゃくちゃ若く見えたので、下手したら未成年かと思って……内心、すごく動揺しました」「……もうすぐ、二十五なんですけどね。浅野さんは、何のお仕事をされているんですか?」「あぁ、じゃあ俺の方が三個上だ。仕事は、フォトグラファーです。風景や星空を撮影していて、普段はいろんな所を飛び回って撮影するような感じです」 年齢が三つ違うと知って、妙に納得してしまった。 穏やかさというか、物腰の柔らかさとかが、同年代には無い感じがしたから。「かっこいいですね。俺、あんまり旅行とかしたことは無いけれど……いつか時間ができたら、というか、元気になったら。そういうの、したいなって思ってて」 ――まあ、こんなことをしているうちは無理だろうけれど。 そんな冷めた気持ちを片隅に抱えて、俺はソファに寝かせた「霞くん」を見やる。 相手に思われていそうなことを、先に自分の心の中で毒づいてしまうのは、昔からの俺の悪い癖だ。「……あの、差し支えな
อ่านเพิ่มเติม
第8話 また会いたいって思ってます
「……『赤ちゃんが欲しかった』っていう言葉が、呪いみたいに頭から離れなくて。人形を買ったからって彼が戻ってくるわけでも、この子が育つわけでもないと分かっているのに。それでも手を出したのは、『自己保存』だったんだと思います。赤ちゃんって、無条件に『守らなきゃいけない』と人間に思わせる存在だから」 ベビーベッドに吊るされた淡い色のメリーが風に揺れる。 なぜ初対面の人に、こんな一番奥にしまっていた気持ちを吐き出しているんだろう――そんな戸惑いを感じつつも、言葉は止まらなかった。「この子を抱いた瞬間に、『自分より優先しなきゃいけないものがある』って思えた。……多分、本能的に逃げたんです。『何もかもを終わらせる方向』に、行かないように」 きっと、この人形を買わずにいたら、俺はこの思い出だらけの部屋のベランダから飛び降りていた気がする。それに、最後まで思い浮かべたのは早霧との幸せな日々だったはずだ。 そうならないように、カウンセラーとしての理性が、「ボロボロに傷ついた自分」をなんとか引き止めた結果が「霞くん」という存在だった。「でも、本当に愛着が湧いちゃって。感覚としては、お気に入りのぬいぐるみを抱いて眠る安心感に近いんです。……さすがに大人の男がこれをしてるのは、自分でもキモいって分かってるんですけど。ただのぬいぐるみじゃ、満たされなくて――」 笑い話で終わらせようとヘラヘラした口調を作った刹那、斜め隣に座っていた浅野さんが身を乗り出して、俺の手首を掴んだ。そのまま、ぐっと肩を抱き寄せられる。俺のなのか彼の手のものなのか判別できない、速い鼓動が伝わって来た。「あ……浅野さん、?」「なんで笑ってるんですか……全然、聞いたって笑えないですよ。それ、一人で抱え込めるような辛さじゃなかったでしょう」 後頭部に大きな手を添えられ、思わず身を引く。知り合ったばかりの人間にこんなことをされて、泣きつくほど俺は弱くない――はずだった。「七年も付き合った相手に振られて、理由が『子どもが欲しい』なんて。……しかも浮気相手を妊娠させるなんて、第三者の俺からしたら、最低のクズですよ。『だったら最初から女と付き合えよ』って思うし、仮にそいつが結婚したとしても……子供を育てるなんてそんな簡単なことじゃない。絶対に、すぐ逃げ出すだろうなって俺は思いますけどね」 俺が元彼に対してど
อ่านเพิ่มเติม
第9話 有名フォトグラファーとしての彼
「……珠依さんが嫌じゃなければ、いま、友だちからでも――」「い、いやいや……無理です。霞くんを捨てようなんて思う日は来ないし、これからもこうして自分の心を守って生きていくつもりです。友だちとか、ましてや誰かに支えてもらうなんて……頼むつもりなんて、ないですから」 七年。人生の「好き」を捧げた相手に「キモい」と捨てられ、心が壊れかけた自分を保つために「人形の世話」をする道を選んだ俺に、歩み寄ろうとしてくるこの人は、一体何を考えているのか。「全部忘れてください。家に呼んだのは俺ですけど、あくまで社交辞令で……」 俺は震える声で、彼がこれ以上近づかないために、思いつく限りの言葉で拒絶した。  本当は、「優しい」と思ったし、有難かったのに。 けど――掴まれた手首を振り払おうとしても、浅野さんの指には力がこもっていて、逃げられない。「俺は、早霧がいなくなった穴を埋めるために霞くんを抱いているんです。誰かに上書きしてほしいわけじゃない。それに、俺がしていることは世間一般で言えば『異常』なんです。浅野さんは今、同情や珍しさでそう言っているだけですよ。……冷静になってください」「同情じゃないし、珍しいからでもないですよ」 浅野さんは、俺の冷たい言葉を遮るように言い切った。「今にも消えてしまいそうなほど頼りなくて、痛々しいその目を放っておけないと思ったのは、俺のエゴだと思って貰って構いません」 彼は俺の手を解き、今度は優しく包み込むように握り直した。「霞くんを捨てろなんて言わない。それを支えにしているあなたごと、俺に支えさせてほしいんです。……カウンセラーなんでしょう? 他人の心には寄り添えるのに、どうして自分の心にはそんなに呪いをかけるんですか」「それは……」 言葉が詰まる。自分の心を守るために人形を買った。それは、裏を返せば「自分自身には、それ以上、もう自分を守る力が残っていない」と認めることでもあった。  浅野さんの熱い体温が、指先からゆっくりと伝わってくる。早霧の冷え切った拒絶とは違う、生きた人間の、あまりに眩しい熱。「……友だちからでいいって、仰ってましたけど」 俺は、絞り出すような声で言った。「なんでそこまで……構ってくるんですか?」「少なからず、珠依さんのことが気になる存在だからです」 浅野さんは、ようやく少しだけ表情を緩め、い
อ่านเพิ่มเติม
第10話 心の両価性 -アンビバレンス-
(いや、でも……流石にもう、俺のことなんて気にしてないか……) 世界を股にかけるフォトグラファーにとって、道端でぶつかった「人形を抱いた不審な男」なんて、有給休暇中に起きた一時の災難に過ぎないはずだ。 そう自分に言い聞かせ、少しだけ重くなった胸を落ち着かせるように、再びプレオールに手を伸ばした。 白地に青で車が描かれたのと、淡いグレーの動物柄。見てるだけで、心が癒されるようなデザインの筈――なのに。(……テレビで見ました、なんて言ったら有名人だから連絡したって思われそうだし。……うん、忘れよう、忘れるべきだ) ソファーに置いたままの霞くんを見やり、俺は「この子」のために買い揃えた数冊の絵本に視線を移した。 心理学の大層な題目が並ぶ専門書の横に、丸みを帯びたフォントの絵本が並ぶ、ひどく不釣り合いな本棚。 読み聞かせたところで、この子には何も届かない。文字の概念も、声の温もりも、この柔らかい皮膚の奥には浸透しないと分かっている。 けれど、箔押しがキラキラと光る装丁や、優しさに満ちた色彩を目の当たりにすると、抗えなかった。 結局のところ、「ただ俺が欲しかったから」手にした、自己満足の証拠にすぎない。「……『二匹の子リスは、顔を見合わせて言いました。ずぅーっと、ずっと大好きだよ』……」 独りごちるように、絵本の最後の一節を小さな声でなぞる。 けれど、読み進めるほどに悲しみがこみ上げ、やるせなさに耐えきれず、俺はソファーに突っ伏して唸った。(……なんで、浅野さんの顔を思い浮かべてるんだろう、俺……) また誰かにのめり込み、骨抜きにされ、自分の軸が溶けてなくなってしまうのが、何よりも怖い。 けれど、そこまで考えて――もう一人の、「自分を傷つける自分」が心の奥で囁く。 “――もう、彼のことが頭から離れない時点で 自分が自分じゃ、なくなってるじゃん?” カウンセラーとして、客観的に自分を分析するなら答えは明白だ。俺は浅野さんという光に、意識的に心を焼かれようとしている。 七年という長い呪縛を解くためには、それほどに強烈な毒か、あるいは眩しすぎる光が必要だと、本能が悟ってしまったのかもしれない。「……っ、ああもう!」 クッションに顔を埋め、足をバタつかせる。 こんなにも感情を掻き乱されるのは、早霧に別れを告げられて以来だ。 けれど、あの絶
อ่านเพิ่มเติม
สำรวจและอ่านนวนิยายดีๆ ได้ฟรี
เข้าถึงนวนิยายดีๆ จำนวนมากได้ฟรีบนแอป GoodNovel ดาวน์โหลดหนังสือที่คุณชอบและอ่านได้ทุกที่ทุกเวลา
อ่านหนังสือฟรีบนแอป
สแกนรหัสเพื่ออ่านบนแอป
DMCA.com Protection Status