「浅野さん、これ、どこを触ればいいんでしょう。画面が、ずっと……真っ暗なままで」 荷物を整理し終えたあと――ソファに並んで座り、俺は手元のカメラをおっかなびっくり覗き込んだ。 すぐ左側に、浅野さんの体温が寄り添っている。 その近さに心臓が跳ねるけれど、彼はごく自然に、俺の手元へ顔を寄せた。「あはは、珠依さん。ここ、レンズキャップを外してないからですよ。……ほら、指先でつまむようにして」 浅野さんの大きな手が、俺の指に重なる。 ごつごつとした節のある、けれど温かくて頼もしい手の感触。 彼はそのまま俺の指を誘導して、プラスチックの蓋を外させてくれた。「な、失くしちゃいそうで怖いですね……」「あぁ、それはこれを使って。付属品なんですけど、傷がつかないように収納できるので」そう言って浅野さんは、黒いふわふわとした小さな巾着を俺に手渡してくれた。 パッと、ファインダーの中に光が差し込む。 レンズ越しに見る世界は、肉眼で見るよりもずっと鮮やかで、窓辺の光を浴びてキラキラと輝き始めていた。「わあ……綺麗。ただの部屋の中なのに、全然違う」 「まずは、あそこの窓辺でも撮ってみましょうか。……このダイヤルを回して、ピントを合わせます」 浅野さんは俺の背後に回るようにして、肩越しにレンズのリングに手を添えた。 包み込まれるような体勢に、背中から彼の胸の鼓動まで伝わってきそうで、息が止まりそうになる。「こう……ですか?」 うん、と耳元で頷かれる。 窓の外の白い雲をうつした画面に人差し指でふれると、オートモードで雲にピントが綺麗にあった写真が撮れた。「珠依さん、俺よりセンスいいかも」 「それは大げさすぎますよ。でも、すごく楽しいです」 「……なら、良かった」 浅野さんはそう言って、俺の頭をぽん、と優しく撫でた。 褒められた子供のように顔を上げると、応えるように顔を覗き込むながら、彼は笑みをこぼす。「カメラは、自分の好きなものしか映さないんです。……だから、珠依さんがこれから撮るものは、全部珠依さんの『好き』の形なんですよ」 彼の言葉が、すとんと胸の奥に落ちる。 手に握ったカメラ。ソファーにお利口さんで座る霞くん。 そして、すぐ隣に居る浅野さん。 俺の「好き」は、もう、このカメラを向けるまでもなく、この狭いソファの上にす
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