浅野さんと俺が想いを通わせ合ってから、一ヶ月。 相変わらず仕事が忙しい彼は、一週間前から山形県の奥地へ撮影に出かけている。 そして、今夜はようやく、待ちに待った帰宅の日。俺は彼の大好物リストから豆腐ハンバーグを選び、種からこねて和風だしの餡まで手作りして、その帰りを今か今かと待ち構えていた。 「遅くなってすみません!」 駐車場から走ってきたのか、浅野さんは息を切らせて雪崩れ込むように入ってきた。 スリッパを履いて出迎えようとした俺に、彼はそれより早く歩み寄り、背中をぎゅっと強く抱き寄せる。 「浅野さん、おかえりなさい」 そう言っても返事はない。ただ俺の肩口に顔を埋め、深く、深く呼吸を繰り返している。 「な、何してるんですか……」 「吸ってます。はぁー……長かった。やっと、帰ってきたって感じがします」 ぽけーっとしたまま至近距離にある彼の顔を見つめる。数日ぶりの再会もあって、思わず見惚れてしまった。 匂いなんて言われて、『俺、まだお風呂に入ってないです』と慌てると、浅野さんはいつものマウンテンパーカーを脱ぎ捨て、目の前で長袖Tシャツの裾に手をかけた。 「なら、一緒に入ります? 風呂」 「へっ!? や、あの……それは……!」 真っ赤になって両手をぶんぶん振る俺に、浅野さんはふっと笑みをこぼして『どうしてダメなの?』と悪戯っぽく尋ねてくる。 良いとか、ダメとか以前の問題だ。そもそもまだ一緒にお風呂に入ったことなんてないし、キス以上のことだって未だ――。 そこまで考えて、ふと服を脱ぎかけた浅野さんの左手首が目に入った。 手首をぐるりと覆うように貼られた湿布。俺は思わず『えっ』と声を漏らす。 「浅野さん、それ……」 「あぁ、撮影中に山道で足を滑らせちゃって。大丈夫ですよ、折れてはいないですから」 「でも、ちゃんと病院にっ――」 「大丈夫。先に風呂入らせてください。……後から来てくれるの、待ってますね」 浅野さんは顔を火照らせている俺を見て『冗談ですよ』と笑いながら洗面所へ消えていった。 湿布の白さが痛々しかったけれど、いつ怪我をしたんだろう。羽黒山に行くと言っていた四日目か、それより前なのか。 連絡は取り合っていたのに、俺には一言も教えてくれなかった。きっと、心配させたくなかったのだろ
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