Alle Kapitel von 元彼に「赤ちゃんが欲しい」と言われて、タオルをお腹に詰めてたら振られましたが、有名フォトグラファーの彼に愛されています♡: Kapitel 51 – Kapitel 60

82 Kapitel

第51話 丸裸にされる心

◇◇◇ 深い波に何度も攫われるような、そんな時間が過ぎていった。 二回、身体を重ねて、ゴムを外した透利さんの指先が俺の頬を優しく撫でる。深夜の静寂に溶けてしまいそうな、甘くて穏やかな時間。 普通なら、ここで幸せに浸りながら眠りにつくんだろう。 けれど、俺の心は少しも満たされていなかった。(明日から、いなくなっちゃう……数日も。もしかしたら、もっと長く) 一度火がついた嫉妬と不安は、たった二回の絶頂では消えてくれない。それどころか、肌を合わせたことで、もっと、もっと彼を自分の中に刻み込みたいという強迫観念のような欲求が膨れ上がっていく。「ちょっ、珠依さん。待って、そんなことまでしなくても……」 動揺する透利さんの声を無視して、俺は横たわる彼の脚の間に割り込んだ。まだ生々しい熱を帯びた「そこ」に顔を寄せる。「どうしてダメなんですか?」 「いや、どうしてって……もう、十分でしょう?」 困ったように笑う透利さんを見上げると、さらに不安が募る。俺がこんなに狂おしいのに、どうしてこの人はそんなに余裕があるんだろう。 「透利さんの、いっぱい舐めたい……ダメですか?」 自分でも驚くほど熱っぽい声が出た。 拒まれるのが怖くて、俺は誘うように舌先を覗かせると、そのまま迷いなく彼を口に含んだ。「ん……っ、……。きれいにお掃除させて下さい……」 「ちょっ、珠依さん。言い方が……っ」 透利さんの大きな質量が口内をいっぱいに満たす。 かつて、そう教え込まれたから。こうして尽くして、相手を悦ばせることだけが、俺が「愛される」ための唯一の証明だと思って生きてきた。 透利さんにそんなつもりはないのだろうけど、二回達して硬さを失ってもなお大きすぎるそれ。喉の奥を突かれる苦しさに涙を浮かべながら、俺は夢中で彼を貪った。 舌で、喉で、透利さんのすべてを味わい尽くす。卑猥な水音が寝室に響くたび、自分のいやらしさが暴かれていくようで、同時に得体の知れない高揚感が背筋を駆け上がる。「んっ……ぅ、は……んん……」 とろ、と伝う精液を俺は一滴も零さないように飲み込む。 口の端を拭いながら、わざと挑発するように彼を見つめた。「珠依さんっ、そんな風にされると……」 ちゅう、ちゅう……と吸い付くと、透利さんの目が、見たこともないほど鋭く見開かれた。
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第52話 約束のキスマーク

「っ、透利……さん……っ?」「染み付いた過去も、あいつの教えも……全部忘れさせてあげます。俺が、君の『普通』を全部壊して、俺だけの身体にする」 優しかったはずの透利さんの瞳には、もう「余裕」なんて微塵も残っていなかった。 そこに宿っているのは、逃げようのない、凶暴なまでの独占欲。 (でも……嬉しい、って思っちゃう……) 過去の傷も、いやらしい手法も、すべてを焼き尽くすようなこの人の熱。 俺は泣きそうになりながら、彼にすべてを委ねるように、細い腕をその首に回した。 シーツを掴む指先が白くなるほど、透利さんの突き上げは容赦がなかった。先ほどまでの優しい愛撫は鳴りを潜め、そこにあるのは、俺という存在を余さず支配しようとする「雄」の剥き出しの欲望だった。「……っ、ぁ、と……透利、さんっ、……はぁ、っ」 「珠依さん、こっち見て。……今、誰に抱かれてるか分かってますか?」 「あっ、あっ……透利さん、透利さんと……っ」 「うん、俺と? 何してるの。ちゃんと言葉にして」 「……透利さんとエッチして……っ、自分から……おねだりして、気持ちよくなってます……っ」 低く、逃げ場のない声が鼓動を直接揺さぶる。 透利さんの大きな掌が、俺の両手首を頭上で一纏めに押さえつけた。無防備に晒された喉元を、彼の鋭い視線が射抜く。「……あんなに必死に奉仕して、俺を繋ぎ止めたいんですか? それとも、そうしないと愛してもらえないって……まだ、あの男の影に怯えてる?」 「っ、ちが……っ、あ、……っ!」 「違わないでしょう。あいつに教えられて、身体が覚えてる『愛され方』をなぞってる。……それが、たまらなく癪に障る俺の気持ち、分かります?」 透利さんはわざと、俺が一番弱く、甘く痺れる場所を執拗に、重く抉るように突いた。 脳裏を掠めるのは、かつての苦い記憶。けれど、それを打ち消すように、透利さんの熱い質量が俺の最奥を容赦なく蹂躙していく。「あ、……ぁ、んっ……ひ、ぅ……っ!」 「心も体も、全部俺のでしょう? ねぇ」 言葉責めに、耳元で囁かれる熱い吐息。コクコクと必死に頷いて、透利さんのものだと全肯定する。「全部もう俺のですから。珠依さんの身体は俺が管理して、俺が自分のやり方で気持ちよくさせます」 羞恥心と快楽、そして彼に全てを見透かされているという恐怖が混
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第53話 朝の光

意識が浮上したとき、枕元の時計はとうに七時を回っていた。 いつもなら隣で静かな寝息を立てているはずの浅野さんの姿は、もうそこにはない。 その不在を埋めるように、胸元には霞くんがいて、背中には彼が脱ぎ捨てていった部屋着のパーカーが、そっと掛けられていた。 サイドテーブルに目をやると、一枚のメモが置かれている。『ぐっすり寝ていて起こすのが可哀想だったので、先に出ます。できるだけ早く帰ります』 カレンダーで見慣れている、語尾をふわりと跳ねさせる彼独特の筆跡。その愛嬌のある文字を眺めていると、まだ自分が夢の続きにたゆたっているような、不思議な心地がした。(……まだ、夢の中にいるみたい) 「行っちゃったんだ」という寂しさは、もちろん胸の奥にある。 けれど、それが悲しみにまで変わらないのは、きっと今の自分の中に、浅野さんの肌の温もりや、低く響く声、柔らかな感触が、まだあたたかいまま残っているから。 でも、あと何日、この余韻を抱いていられるだろう。 ふとした瞬間に消えてしまいそうな幸せを何度も手繰り寄せては、こぼれそうになる涙を手の甲でそっと拭う。 起きてからたった五分。強がってみたところで、やっぱりどうしようもなく寂しくなってしまう。 けれど、彼が外で頑張っているのなら、自分だってここで足踏みしているわけにはいかない。「……よし」 小さく自分を奮い立たせて、霞くんの柔らかな頭をひと撫でする。彼のパーカーの袖に腕を通し、大きなサイズ感に包まれながらベッドを抜け出した。 キッチンから漂ってくる微かなコーヒーの香りすら、彼が残してくれた優しさの欠片のように思えて、胸の奥がふわりと温まる。 ソファーに深く腰を沈め、スマートフォンの画面を点けた。『おはようございます。今起きました』 うさぎが「おはよう!」と手を振るスタンプを添えて、メッセージを送る。 すぐに既読はつかない。今はきっと移動中なのかもしれない。頭の中で仕事に向かう浅野さんの横顔を思い描きながら、指先で求人サイトをゆっくりとスクロールしていく。(……やっぱり、なかなか見つからないな) 心理カウンセラーという仕事は、新着が出るスピードが驚くほど遅い。 このまま浅野さんの好意に甘えて、養ってもらう生活を続けるなんて、自分にはあり得ないこ
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第54話 iPhoneの通知

◇◇◇ その日の夜、現地のホテルに到着したという浅野さんとビデオ通話を繋いでいた。 画面の向こうで零されるのは、『手料理がもう恋しいです』だとか、『寒くて乾燥もひどいから早く帰りたい』といった弱音ばかり。普段の彼からは想像もつかない姿がなんだか無性に可愛らしく思えて、画面越しに目一杯甘やかしてあげたい衝動に駆られる。「帰ってきたら、いっぱい美味しいものを作ってあげますね」 何がいいですか、と微笑んで尋ねた。けれど、浅野さんの表情は一瞬で曇ってしまった。 そして次に彼が口にしたのは、予想だにしない一言だった。『……飯も食べたいですけど、珠依さんにまた触りたいかな』 呆然として、軽く目を見開いたまま画面を凝視してしまう。浅野さんからこれほど直球に求められるなんて、思ってもみなかった。それも、情事の最中ではない、こんな日常の延長線上にある会話の中で。 熱くなった頬を隠すように『……俺も、ですよ』と小さく零した。「浅野さんが置いていってくれたこれ、ずっと着てますし」 自分の体が映るように、少しだけスマホの角度を変える。 身に纏っているのは、いつものルームウェアではない。彼が貸してくれた、大きめの黒いスウェットパーカー。 沈黙が流れる。浅野さんの視線が、画面越しに合うのを感じた。『……俺の匂い、落ち着きますか?』 その問いかけに、腕の力がぎゅっと強まる。「っ……ずるいですよ、それ。置いていかれたら、透利さんの服、着たくなっちゃうの分かってるくせに」 胸の奥が熱く疼いた。やっぱりこの人は、愛のことになると少しだけ意地悪だ。根底にあるのはどこまでも優しく穏やかな性質なのに、こちらの逃げ道を塞ぐような、甘い要求をさらりと投げかけてくる。 そういうところも、全部、好きで。 だからこそ、一刻も早く彼に会いたかった。◇◇◇ 透利さんが「今日は早峰山に行ってきます」と言い残して撮影へ向かったその日。 窓から差し込む光の中で交わした、いつも通りのスマホ越しの「おはよう」というやり取り。 昼を過ぎ、陽が傾き始めても、トーク画面の横に既読の二文字が刻まれることはない。 多忙な彼のことだから、撮影に没頭しているだけだと言い聞かせてはみるものの、胸の奥で小さな不安の棘がちりちりと肌を刺す。 普段なら、休憩の合間に短いスタンプの
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第55話 病室のベッドで

「と、透花さんっ……! 今、スマホに、通知があって……透利さんが、事故に遭ったかもしれなくて……っ」 かすれた声で訴える俺に、受話器の向こうの透花さんは、痛いほどの沈黙のあと、努めて冷静な声を絞り出した。「……アタシも今、その通知が来たところだけど……珠依くん、いい? とりあえず落ち着きなさい。今は透利の家に居るのよね?」 「で、でもっ……! 病院、すぐに行かないと。透利さんが」 今すぐここを飛び出して彼のもとへ駆けつけたい。 その一心で立ち上がろうとしたけれど、震える膝に力が入らない。「待って。まだ詳しい状況も、どこの病院に運ばれるかも分からない。アタシの方に救急隊からの連絡があるかもしれないから、一旦電話を切るわよ」 冷徹なまでの判断。それが今の透花さんにできる唯一のことなのだと理解していても、独り残される恐怖に押し潰されそうになる。「何か分かったら、すぐに共有するから。だから、珠依くん。今は絶対に、自分一人で無茶な動きはしちゃダメ。約束して。いいわね?」 有無を言わせぬ語気に、俺はただ消え入るような返事をするしかなかった。 通話が切れたあとの無音の部屋。スマホの画面から放たれる青白い光だけが、彼が命の危機に瀕している残酷な現実を照らし続けていた。◇◇◇【side:浅野透利】 まどろみと現実の間を、ふわふわと漂っているような感覚だった。 重たい瞼をゆっくりと持ち上げると、目に飛び込んできたのは見慣れない白い天井。窓際のカーテンから透ける淡い光が、今は夜なのだと静かに告げている。(……ここ、は……?) 頭がぼんやりとして、うまく回らない。 体を動かそうとしても、手足に重い鉛でも詰め込まれたみたいに体がいうことを聞いてくれなかった。何か言おうとしても、喉がカラカラに乾いていて、掠れた息がこぼれるだけ。(俺の家じゃない。……珠依さんは、どこだろう) 遠のいていく意識を必死に繋ぎ止めると、断片的な記憶がぽつりぽつりと浮かんできた。 撮影に出発する前の、静かな朝のこと。ベッドでまだ夢の中にいた珠依さんの、柔らかな頬にそっと触れるだけのキスをした。「いってきます」と言えば起こしてしまうから、寝顔を愛しんでそのまま部屋を出たんだ。 それから、新幹線で向かった岩手の撮影現場。 夜、いつもの時間に電話したときの、珠依さん
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第56話 ひとりぼっちと本音

「浅野さーん、分かりますか? ここ、国立病院です。怪我をしているので、動かないで下さいね」 入ってきたのは、数人の看護師や医師。その後ろには、なぜか透花や俺の両親まで顔を揃えていた。 みんなが蒼白な顔で俺を見守るなか、容赦のない検眼ライトが当てられ、名前を言えとか、ここはどこだとか、矢継ぎ早に質問が飛んでくる。 意識が戻ったばかりで思考が追いつかない俺を置き去りにしたまま、嵐のような診察が一段落した。担当医は手元のボードにさらさらと何かを書き込みながら、重みのある口調で告げた。「浅野さん。あなたは早峰山から滑落して、一時的に意識不明の状態でした。右手の骨折、それから両脚も……全治二ヶ月の怪我を負っています」 医者の言葉に、途切れ途切れの記憶が呼び起される。そうだ、山での撮影中に足元が崩れて――。 窓辺に置かれたカメラは傷がつきまくり、袋に入れられた山道用のアウターもボロボロに破けていて、どれだけの衝撃があったかを物語っていた。「あの状況で、これだけの怪我で済んだのは、まさに奇跡と言っていいでしょう。普通なら……もう、こうして会話することすら……」 奇跡――。 その言葉を聞いた瞬間、俺の視界の端で、珠依さんがまた小さく肩を震わせた。「透利……よかった、本当に、生きててくれて……」 母さんがボロボロと安堵の涙を零す横で、透花が『この大馬鹿者!』と鋭い声を張り上げた。「どんだけ心配させるのよ! 出来損ないにもほどがあるわ、全く……っ」 怒鳴り散らしながらも、その瞳が真っ赤に潤んでいるのが見える。父さんも黙って深く椅子に沈み込み、何度も胸を撫で下ろしている。その様子を見て、ようやく自分がどれほど死の淵にいたのかを、他人事のように理解し始めていた。 けれど、何よりも胸を締め付けたのは、目の前でうなだれる恋人の姿だ。 珠依さんは一言も発せられないまま、両手で顔を覆って、薄い肩を震わせている。 今すぐその肩を抱き寄せたい。大丈夫だよと笑って、涙を拭ってやりたいのに、鉛のような体は指先ひとつ動かすことさえままならない。その情けなさに、奥歯を噛み締めた。「珠依くん、知らせを聞いてすぐに新幹線で東京から岩手まで飛んできたのよ。アンタが目を覚ますまでのこの三日間、ずっと寝ないで付き添ってて……もう……見てらんないったら! 早く安心させてあげな
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第57話 抱きしめてあげられないから

「どれだけ心配したと思ってるんですか!? 俺、あんな恐ろしい通知が来るなんて知らなかったし……設定していたなら、前もって教えてくださいよ! 最初、悪質な詐欺か何かだと思って……でも透花さんにも届いたって聞いて、生きた心地がしなかったんですから!」 激しい怒りと、それ以上の悲しみが混ざり合った叫び。彼は俺の胸ぐらを掴む代わりに、布団をぎゅっと握りしめた。「あんなに、気を付けてって言ったのに……! どうしてこんな大怪我するんですか!? 俺が、どんな気持ちでここまで……一人で新幹線に乗って、どんな思いで来たと思ってるんですか! なのに、透利さんは……っ……!」 言葉にならない感情が、激しい嗚咽となって彼を震わせる。 俺を失うかもしれないという恐怖に、たった一人で立ち向かってここまで来てくれたんだ。 何もかもを放り出して、ただ「俺」という存在だけを求めて。「……もう二度と、こんな思いはしたくないです」 はぁ、と重いため息を漏らしながら、彼は乱暴に涙を拭った。その姿から、一瞬たりとも目が離せない。 いつも控えめで、俺の後ろを一歩引いて歩くような彼が、こんなにも感情を剥き出しにして、怒りも悲しみも真っ直ぐにぶつけてくるなんて。そんな日が来るなんて、思ってもみなかった。 珠依さんは何かを必死に堪えるように、膝の上でぎゅっと拳を握りしめている。その指先の震えを見ただけで、ああ、本当は彼も俺を抱きしめたくてたまらないんじゃないか――なんて、ぼんやりした頭で考えてしまう。それがどうしようもなく愛おしくて、胸の奥が熱くなった。「……ごめんなさい。今は俺から抱きしめてあげられないから、珠依さんから、してもらってもいいですか?」 いつもなら、俺が彼を包み込む側だったのに。 情けなく眉を下げて苦笑いする俺を見て、珠依さんはまた一粒、大きな涙をこぼした。そして、何も言わずに椅子から立ち上がると、壊れ物に触れるような手つきで、そっと俺の頭を自分の胸へと引き寄せた。 ――トクン、トクン。 耳元に届く、規則正しい鼓動。 世界で一番きれいで、大切で、美しい人の、生きている証。 それは、今まで聞いたどんな音楽よりも、世界で一番優しい音だと思った。 俺の髪に触れる彼の指先が、まだ微かに震えている。その震えが収まるまで、俺は動かない左手で彼の腰を頼りなく抱き寄せ
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第58話 ただいま、おかえり

そうして、ようやく戻ってくることができた俺たちの家。 利き手を骨折し、移動も松葉杖という有様では、自分の身の回りのことすらままならない。情けないほど無力な俺に代わって、珠依さんは料理も家事も完璧にこなし、あろうことか空き時間には俺の仕事まで手伝ってくれた。 おかげで進行中だったクライアントへの納品も滞りなく済み、相談中だった撮影案件も、各方面へ掛け合って調整をつけてくれた。一番意外だったのは、珠依さんはパソコンの作業がめちゃくちゃ早いことだった。下手をしたら、俺なんかよりずっと。 今の珠依さんは、霞くん(の人形)を抱いて穏やかな時間を過ごしていた頃の面影を封印し、「俺の世話を焼くこと」に全神経を注いでいるようだった。 かつては肌身離さず持ち歩いていた霞くんは、今ではベビーベッドで眠っている時間の方が長い。 その分、俺への過保護ぶりは凄まじかった。 着替えの補助はもちろん、風呂の代わりに体を拭いてもらうのも、食事を「あーん」で口に運ばれるのも……。至れり尽くせりなのは有り難いが、あまりの献身ぶりに、本気で赤ちゃんになったかのような恥ずかしさを覚えていた。「あれ?」 「……どうしたんですか?」 「いや、ちょっとスマホが見当たらなくて」 もはや定位置と化したベッドの上で、シーツをなぞるように手を滑らせる。必要なものはすべて珠依さんが手の届く範囲にまとめてくれているはずなのに、スマホだけが見当たらない。 珠依さんは『どこに行っちゃったんでしょうね』と困ったように微笑むと、ベッドの枕元や足元を、屈み込んで探し始めてくれた。――くれたのだが、それが良くなかった。(……っ、うわ……エロ……) 前屈みになった拍子に、ゆるいTシャツの襟ぐりから胸元が露わになる。 チラリと覗いた、淡い色の粒。一瞬の光景だったが、俺の意識は完全にそちらへ持っていかれた。「ベッドの下に落としちゃいましたかね。でも、音がしなかったんですけど……」 眉を下げて困り顔をする珠依さんと、まともに目を合わせられない。 苦笑いで誤魔化しながら視線を逸らすが、今度はベッドの下を覗き込むために突き出された彼のお尻が視界に飛び込んできた。彼が無自覚なのをいいことに、俺の視線は吸い寄せられるようにそこへ固定される。(あー……鷲掴みにしたい……ちょっと食い込んでんの気づいて
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第59話 恋人だから

(あー、マジでどうしよう……抜かないとどうにもなんないやつだ、これ) そんな俺の焦燥をよそに、珠依さんが不意に掛け布団へ手を伸ばす。「中に紛れてないですか? ……ちょっと失礼しますね」 ふわ、と布団を捲られた瞬間、隠しようのない現実が露わになった。 パッと見ただけで誰がどう見ても猛り狂っていると分かるそこに、珠依さんの視線が止まる。その瞬間、俺は居た堪れなさで、乱暴に視線を逸らすことしかできなかった。「……あっ……ありました! ほら、ここの隙間」 一度は見て見ぬふりをしてくれたものの、スマホを拾おうとした珠依さんが腕を伸ばし、再び俺の上で前屈みになる。その拍子にチラチラと覗くのは、先ほどから俺を狂わせている胸元だ。 なんなら、重なり合うようにして俺の脚に彼の柔らかな体が触れている。それに気づいたらしい本人は、スマホを両手に持ったまま、沸騰しそうなほど真っ赤になってフリーズしてしまった。 言い逃れもできないし、据え膳を無視するのは男の恥だ。俺は珠依さんの手からそっとスマホを引き抜くと、自由な方の手で彼の熱い頬に触れ、縋るような視線を向けた。「珠依さん、ごめんなさい。……ちょっと、溜まりすぎてるみたいで」「き、気づかなくてごめんなさい。あの……俺……っ」 「代わりに抜いてくれ」とまで言うのは、流石に憚られた。 けれど、珠依さんは震える手で俺のスウェットの紐に指をかけると、そろりとそれを解きながら、覚悟を決めたように言った。「恋人ですから……。俺、シてあげますね」 待て待て、それは。――期待と理性がせめぎ合う。 珠依さんはスウェットの隙間から俺のそこを露わにすると、猛りきった熱に細い指を添え、躊躇いもなく顔を近づけてきた。「ちょっ、待って……珠依さん」 そんなことをされたら、一瞬で果てる自信がある。いや、嬉しいのは間違いないが、刺激に飢えていたせいでコントロールがまるで効かない。このままでは――。「……ん、おっきい……。いっぱい出していいですよ、透利さん」 優しく扱かれて、ちゅ、ちゅ、と粘膜の擦れる音。 竿をなぞるように這わされる舌の感触に、そこはもはや痛いほどに硬く跳ねる。 けれど珠依さんは、一切手を緩めようとはしなかった。それすらも大切な「介護」の一環であるかのように、ただ懸命に、完璧にやり遂げよ
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第60話 熱い吐息

じじ、とファスナーが下がる音。ゆっくりと腕を抜き、ぺらぺらでゆるゆるのロンTをめくり上げる。 露わになったお臍、そして胸、肩。――現れた白すぎるほどの肌に、俺は釘付けになる。 男にしては線が細くて、内臓なんか入ってるんだろうかと疑いたくなるようなくびれ。でも、お臍の形だけはちょっと子供っぽくて、マジで自分が一瞬犯罪者になってしまったかのような年齢差を感じさせて、恐ろしくなる。 珠依さんは、俺のスウェットを脱がせた時と同じように、部屋着のズボンの紐をゆっくりと緩めた。少しずつ足を抜き――そこで動きを止める。 『下着も……?』と問いかけるような、不安げな表情。俺は黙ったまま、視線だけを返した。 その視線の意味を汲み取った彼は、ぎこちない手つきで残った布地も脱ぎ去り、ついにベッドの上で、華奢な裸を俺の前へと晒した。(めちゃくちゃ綺麗……。あー、もう、今すぐめちゃくちゃに触りたい。突きまくって、鳴かせたい……っ) 恥ずかしそうに肩を震わせる珠依さんを見つめていると、衝動のままに突き入れたいという本能が暴れ出す。 俺は太ももの付け根のあたりへ彼を招くと、促されるまま跨ってきたその尻に、先走りでぬめる熱をわざと擦り付けた。「ここなら、座ってもいいから……」 そう言って、目の前に迫った平坦な胸に顔を寄せる。「あっ、やっ……透利さん……っ」 「ほら、こうすれば乳首……可愛がってあげられるし。珠依さん、太もも、閉じて挟んで……?」 言われるがままに両脚を閉じ、その隙間にガチガチの凶器を挟み込む珠依さん。 自身の白く細い腿の間から、赤黒く猛った俺のそれが繰り返し出し入れされる光景を見つめ、彼は今にも泣き出しそうなほど顔を真っ赤に染めている。 舌と唇だけで突起を丹念に可愛がると、珠依さんはすぐに艶っぽいよがり声をあげて腰をくねらせた。……やっぱり、恋人にこんな言葉は使いたくないが、あまりにも淫乱だ。「珠依さんも、シたかった……? 毎日エッチしたい、って言ってくれてましたもんね」 「っん……シたかったです……。だって、帰ってくるの、ずっと楽しみにしてたから……っ」 利き手ではない左手の指を、ふに、と彼の後ろに添える。けれど、思うように動かせないもどかしさに舌打ちしたくなった。 だが、指先に伝わる感触が――以前よりもずっと、柔らかい気が
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