◇◇◇ 結局、家に帰ったのは夜の九時過ぎ。 くたくたになった俺は、出張中の透利さんに『すごくねむいです』とメッセージを送ったのを最後に、ソファで力尽きて眠ってしまっていたらしい。 ふと目が覚めて時計を見ると、もう朝の八時を過ぎている。 「やばい……! 透利さん、朝に帰ってくるんだった……!」 心臓が跳ね上がる。慌てて起き上がると、シャワーを浴び、着替えを済ませてからキッチンへと飛び込んだ。 以前は家事だけをしていればよかったけれど、今は仕事に加えて、二人の食事もしっかり用意したいと思っている。 仕事で神経をすり減らした後の家事は、正直に言えば結構大変だ。けれど、こうして忙しく立ち働いている方が、余計な不安に飲み込まれなくて済む。自分の性に合っているのかもしれないと、最近ようやく気づき始めていた。 ――トーストの香りがキッチンに広がり始めたその時、玄関の鍵が開く音がした。 「ただいま」 大好きな人の声に、俺は玄関へと駆け出す。 そこには、少し疲れは見えつつも、相変わらず穏やかに微笑む透利さんの姿があった。 「おかえりなさい、透利さん! ごめんなさい、今急いで朝ごはん作ってて……」 「いいですよ、そんなに慌てなくても。……顔、まだちょっと眠そう」 そう言って透利さんは、荷物を置くのももどかしそうに、俺の腰を引き寄せて優しく抱きしめた。 彼の体温と、どこか安心する香りが鼻先をくすぐる。 「……仕事、頑張りすぎじゃない? メッセージ、途中で切れてたから心配したよ」 「あ……すみません。寝落ちしちゃって。でも、今の仕事、すごくやりがいがあるんです」 俺が胸を張ってそう言うと、透利さんは「そっか」と満足そうに目を細めて、俺の額に柔らかなキスを落とした。 あの日、テカポの星空の下で誓い合った未来。 それは、ただ守られるだけの毎日じゃなくて、お互いに自分の足で立ち、支え合いながら歩んでいく日々だった。 俺を「パパ」と呼ぶ子どもたちの笑顔と、俺を「家族」として愛してくれるこの人の体温。 その両方が、今の俺の宝物だ。 「さ、冷めないうちに食べましょう。今日は透利さんの好きなワンプレートですよ」 「ふふ、楽しみ。ずっと食べたかったんです」 繋いだ手に力を込めて、俺たちは明るい光が差し込むリビングへ
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