Alle Kapitel von 悪役オメガは何度でも断罪される: Kapitel 21 – Kapitel 30

62 Kapitel

8:三周目

 ふわっとした浮遊感があった。 目の前に広がる、青い空。 そして続く、落下する感触と水音。 気管を塞ぐ、水・水・水……。「息をしなさい! マシュー!」 抱き上げられ、水の中から引き出される感触。 父の声。「がはっ! げほっ!」「おお! 無事でしたか!」──また……、戻ったのか? 俺の目の前に、跪いた少年がいる。 俺の背中を擦りながら、父上が少年──アレクシスに頭を下げている。 そして、アレクシスの後ろに呆然と立っているランドルフ。「ありがとうございます! アレクシス王弟殿下!」 父の声を遠くに聞きながら、俺は一種の安堵感に近い気持ちと、再び繰り返される絶望感を感じながら、目を閉じる。 そして、次に目を開いた時には、やっぱりマシューの部屋にいた。──繰り返されている。間違いなく。 ランドルフの謝罪と医者の診察が終わり、俺は一人、部屋の天井を眺めて考える。──ランドルフと距離を詰めると、メルヴィンの嫉妬を買う。これは、確定だろうな……。 そして、メルヴィンが王太子以外の攻略対象を選んだ場合、恋に焦がれたランドルフは、八つ当たりと評価を兼ねて、俺への断罪をより暴力的な内容へと変化させることも知った。──アレクシスの言う通り。俺には護衛が必要だ。 しかもそれは、絶対的に信頼の置ける者でなければならない。 俺がメルヴィンに危害を加えた〝捏造〟の証拠を、なんとしても覆すためには、こっちも動かぬ証拠を提示しなければ。──でも、どうやって? そもそも、恋愛ゲームの世界であるなら、ヒロインに焦がれないキャラなどいないだろう。──いや、でも、父上は二度とも俺を信じてくれた。 全くのモブであれば、ヒロインの求心力が効かないのかもしれない。──だが、あくまで可能性でしかない……か? そ
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8-2

 そして俺は、再びモーレツな早起きをして、父上の出仕を見送るようになった。 〝あざとかわいく〟をモットーに、でもくっついて行こうとはしない。 他のアルファが近づいた時に出る拒絶反応を、隠すのも止めた。 前回は、ランドルフとの親密度を上げるために、アルファが怖いことは毛筋ほども匂わせないように我慢していたが。 父上以外のアルファが傍に来た時は、隠れ、怯え、泣いた。 最初のうち、父上は「マシューは人見知り」と思っていたが。 母上が「マシューが怯えるのは、アルファだけですよ」と指摘したことで、父上は件の〝池ドボン事件〟の所為で、俺がアルファ嫌いになったと思ってくれた。 本当の理由は、前世の北の開拓地なんだが。 それは、言っても仕方がない。 ある日、父上がものすごいどんよりした顔で王宮から戻ってきた。「マシュー」 夕食が済んだところで、父上が口を開く。「はい」「今日、陛下から直々にお言葉を賜った。おまえとランドルフ王太子殿下との婚約が決まったよ」 父上の言葉に、母上が眉根を寄せる。「マシューが……、怖がっていることは伝えたのですか?」「ああ。だが、陛下が〝ランドルフに償いをさせねば〟とおっしゃってな」 俺は目の前が真っ暗になったような気がした。 どんなに努力をしても、ゲームの強制力から逃れる術はないのだろうか? わなわなと震える俺を、父上と母上がぎゅうと抱きしめてくれた。「マシュー、心配をするな。どうしても無理なら、父が必ず陛下を説得するからな」「ええ、マシュー。母も、あなたを守るために王妃様に進言してみますからね」 俺は、ただ小さく頷くだけだった。
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8-3

 ランドルフとの距離を縮めないと決めたものの、それはあくまで俺の〝心の決め事〟であり、最低限の接点を減らすことは出来ない。 それは、お茶会であり、俺の王妃教育であり、魔法学園への入学だ。 一番プライベートに距離が縮まるはずのお茶の時間は、俺がアルファに怯えまくることで、むしろ〝侯爵家子息のアルファ嫌い〟アピールに使えた。 最初はなんとか俺との距離を詰めようとしたランドルフだが── 物理的な距離を詰めようとすると泣くし。 対面して話しかけてもビクビクして返事もしない。 謝罪を微妙に受け入れず返事をはぐらかす。 などが続いて、流石にうんざりしたようだ。 そりゃそうだろう。 そもそも最初は〝自分が突き落とした〟という、多少の後ろめたさがあったかもしれないが。 時が経てば、そんな些細なことをいつまでも根に持っている嫌なやつにしか思えない。 更に、その不満を口にすれば、突き落としたおまえが悪いと、父母から〝お叱り〟を受ける。 子供にとって、そんな理不尽な話があるわけが無い。 そこに持ってきて。 俺の気持ちを汲んだ父上と母上が、陛下や王妃に〝婚約辞退〟の申し出を定期的に打診し続けている。 となると、王太子が不満を漏らさなくとも、相変わらず俺が打ち解けず、未だアルファ全般に怯えている……と判断され──「ランドルフの謝罪が足りない、誠意がない」 とみなされて、やっぱり小言の嵐が吹き荒れているに違いない。 ランドルフにとって、婚約者の存在は自分の幼少の頃の汚点がそのまま形になっている状態……ということになる。 そこまで〝煩わしい存在〟の王妃教育の場にランドルフが顔を出さなくなるのは必然で。 お陰でランドルフとの接点は、十五歳になるまではお茶会のみに限定された。──だが、これはこれで、ランドルフの恨みを買いそうで不味いな……。 向かい側で苛立たしげな顔をしているランドルフを、ある意味ものすごく冷ややかに観察
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9:護衛

 王宮に通い始めて間もない頃は、登城時は父上と同じ馬車で向かい、護衛らしい護衛は付けず、父上の側近が護衛代わりになっていた。 なんせ幼児だから本人にほぼプライベートなどなく、常に大人の目があるから〝専属護衛〟なんてものは必要がない。 俺としては、そのままその側近を護衛にしたかったのだが、父上の仕事が滞ることが目に見えていたので、さすがにねだれなかった。 だが、ランドルフが十歳になったところで、内定だった〝婚約者候補〟だったのが公式となり、俺が八歳の時に正式に婚約者と発表された。 その晩、夕食を食べ終わったところで俺は切り出す。「父上。わたくしは専属の護衛が欲しいです」「まぁ、護衛なんて! 父上と登城して、お城の中ではマーロンが付き添っているのでしょう?」 母上は〝まだちょっと早いのでは?〟って感じで、父上を見る。「マシューは、どうしてそんなことを言うんだい?」 母上の視線をビシビシ感じているのか、冷や汗を拭き拭き父上が俺に問う。「かっこいいではありませんか! 冒険譚では、姫には護衛がいるものです」「まぁ、マシューったら。本当にこの子は時々夢見がちね」 全くスジも理屈もない発言に、母上のガードが下がったのが分かる。 が、逆に十歳の兄の反感を買った。「マシューに護衛をつけるなら、私も付けて欲しいです!」 そりゃそうだろう。 護衛対象の子供がウロウロするのを、大の大人が必死になって追いかけ回す構図は、子供なら誰でもやってみたいに決まってる。 特にスチュアートの場合、アルファの支配する本能が、まだまだ前に来ている年頃だ。「外出時には、家の者が付くだろう?」「父上は、マシューにばかり甘いです!」「スチュアートは跡取りの長男なんですから、我慢を覚えなければいけませんよ」 母上が、柔らかい口調でそう言った。 アルファの長男として、ややスパルタ寄りの厳しい教育を施されているスチュアートにしてみれば、末っ子オメガの俺に対して、両親が贔屓していると感じるところだろう。
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9-2

 アルフォンスは、実に理想的な護衛だった。 無口で、勤勉。 十歳になった時点で、父上とは登城の時間も違うからと別になり、俺は専用の馬車を与えられた。 もちろんそれに、スチュアートは嫌な顔をしたが。 この馬車は、侯爵家ではなく王家から〝支度金〟の一部として、購入資金が出された。 経済の成り立ちやら、金銭感覚やらを身につけるために、勉強のためのペンやインクみたいな小物は、自分の小遣いで賄うようにと言われ。 王宮からの戻り道で、文具店に寄るようなこともするようになった。 そんな時、モノ選びのコツみたいなものを教えてくれたし。 なにより、寄り道でちょっとお菓子を買い食いするような時に、菓子を分けると共犯になってくれたりした。 もっとも、それらは──両親に筒抜けだった可能性は否定できないが。 俺が〝愛らしく〟無邪気に子供っぽい行動をするのを、羽目を外さない程度に守り、導き、見守る……ができる人物だったから。 俺はもちろん、父上と母上もアルフォンスにはずっと護衛を続けてほしいと願っていた。 そもそもアルフォンスだって、仕事を続けたかったに違いない。 だが、俺が八歳の時に五十七歳だったアルフォンスは、魔法学園入学時には六十四歳になっていた。 学園の入学式が目前に迫ったある日。 アルフォンスはぎっくり腰を患って休んだ。 そして、その翌日に辞職を申し出てきた。 青天の霹靂とはこのことだが、誰を責めるわけにもいかない。──だが、誠実で真摯なモブなら、信頼関係が築ける可能性もある。 アルフォンスの引退は手痛いが、得られた知識は有効利用すべきだ。──なら、次の護衛はオメガに惑わされにくいベータを選ぶべきだな。 番を持ってるアルファなら、ヒロインに惑わされにくいかもしれないが、老成したアルフォンスだからこその枯れたいぶし銀だった可能性は否定出来ない。 更に、アルフォンスが年齢的な理由で引退したことを考えると、父上がアラサーの護衛を選ぶことも考えられる。
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10:スチュアート

 魔法学園の入学式。 ピンク髪のヒロインは、まるでそこにスポットライトが当たったかのように華やかに登場した。 蜂蜜色のこぼれるような瞳に、天真爛漫な笑みを添え、学長に名を呼ばれた瞬間に「はいっ!」と答えて壇上へと進む。 階段でコケるところまでが、完全に計算済みのあざとさだ。 ざわめくアルファたち。 前回動揺、ランドルフの視線が釘付けなところまで含めて、予定調和って感じしかしない。 そう思っていたが……。 壇上のメルヴィンが、俺の方を見てニコッと微笑んだ。 一瞬、意味がわからず「なんだ?」と思ったが。 傍に立つスチュアートが、鼻をふくらませ頬を染めつつ「……神子様……」と呟いたのを聞いて、背筋がゾッとした。 メルヴィンは── 今回スチュアートを〝選んだ〟のだ。 美味そうなオメガの香りを嗅ぎ取った、アルファ特有の顔。 熱を帯びた視線と、獣じみた笑みを浮かべた口で、息も荒くメルヴィンを見つめるスチュアートの顔に、北の開拓地で見たアルファたちの顔が重なる。 奴らの荒い息づかいに似た、スチュアートの呼吸が耳につき。 古くなった磁気テープのビデオみたいな絵面で、複数の手で抑え込まれ、雨に濡れた冷たい石畳に体を押し付けられ、足を開かされる瞬間がフラッシュバックした。──駄目だ。 込み上げる吐き気が抑えきれず、俺は入学式の会場から逃げ出す。 そして、洗面所に駆け込むと、朝食ったものを全部戻した。
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10-2

 顔を洗い、口をすすぎ、鏡を見る。 かなり憔悴した顔だったが、それでも会場に戻らねばと思った。 が、足が動かない。──しっかりしろ! 顔を叩いて、活を入れる。 そして、ノロノロと足を動かして、洗面所を出た。「エヴァレット侯爵令息?」 声を掛けられて振り返ると、そこにアレクシスがいた。 今世は、ランドルフとの距離を詰めなかった分、幼少期にほとんど接点がなく、アレクシスは俺を名で呼ばない。「殿下! なぜ、ここに?」「魔法学園の入学式に、陛下の代わりにね」 そういえば、式の冒頭で挨拶されていたっけ。 国家の至宝である神子のメルヴィンと、王太子の婚約者である俺が入学とあって、王家も気を使ったってことなんだろうな。「あ……、では、式典は終わってしまいましたか?」「うん。生徒は教室に戻ってるよ」「陛下の代わりを務められるなんて、ご立派ですね」「よしてくれよ。入学式の式典で座ってるだけだよ? それより、どうしたの? 顔色悪いよ?」「すみません。人酔いしまして……」「ああ……。きみはアルファのフェロモンが苦手だものね。では教室に戻らず、救護室に行ったほうがいいな」 そう言って、アレクシスは支えようとした手を引っ込めた。「子供の頃に比べると、随分慣れたと思うのですが……」「まぁ、あんなに怖い思いをすれば、当然だと思うよ」 一瞬、北の開拓地の件を指摘されたのかと思ったが。 アレクシスの言っているのが〝池ドボン〟事件のことだと気づき、苦笑した。「ランドルフ殿下には、申し訳なく思っております。私の所為で、ずっと不快な思いをされていますでしょうから……」「怖い思いをさせたのだから、誠心誠意謝るべきだし。それでもきみの心を開かせることが出来ないなら、それを陛下にきちんと説明して、婚約解消のために動くべきでしょ。感
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10-3

 魔法学園への登校と、王妃教育のための登城。 その移動の護衛は、結局ずっとスチュアートがしている。 正直言って、俺はこの兄貴を全く信用していない。 そもそも最初──ランドルフと親密にならずにメルヴィンに渡してしまおうとした一周目の時。 断罪された俺を、頭から疑って父上を隠居に追いやったのだ。 もっとも一概に〝頭の天辺までヒロインにズブズブのNPC攻略対象〟と見做してしまうのは、少々可哀想だとは思う。 侯爵家の後継として。 未来の国王の側近として。 スチュアートには、重すぎるほどの期待が掛けられている。 子供の頃から〝おまえはアルファなのだから〟と厳しくされてきたスチュアートからしたら、末っ子オメガで溺愛さて、ワガママは何でも聞き入れてもらえる弟の存在は煩わしいものだろう。 もっともこっちは、王妃教育という後継アルファに引くとも劣らぬ重責が乗っているのだが。 スチュアートが護衛として一緒にいるのは、ものすごく嫌だ。 もちろん父上だって、後継ぎのアルファが護衛をしているのなんて、良くないと考えている。 が、なぜかスチュアート自身が俺の護衛を続けると言い張った。「私が体調を崩して、式典から抜け出し、救護室にいたにもかかわらず、兄上は迎えに来てくれなかったじゃありませんか」「だから、おまえは甘えすぎだと言うんだ!」「スチュー、止めないか」「いいえ! というか、父上もマシューを甘やかすのを、そろそろ止めてくださいませんか? 貴族の子女として、王太子の婚約者として、マシューはもっと自立心を養い、周囲への気遣いを考えるべき立場です」「だが、マシューは具合が悪くて……」「私がただ具合の悪い弟を放り出して、遊び呆けていたとでも? 突然式典から抜け出したマシューの尻拭いをし、エヴァレット侯爵家の、王太子の婚約者の兄としての義務をこなしていたのです」「ならばやはり、私には専属の護衛を付けていただきたいです。今回はただの体調不良でしたが、これがヒートだったらどうなっていたと思うのですか?」
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11:メルヴィン

 俺は、メルヴィンの行動を調べた。 話をするに当たって、邪魔が入ったり、誰かに見られたりするのは良くない。 が、向こうは〝人気者〟の神子様だ。 常に人の中心にいる者を呼び出せば目立つし、必ず取り巻きの一人や二人がついてくる。 その場で断った場合は、不審に思われるし、信奉者ならあとを付けてこないとも限らない。 だからメルヴィンの行動パターンを調べ、呼び出さなくても話のできるタイミングを測った。 だがさすがヒロインキャラだけあって、一人きりでいることなどほぼほぼない。 唯一、時々昼メシのあとに人気の少ない中庭で一人、過ごすことがある……だけだった。──少々アレだが、待ち伏せするしかないだろうな……。 メルヴィンの中身がプレーヤーなら、俺は〝悪役オメガ〟と認識されている。 あからさまに俺が一人、中庭にいたら避けられるだろう。「神子様」 散々考えてから、俺はメルヴィンにそう呼びかけた。 ゲームの中のマシューは、確か〝メルヴィンさん〟と呼んでいたと思う。 が、それは平民のメルヴィンを蔑む意味で、養子先のローズベリィ侯爵の姓も、敬称である〝神子〟呼びも避けた言葉選びだ。 それは、絶対に選んじゃ駄目だろう。「マシュー様?」 そっちはいきなり名前呼びか……とツッコミたくなったが。 ゲームで遊んでいるプレーヤーなら、貴族のなんちゃら……みたいなものはわかりにくいだろうから、そこは流す。「少し、お話いいですか?」「はい、なんでしょう?」 天真爛漫キャラのメルヴィンらしく、悪役オメガからの声掛けにもニコニコ応じる。 だが、本当に天真爛漫で無邪気な人物じゃない。 この笑顔に騙されては駄目だ。「単刀直入に聞くが……、きみはゲームで遊んでいるプレーヤーじゃないのか?」 俺の問いに、メルヴィンはきょ
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11-2

 そこからの流れは早かった。 父上は、俺がメルヴィンを〝いじめていた〟可能性を否定して奔走してくれたが、スチュアートが目撃したという証拠が強すぎる。 そもそも、俺の予想通り、スチュアートは他にも捏造の証拠を作っていた。 冷静に考えると、恋敵であるランドルフに俺を押し付けて、自分はメルヴィンといい感じになりゃいいのに……と思うのだが。 メルヴィンにそそのかされた兄は、嬉々として弟を陥れる手段に興じたらしい。 もっとも、子供の頃から「マシューばかり甘やかされて」と思っていたスチュアートにとって、俺の存在はうざかったのだろう。 その腹いせも加わってのこの結果……といった感じだ。 プロムの断罪劇もないままに、俺は北の開拓地へと送られることが決まった。──だが、これで決まったな。 この世界は、メルヴィンが攻略を繰り返しているメガ恋であり、メイン攻略対象のストーリーが終わったところで、次は隠しキャラたるアレクシス狙いだと。 俺は、どう対処すべきだ? ランドルフとの距離を縮める意味は、ない。 ブラッドリーとスチュアートは、ランドルフ以上にNPCくさい動きしか出来ない。 だからといって、俺がアレクシスとの距離を詰めるのは、むしろ首を絞める結果になりそうだ。 なんせランドルフと距離を詰めたら、メルヴィンの悪意とランドルフの嫉妬の両方を食らって、階段から突き落とされたのだ。──ああ、頭がぼうっとする……。 ヒート誘発の草の匂いに、本能が掻き立てられて理性的な思考が出来なくなる。 焦げて乾いた草の……匂い……。
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