Alle Kapitel von 悪役オメガは何度でも断罪される: Kapitel 41 – Kapitel 50

62 Kapitel

15-2

 池に落ちなかったことで、なにか変わったのか? と思った。 が── 家に帰ったら、間髪入れずアレクシスに付き添われたランドルフが送り込まれ、ものすごく誠意のない謝罪をされ── 残念ながら、しっかりと婚約は成立してしまった。──やはり、一ノ瀬が考えるメガ恋の設定に、強制的に持っていかれてしまう仕様なんだろうか……? 俺が〝池に落ちそうになった〟事件以降、塞ぎ込んでいることに母上がとても心を痛めていて、申し訳ないな……と思うのだが。 何をどうしたところで、学園入学後に断罪、北の開拓地送りが決定していると思うと、気分の晴らしようがない。 あんまり心配をかけて母上が臥せってしまっても困るので、表面上はなんとなく持ち直した風を装いたい気持ちはあるが。 心と体がどうにも一致してくれない。 今までのループと同じく、婚約成立したところで、王宮での王妃教育が始まり、俺は子供らしい遊びに興じる暇もなく、毎日登城させられた。──もっとも、ゲーム云々を抜きにしても、婚約成立は仕方ないのかもな……。 メルヴィンが神子として認められ、ローズベリィ侯爵家に養子に入るのは九歳になってから。 現状、四つの侯爵家と十六ある伯爵家の中に、めぼしいオメガは俺しかいないのだ。 幼児とも思えぬ重い溜息を吐きながら、今日も登城する俺の背中を、母上が痛ましい顔で見送ってくれた。
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15-3

 王妃教育も五回目ともなれば、さほど苦でもない。 周辺国の事情とか、言語とか、歴史とか……。 どれも一回目で徹底的に暗記させられたから、諳んじることができる。 もっとも、本当に諳んじたらオメガじゃなくてアルファなんじゃないか? とか疑われる危険がある。 更に言うと、ランドルフはアルファの中でもさほど優秀とは言い難く、年齢の近いアレクシスが優秀過ぎるアルファ故に、コンプレックスを拗らせている。 そこで俺が王妃教育に優秀さを発揮したら、恋の八つ当たりとは別の嫉妬まで買うだろう。 せいぜい、出された課題をきっちりこなす程度に抑えるべきだ。 そうして、俺が浮かぬ顔で王宮の廊下を歩いていると──「マシュー!」 背後から声を掛けられ、振り返るとアレクシスがいた。「殿下。ごそんがんを、はいし……」 回らぬ口で挨拶をしようとしたら、遮られた。「そういうの、なしにしようって言ったでしょ」 未だ十歳にも満たないアレクシスは、現在世間の関心を引きまくっている。 一周目の時は〝温い目〟で見守られる、バックボーンの全く無い哀れな王弟って立場だったはずだが……。 今世のアレクシスは、魔力値の高さと魔法に関する抜きん出た才能を示し、九歳にして〝理論魔導士〟の資格を持つに至っているのだ。──メガ恋に、そんな設定あったっけ? 俺はチームリーダーで、ストーリーのチェックをし、一応ラストまでの台詞や表示テキストに誤字がないかなんかも見た。 が、基本はプログラムが正常に作動するか? に注力してて、キャラクターの細かいプロフィールとか、設定なんかはざっと流して見ただけだ。 更に十五歳までの人生を四回も繰り返している所為で、マサキだった頃の記憶がかなり曖昧になってきている。「今、帰り?」「はい」「まだ早いし。ちょっと寄っていきなよ」 実はこれが、このところ頻発している事案なのだ。 アレクシス
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15-4

 四周目の時。 魔法学園に進学する直前、やっぱり王妃教育の帰りにアレクシスに誘われて、研究室を訪れたことがあったが。 あの時と違って、今のアレクシスの研究室は、ものすごく規模が大きくなっていた。 なんせ、王国史屈指の天才魔導士と賛美されているのだ。 私設の研究施設ではなく、王宮と教会からの認定を受けた公的機関であり、国内一の規模を誇る。 実験魔導士は三百人ぐらいいるらしいし、商品化された魔道具も多数あり、それらのパテント料で研究資金も潤沢だ。 だが、アレクシスのオフィス……いや〝執務室〟は、とんでもなく広い部屋にアレクシスしかいない。 雑務の殆どを魔力核を埋め込んだゴーレムと魔道具でこなしてしまうので、無人で問題がないのだ。「お茶を二人分用意して。お菓子はマシューセレクションをランダムで」 口頭で告げると、ゴーレムがさくさくっと適温で美味しいお茶を淹れてくれる。 俺は、アレクシスに勧められるままに、休憩用の温室──ポーション用の植物を育てているところに、ベンチとテーブルがあるので、そこに座った。「どうぞ。マシューが好きなお菓子ばかりだよ」「ありがとうございます」 どこのアフタヌーンティー・タワーだよ……とツッコミたくなる三段のケーキスタンドに、ちっちゃい菓子が色とりどりに並んでいるが。 言葉通り、俺が好んで食べる菓子ばっかりだ。 お茶も、幼児が飲みやすい渋みを抑えたセレクトだし、砂糖壺にはこれでもかと砂糖が詰めてある。「マシューは、回復魔法の限界についてどう思う?」 そんな菓子を並べておきながら、アレクシスは毎回こういった、幼児にする問いかけとも思えない話題を口にする。 最初のうちは全くわからないふりをしていたが、ある時うっかり〝明らかに間違った理論〟にツッコミをしてしまい、誤魔化しきれなくなった。「ひとのちんちんたいしゃのげんかいだとおもいます」 口が回らないので、新陳代謝と言えないのが悔しい。 が、ア
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16:裏庭

 俺とランドルフの婚約にノリノリなのは、陛下と王妃様だけだ。  父上と母上は、前と同じように婚約解消に働きかけようとしてくれたが、俺はそれを断った。  無駄だと知ってるからだ。  俺を心配した母上の進言で、護衛にアルフォンスが配置されたが、それも今回はさほど嬉しくもない。  むしろ、アルフォンスの爺さんの顔を見ると、悲しくすらあった。 ランドルフは、俺を避けている。  渋々謝った態度を陛下たちに窘められ、婚約者とのお茶の時間に無理矢理二人きりにさせられ、気まずい時間を過ごさなければならない。  そんなの、普通に面倒だし、嫌に決まってる。  その気持ちは、充分理解できるが。──だけど、所詮は一ノ瀬の手のひらで踊るNPCだしな……。 自分より年下の幼児相手に、そこまで敵意を剥き出しにしたら、嫌われるに決まってるだろう……と思うが。  謝罪を受け入れても、許してくれないマシューに、苛立ちを募らせているランドルフが、そんな余裕を持てるわけもない。  婚約者とのお茶の時間、ランドルフは時計を睨みつけることに終始している。 そして、アレクシスは相変わらず待ち伏せしていて、俺を研究室に誘う。「私はランドルフ殿下の婚約者ですから。あまり頻繁にアレクシス殿下の研究室に誘われておりますと、よくない噂が立ちますよ?」 と言ってみたが。「いいじゃない、別に。むしろそれでランディがきみを婚約解消したら、僕がお嫁さんにしてあげるよ?」 などと、洒落にならないことを言う。  その発言のどこまでが本気なのかわからない。  ただ、日々のすべてが絶望感に埋め尽くされている俺に、このアレクシスの態度と発言は、ちょっとだけ息抜きにもなっていた。
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16-2

 とはいえ、日々を繰り返せば着々と時間は進む。  ローズベリィ侯爵家の神子お披露目会は、体調不良を口実に欠席し、どうしても避けられない魔法学園の入学式は、事務的に淡々とやり過ごした。 友人……というか、取り巻きすら作らず──  俺は〝選択ぼっち〟になっていた。  父上と母上は、避けようがないが……。  それでも、領地で生涯を過ごせるのだから、ぎりぎり〝良かった〟と思うことにしたし。  なまじ関わり合いにある友人を作って、彼らが一ノ瀬の悪意に巻き込まれたらいやだったからだ。 そうして、昼休みを人気のない裏庭で過ごしていると。  そこになぜか、メルヴィンがやってきた。「ああ〜。こんなトコにいたぁ〜」 「なんか、用か?」 「なぁんだ。すっかり諦めモード? つまんなぁい」 ヒロインの顔で、一ノ瀬がケラケラと笑う。「そのほうが、おまえだって楽でいいだろ?」 「あ、もしかしてぇ、北の開拓地でハーレムライフするの気に入っちゃった? 待ち遠しくて、疼いちゃってるとか?」 「挑発しにきたのかよ?」 「佐藤さんも気づいてるとおもうけどぉ、今回はハーレムルートなんだよねぇ。ランディもブラッドもスチューも、あたしの気を惹きたくてチヤホヤしてくれるんだ」 「だから?」 「卒業式典のダンス、楽しみにしてて?」 「貴族の子女が集まるプロムだぞっ! なに考えてる!」 流石にギョッとなって、俺はベンチから立ち上がった。「だってさぁ、せっかく王太子の婚約者なんだよ? 一回くらい、ランディの種もらっておきなって。大丈夫、もう、根回しはしっかりしてあるから」 「ふざけんなっ!」 「やぁだ! ここで騒ぎになったら、プロムのお楽しみなくなっちゃ〜う」 小バカにしながら、メルヴィンは校舎に戻っていく。  だが、ここで追いかけて問い詰めたら、またしても俺は〝神子に暴力を振るった〟と断罪されるだけだろう。  俺は、力なく膝から崩れ落ちた。
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17:種明かし

 背後から、足音が近づいてくる。 でも、そんなことどうでも良くて、俺はただそこで呆然となっていた。「ねえ、マシュー。今の神子との会話、説明してくれない?」 俺の肩に手をおいたのは、アレクシスだった。「あ、殿下……」 俺は慌てて立ち上がると、服についた泥や葉を払い落とそうとしたが。 その手をやんわりと止められ、アレクシスが取り出したハンカチできれいに払われる。 それからアレクシスは、戸惑う俺をベンチに引っ張っていって、座らせた。「さあ、話して」「なにを……ですか?」 答えた俺に、アレクシスはやや呆れ混じりの顔でため息を吐く。「きみってさぁ、ホントに頑固というか……。オメガ性の子って、もっと甘え上手なもんだと思うけど。……まるで、責任感の塊のアルファみたいだよね?」「はい?」 アレクシスは俺の隣に座り、そして不意に手を取った。「僕はね、マシュー。……ずっと後悔してるんだ」「なにを……、ですか?」「ローズベリィ侯爵家の庭で、神子の話が面倒だからって振り切って、一人で母屋に戻っちゃったことをさ」「……私は、ローズベリィ侯爵家に行ったことはありませんが」「今回は、来なかったね。でも、前回は来ただろ?」「ぜん……かい?」「ああ、もう! そろそろ腹を割って話してくれないかなぁ? 僕は前回、既視感と予知の差異についてきみと話をしたよね? ランディに池に落とされた時、きみは息を止めていた。僕は何度も、きみを池から救いあげてる。だから今回、落ちる前に腕を掴んだ。どう?」 俺は、何も言えずにアレクシスの顔をジッと見つめた。──どういうことだ? NPCがリセット前の事象を覚えてる? いや、だが、この世界の住人を一概にN
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17-2

 なぜ、とうの昔に卒業しているアレクシスが、魔法学園にいたのか? その理由は簡単で、魔法研究をするのに、学園の図書館やら模擬演習場といった施設を利用しているからだ。 もっとも、なぜ人気のない裏庭にいたのかは、わからないが。 アレクシスは、俺を自分の馬車に乗せると、そのまま研究室の温室へと連れてきた。「ここなら、他の人に話を聞かれる危険は絶対にないからね」 そう言って、いつものようにゴーレムにお茶と菓子を用意させる。「殿下は……、前回の記憶がある……とおっしゃいましたが……」「うん、あるよ。……でも、きみもあるよね?」「……はい……」 俺は、観念してそれを認めた。「ああ! ようやくか! 全く本当に、きみは頑張り屋だが頑固者だよ!」「ここに……招いてくださっていたのは……?」「そうだよ。きみが僕と同じように、前のことを覚えていると思ったからさ」「ご期待に添えず、申し訳ありません」「ねえ、マシュー。確認がしたいのだけど、きみは、どれぐらいちゃんと〝前回〟のことを覚えているの?」 ぎくりと、全身が強張った。 ここに至っても、俺は真実を話すことを恐れている。「わかった。じゃあ、先に僕が持つ情報を全部話すよ。……僕はね、マシュー。きみに協力して欲しいだけなんだ」「協力……ですか?」「そう。……僕は、この莫迦げた繰り返しを、誰がなんのためにやっているのか? どうしたら止められるか? ……どうしたら……、きみを失わずに済むのかを、ずっと考えているんだよ」 そう言って、アレクシスはにこりと笑った。「誰が…&h
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17-3

 アレクシスは、俺が落ち着くまで待っていてくれた。「物語には、分岐点があって、選択によって結末が変わるんです」 俺は、ぐずぐずにしてしまったアレクシスのハンカチを握って、話を続けた。「王太子のランドルフ、宰相の息子のスチュアート、騎士団長の息子のブラッドリー。この三人とそれぞれ結ばれるまでを繰り返すと、四回目にあなたが選択肢に加わります」「僕?」 びっくり顔のあとに、アレクシスは色々腑に落ちたようだ。 前回、メルヴィンが自分を口説きにきたこともそうだろうが、俺が既に〝四回〟北に送られたことも……。「じゃあ、前回。俺があずまやから去ったあと、きみはメルヴィンに断罪をしないように頼みに行ったんだね」「でも、先程の会話を聞かれたのなら、お分かりでしょう? メルヴィンは、前世で……俺が一ノ瀬の誘いを断ったことを根に持っていて、アルファに輪姦されることを望んでいるんです」「きみが前世で、イティノセを強姦でもしたならともかく。ただ振られただけで何度もそんな目に合わせられるなら。僕だって、辱めを受ける相手になるよ」「……なぜですか?」「そりゃ、僕は前回。あの子の申し出を断ったからさ」「……えっ?」 アレクシスは、肩を竦める。「あずまやで、最初に〝一目惚れしました、付き合ってください〟って言われた時は、驚いたけど。そのあと、きみが神子に暴力を振るったと騒ぎになって。きみが北に送られたあとに、改めて彼が僕の元にきて番になって欲しいと言われてさ」 そこで一度言葉を切ると、アレクシスは改めて俺の顔を見た。「僕はね。なぜかきみがすごく気になってるんだ。覚えている限り、ずっとね。……だけどきみは、ランディの婚約者で……。僕みたいな、後ろ盾がなにもない、中途半端な王族が、正統な次期国王を確約されている王太子の、その婚約者を欲しいですとは言えないだろう? だから、ずっと見てるだけで我慢して
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18:反撃の狼煙

 それから、俺はアレクシスと会って話をするようになった。 とはいえ、それは本当に〝こっそりと〟だ。 王太子の婚約者が、王弟殿下の研究室に通ってるなんて、噂が立ったら大問題になる。「ランディは堂々と学園で神子を口説いてるのに、マシューが向学心で魔法研究室に出入りしたらスキャンダルになるとか、なんなんだろうね」 温室に付いている〝秘密の出入り口〟から中に入ってきた俺を歓迎しつつ、アレクシスがそう言った。 この出入り口は、いわゆる高位の貴族がいざという時、脱出に使うやつだ。 王宮の庭園に繋がっているので、王妃教育のあとに寄るのに都合が良い。「考えてみたんですが、メルヴィンは〝時空魔法〟の使い手なんじゃないでしょうか?」「時空魔法ってのは、聞いたことがないけど。マシューがメルヴィンと作っていたという物語の中に、そういう設定があったの?」「いいえ。設定では、純粋に高度の回復魔法でした。でも、物語の中の魔法は、あくまで空想の産物です」「うん。実際にメルヴィンが理さえも無視して、自分に都合良く物事を運べるなら、僕もあの子に夢中になっただろうし……」「回復のように見えて、回復ではない状態……つまり、今より前の時間に戻していると考えると、メルヴィンが世界をリセットしているのも説明がつくと思うんです」「しかし……世界を全部巻き戻すなんて、とんでもない力だよ?」「ちょびっとだって、とんでもない力ですよ。欠損した手足や、死んだ者を、そうなる前の状態に戻すなんて」 実験室の中を歩き回りながら、アレクシスは考え込むように黙った。「俺の仮説は、突飛すぎますか?」「とんでもない! むしろ、僕の考えを補強してくれたよ!」 アレクシスは、引き出しの中をガサガサとあさり、なにかを取り出す。「これを見て」 差し出された物は、ペンダントのような形をしているが、真ん中の宝石にヒビが入っていた。「なんですか、これは?」
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18-2

 アレクシスに渡された記録用魔道具……簡単に言えばメモリーカード付き防犯カメラを、俺は学園の要所に設置して回った。 メルヴィンに見つかると、時間を巻き戻されてメモリーを消されてしまう可能性があるから、かなり慎重に設置には気を使った。 場所の選定は、ゲームのイベントポイントを中心に。 それと、一般的なデートスポット……初々しい学生カップルが、こそっと隠れてキスが出来たりする場所を選んだ。「設置した場所を、具体的に教えてくれる? 映像の回収はこっちでするから」「私、自分で出来ますよ?」 そこまでなんでもアレクシスにしてもらうのはどうかと思って、意見したのだが。「だって、人が動くと目立つし。特にマシューは、メルヴィンに目をつけられてるから、動きは最低限にしてたほうがいいよ」「でも、殿下はメルヴィンの好意に応じるフリ……つまり、デートしたりするんでしょう? 学園内にいたら、メルヴィンに付いてまわられるのでは?」「回収はゴーレムにやらせるよ? 庭木の世話とか、学内の清掃なんかに、僕の作ったゴーレム使ってるから。あと、そろそろ〝殿下〟じゃなくて、名前で呼んでくれないかなぁ?」「あ……、すみません……」 ふわっと笑って、アレクシスは俺の頭を撫でた。「急ぎすぎた? ごめんね」「いえ……、こちらこそ、すみません」 頭を下げる俺に、アレクシスは目を眇める。「分かってる。僕が触れても怯えた様子を見せないから、だいぶ慣れてくれたんだろうなって思って、ちょっと調子に乗ってた」 テーブルの上の〝マシューセレクション〟の菓子は、昔誘われた四歳の時から、年々ちゃんと俺の好みが更新されている。 前回の記憶は創意工夫で全部残してある……と言うが、それ以前から既視感を感じていたと言い、実は一番最初の時から、俺を助けてくれているアレクシス。 番
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