池に落ちなかったことで、なにか変わったのか? と思った。 が── 家に帰ったら、間髪入れずアレクシスに付き添われたランドルフが送り込まれ、ものすごく誠意のない謝罪をされ── 残念ながら、しっかりと婚約は成立してしまった。──やはり、一ノ瀬が考えるメガ恋の設定に、強制的に持っていかれてしまう仕様なんだろうか……? 俺が〝池に落ちそうになった〟事件以降、塞ぎ込んでいることに母上がとても心を痛めていて、申し訳ないな……と思うのだが。 何をどうしたところで、学園入学後に断罪、北の開拓地送りが決定していると思うと、気分の晴らしようがない。 あんまり心配をかけて母上が臥せってしまっても困るので、表面上はなんとなく持ち直した風を装いたい気持ちはあるが。 心と体がどうにも一致してくれない。 今までのループと同じく、婚約成立したところで、王宮での王妃教育が始まり、俺は子供らしい遊びに興じる暇もなく、毎日登城させられた。──もっとも、ゲーム云々を抜きにしても、婚約成立は仕方ないのかもな……。 メルヴィンが神子として認められ、ローズベリィ侯爵家に養子に入るのは九歳になってから。 現状、四つの侯爵家と十六ある伯爵家の中に、めぼしいオメガは俺しかいないのだ。 幼児とも思えぬ重い溜息を吐きながら、今日も登城する俺の背中を、母上が痛ましい顔で見送ってくれた。
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