Alle Kapitel von 悪役オメガは何度でも断罪される: Kapitel 51 – Kapitel 60

62 Kapitel

18-3

 収集した映像は、基本はゴーレムが編集している……とアレクシスは言う。 ゴーレムの作業を見せてもらったら、なまじなAIより正確に人物を識別し、メルヴィンと攻略対象の三人が映り込んでいるところをピックアップしてくれている。 膨大な量だと思っていた映像は、それで劇的に量が減った。 ように思えたが── しかし、それだけだって相当量になる。「いや……、ホントに熱心だねぇ、この子」 映像を見ていたアレクシスが、呆れつつげんなりした顔で言った。 画面には、メルヴィンが鍛錬を終えたブラッドリーに、汗を拭くためのタオルを渡しているシーンが映っていたが。 血気盛んなブラッドリーは、人目がないところでは結構積極的にメルヴィンに接触を試みている。 特に、項辺りを嗅ぐのが大好きで、端から見れば背後から抱きついているようにしか見えない。 もっとも、メルヴィンは項を噛ませる気なんて全くないから、ふざけた素振りで「やめてよぉ〜」などと言って、そっと手をほどいてしまったりしているが。 ムッツリタイプのスチュアートの場合、図書館の本棚の影で、触れるだけのキスになるし。 ランドルフの場合は、王太子という権力を使うことが出来るからか、人目も憚らずに、指を恋人繋ぎで絡めたりしてた。 もちろん、こうして列挙すると、攻略対象たちが熱心にアプローチしているように思えるが。 アレクシスが言う通り、メルヴィンはそうなるように相手に隙を見せ、映像に映らないが場合によってはフェロモンで誘うようなことはしているだろう。「スチュアートとマシューって、そんなに仲悪いの?」「兄上は、アルファとして、次期侯爵として、厳しい教育を受けてますから。甘やかされている俺のことが、羨ましいんだと思います」「え、待って。王妃教育の過酷さ、分かって言ってる?」「五度目ですし、あんまり厳しい印象ないんじゃないですかね?」 俺がなんとなく返した答えに、アレクシスが突然吹いた。「な&helli
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19:プロム

 中央の大階段に、きらびやかなダンスホール。 そして、俺はポツンで会場にいる。 階段の下にはブラッドリーとスチュアートが控え、メルヴィンをエスコートしながらランドルフが降りてきた。──メガ恋の、ハーレムエンド配置をしっかり周到してるなぁ。 王太子が婚約者ではないオメガをエスコートしてること。 本来の婚約者が、階段下に立っていること。 階段下の左右に、王太子の側近が二人で俺を睨んでいること。 それらの異様な空気に、会場の紳士淑女の皆が遠巻きにして、ざわざわと落ち着かない様子だ。「マシュー・エヴァレット! おまえは王太子の婚約者という立場を笠に着て、神子であるメルヴィン・ローズベリィを〝平民からの成り上がり〟と罵倒したそうだな!」 鼻の穴を広げ、上から目線を絵に書いたような顔で、ランドルフが言った。 正直、これから始まるメルヴィンとの駆け引きを前に、かなり緊張していた俺は、そのランドルフの言葉に脱力する。──え〜、ここに来て、初回と同じ台詞回し使っちゃうの? だが、メルヴィンはそんなことどうでもいいみたいで、ランドルフの腕に縋るように絡まりながら、ニヤニヤと俺を眺め降ろしていた。「なんとか言ったらどうだ!」 メルヴィンに吹き込まれていたのだろう。 ランドルフは、俺に向かってグレアをかましてきた。 グレアをされれば、俺は竦み上がり、反論ができなくなる── と、見越してのことだろう。「このような場で、そのような狼藉を働くことはお控えなされよ」 会場を警備している衛兵の一人が歩み出る。 顔が見えないように被っている兜をすっと外すと、アルフォンスだった。「貴様のような衛兵ごときに、指摘される謂れはない!」「一方的に断罪し、威圧で口も聞けなくしておるこの状況は、リンチと同じではありませぬかっ!」 老騎士の一喝が、会場内に響き渡った。 不意に、呼吸が楽になる。 ランドルフが、グレアを止めたのだ。 背後に広がる、少し弛緩
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19-2

 階段を降りてきたアレクシスに、メルヴィンが楚々と駆け寄った。「叔父上、なぜここに?」「陛下の代理にね。それより、みんなが踊ってると思ってきたのに、静まり返っちゃって、なにがあったの?」 熱っぽい目で見上げるメルヴィンの腰を抱くアレクシスを、ランドルフが煩わしそうに睨んでいる。 魔力値が完全に上回るアレクシス相手に、グレアをしたところで跳ね返されるのがわかりきっているからか、ただ睨んでいるだけだ。「アレクシス殿下、発言をお許し願えますか?」「状況を説明してくれるの? どうぞ」 メルヴィンを抱いているアレクシスを、こちらもやっぱり微妙な顔で睨んでいるスチュアートが前に出る。「我が愚弟は、恐れ多くも我が国の至宝、神子様を平民と愚弄したのです」「そうなの?」「そうなんですぅ〜。怖かったぁ〜」 上目遣いの媚び目線で、メルヴィンがアレクシスを見上げた。 アレクシスは、メルヴィンの顎にそっと手を添え、ニコッと笑う。「僕の贈ったチョーカー、付けてくれたんだ」「はい! この魔石、ランディが〝国宝級〟って言ってましたけど、本当ですかぁ?」「うん、本当だよ。そのサイズのをどうしてもきみに贈りたくてね。リヴァイアサン討伐でようやく手に入れたんだ」「ええ〜、アレクシス様が御自分でリヴァイアサンを?」「もちろんさ。リヴァイアサン討伐なんて、僕以外に出来ないだろう?」 特別な魔石を、アレクシスが苦労して手に入れ、贈ってくれたという事実に、メルヴィンはうっとりと頬を染めた。 が── アレクシスは微笑んだまま、トンッとメルヴィンの体を突き放す。 よろめいたメルヴィンは転びそうになったが、あやうくランドルフが受け止めた。「なにをするんです! 神子様に無礼を働くなら、叔父上であっても許しませんぞ!」「そんなマガイモノに鼻の下伸ばしちゃって、ランディも見る目ないよねぇ」 顔を真赤にして怒っているランドルフと、何が起こっているのかわからないって顔のメルヴィン。 
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19-3

 ランドルフは、声高に叫んだ。「証人をこれへ!」 すると、紳士淑女の集まっている中から数人、前に歩み出てきた。「私は、エヴァレット侯爵令息様が、神子様を〝薄汚い平民〟と罵っているのを聞きました」「学園の中庭で、マシュー様がメルヴィン様を〝泥棒猫〟と言って、叩いているのを見ました」 時間も場所も曖昧な──それは〝証人〟というにはあまりにお粗末な証言が続く。 アレクシスは、それを全部、黙って聞いていた。「どうです、叔父上! メルヴィンはこのようにずっと、マシューに苛められ、虐げられていたのです!」「これって、ランディが調べて、見つけてきた証人?」「いえ……、スチュアートが……」 ちらとランドルフが目をやると、スチュアートが意気揚々と答えた。「私だけではありません。ブラッドリーも一緒に、捜索を致しました」「ふうん。……証拠と言っても、ちょっと弱いねぇ」「彼らは国王に忠誠を誓った、臣下の貴族家出身者です! 嘘は申しません!」 アレクシスは、ちゃんちゃらおかしいって顔で笑う。「あのさぁ。陛下に忠誠を誓ってるのは、彼らの親で、本人じゃないよ? おまけに、ランディはまだ王太子で、国王ですらないじゃない」「な……っ! 叔父上! それは国に対する反逆ですかっ?」「ああ、ごめん、ごめん。そんなつもりはないんだけど。……じゃあ、今度は僕の話を聞いてもらえるかな?」「なんでしょう?」 アレクシスが指を鳴らすと、ホールの中央にゴーレムが現れる。「まずは、きみ!」 最初に証言をした生徒を、アレクシスが指差す。「なんですか?」「ここに顔を写してくれる?」 不審な顔になりながら、その生徒がゴーレムのかざす魔道具に顔を近づけると、即座に相貌検索が始まって、数秒後に壁に向かって大きく映像が流れた。「ああ〜
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20:時空魔法

 目の前が、ぐるぐる回る。 小雨のそぼ降るスラム街の路地裏。 石畳の上に押し倒された体。 群がるアルファの、獣じみた目。「あああっ!」 叫んだ瞬間、肩を掴まれる。「マシュー!」 目の前に、アレクシスの顔があった。 脳裏に浮かんだのは、それが自分の──紛れもない本物の番だという記憶。──なんだこれ? なんだこれ? なんだ……これは……?」 脳の中がかき回されるような気持ちの悪さが込み上げ、複数回繰り返された記憶が、痛みが、喜びが、悲しみが、一気に蘇る。「うわああああっ!」「頭が割れそうだっ!」 周囲から悲鳴が聞こえる。 ちらと入った視界の中で、痛みにのたうってないのはアレクシスだけだった。 もっとも、全くダメージがないってわけでもなさそうで、額を抑えて頭を振っている。「これは……、思いの外、強烈だな……」 呟いたアレクシスは、拳を握ると魔力を込めて床を打ち鳴らす。 ドオンっ……と、メルヴィンの放った波動を上回る魔力の波が、周囲を包みこんだ。「なんでぇ……? なんで、あたしの魔法が発動しないのよぉ!」「それは、きみが嬉しそうに身につけているそのチョーカーが、魔封じの魔道具だからだよ」 床に崩れ落ちたメルヴィンに向かって、アレクシスが冷たく言った。「なによそれぇ!」 メルヴィンは、ガッとチョーカーを掴んだが。「ぎゃああああっ!」「無理に外そうとしない方が良い。全身に痛みが走るからね」 ようやく、目の回るような気持ちの悪さと、頭が割れそうな痛みが収まってきて、俺は顔を上げる。 同じように、周囲の者たちもふらつきながら立ち上がり始めていた。
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20-2

「い……今のは、なんだ……?」 フラフラと立ち上がったランドルフが、額を抑えながら言った。「俺は一体……、なにを見せられた……?」 ランドルフの傍で、同じように膝をついていたスチュアートとブラッドリーが、やっぱり辛そうに頭を振っている。「あのサイズの魔石でも、抑えられないって。マガイモノなんて言って悪かったかな……?」 ぼそっと、アレクシスが呟いた。「これって、記憶が……」「記憶と言うか……。反復の度に封印されていた意識の断片が蘇った……って感じかな? いきなり大量の情報が蘇るから、かなり負荷がかかるよね」 アレクシスはしれっと言ったが── 多分、自作の魔道具で記憶を保護した時に、既に体験済みなんだろう。「さあ、似非神子様。そろそろ観念したら?」「いやよ! いやっ!」 アレクシスの指示でメルヴィンを拘束しようとした衛兵の手を、メルヴィンは振り払った。「あたしが幸せにならない世界なんていらない! いらない! いらないのっ!」 メルヴィンは髪をかきむしり、悲鳴じみた絶叫を上げる。「止めなさい! あまり負荷をかけると、きみの命に関わるぞ!」 これまで、メルヴィンがどれほど暴走しても、割と冷静だったアレクシスが、そこに至って声を荒らげた。 が、そんな制止を聞き入れるわけもなく、メルヴィンは言葉にならない叫びを上げ── 半ば、トランス状態になったみたいに髪を振り乱しながら、自身の魔力を膨れ上がらせていく。「メルヴィン!」 パーンっと乾いた音が響き渡り、メルヴィンのチョーカーに付いていた魔石が砕け散った。「まずい!」 アレクシスが、俺をぐいと抱き寄せる。「神子様!」 駆け寄ろうとした
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20-3

 真っ白な空間に、音はない。 そこには、俺とメルヴィン……それにノイズが掛かって固まった状態のアレクシスがいた。「あんたなんかに、わかんないわよ! 本当に奪われるってのはね、最初から持ってないのに、そこから更に貶められることなのよ!」 俺を睨んだメルヴィンの言葉に、俺はようやく〝そのこと〟に気がついた。「雨の中……、スラムの石畳の記憶は……俺のじゃない……」 ヒートの匂いに誘われて、獣と化したアルファたちが、群がり、手足を抑え、本能のままにオメガの体を貪る。 あの光景は、俺の体験じゃない。「潤沢な財産と甘やかしてくれる親がいて、抑制剤を定期的に買えるような環境にいたら、わかんないでしょう!」 目の前のメルヴィンは、下町の平民が着る粗末な服装をしていた。 しかしそれは引き裂かれ、噛み傷だらけの姿だ。「おまえが、幸せになりたいと願う気持ちは、充分理解できる……。しかし、この世界の住人全ての時間と運命を奪っていい理由にはならないぞ」「所詮はゲームのNPCじゃない!」「その記憶があるなら、ここがゲームじゃないのはわかってるんだろう!」 ビクッと、メルヴィンが竦み上がった。 俺はメルヴィン……一ノ瀬を睨みつけ、そこで固まったまま消えかけているアレクシスの手を握る。 微かな、体温。 だけど、俺が握った瞬間、その手が握り返されたような気がした。「俺は、この世界でアレクシスと生きる! おまえの筋書きは、やっぱりクズだっ!」 それが──まるでコンピューターの再起動のきっかけみたいに……。 白い空間に満ち満ちていた一ノ瀬の魔力が、急速に俺の足元に収縮する。「いや! 返してよ! あたしの幸せ返してよっ!」 なにかをかき集めるみたいに空を掻くメルヴィン。 白い空間の向こう側から、景色が
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21:終焉

 次に目が醒めた時、俺は侯爵家の自室にいた。 父上と、母上。 それにアレクシス。 その後ろに、アルフォンスとランドルフ、それにブラッドリーとスチュアートもいた。「マシュー……」 父上が安堵した顔になり、母上が俺をぎゅうと抱きしめる。 不安になって自分の手を見たが、小さくはなっていなかった。「あ……の……」「卒業式のダンスで、倒れたんですよ」 母上が言った。「え……?」 目線をやると、アレクシスがぱちりとウィンクをしてくる。──ああ、何も知らない父上たちに〝そういうこと〟で話してあるのか……。 俺は母上の背中に腕を回す。「すみません。ご心配をおかけしました」「王妃教育で、根を詰めすぎたんでしょう……」 しれっと、アレクシスが言った。「申し訳ありません。私も、マシューに気遣いが足りておりませんでした」 後ろのランドルフが、深々と頭を垂れる。「殿下。王族がそのように、気安く頭を下げてはなりません」 注意をしたのは、父上だ。「いいえ、父上。私どもは、マシューのことを……少々、侮っておりました」 ランドルフに続いて、スチュアートが謝罪する。「スチュアート?」「申し訳ありません、エヴァレット侯爵閣下。私どもは、マシュー様の注意を聞かず、自分達が神子を騙ったメルヴィンに、謀られていることに気づいておりませんでした」 一緒になって頭を下げていたブラッドリーまでもが、そんなことを言ったので、父上は更に混乱してしまった。「しかし……、メルヴィンはローズベリィ家が後ろ盾になり、陛下も認めた神子様だぞ? そんな不敬なことを言っては……」
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21-2

 アレクシスが言った通り、数日経ってから王城から呼び出しが掛かり、父上を始めとした重鎮はもちろん、上位も下位も含めて全ての貴族の当主が集められた。 陛下からの布告は、教会の上層部の陳謝とともに行われたらしい。 なぜ〝らしい〟なのかと言えば、戻った父上から説明されただけだからだ。 あまりにも鮮やかな〝ペテン〟であったが故に、教会も王室もてっきり騙された……というオチになった。 まぁ、時空魔法なんてとんでもない話をしたら、国民も浮足立つし、別の政治的な面倒事とか、犯罪的なナニカとかが入り混じるのが目に見えていたから、そういうことにしたんだろう。 そうして事態がある程度収束したところで、俺は久々に王宮に来ていた。 今日の登城は特別な意味がある。 というのも、王妃教育ではなく、陛下と王妃様のいる謁見の間で、正式に〝王太子との婚約〟を解消する儀式をするためだからだ。 正式な手続きが終わったところで、一段高い玉座にいた王妃様がわざわざ降りてきて、名残惜しそうにハグしてくれた。「あなたがランドルフの后になればいいって、思っていたんだけど……」 以前にも言ったが、オメガの出生率は0.5%。 高位貴族の子供の中に、ランドルフと年齢の見合うオメガは俺しかいない。 ある意味、貴族社会の〝夫人〟的な立ち位置にいるオメガは、なんというか……同類相求む……みたいなところがある。 少々年齡が離れていても、王妃様にとって俺は数少ない〝話せる仲間〟になりうる者だったんだろう。「申し訳ありません」「いいんです。マシューの所為ではありませんからね」 ちょっと涙ぐみながら、王妃様は陛下の隣に戻っていった。
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21-3

 謁見の間を退室すると、外にアレクシスが待っていた。「時間、あるよね?」「……はい」 ちょっと……、いや、かなり意識してしまって、上手く返事が出来ない。 だが、その辺りの感情も込み込みで、話をしなきゃと思っていたので、俺はアレクシスのあとをついて行った。 行く先は、あの温室。 今日は、堂々と正面から入る。「今日は特別に、すごいお菓子を用意してあるからね」 温室に俺を招き入れたアレクシスは、殊更嬉しそうだ。 俺は俺で、ちょっと緊張しながら入室した。 アフタヌーンティー・テーブルには、俺の好きな生菓子がどっさり乗っている。 そして、ゴーレムが淹れてくれる、極上のお茶。 俺とアレクシスは、向かい合って座った。「ランディは、王太子を辞させてくださいって、陛下に訴えたんだよ」「知ってます。家でも、兄が父上に、後継の座を降りますと言って、少し騒ぎになりました」 もちろん、同じ騒ぎがブラッドリーの家でもあったに違いない。「陛下は、最初は聞き入れるつもりだったんだよ。それで、僕を王太子にするからって、打診をしてきてね」「どうやって、断ったんですか?」「あれ? なんで断ったってわかったの?」「今日、謁見の間にいらっしゃったランドルフ殿下は、王太子のサッシュを付けてましたし。アレクシス殿下は性格的に、国王になるのなんて面倒だと思っているでしょう?」「それも、マサァーキの慧眼ってやつ? 敵わないな……」 アレクシスは、肩を竦めた。「だってさ、メルヴィンの時空魔法は、本当に欠損した手足とか、死にかけてた患者を治してみせたわけでしょ? 陛下も、教会も、魔法省の魔導士たちも、全員が認めたわけじゃない?」「まぁ、実際に本物でしたから」「でも表向き、あれは〝ペテン〟でしたってことになった。ってことは、全員が騙されてたってことになるじゃない? なのに、若者だけが〝誑かされた〟ってことに
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