メルヴィンの最後の魔法は、アレクシスの魔封じのチョーカーの拘束を打ち破るほどの爆発力によって、魔道具を破壊したが。 そもそも〝ロケットで隣家に行く〟ような例えが出るほど、強大な魔力を消費して実行される魔法は、魔封じを破壊した後のパワーでは出力不足で不発に終わった。 魔法の拘束を解かれたために、リセットのたびに封じられていた記憶が、蘇ったのだ。 ただその記憶の蘇りは、物理的にメルヴィンの傍に居たことや、精神的にメルヴィンと関係が深かったことなどが絡み合って、取り戻した記憶の断片に個人差が生まれている。 というのが、アレクシスの仮説だ。 俺も、それについては同意する。 もっとも結びつきの強かった俺は、自分のみならずメルヴィン=一ノ瀬の記憶まで共有してしまった。 なおかつ、俺と一ノ瀬が意識として前世を思い出す前……。 魂が、純粋に輪廻して生まれ落ちた時間軸が存在したことまでも、思い出してしまったのだ。 平民に生まれ、スラムでヒートを起こしたメルヴィンが、報われぬまま哀しい生涯を閉じようとしていた時。 侯爵家の次男オメガとして生を受けたマシューは、王太子の婚約者候補であったけれど、王弟のアレクシスと恋に落ちていた。 俺の記憶が蘇る以前のマシューの人格は、正直に言って俺とほとんど大差のない〝オタク気質〟を持っていて、魔法学に興味津々だった。 結界石に魔力を注ぐほどの魔力を持つアレクシスとは、そういう縁で知り合い、同じ学問に興味を持つ……いわゆる〝趣味が合う〟友人として、急速に仲が深まったのだ。 だが、アレクシスの立場は、王宮の中でかなり危うい。 本人がどれほど玉座に興味がなくとも、血筋故に一部の貴族の〝神輿〟として担ぎ出される可能性がつきまとう。 一方で、ランドルフの少々軽率な性格を憂いていた陛下は、才気のある王弟とどちらを王太子にすべきか、かなり迷っていたらしい。 そういう意味では、陛下は父ではなく、正しい為政者といえる。 王になりたくないアレクシスは、そのために派手な動きは極力控えていたが── 唯一の問題が、俺との関係だった。
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