All Chapters of Lv1・Maxからのまちづくり: Chapter 131 - Chapter 140

147 Chapters

第131話・深刻な相談

「こちらはどんなに注目を集めていても、しょせんCランクの町でしかないんだ」「SSランクの町長の要請を断るのは、命取りになりかねない」「知ったことか!」 こちとらミアスト大っ嫌いなんじゃ!「だから代理でいいだろ、ぼくはミアストと直接顔を合わせるなんてしたくない! それがどんな結果を生もうと!」「何を言っても町長だろお前は! 町の利益が第一! 個人的な意見はあと!」「町の利益なんて知ったことか! ミアストは大っ嫌いなんだ! 顔を合わせるなんてもってのほか! 話をするなんて冗談じゃない! それで正体がバレるのは死んでも嫌だー!」「拒絶反応がすごい」「気持ちが分からんでもないが……」 サージュとアパルは顔を見合わせて、肩を竦める。 もちろん、ぼくだって無茶を言っているのは分かっている。 Cランクの町長がSSランクの町長に直接会うこと自体、あり得ない。A、Sランクの町長が直接伝令鳥を送ってくるだけでも奇跡のようなもの。それがSSランク直々の手紙で届く……それは、余程こちらを併合しようとしているか、それとも……それだけの魅力を感じているか。 どちらにせよ、グランディールにはSSランクの町長に興味を持たせるほど魅力的な町。この手紙はそれを示している。 それを断るとなると、厳しい結果が待っているのが目に見える。 だからこそサージュもアパルも説得にかかってるんだろうけど……。 やっぱり、ミアストには会いたくないっっっ!「どれか一つだけでも妥協できるものはないか? ん?」 会いたくない、会いたくない、会いたくない……。 けど、会わなきゃいけないってのは決定事項に等しいので……。 ううう~~~~! 町長としての顔をして、いつもの仮面を心で被っていれば、ミアストと話すなんて地獄も何とかクリアできる。 問題は、あっちがこっちを「町から去ったクレー・マークン」だと知った時。 ミアストは絶対にぼくを町に戻るよう説得にかかる。ついでに町ごとやって来いと言い出す。ぼくがぶっちぎれて殴り合いになるのが目に見える……っ! 町長になってから、実は自分がかなり自分の町本当に大好き人間であると思うようになった。 ぼくは、自分のことはどれだけ馬鹿にされても気にならないけど、町のことを馬鹿にされると頭に来るし、言い返したくて仕方がなくなる。 デスポタとピーラーに
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第132話・変身

 で、ぼくがぼくらしくなくなるためにはどうすればいいかとなり。 髪や目、肌の色を変えればだいぶ印象も変わるのではないか、と言う案が出て。 呼ばれて出てきたクイネさん。「ゴメン、絵付しないって約束でグランディールに来てもらったのに……」「なに、この程度なら絵付と言うこともないですよ」 食堂も繁盛しているようで何よりな料理人元陶器絵付師は笑顔で応えた。「自分を助けてくれて夢までかなえてくれた町長には一生をかけても返しきれない恩義がありますから」「恩義に感じなくてもいいけど色を変えてくれるなら助かる」 栗色の髪に青い瞳。珍しい色ではないし珍しい組み合わせでもない。だけど、ミアストに今探し求めている元住人とバレてはいけない。 クイネのスキルは「絵付」。それを使って毛とかの色を変色させることも出来る。生き物にかける変色は一時的らしいけど、それでも一日二日は持つ。エアヴァクセンから両親を助けだすとき、連絡用にエキャルを白く染めて使ってた。それもクイネのおかげ。 クイネにそのことを説明すると、ふむ、と考え込む。「イメージが全然違えばいいんだな」「そう。今のぼくと連想がつかない程度に」「赤毛?」 クイネが案を出してくれる。「赤毛……?」「そう。インパクトのある色だから、元の色を連想できないだろう。ただ赤くするんじゃなくて、赤味を帯びた栗色。そうすれば町長も違和感を感じすぎることもないし元の色からは離れるから」「でも栗色と赤味を帯びた栗色じゃ、染めれば何とかならないか?」「だから眼」 クイネがニッと笑う。「眼だけは、スキル以外で変えることは出来ない。だから、瞳の色で印象を変える」「眼も赤とか?」「赤い瞳はあんまり聞かない。そこまで印象が強いと、それまでなぜ噂にも出なかったのか、と疑問が持たれてしまう」「青と違う色……で、青とは印象が全然違う色……」 ん~、とクイネは考えて。「緑色はどうだろう」「緑」 想像しても緑の目の自分が想像できない。……もっとも自分の顔をじっくり見る習慣なんてないから、自分の顔自体がそれほど想像できないんだけど。「緑は割といるようで実はそんな多くないんだ。赤毛に緑の瞳なら、今の町長とは結び付きにくいんじゃないかな」「んー……」 考え込むぼく。「どうした?」「……ん、いや、赤い髪に緑の目のぼくが思い
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第133話・眼の色髪の色

「何やってんだ?」 ひょこりと顔を出したのはシエルだった。「ああ、町長の髪と眼の色を変える相談を」「町長の? ……なんで?」 ミアストがエアヴァクセンから追放したぼくを探していること、イコールでは考えてないだろうけどヤツと展示会で会うことになったこと、正体がバレてエアヴァクセンに町ごと持っていかれるのを避ける為に、念には念を入れてエアヴァクセン追放者とグランディール町長をイコールで考えないように一種の変装をしようとしていることを説明する……と……。 なんでシエル、話が進むと眼がキラキラしていくの?「すごい。面白そう。やらせて。いや。やらせろ」「いや、髪と眼の色を変える方向で話を進めてるから、シエルは……」「グランディールの町長だったらそれに相応しい髪と眼じゃないといけないだろ! ちなみに何色にするんだ?」「赤毛に緑の目」 うんうんと頷くシエル。「でも、少しの色の違いが印象をガラッと変えるんだ。下品にも上品にもな。グランディール町長に一番相応しい色味にしなければ!」「確かに……色の微妙な違いで、上品にも下品にも変わるからな……」「だろ? だろだろ?」 芸術系スキル持ち主二人が夢中になって話し込んでいる! 思わず助けを求めてアパルとサージュを見た。 二人とも苦笑い。 この手の連中を止めるのは難しい、と分かってるんだ。 シエルは元より、好きではないが陶器の絵付けを続けさせられたクイネも色味の違いでどうとかと言うのが分かるようで、ぼくそっちのけで話し込んでいる。 いや、ぼくはいいんだけど。上品だろうと下品だろうと、ぼくがぼくでなくなれば。 だけど。「来るのは宣伝鳥でBランク以上の町の興味ありそうなところ、だったな」「自分が言うのも何だが、高レベルの町長にもかなわないような立派な町長に見せたい」「町長負けしたくないもんな!」「いや、外見だけ勝っても意味がないだけで」「やっぱり長になる人間はまとう色からして違うからな!」「エアヴァクセンの町長は噂を聞く限りとんだ曲者だ。そんな男に若年と言うだけで見下されるのはグランディールの町民として腹立たしい」「おう! うちの町長が世界一だってとこを思い知らせてやんねーとな!」 ぼく、完全に玩具だな……。 もう一度救いを求めてアパルとサージェを見る。…
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第134話・勝者

「町長はどうして配下を受け入れないのですか」「そんな柄じゃないから」 汁麺の汁をすすりながら答える。「ぼくは、……今のぼくは、人を従える人間じゃない」「町長ではないですか。それだけで町の人間を従える――」「ぼくは町の人を従えてるわけじゃない」「従えてない? どういう意味でございましょう」「ぼくは町の人に手伝ってもらわないと何もできない」 きっぱりと言い切る。「何度誰に言ったか忘れたけど、ぼくはスキルを持っているから町長になっただけ。それが分かってこの地位にいる。……ここにいる理由は、ミアストを見返すため。あいつを見下して笑ってやるために町長やってんだ。うん、ぼくに夢見てるきみには納得できないだろうけど、ぼくはこんなくっだらない、下手すればミアスト以下の人間なんだ」「……わたくしは難しいことはよくわかりません」 ヴァリエは藍色の目を伏せて首を振る。「ですが、たった一つだけ、分かっていることがあります」「何」「アナイナ様やアパル様、サージュ様……いいえ、それだけではありません。今、町に住んでいるすべての人々が、我が……んん、クレー様を唯一の町長として認めていることですわ」「……他にいないから」「いないから、ではございません」 ヴァリエは、真正面から今は色違いのぼくの目を見て、ぼくに言い聞かせる。「エアヴァクセンの皆様は、クレー様と共に行きたいと願った。スピティの皆様は、クレー様ならば町の暮らしを与えてくれると思った。ファヤンスの皆様は、確実に町長としてはデスポタよりクレー様が上だと信じた。そういうことなのです。今更他の誰が町長になっても……たとえそれがアパル様やサージュ様、その他のどなたであっても、例え伝説の彼方に消えた最初の町スペランツァを治めた精霊神であろうとも、グランディールの民は納得しますまい」 最初の町スペランツァ。精霊神が生み出した「人間」が、それぞれバラバラに暮らし、自分の土地と主張し争っていたため、平和に暮らすための見本として作り上げたという「町」。 ……いや、初心者なぼくと比較するには相手デカすぎやしないか?「わたくしもその一人。例え精霊神御自らが現れ出でてわたくしの主になろうと言われたとしても、今のわたくしならば一言でお断りするでしょう。嫌だと。わたくしが唯一の主と定めた方は……申し訳ありません、あ
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第135話・陶器展示会開催

 正直、ヴァリエが何を言いたかったかは分からない。 ただ、ぼくが町長でいい、と言うことだけは分かった。 ……なんでそんな方向に話が行くかなあ。 口に出してしまうと情けない程短絡的な理由で町長やってるなぼくは。 それでもいいって、本気か? ん~……。 分かったことが一つ。 グランディールの町民は、物好きが多い。 でなきゃぼくみたいな町長初心者をそこまで慕いやしないだろう。 ……でもまあ、そこまでぼくに期待してくれているんだから、少しでも期待に応えなきゃいけないだろうなあ。 とりあえずは、対ミアストだな。 ぼくとバレないよう、同姓同名の若い町長と思わせるように……。 アナイナ情報によると、ミアストの傍には嘘を見抜くスキル持ちがいるって話だけど……。そいつが出てきたら厄介、かな? これはサージュとアパルに聞いておかないと。 あとは……もう少し我慢しないとな……クイネとシエルの玩具になるのを……。 二人だってただぼくで遊んでるわけじゃない。ぼくがミアストにバレないように、ついでにグランディールが舐められないよう知恵と工夫を才能の限り使ってるんだ。 ……文句言う筋合いじゃないんだよなあ。 むしろ感謝しなきゃいけないんだよなあ。 素直に感謝しづらいチャレンジ精神も混ざってるけど……。 とりあえず、髪と眼の色を決めてしまわないと。     ◇     ◇     ◇ それから半月。 スピティの大広場にテントが並び、グランディールの陶器商品が並べられた。 テントの様子よし。値札よし。お釣り用の小銭よし。陶器を包む布よし。「えー。全員集合」 ぼくの声にわらわらと集まってきたのは、ほとんどが元ファヤンスの住人。あとは商人の経験がある方々。「ここで売るのは町民の皆様でもお買い上げいただけるようなお安いものです。高く売ろうと考えないで。むしろ値引き交渉されたら喜ぶくらいで。不安になったら売買担当員を呼んで何処まで引くか聞いてください」「おう!」「はい!」「分かった!」 もう目をキラッキラさせてぼくの言うことにいちいち頷いている売り子さん、そのほとんどはファヤンス出身で、陶器スキルなしかレベルが低くて、でも陶器を作りたかった人たちだ。 もちろん、本気で陶器職人になりたい人たちで、元々のファヤンス職人に教えを受けて、このレベルなら売りに
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第136話・ぼくが町長、ぼくが町長

 百人は入れそうな大会議室には、展示台が設置され、上には色鮮やかな絵付をされた陶器が並んでいる。 目の玉飛び出るくらいの値段はするが、それでもファヤンスよりはお得。 デスポタ元町長は陶器商売で相当ふんだくっていたらしい。それで逆に陶器が売れなくなって、陶器商会なんかには白い目で見られていたところでぼくが来たので、大手ほど呆気なくファヤンスを見捨てたものだ。 ここで接客や売買をしているのは、そんな元ファヤンスでトップクラスの売り上げを叩き出していた人たちばかり。もちろん上流階級相手に商売していたのでSランクの町長が来ても怖気づかない。「準備は」「整っております、町長」 こっちはまじりっけなしの金の髪の男、アイゲン・フェアムーゲンが胸に手を当てて一礼する。 彼は元はファヤンス一の陶器商会、フェアムーゲン商会の長で、ぼくがファヤンスから出たい人を募集した時、雇っている職人、関係者、その家族、全員の安全と平穏な暮らしを条件に乗り換えてくれた。ファヤンスに人がほとんど残らなかったのは、フェアムーゲン商会の乗り換えのおかげだ。そして、若いぼくを見て、見下すことも驚くことも呆れることもなく、そのまま町長として受け入れてくれた。アイゲンが町長と認めたから、と受け入れたファヤンス町民もいるんだから、本当にありがたい。 そして、展示会の経験もあるアイゲンは、経験と知識を生かしてこの場をセッティングしてくれた。 本当に、この道のプロが動いてくれるって言うのはありがたい。 ついでに言うと宣伝鳥に持たせた案内状もシエルの意見を取り入れながらアイゲンが作り上げた。本当にありがとうございます。「挨拶を終えたら、町長は面会室へ。町長とのご面会を望む方は順番にお通しいたしますので」 面会の順番は前もって籤《くじ》で決めた。その上で何日の何時からと展示会前に連絡してある。だから今いるのは初日に決まった町と、商品が減ってから見るのではと見に来た町。「任せた」 アイゲンはこういう展示会を何度もやって、ランクの高い町の関係とかを握ってる。任せておけば問題は起きないはず。 ぼくは町長の仮面を心の中で被る。 ぼくは町長。新鋭の町グランディールを率いる若い町長。冷静で、動揺せず、浮つかず、自分の立場を弁えている。 よし……よし。 通りがかりに鏡が飾られていたので、
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第137話・スピティとエアヴァクセン

 フューラー町長は椅子に腰かけて、目を細めてぼくを見た。「失礼ながら、デレカートやトラトーレに聞いたのとお姿が……」「ええ」 町長のぼくは苦笑する。「色を変えました。本来は栗色の髪と青い瞳です」「もしかして、私が送った伝令鳥に関係することですかな?」「ええ。まさにその通りです」 ここでは嘘をつかないほうがいい、むしろ、弱みを見せたほうがいい。 それがアパルとサージュの意見だった。 フューラー町長は恐れているかもしれない。ファヤンスを併合してしまったグランディールを。 家具の町として知られるスピティに素晴らしい家具を持ち込むグランディール。いつ何時、スピティから職人を奪われるとも限らない。そういう恐れを持っていてもおかしくない。なら、こちらの弱みを握らせて、安心させるのがいいだろう、と。「では、貴方がミアスト・スタット町長が探している追放者クレー・マークンと同一であると思ってよろしいか?」「ええ」 ぼくは軽く苦笑する。「追放しておいて後から有力そうだと連れ戻されるのは御免ですので。せっかくグランディールがここまで育ったというのに」「確かに……ここまで育った町を、生まれた町なのだから譲れと言われても、納得は出来ないでしょうな」「お判りいただけますか」「ええ」 フューラー町長はチラリと窓を見る。その下ではグランディールの陶器を買おうという人たちや売ろうとするみんなが大騒ぎしている。微かにだけどその賑やかさがここまで伝わってくる。「庶民の手にも届く陶器。そのアイディアは素晴らしい」「素晴らしい……ですかね?」「ええ。それだけで購入する層が増える。もちろん下層部の儲けはわずか、……しかし成人してよいスキルが出て、上層部と呼ばれる存在になれば、よいものを、と思う。その時、小さい頃愛用した椀、その面影の残る芸術品を手に取りたいと思うときもあるし、よりよい椀で食をしたいと思う者もいるやも知れぬ。そして、それを見た他の者たちはあの上に行った者の愛用する椀と同じ町の椀を欲しいと思うやも知れぬ」 フューラー町長は組んだ指の上、暗褐色の瞳をこちらに向けた。「やり手ですな」「いえ、周りの皆が有能なだけです」 チラリと背後に視線を送ると、無表情のアパルとサージュ。「集まる者が優秀というのも、また町長の資質。そして、そういうところを警戒しても
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第138話・ミアストとの再会

 それからしばらくは、普通に町長同士の話し合いだった。 ……化かし合い、ともいう。 話していることは日常会話や陶器の話なんだけど、裏ではお互い相手の尻尾を掴もうと言葉を探し、自分に優位に進めようという舌戦。 正直に言う。ぼくの心の中にある町長の仮面……恐らくは「まちづくり」のスキルの中に入っていたであろう、町長としての仕事が出来るようにするこれがなければ、この各町の町長相手に探り合いなんてできなかった。もごもご言っているうちに相手にペースをつかまれ、権利をたくさん持っていかれていただろう。 アパルやサージュの助けがあっても、徹底的に持っていかれてただろうな。 心の仮面さんありがとう。 四刻間、厄介な相手に警戒しながら話していれば疲労も溜まる。 疲れ果て、残り一刻だけど、さすがに疲れた。 一旦大会議場から繋がるベランダへ行き、薄いワインでのどを潤して、外の風を浴びていた時、背後から声をかけられた。「グランディールのクレー・マークン町長ですかな」 この、声。「ええ、そうですが?」 即座に町長の仮面が発動、笑顔で振り返る。「良かった、今日はもう会えないかもしれないと思っておりましてな」「申し訳ありません。会談の順は決まっておりまして」「では決めた者は私のことを知らぬということですかな?」「……どういう意味でしょう?」「SSランクの町長をここまで待たせるという非礼ですよ」 ヤツは……ミアスト・スタットは。 自分が最優先されて当然という顔で、ぼくの目を見ていた。     ◇     ◇     ◇「お待たせしたことは失礼いたしました、エアヴァクセン町長、ミアスト殿」 ぼくは薄い笑みを浮かべて、半年前より少し伸びた身長でミアストと目線を合わせる。「ですが、私と話したいという方は多いので」「見れば分かりますな」「では改めて言います。お待ちください。会談の順はどの町を後に回しても揉め事が起きそうでしたので、先頭のフューラー町長以外は公平に籤で決めたことは先刻通知した通りです。どの町からも文句は出ませんでした。話す順番は公平に。……何故SSランクという理由でこの公平さが損なわれる待遇を受けられると思うかが疑問ですが」 ミアストはパカンと口を空いた。 ぼくは背を向け、歩き出す。「ま、待て!」 後ろから追ってくる足音。
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第139話・返す言葉は

「クレー・マークン!」 半ば悲鳴のようなミアストの声に、ぼくはもう一度足を止める。「君がかつてエアヴァクセンにいたあのクレー・マークンであるならば、私を尊重せねばならない! そうすればエアヴァクセンは高い地位を君に与えるのだぞ!」 こっちが本題だな。だけど、ぼくは既に言葉を作っていた。「確かに私はクレー・マークンという名ですが」 チラリと振り向く。ぼくの翡翠の目……あの日、希望から絶望へと叩き落とされた青い目じゃない……が、ミアストを捕えた。「エアヴァクセンとは何の関係もございませんし、……エアヴァクセンがいかにSSランクとは言え、今の私以上に高い地位など与えられますまい?」 そう。今のぼくより高い地位は、Bランク以上の町長の座しかない。「どうやらミアスト町長に置かれましては寝不足の御様子。今一度お眠りいただいたほうがよろしいかと」 寝言は寝て言えを、丁寧に言うとこうなる。 ぼくはそのままドアを抜け、くつくつ、という容赦のない忍び笑いに満ちた展示室をドアを閉めることで切り離した。 そして。「ふへえ~っ」 そのままそこにしゃがみこんだ。「おい、大丈夫か」「ほら、飲んで」 ワインを渡されて、ぐっと飲み干す。そして、アパルとサージュがぼくを囲んでいることにやっと気付いた。「……聞いてた?」「聞いてたとも。ドアの隙間からな」「よくやった。町長、よくやったよ」 アパルが軽く背を叩いて労ってくれる。「大したもんだ。あの場であそこまでミアストを追い込めるとは」「町長の仮面のおかげ」 グランディールの民でも初期……つまるところ元エアヴァクセン盗賊団と元スピティ盗賊団だった町民は、ぼくが町長の仮面というものを、物質としてではなく精神的なものとして、公式の場で使っていることを知っている。元ファヤンスはそれを知らない人が多いので、時々、町長が二人いるように感じる、と言われることがある。ぼくの中でも普段のクレーと町長のクレーは切り離されているので、特に否定はしてないけど。 サージュがそっと身を潜めてドアの隙間を作る。 展示会場である大会議室では、和やかな商談や会話が行われて……は、いなかった。 ひそひそと小声で交わされる会話。 アパルがサージュの下に入って耳を当て、ぼくは一番下から聞く。「いやあ、若造と思っていたがあの町
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第140話・疲れ果てて、宿

 さて、展示会が行われるのは三日間。 その間、スピティがスタッフの面倒を見てくれることになった。 最初は宿代や食費などちゃんとお金を払う約束だったんだが、ミアストとの一件で、フューラー町長の出方が大きく変わった。 一番下のスタッフが泊る予定の下の上宿に戻ろうとしたらスピティの役人が追ってきて、「こちらの宿になります、荷物は責任を持ってお運びいたしましたので」と中の上の宿に案内されたという。 ぼくやアパルたちやアイゲンとその直属スタッフなんかは、もう上の上、特上の宿になった。最初はぼくたちで上の中だったのに。 さすがにこれは金を払いきれない、とフューラー町長に言った。そしたら。「これはスピティだけでなく、参加したほぼすべての町からの支援ですな。ほぼ全てから外れた町へ対しての啖呵を皆が相当気に入ったらしい」 どうやらミアストを口で負かせたことで、エアヴァクセンに痛い目にあわされた町が感謝の代わりにと食費や宿泊費を持ってくれることになったと。 ……もちろん、裏はあるだろう。 自分の町がヤバくなった時「あの時助けてやったじゃないか」と援助を求めて来たり、人材を求めて来たり、果ては血生臭いことがついて来たりする可能性もある。 だけど、ミアストはぼくの敵。 他の町の町長もミアストの敵。 つまるところ、敵の敵は味方。 そう割り切ってありがたく受け入れることにした。 好意を蹴って敵を増やすのも避けたいし、ここで得た縁は相手方だけじゃなくグランディールやぼくにとっても良いことになるかも知れないし。 嫌な相手に不快な思いをさせられたら、人の好意に甘えよう。町長たちもミアストに嫌な思いをさせられていて、ぼくがミアストに恥をかかせたことで好意を持ってくれたんだろうし。「ふはあ」 ベッドに飛び込んで息を吐く。「食事は部屋に持ってくるよう言うよ。さすがに食事の為町長の顔をすると疲労も取れないだろうし。消化にいいものを頼むよ」「ありがとう~」 顔をベッドに埋めたまま答える。 正直疲労が激しい。昼食も話をしながらだったから、正直休憩時間はほとんどなかった。せっかくの休憩時間もミアストが邪魔してくれたし。「これがあと二日続くのか~……」 うんざり声に、アパルが笑いながら返事してくれる。「でも、今日の一件で各町の町長からの印象がかなり変わった。ミアスト
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