All Chapters of Lv1・Maxからのまちづくり: Chapter 61 - Chapter 70

148 Chapters

第61話・一番の町

「こんな町って……」 ポルティアが呟いた。「私、これまで旅した中でも、一番と言っていい町ですよ」「え? ほんと? それは嬉しい」 ナーヤーありがとう。それはすごい褒め言葉。「家具って特産なしでもここに住みたいって奴は大勢いるだろうに、何故俺たちを?」 改めて聞き直したポルティアに、ぼくも真面目顔……町長の仮面をつけて答える。「この町を造った第一目的は、エアヴァクセンに勝つこと」「エアヴァクセン……鑑定、SSランクの町か」「この町に住む、ぼくを含んだ半分近くがエアヴァクセンから追い出された放浪者なんだ」「こんな町を造るようなスキルの持ち主を追い出したってのか?!」「うん。ぼくの場合はレベル上限が1、つまりスタート状態で上限に達しているから鑑定式の時点で不要だって言われた。実際にはこの町のほとんどを造ったほどのスキルを、ね」「……馬鹿だな、エアヴァクセンも」「でも、私たちはこの町に見合うほどのスキルはないわ」「だから、スキルは求めてないって」 ぼくは二人を見た。「ここに住みたいっていう人、他の人と仲良くやってくれる人、約束を守ってくれる人。そうであれば立場も身分もスキルも問わない。ああ、ちゃんとみんなで食べていくために畑の手伝いとか掃除とかそういうことをしてくれる人なら大歓迎」「……えらく条件が良くないか」「ぼくの条件はこれを守ってくれる人。それ以上は求めない」「これが、私たちの今の立場でなければ大歓迎なんですが……」「大歓迎ならいいじゃない、問題なし」「いや、ある、あるぞ?」 慌ててポルティアが口を出してくる。「俺たちは貴方たちの町を見つけることを依頼されて、失敗してここに来てるんだ。俺たちが気を変えてピーラーにこの情報を売ったら」「売らないでしょ」「あ?」「だから、売らないでしょ? 依頼失敗したからってあっさり切ってここに取り残すような依頼主に、そんな義務を果たすだけの義理もないでしょ?」「そりゃあ……そうなんだが」「それに、ピーラーの性格からしたら、二人がスピティに戻っても戻れないくらいにはしてあると思うね。悪い噂流すとか、他の門番に知らせておくとか。ナーヤーもピーラーと長い付き合いなんだから、その性格くらいは分かってるだろ?」「……ええ。顔もいいし演技も超一流だけど、他人の意見なんて
Read more

第62話・新町民ご案内

 というわけで、湯処。 一応体が汚れている人が入る時はしっかり洗ってから、という決まりがあるので、ポルティアは洗い場でこすられてから湯に入った。「……こんな広い湯処、初めてだ」 湯の中に放り込まれたポルティアが、呆然と呟く。「……ちなみに、使用料は?」「使用料?」 考えてもなかった。「……まさか、タダ……?」「ていうか、今のとこ、この町でお金って使ったことも使われたこともない」「家具売って出来た金は?」「スピティで食糧とか買った」「その割り当ては?」「みんな平等のご飯になりました」「…………」 もはや言葉も出ない模様のポルティア。 そう言えばお金のことって考えなかったよなあ。町の施設もいるものも望めば生えてくるから……。ご飯とか野菜とか、外の物を手に入れる時くらいしか使わないなあ。「……エアヴァクセンを超える、か」 ぽつりと呟かれた言葉に、ぼくは頷いた。「それがぼくの目標。でも、最終目標は違う」 お湯で顔を洗って、ぼくは続けた。「最終目標は富める強国ディーウェスだけが持っていたSSSランク」「SSS……!」「無茶な夢って思うだろうけど、この町に住んでいるみんなは信じてる。こうやって町を大きくしていけば、いつかはその称号を手に入れられるだろうって」「…………」 ポルティアは天井を仰いだ。「とんでもないスキルと、途方もない夢、だな」「分かってる」 でも、とぼくは付け加えた。「ぼくのスキルは、そのためにあるんだと思ってる。エアヴァクセンのミアスト町長を見返して、最高の町を造るために」「そうか」 ポルティアは腕を伸ばした。「俺はポルティア・ポーター」「ん?」「スキルは「家具鑑定」。レベルは3000。正直スピティの門番って言うのは家具を見るから、単純に門番として役に立たないのは分かってる。それでもいいなら」「いいの?」「……いや、町長がそれでいいというんなら」「良かった」 ぼくはほっと息を吐いた。「そんなに俺みたいな役立たずでも嬉しいのか?」「半分はそれだけどもう半分は違う」「半分?」「町民になったから、着替えが出来る」「……は?」 脱いだ服は洗っておくから、ということで引き取ったのだけれど。「町民ってなったら、服も出来る」「服……出来る……?」「ああ。家も出来てるだろうな。
Read more

第63話・驚愕の極み

「ちょちょ、ちょっと待て!」 家の中に入ったポルティアの声が裏返っている。「何だ、何なんだこの高級な家具の見本市は!」 出てきて開口一番これだ。「あれだ、これは俺の家じゃない、グランディール製の家具の見本市だ」「家具はグランディール製で間違いないけど、この家はポルティアので正しいよ」「だけど、あれ!」 ポルティアが指した先を見れば、それはまあ立派な家具の見本市。「ああ、そうか、家具を鑑定できるだけじゃなくて欲しかったのか」「いや、確かに俺の欲しい家具ばかりだけど! こんな高級な家具、家、適当に町外れにあっていいものじゃない!」「でも、それがポルティアの希望の家なんでしょ?」「希望過ぎて怖いわ! 俺の稼ぎで買えない!」「どの家も稼ぎでできたわけじゃないよ?」「は?」「ああ、あんたが新入りか」 畑の手伝いに行っていたらしいヴァダーが、汗を拭いながら戻ってきてポルティアの顔を見た。「あなたはこの町の町民か」「ああ。家がすごいんだろう?」「すごい? そんな言葉で形容できるか! ピーラーもこんな家に家具揃えてないぞ!」「町長の「まちづくり」のスキルのおかげだ」「は?」「町民の理想の家が出来る」「はあ?」「正確には、町民が理想、あるいは必要とするものを、町が具現化するんだ」「はああ?!」 何て見事な「は」の三段活用。「こいつ、何してた人だ?」「スピティの門番って言うか、フリーの家具鑑定師。だから見てるものはいいのばっかだと思う」「あー。高すぎて手に入らないけど欲しいのがいっぱい出てきたのか」 うんうんと頷くヴァダー。「なんだ、欲しいものが手に入ったなら素直に喜びゃいいのに」 マンジェが呆れたように言った。「高すぎて怖い! 俺の人生何回分で揃えられるのか……!」 ナーヤーは……。 入口に座り込んでいる。「大丈夫?」 シートスが声をかける。「わ、私が子供の頃に住みたかった家がそのまま出来てる……。嘘……」「うん、そうなの。思った家が出来るんだよ」「うらやましいです、わたくし、まだ町民として認められていないから、家がないから……」 アナイナとヴァリエも落ち着かせようとナーヤーに声をかけている。「ちょっと、ちょっと待て。この町の町スキルって……いや町長のスキルか……? 町に必要なものが生えて来るって、文
Read more

第64話・遅れて契約

 ポルティアとナーヤーが、ぐたりと椅子に座り込む。「……あれ……本当に俺の家なのか……?」 もう何度目の確認になるだろう。うん、と頷くと、ポルティアが机に突っ伏して頭を抱えた。「あんな家、ピーラーに見せたら速攻奪われる……」「大丈夫、そもそもピーラーみたいなヤツは最初っから町に入れないから」 どうやら家の中の家具を全部「鑑定」してしまったらしく、それが全て最高級と判断され、どうしようもない状態というところ。 一方小さい頃から憧れの家、と言っていたナーヤーは比較的冷静さを取り戻してるっぽい。「あの家、住んでいいんですよね?」「うん。好きに使っていい」「じゃあ、好きに使わせてもらいます」 うん、うん、と頷くナーヤー。 やっぱり何か追い込まれた時強いのは女性の方なんだろうか。それともうちの町の女性陣、アナイナとかヴァリエとか奥さん陣にそういうのが揃っているのか。でもヴァリエはまだ町民じゃないから……でもそろそろ決めないとなあ……てかヴァリエ、家が新しく出来てたのを指摘してなかったなあ……。そういう町、って納得してるのかなあ……。「で?」 突っ伏した体勢のまま、視線だけがぼくに向く。「この町でやらなければならないことは、何だ?」「絶対やらなきゃいけないのは、家具づくり」「ああ、町の人間全員で作るのか。しかし俺のスキルは」「スキル関係ない。……ああでも出来た家具の平均価格を鑑定してくれると嬉しいけど」「待て、おい待て。俺は職人じゃないぞ」「うん。ていうか家具職人はこの町一人もいない」 ポルティアの顔面に疑問がたーくさん浮かんでるよ。「……ああ、分かりました」 ナーヤーが手をポン、と打つ。「私たちの家のように、望んだものが出来る、というわけですか?」「んなわけあるかっ」「あります」 一瞬浮上したポルティア、また撃沈。「個人の物は個人の望みで出来るけど、町で作る外に売り出す品は町民全員が望まないとちゃんとできないんだ。町の人間全員が「これが必要」って思うこと。それが必須条件。でも、それがあるから、スピティに持ってけるほどの家具が出来る」「デザイナーは」 ぼくがシートスを見ると、シートスは少し笑った。「今は家で大人しくしているわ。水路を作る時には起こしてくれって言ってたけど」「毎日寝てる?」「寝溜めするって言ったのを
Read more

第65話・デザイナー紹介

「ああ。俺はヴァダー・マニッジだ、よろしく……。で、この町の水は地下から取ってるんじゃないのは分かるよな」「……空飛ぶ町が地下水に頼るわけにはいかないよな」「今は町長のスキルで出来た水汲み場があって、湯処は湯を供給する設備が揃ってるけど、俺たちが普通に飲む水とか、家畜にやる水とか、畑に撒く水とかは水汲み場に頼るしかない。そして、この町は住人が増えると広がっていく。広がれば広がるほど水汲み場の往復が大変になる」「……その水汲み場の水は何処から出てきているか聞いていいか?」「誰も知らないから聞いても無駄」「無駄か……」 ポルティア、またまた沈没。「町民に水が必要だと思ったから出来たのね? でも、それだったら水汲み場を増やせば」「水汲み場だらけの町になるぞ……」 突っ伏したままのポルティアに、ヴァダーが頷く。「だから、水路を作ろうと思ったんだ。町をぐるっと回って水が流れていれば、そこから水も汲めるし家畜も飲めるし畑にも撒ける。という案を俺が出したら」「シエルが出てきたわけ?」「そりゃあ、この町に何かを作るんだったらシエルが出てこなきゃおかしいだろ」「確かに、こんなアイディア出すのはシエルしかいないよな……」「シエルって、家具のデザイナーか?」 頭だけをあげてポルティアが聞く。「うん。というか、町全体の何かを作る時は大体シエルが音頭取るから」「デザイナーのスキルなのか?」「いいや、スキルは「空画」だっけ?」「ああ。空中に絵を描くスキルだけど、描かされ続けて右腕壊してスキル使えないんなら用済みってエアヴァクセン追い出されたんだ」「……どうなってるんだエアヴァクセン……」「スキルが使えなければ追放。そんな感じ」「あと、町長の威厳をやらを傷つける人間も追放。俺は栄転でエアヴァクセンに決まったんだけど、式典に腹痛で行けなかったらそんな奴いらないってわけで盗賊に」「……グランディールがランクアップする前に自然消滅しないかエアヴァクセン」「それは困る」 ぼくは額を指先で叩きながら答える。「確実にグランディールがエアヴァクセンの上になるって証明してからじゃないと」 そこへ、ガチャリと扉の開く音。「うぉーいおはよう。水路はどうだ?」 欠伸しながらやってきたのはシエル。「おはよう。そろそろ呼ぼうかって話してたんだ。そ
Read more

第66話・水路

「じゃあ、水路が出来るようにと念じてくれ」「ああ、やっぱり」 ナーヤーはこの町の法則に気付いたらしく、すぐに目を閉じて集中する。「念じてくれと言われても」「この町にポルティアの家は出来ただろ?」「ああ……おっそろしく高級なのが」「「そんな家を持てればいい」って一度として思ったことはないって言える?」「言えない……無理だと諦めた夢だけど……」「それと同じ。この町に水路があるといいなって考えるんだ。あとはシエルのアイディアとぼくのスキルが完成させてくれる」「…………」 ポルティアはしばらく眉間にしわ寄せてこめかみを指で押さえていたけれど、目を閉じて集中の体勢に入った。 ヴァリエは最初から分かってます大丈夫な笑みで手を組んで念じている。 そして、ぼくも集中する。 シエルが空を見上げ、叫ぶ。「ヴァダー!」「おう!」 こればかりは「まちづくり」のスキルだけでは出来そうにないので、ヴァダーの「水操」と「合わせ」ることにした。 ばしゃばしゃっと水音が聞こえる。水音は遠くなったり近くなったりする。 本当、こういうことを考えるシエルと実行できるヴァダーがすごいよ。 空気の温度が少し下がった。 そして、上手く出来たという手ごたえが、ぼくに。「出来たぞ」 シエルが震える声で、終わりを告げた。 全員、ゆっくりと目を開ける。 そこには、前もって知らされていたぼくにも驚きの光景が広がっていた。 空を、水の道が蜘蛛の巣のように覆っている。 人の手に届くところから、ずっと高い場所まで。水汲み場の屋根から流れ出した水流は、八つの方向に分かれて町を万遍なく回って水汲み場へ戻ってくる。「……何だよ……何なんだよこれは……」 ポルティアが呟く。まあ知らされてなければびっくりの映像だよな。「さすがは町長」 ヴァリエが空を見上げて涙ぐんでいる。「このような奇跡を起こせるなんて……!」 奇跡じゃないです。ぼくとヴァダーのスキルを合わせてシエルが具体的にイメージした結果なんで。「すごーい! お水が空飛んでる!」「お家にも来てる!」 子供たちはワイワイと大喜び。「水遊びするのはいいけど、汚したらダメだぞ」 飲料水でもあるんだから。「遊んでいい場所はあるの?」「牧草地とかなら」 わーいと喜んで子供たちは牧草地へまっしぐら。
Read more

第67話・知り合い

「呼びたい知り合いがいるんだが、いいか?」 ポルティアがそう切り出したのが、新入り二人が町に馴染んできた二日後だった。「知り合い? どんな人?」「スピティと繋がりのあるファヤンスの町に住んでるんだが」「ファヤンス?」 次の陶器をどう作ろうかと考えていたポトリーが反応した。「知ってるのか? ファヤンスを」「知ってるも何も。おれの出身はそこ。陶器の町、Dランク、違う?」「いや、合ってる。ポトリーはスキル「陶器作り」だろう? なんでこんなところに?」「レベル低いって追い出されたんだよ。上限は1000だから低上限でもない。伸びしろがないって言われて、追放ー」 ポトリーは冗談めかしてパッと手を開いた。「だけど、デレカートに詫びの飾り皿を送ったって聞いたぞ。それはポトリー作だろう? 低いって言われるレベルが作って納得する男じゃないぞデレカートは」「シエルが絵の指導してくれたんだよ。クレー町長も陶土の崖を作ってくれた。同じ皿だったらいい陶土で綺麗な絵が焼き付けられている方が値は上がる。で、ファヤンスの誰かさんがどうして移住したいと?」「町のスキル第一主義に合わないんだと」「スキル第一主義って……ほとんどの町がそうだろう」 エアヴァクセンをはじめとして、ほとんどの町が町民をスキルで決めている以上、スキル第一主義になってしまうのも仕方ない。で、そこから弾き飛ばされる人間も少なくない。シエルのような別の才能を持っている人間、ぼくのようなレベルで測れないスキルがそうやって取りこぼされ、グランディールに集まっている。「あいつはかなり才能のある料理人なんだが、スキルが「陶器絵付け」でな、しかも9000近いと来た。当然絵付けの仕事しかやらせてもらえない。絵じゃなくて料理をしたいといつもいつもそればかりだよ」「なんでポルティアがそんな奴のこと知ってんだ? 9000レベルだったらそもそも町から出してもらえないだろう」「デレカート氏の依頼を受けて、彼の執務机に飾る飾り皿を見て欲しいと頼まれてファヤンスに行ってな、その時知り合った。何か妙に気に入られてな、泊まってけって言われたんだ。その時に、手料理をごちそうしてくれてな……。それが非常に美味かったんで、料理のスキルも持ってるのかって聞いたらこっちは自分の趣味でつい夢中になって楽しくってって盛り上がって、……でも自
Read more

第68話・町民の数

「誰も、クイネさんを見捨てるなんて言ってないよ」 ポルティアは顔をあげた。目が見開かれている。「ただ、彼を町に迎えるにはちょっと騒動が起こるだろうな、とは思っている」 しゅん、とポルティアの肩が落ちる。「町には食堂がないから、才能のある料理人は欲しい」「町長……」「言ったらまずいことだってのは分かっている。でも言わせてくれ。スキルだけがその人の才能じゃない。才能の一つではあるだろうけど、努力して身に着けた技術はスキル以上に素晴らしいものだと、ぼくは思う。陶器絵付けだけをやって生きていけるのに、料理を学び、覚え、それで生きていきたいと思う、それの何処が悪いのか。むしろ、スキル以外を才能と見做さず、本人の望みを無視して町の稼ぎを第一とする、ファヤンスが罰を受けるべきなんだ」「町長!」「ファヤンスに喧嘩を売る気か?」 アパルの悲鳴交じりの声と、サージュの平坦な声。「まさか」 ぼくは町長の仮面をつけたままにっこりと微笑んだ。「スカウトするだけだよ、片っ端からね」「は?」     ◇     ◇     ◇ それから二日後。 たくさんの鳥がグランディールからファヤンスへ向けて飛び立った。「金の無駄遣いって言わないか?」 鳥の影を目で追いながら、サージュが呆れたように言う。「ぼくがいいって言ったらいいんだよ」「そうなんだがな」「あ、ごめん。面倒なことさせたの、怒ってる?」「いいや?」 サージュは首を横に振る。「この町が町として認められるのに必要なのは町民で、普通の手段であればまず人間が集まらない。どこかの町から大規模にスカウトしない限り、Eランク以下、村クラスとして認識されてしまう。どんなにいい家具や陶器を作ってもな」 だから、とサージュは続ける。「強硬手段に移らなければならないと思っていたこのタイミングで、町長があんなことを言い出すとは思わなかったが……」「ならいいでしょ」「いいんだ、いいんだが」 サージュは眉間のしわに人差し指を当てる。「上手くいくかどうか試して見なきゃだけど、試す価値はあるでしょ?」「そうだな」 諦めたように溜息をつき、サージュは空を見た。「上手く届くといいんだが」 クイネは妙な夢を見て目覚めた。 懐かしい友人の夢だ。食堂の親父になりたいという夢を真面目に聞いてく
Read more

第69話・ファヤンスの事情

  三々五々、伝令鳥たちが帰ってきた。 五十羽近い伝令鳥は、ほとんどが濃い桃色だ。 普通、伝令鳥は赤いが、この桃色の伝令鳥は宣伝用。だから宣伝鳥と呼ばれている。町が町民に送ったり、商会が商品の案内を送ったりするのに使われる。鳥を放つ人間が出した条件……その条件に当てはまる人間の所に飛ぶ。商会とか大店とかがよく持っていて、大体は新しい顧客探しに商品に興味があってある程度以上の金がある人間を探して辿り着く。今回はトラトーレとデレカートに頼んで、宣伝鳥を貸してもらった。この二大商会は当然いい宣伝鳥を持っているので、ファヤンス在住で新しい町に行きたいという望みを持った人間の所に飛んで行ったはずだ。 Dランクくらいの町だと、町民引き抜きには過敏になる。人数が減ればそれだけランクダウンが大きいから。特に町の看板を引き抜かれるとランク外になりかねない。だから他の住みやすい町に行かれたりすると困るので、他の町の情報を町民に入れないこともある。 クイネと言う人もそのパターンだろう。 レベル9000の「陶器絵付け」は陶器の町には絶対必要。陶器の町、と言う売り出し方をしていながらDランクなのは厳しい。名産があるならせめてCが欲しいところ。ファヤンスがクイネに仕事を強制させているのも、早くランクアップしたいからだろう。 ちなみに町ランクは町ランク鑑定のスキルを持っている人間が見れる。ヴァローレも見れて、グランディールを見てもらったことがあったけどその時は「まだランク外」と言われてちょっとショックだった思い出。原因は町民数と言われて、何処か町民をないがしろにしている町からゲットすると決めていたその時に、ファヤンスの町から人を招きたいというポルティアの提案に乗ることにした。ポトリーを追い出してクイネを出さない町、陶器の町と言うのにDランクと言うのは何が問題がある町、と言うことになる。で、クイネへの伝令鳥を飛ばすついでに宣伝鳥で町を出たい人に送ったんだけど……。「鳥が辿り着いた以外にも町を出たい人間はいそうだな、これは」 宣伝鳥が持ち帰った返事……と言っても町を出てウチに来ないかと言う問いにイエスかノーかだけを書く返事で、イエスの数が異様に多い。これだけ町を出たいという人がいるなんてどういう町なんだファヤンス。「サージュ、ファヤンスの……」「もう集めた」「早
Read more

第70話・不穏な町

「ピェツって聞いたことないな」 ポトリーはレベルが低いとはいえ「陶器作り」のスキル持ちで陶器を作るのも好き。なのに知らない?「クイネは知ってるのか?」「そりゃ知ってるよ。本人は知らないけど、実物の飾り皿を見たことが一回だけある。そりゃあ素晴らしい絵付けをするんだ。クイネ・コシネーロの名がついているってだけで値段が十倍にも百倍にも跳ね上がる。贋作も多いけど、本物を見たことがある人間なら一発で贋作って見分けるほど印象的な……、そう、胸を打つ絵付けだ」「シエルとデザイナーとしてどっちが上だ?」「芸術家だな。方向性が違うから比較はできない。シエルは実用性を兼ね備えるが、クイネは芸術だ。触れてはいけないものだとすら思わせる」「ほお」「でも本人がやりたいのは料理なんだなあ」「ああ。自分の知らないところに渡ってそこで褒められるより、目の前で食べてもらって美味しいって言ってもらえる方が好きだと言い切っていた」「精霊とか神様とか言うのは理不尽だなあ……」 ポトリーが溜息をついた。「そのレベルの半分でもいい、おれにあればなあ……」「多分彼も同じことを思っているよ。貴方の半分ほど陶器への情熱があれば、とね」 本当世の中ままならない。「でもピェツって言う窯師は聞いたことないな。まだ若いのか?」「十七歳らしい」「若いな。二年前に発覚して、ファヤンスが厳重に隠してるってところか」「多分このメッセージからして、成人してから町を出たことが一度もない可能性があるな。助けてほしい、そのメッセージが詰まってる」「十七歳の若人をどんな扱いしてるんだ、ファヤンスは」「どっちにしても、ファヤンスには町を出たい町民が大勢いるのは確かだね」 五十通の手紙、大きく「はい」と書かれた紙を見る。「ああ。だけど、それが分かったからってどうなるんだ?」「もらうんだよ」「へ?」 先に話を通していたアパルやサージュは平然としていたけど、それ以外の町民はぽかんと口を開けていた。「もらうって……町をか?」「町って言うか町民ね」 ニッと笑うぼくに、正気かと言う顔を見せる皆々様。 大丈夫。正気です。「ファヤンスを出たい町民がいて、新しい町民が欲しいぼくらがいる。反対すするのはファヤンスって「町」だけだ」「いやそりゃ詭弁だろ」「うん分かってる。でも、今の状況で町
Read more
PREV
1
...
56789
...
15
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status