「ははは、それで牛車ごと売ってきたと」 デレカートが愉快そうに笑う。 ここはデレカート商会の建物。トラトーレが四頭立て牛車の準備と、ついでに礼という名の生活用品などを積み込むのに時間がかかるので、ぼくを囲んでてくてくとデレカート商会まで歩いてきたというわけ。「トラトーレとしてはピーラー氏は失いたくない顧客ですからな。ピーラー氏自身は厄介な方ですが、彼が紹介する顧客は大手の信頼のおけるところばかりで」 なるほどねえ。それであれだけワガママ聞いてたわけだ。いい客を連れてきてくれる客は大事大事。「しかし、話に聞く巨大ベッド、四ヶ月後なのでしょう? 間に合うのですか……?」「一つ目も二ヶ月で間に合いました。既にデザイン画も上がっております。それに、デレカート氏との契約も捨てる気はありませんから」「ありがたい」 デレカートが笑みを浮かべる。「こちらも注文が殺到していましてね、断られたらどうしようかと心配していたところですよ」「それはありませんからご安心を」 アパルが笑顔で請け負った。「ピーラー氏は気に入ったものは全て手に入れたがる。グランディールに興味を持ったようですが、今回のベッドでさらに興味を持ったと思われます。トラトーレも気を使うと思いますが、影響力はスピティ内部にしか影響しない。お気をつけて」 デレカート商会から受けた注文は、近くのAランクの町長の執務机。代替わりしたので、箔をつけたいらしい。 ちゃんとイメージ図も注文も整っているので、難しくはないだろう。 デレカートの商売は、堅実且つ着実。初めての取引相手にいきなり大物を任せることはない。もちろんピーラークラスの顧客もいるんだろうけど、そういう客を抑えるだけの力がある。 商会を立ち上げたのはデレカートが先で、デレカートと肩を並べるのにトラトーレは無茶を通すしかなかったというのがサージュの「知識」。 その結果があのバカでかいベッドに辿り着く、というわけ。 思えば最初に紹介された時のトラトーレが先手打たれた時にあちこちのギルドに繋ぎを取ったりして好印象を取ろうとした必死の対応は、後発組が先発に追いつくのに必要な努力だったんだろうな。 でも……あんな対応を受けたんじゃ、大変だろうなあトラトーレも。 ありがたいっちゃありがたいけど、商売としてやっていくにはデレカートの方が安心できる。
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