Alle Kapitel von Lv1・Maxからのまちづくり: Kapitel 21 – Kapitel 30

56 Kapitel

第21話・トラトーレとデレカート

 ぼくたちを迎えた門番が、少しして走って戻ってきた。「グランディールと言うのは町の名ですか」「小さいですが、町です。町長も印を持ってきています」「町長……」 サージュとアパルが視線でぼくを示し、ぼくはゆっくりと頷いた。 門番と目が合う。 緊張するな。悠然と、鷹揚に。「お若いですな」「新成人になってすぐ町を造られた傑物です」「このような家具を作れる町を造るとは、まさに傑物ですな」 門番がにっこりと微笑む。さっきまでの適当な態度とは大違いだ。「どちらのギルドに案内されますか」「申し訳ない」 門番は頭を下げた。「トラトーレ商会とデレカート商会が私の報告に興味を持ったようで、どちらが先に見るかで揉めているんです」 トラトーレ。デレカート。なんのこったか分からない。ただここで「それは何?」と聞いてはいけないということは分かっているから、ぼくは目を閉じて腕を組んだ。「ほう。胆力もなかなかのものとお見受けしました。この商会のどちらかだけでもひっくり返る代表者がいるほどなのに、両方の名前を聞いて驚きもしないとは」「それはこちらのセリフですよ」 サージュさんが笑顔で話しかける。「まさか初会で両方に話が行くとは思いませんでしたが、……まあ品には自信があるので」 もう少々、こちらでお待ちくださいと、牛車はぎっしぎっしと門の中に入っていく。 牛車が案内されたのは、豪華で大きい荷車が並ぶエリアだ。屋根があって、日光からは遮られる。 ぼくは声を潜めて聞く。「トラトーレとデレカートって? ……とは?」 言葉! と目で叱られて、言い換える。「スピティ家具ギルドの双璧と呼ばれているSランク商会です」「……初会で見本を持ってきただけの町が案内されるような商会……じゃない、な」 言葉遣いに気を付けてアパルに聞くと、頷き返される。「この町で最も重要なのは門番です。商品を町に入れるかどうか、入れたとしてどの商会に繋ぐかを決める役割を持っているのですから。だから各商会は優秀な目利きを門番にして、自分の所に入れようとしています。私たちを担当したのはどうやらフリーの門番だったようですが、だからこそ一番大きい商会二つに連絡を入れてくれた。運がいいですよ、我々は」 運がいいのか。ならいいや。ぼくは若い町長を演じていればいい。運が良ければグランデ
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第22話・取引

 ぼくは、動揺しているのを悟られないようにとチラリとサージュとアパルを見た。 「任せる」と目線で送る。 了解、と二人が頷いて、まだ揉め始める二人の商会長に向き直った。「こちらとしては、正直どちらでもいいのですよ。ただ、取引に条件があるのです」「何だろうか」 トラトーレもデレカートも表情を戻してサージュを見る。「こちらの家具は、町スキルで作ったもの。故に大量生産はできません」「まあ……確かに」 デレカートの方がしげしげとテーブルと机を見る。「これだけの商品、時間がかかるだろう……。……そうだな、設計図を作って、町民全員の町スキルで作って二ヶ月に一つ。全く同じデザイン同じ大きさの椅子であっても一度にせいぜい五脚。そんなものではないかね?」「さすがデレカート商会長、話が早い」 褒められてデレカートが少し胸を張る。トラトーレが悔しそうに唇をかむ。「大きくても小さくても二ヶ月に一つ。それだけしか納品できません。豪華でも地味でも、大きくても小さくてもです。ただし、設計図通りの物が必ずできます。複雑な彫刻なども、何処にどんなものを入れて欲しいかご注文いただければ必ずや望み通りの物ができます」「ふむ」「見本のテーブルとタンスの設計図はこちらに」 アパルが、前に作る時に参考用にと作った設計図を差し出した。サイズは細かいが装飾なんかはシエルがオリジナルでデザインしたので設計図以上の物ができている。 トラトーレとデレカートが設計図を穴が空くほどに見る。「この設計図で、この仕上がり……ありえん……だが実際にできている……」「装飾などはデザイン担当のオリジナルなのかね?」「ええ」 笑って頷くサージュ。「装飾はイメージを伝えてデザイン担当に任せても大丈夫そうだな」「このデザインを気に入って下さったなら」「ああ、ああ、このデザインは担当のセンスの良さを示している。豪華すぎず派手過ぎず、しかし地味とは思わせないこの上品さ!」「このデザインは我がトラトーレ商会に向いている! 若き町長よ、どうか、どうか我がトラトーレ商会にお任せを!」 ふーむ、とサージュとアパルが顔を見合わせた。「では、この二つをそれぞれの商会に預け、様子を見ていただく、と言うことでは」「それならば!」 デレカートが身を乗り出す。「今、設計図を書き上げた家具がある! うちの職
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第23話・どちらにしようかな

 帰りの牛車はパンや野菜、小麦粉、肉、そして大量の野菜の種やウズラ十羽などで、来る時より重くなったんじゃないだろうか。ファーレ特製の牛車はできるだけ牛に負担をかけないようになっているんで牛はくたびれた様子もなく歩き出す。 ああ、やっとさん付けをしないことに慣れてきた。 行きの牛車の中、アパルとサージュに口を酸っぱくして言われたこと。 人目のあるところでは偉そうな態度を取れ。 頭の中で「さん」をつけていたらつい口にしてしまう、頭の中でも自分たちを呼び捨てにしろ。 迂闊に口を開くな。 何を聞いても表情に出すな。 これだけ絶対に忘れるな。スピティの中では絶対だ、と。 偉そうな態度は何となく覚えた。黙って腕を組んで任せておく。いざという時だけ動く。頷いたり目線で促したり。 「さん」付けもようやく取れてきた。頭の中で呼び捨てにしたらそれだけ慣れてくるんだろう。 口を開かない、表情に出さない。 鷹揚、という言葉を何度も言われたけど、要は余裕を持って焦りや苛立ちを顔に出さないってことだろう。 やり遂げた。 頑張った、ぼく!「やっと緊張が解けたようだね」 アパルがくったりと床板に座り込んだぼくを見て笑う。「おかげさまで」「町長が教えを守ってくれたおかげで、思った以上にいい結果だったな」 サージュが荷台を見て笑う。 もう内輪しかいないのでアパルもサージュも丁寧語を取っ払っている。「お試し家具二つで百万テラと次の予約とはありがたい。しかも食糧商会と繋ぎを取ってもらえるとはね」 アパルも頷く。「おかげで食糧にはしばらく困らないね。問題は二ヶ月後だけど」「二ヶ月後にはどちらかの商会に決めなければならないというのはな」 トラトーレとデレカート。「最初に注文を出してくれたデレカートと、食糧商会に繋ぎを取ってくれたトラトーレだね」「そう」 サージュが難しい顔をした。「普通なら先に評価してくれたデレカートを選ぶべきだ。が」「食糧商会と繋いでくれるトラトーレは、できたばかりの町としては是非とも取っておきたいところだね」 アパルも難しい顔。 グランディールの食糧担当はヒロント長老とマンジェだ。だけどこの二人のスキルは無から有を生み出すスキルじゃない。ヒロント長老は畑を豊かにして実りを約束するスキル。マンジェは動物を美味しくする
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第24話・町に住む夢

「盗賊か?」「まあ、そりゃあ来るだろうな。ていうか来る前提にしてたんだから」 サージュとアパルが言葉を交わす。ぼくは内心真っ青になっていたけれど、咄嗟に「ぼくは町長、ぼくは町長」と言い聞かせ、じろりと辺りを見回す。 かつてアパルたちが着てたようなボロボロの革鎧。その上髪はねばねばしてそうだし、何か臭う。 アパルとサージュが想定していたのは、恐らくはこの街道をねぐらとする盗賊。スピティで噂の新町の牛車が東に向かって出発したなんて、当然彼らは耳に入れて狙ってきたんだろう。狙いは食糧ってとこか。 さて、どうしよう。 チラリと視線を走らせる。アパルとサージュに、不自然じゃないように。 二人がこちらを見ないってのは、予定通りにやるってことだ。 なら信じて任せる。 というか、ここでのぼくの役割は、若年ながら素晴らしい家具を作る町を得た町長。ここで恐怖で青ざめたり挙動不審になったら、何もかもが無駄になる。「グランディールとやらの町長さんよう」 男の一人が声をあげた。「荷物を全部もらいたいんだが」「断る」 ぼくの答えは端的、返しも出来ない程に。 案の定、一瞬ポカンとした盗賊たち。 次の瞬間、真っ赤になる。「てめぇ、死にたいって言うのかよ!」「どうせ家具作り放題で金取り放題なんだろ!」「こちとら今日の飯にも困ってるんだ! そんだけあれば随分生き延びられるんだよ!」「ただ食い物を置いてくだけだろ、そっちは金はいっぱいあるんだろ!」「ただ持っていかれるのは嫌だね」 サージュは囲まれていても平然と言った。「何?」「君たちはこの街道に詳しいかい?」 アパルが笑顔で問う。「お、おう」「じゃあ、強いかい?」「スピティ周りの盗賊じゃ一番だ! こっちは……」「それを聞いて安心した」 アパルは笑顔を崩さず言った。「君たちを、雇いたい」「はあ?」 盗賊十人が、呆然とアパルを見た。 やっぱりアパルは笑顔のまま。「雇うって? 盗賊の俺たちを?」「ああ。護衛中の食事はもちろんこっちが持つ。そして、グランディールまで無事辿り着いたなら、町民として迎える。ですよね、町長?」 アパルがチラッとこっちを見るので、ぼくは重々しく頷いた。「若い町長とは聞いてたが……若すぎやしないか?」「若いだけの町長なら、スピティに認められはしない」 サー
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第25話・成り上がり

「ティーア!」「本気なのか?」 周りの盗賊から声が上がる。「うるせぇ!」 ティーアと呼ばれた男が吠えた。「お前らだって、盗賊暮らしには飽き飽きしてんだろ!」「そりゃあそうだけど……」「所詮わたしたち、町から追い出されたスキル……追い出されないって保証はない……」「それもひっくるめて契約しようって言うんだ、そうだろ町長?」 ぼくはゆっくりと頷く。「もう一度言うぞ。盗賊を入れることであんたらの評判がどうなるかわかんねえ。スキルも盗賊暮らししてることから察してほしい。それでもあんたらは、俺たちを迎え入れてくれるって言うんだな?」 もう一度、頷く。 契約書を交わすか? と懐から印の入った袋を取り出して見せる。「契約書、交わしてくれるって言うんだな?」「もちろん」 サージュさんが契約書に文面を書いてティーアに見せた。「無事にグランディールまで護衛すれば、契約者とその家族を正式にグランディールの町民として迎え入れる。この契約は契約者が町と縁を切って去らない限り有効である。これは正式な契約である。……これであなたたちの印か名前を記せば契約は完成する」 ティーアはじっくりと契約書を見た。穴がないか確認してるんだろう。「ヴァローレ」 呼ばれ、背の低い男が出てきた。「なんだリーダー」「この契約書を見てくれ」「僕の鑑定は役に立たないよ。レベルが低い」「それでも、これが本物かどうか分かるかはお前しかいないんだ」「鑑定?」 アパルが眉を跳ね上げた。「大したスキルじゃないよ。上限が50だから。アレの「移動」もそうだよな? 確か上限が100だった。……僕たちから手を引く気になった?」「まさか」 サージュの目が爛々と輝く。「低上限レベルスキルの持ち主二人とここで会えるとは……」「何それ、嫌味?」「いいや、本心だ。……町についたら詳しく教えるが、低上限レベルのスキルはリスクばかりに見えるが実のところメリットが大きい」「はあ?」 何か呪文を唱え出したサージュをアパルが押し退ける。「低上限レベルは実際には役に立つということだ。その「鑑定」でこの契約書を見てくれ。そうすれば君たちは納得するんだろう?」 ヴァローレが契約書を受け取ってじっと見つめて。「……本物だ」 そう鑑定した。「文面にも引っ掛けとかそういうのがない。本当に、この
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第26話・レベル1の町を見ろ

「レベル1で上限1?!」「そんなスキルあるのか?!」「ある。それでエアヴァクセンを追い出され、その代わりに新しい町を造った」「文字通り、「まちづくり」したってわけかよ」「ヴァローレ」「ああ」 「鑑定」を持つヴァローレはぼくをじっと見る。「……ああ、そうだ。レベル1「まちづくり」、上限1Max……つまりもう上がらない」「町を追い出されるのには十分な理由だが、何故そんなレベルで町なんてものを作れるんだ」「低上限レベル……究極的に上限レベル1の法則がスキル学にある」 サージュが口を開いた。「スキル低上限の法則は、それ以上上昇する必要がないから。上限レベルが低い者ほど強力な力を持っている。それ以上あげたら世界の存亡に関わる……と」「え……じゃあ僕の「鑑定」……も?」「オレの「移動」……も?」「事実、盗賊団の中では役に立っているんだろう?」「ああ。ヴァローレの「鑑定」は価値あるものを見出すし、アレの「移動」はリューの「場所特定」と組み合わせれば何処へでも行ける。だが上限レベルが低いというだけで町から追い出された」「グランディールに行ったらびっくりする」 アパルが笑った。「レベル1Maxの造った町がどんなものか。見たら、きっと。もちろんまだ造ったばかりだから色々足りないものがあって、みんなでフォローしなきゃならない。だから新町民を募集しているんだ」「だからって盗賊を町民に入れるかよ」「私も元盗賊って言っただろう」「本当かあ?」「本当だ。追い出されたぼくとついてきた妹から荷を取ろうとしたのが出会い」「…………」 思わぬ出会い方に十人絶句。「その後、妹の提案で町を造ろうということになって、造ってみた」「造ってみたで造れるのかよ」「造れた」 盗賊団、唖然呆然。 でも実際そんなノリで造っちゃったんだから仕方ない。「い、家を建てていいのか?」「建てるまでもなくできる」「?」 家族持ちらしいティーアの問いに、ぼくは真面目に答える。「町民になった人間のための家が勝手に建つ」「勝手に建つって勝手に? こっちの要望もなく?」「要望を聞きいれて建つ。だから中の家具も全部その家の住人の好みで揃う」「……商売の家具って言うのは」「その勝手に建つ家と勝手にできる家具を応用して、町民で一つの
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第27話・町の成長

 それからが結構大変だった。 新住民たちは新しい家にひとしきり感涙に咽んだあと、畑はどうだ家畜が足りない連れて来ようそうしようとひと騒ぎして、自分たちの本拠地に一旦戻った。 心配性で皮肉屋のマンジェがこの町の所在地を売るんじゃないかと心配していたけど、その必要はない。 町のことは町長の許可なく他言しない。場所も教えてはいけない。アパルの「法律」で決まっている町民の守るルールは今のところこれだけ。だけど「法律」なので背いたら反動が来る。どんなかはよく知らないけど。 彼らは数刻もしないうちに大量の荷物と一緒に戻ってきた。 ティーアの奥さんと娘さんと息子さん、アグロスの妹さん、ヴァローレの娘さん。この五人が追加だった。 もちろん五人とも契約書を交わし、この町のことを教えないという法律を守ってもらう。しかし子供三人はそんなこと聞かずにまっしぐらに牧草地にダッシュしていった。……気付かれないように森の奥地に住んでいたっていうから、広くて障害物のない場所が珍しいんだろうな。 その他に、ティーアが捕まえて奥さんのフレディが懐かせた獣たち。 野牛が五頭、野豚が十頭。鶏が十の番。山羊が五頭。 一気に賑やかになったな。ていうか「動物親睦」つまり動物を懐かせるってスキル、森の中にいたら色々便利だな。 先住の家畜たちと喧嘩しないように言い聞かせてとお願いして牧草地に放す。あまり下草のないところにいた野牛たちが猛然と草を食む。大丈夫なのかこの勢いで牧草食い荒らされそうな……いや住民に必要なものは増えていくし補充されるんだったか。「それと、頼みがあるんだが」「頼み?」「汚れていい水場はあるだろうか? さすがにこの形で新しい家に入るのは……」「そうだね、服もいるし、湯処も欲しいね」 服を作るのは縫製所か。湯処……町民が集まって湯につかり汚れを落とす場所……はランクの高い町には必須なんだよな。住民が不潔な町はそれだけでランクダウンの可能性もあるから設備投資が大きいって聞いた覚えがある。「じゃあ念じてみよう。縫製所と湯処」「デザインは任せろ」 門を閉じて入って来たシエルが笑顔を見せる。「いや、まず縫製所からだからね?」「縫製所もセンスのいいのにしてやるよ」 グランディールのセンス担当が胸を
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第28話・町の決まり

「五十万テラ!」 ヒロント長老の声がひっくり返った。「本当に?」「本当。二つだから百万テラ。……金額が大きすぎてぼくまだ実感わかない」「そしてトラトーレの商会長さんが食糧商会に繋いでくれて、普通に買うほかに珍しい品をお試しでもらい放題」「そしてデレカートから注文書が一枚、設計図が一枚」 アパルが紙をひらひらさせる。「二ヶ月後に作って渡せば、……いくらになるか想像がつかない」「トラトーレとデレカートが取り合っただけで評判になるが、五十万テラって値段でもひっくり返る」 ヴァローレが呟く。「どんな具合に?」 聞いたぼくにヴァローレが呆れた顔を見せた。「新町長が動揺もせずに受け入れた、って言ってたけど、今わかった。単に分かってないだけだったんだな」「アパルとサージュの演技指導が入ってたから」 スピティの住民が二人で、残りが全員ぼくが町長になる前から知っている人間ばかりなので、自然言葉が砕ける。「もうあとはぼろが出ないように必死で」「だろうなあ。そこで町長が揺らいでたらできる契約も切られるからなあ」「あんたの演技は良かったよ」 ティーアが洗ったばかりで乾ききっていない髪を布で拭いながら言う。「あんたが上手くやってくれなかったら、俺たちはあんたらから荷物を奪って逃げて、結果食糧がなくなったらまた適当な隊商を襲うしかなかったからな」「そう言ってもらえると必死に演じた甲斐がある。本当」「お兄ちゃん町長っぽかった?」 アナイナが口をはさんでくる。「町長っぽいかどうかは分からないが……見た目通りの子供ではなさそうだというのは分かった。ええと……アパルやサージュが、町長を立てているのが分かったし」 アナイナ、ちょっと不機嫌。だからぼくが最大評価されるの期待して口に出すのやめて。「印を持っているし盗賊だからと見下す風もないし……町長だとしても並みの町長ではないと思ったよ」 まさか演技だとは思わなかったが、と口を閉じるティーア。「しかし町スキルとしてもこの服はすごい」 ヴァローレが溜息をつく。「「鑑定」したのか?」「綿だ」 ヴァローレがぼそりと呟いた。「しかも最上級品」「うわ」 ティーアが思わず自分の服を見て、エアヴァクセン組が一斉にシエルを見た。「それくらいいいだろ」 シエル、開き直り。「本当は|絹《
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第29話・愚か者

「でも、町のキャパ超えたらどうするんだ」「あ。それは大丈夫」 ティーアの質問に手をひらひらさせる。「増えた分広がるみたいだから」「は?」 ぼくがまともなことを言ったのか、と疑う視線。「多分、町民として迎え入れるって決めた瞬間に、家のスペースも畑のスペースも何か必要なもの置く為に広がるんだ」「広がる?」「うん。町も最初の頃から比べれば随分大きくなった」「広がり続けたらどうなるんだよ」「広い場所に移動する」「はあ?」 今度はヴァローレも入って来た。「移動って……この町動くのか?」「動く。ていうか、飛ぶ」「…………」 ティーアもヴァローレも身動き一つしない。「…………飛ぶ?」「うん、飛ぶ」「待て。ちょっと待て」 ヴァローレが片手でぼくを制し、残った片手で自分の眉間のしわを撫でた。「そうだな、エアヴァクセンからスピティまで、結構な距離がある。クーレやこの町にいたのがエアヴァクセンの人間ばかりと考えれば、あの速さの牛車では半年はかかるだろう。だけど」 眉間のしわが深くなる。「普通町は空飛ばない! 飛ばないから!」「普通じゃないから」「伝説のペテスタイじゃあるまいし」「町であるペテスタイにできるなら「まちづくり」のスキルで再現できるっぽい」「再現、できる?」「うん。だから飛んできた」 ヴァローレが泣きそうな顔でエアヴァクセン出身組を見る。「……飛ぶの?」 ある者は苦笑を浮かべ、ある者は憐れむような顔。ある者はうんうんと同意の頷き。「……飛ぶんだ……」 ヴァローレは顔を覆った。「伝説であっても町ができたことであれば再現できるわけか?」 ティーアが確認するように聞いてくる。「試したことはないから分からないけど、ペテスタイができたってことはそう言うことなんだろう」 ヴァローレ、両手で顔を覆ったまま動かない。 ティーアは天井を仰いで動かない。「……まあ、普通な反応だな」 マンジェが頷いた。「お兄ちゃんの作った街に何か文句でモガっ」 喧嘩を売り始めたアナイナの口を塞ぐ。「でも、世界中どこにでも、町から出ずに行けるよ」「……そうだな」 ティーアは何とか考えを切り替えたんだけど、ヴァローレが戻ってこない。「海底の町ズプマリーンも再現可能?」「まだ海に行ってないから分からないけど、多分」「……なぜ
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第30話・町長がいなくても

 それから、しばらく町で過ごした。 畑は耕され、種や苗が植えられ、様々な実が枝をしならせている。 もちろん、「豊作」「耕作」「育成促進」、肥えた地にして、そこを柔らかくして、根付いた野菜が大急ぎで育つ、という三つのスキルのおかげ。二ヶ月の間で三度は収穫できた。ヒロント長老、アグロス、ライプンの三人が毎日嬉しそうに畑を回っているのを見ると、なんだかほっこりする。野菜が町民全員でも食べきれないほどできたけど、シートスの「食品保存」でいくらでも蓄えられる。食料保存用の倉庫も作った。 シエルは「陶器作り」のポトリ―と組んで、第二の商品として服じゃなく「陶器」を売り出そうと試行錯誤中。 ポトリ―は無からでも陶器を作り出せるけどそれだどちょっと質が落ちるし大きなものは作れない。いい陶土があればそれだけいいものが作れるらしいけど、この近辺にはない。なんせ断崖地帯だから!  で、ぼくの所に「いい陶土作れないかな」と泣き付いてきた。 陶土……陶器用の粘土のことだよね……それを作って町の為になるのかな……っていうかファーレに頼んで畑の土から粘土を作ってもらえばいいんじゃないか、いやそれならいっそ家具や服のように町で作ればと思ったりもしたけれど、「男のロマンが」とポトリーに泣かれたため、ダメもとで町に頼んでみたところ、畑の傍に盛り上がりができて、そこで陶土が取れるようになった。本当に何でもありだな、この町。でもまあ、「陶器作り」ってスキルがあっていいものを作れる可能性があるならチャレンジしたいよね。焼きとかはスキルでできるって言ってたので、窯を作る必要がないのは良かった。窯って近くにあると滅茶苦茶暑いし。 そんなぼくの思いをよそに、ポトリーはシエルに指示を受けながらどれだけ美しい器を作れるかで頑張っている。食器ならテーブルなどを扱うデレカート商会がどこかいい売り出し先を見つけてくれるかもしれない。 町は、少しずつ豊かになっていっている。 シエルは陶器作りの傍ら、初注文の家具のお任せ部分を空中に絵を描きながら考えて、町の人間が想像しやすい形にして、月の終わりの日に町民みんなで念じて、繊細な作りに相応しい意匠の椅子を作り出した。もちろん設計図にあるトコロはそのまま。 本当、町長はなんでシエルを切ったんだろ。 嬉しそうに創作活動に打ち込むシエル
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