Alle Kapitel von Lv1・Maxからのまちづくり: Kapitel 31 – Kapitel 40

56 Kapitel

第31話・社会の在り様

「だって、お前がこの町の在り様を決めたんだろう?」「在り様?」「どんなスキルでも、どんなスキルレベルでも受け入れるって」「ああ。だって」 空を見上げながら呟く。「ミアストがそれで大失敗してるじゃないか。ぼくやシエルなんかで」「まあな」「それにスキルで人間決められても、いいスキルの持ち主がいい人とは限らない。スキルレベル高い人たちで俺が一番私が一番なんてギスギスしながら暮らすより、レベル低くてもできることがあってそれでほかの人のサポートをして、ニコニコしてられる方がよっぽど町としては良くない?」「それな」 ピッとヴァダーがぼくを指した、「何が?」「お前の考え方」「考え方って……そりゃ異端だとは思っているけどさ」「異端? そんなもんじゃない」 ヴァダーはぼくを指したままニッと笑った。「多分、スキル以上に反則だ」「……反則……?」 反則って……なんだ? 世界の常識からかけ離れた考えだってことは分かってるけど……。「分かってないなあ」 ヴァダーは苦笑した。その顔が随分と若く見えて、そこでぼくはヴァダーがぼくと三つしか違わないことに思い至った。アナイナを除けば、多分一番ぼくと年が近いだろう。「分かって、ないって?」「うん、分かってない。お前の考えが、どれだけ周りに影響を与えてるか」 …………?「自覚なしかあ」 ヴァダーは呆れたように半身を起こして笑った。「お前のその考えが、今このグランディールを率いているんだ」「はあ?」 思いもよらない言葉に、ぼくは思わずヴァダーに詰め寄る。「何処が? 何が? どうして?」「あのなあ、エアヴァクセン、元SSランクの追放者って、どんなものか知ってるか?」「は?」 ぼくは疑問しか出ない。「追放されて、次の町が見つかることは、まずない。たとえ追放先の町を紹介されていても、だ」 ヴァダーはもう一度寝転がる。「なんせ、SSランクを知ってる。一度でもいい生活を味わった人間ってのは、もっと、もっとと上を求めるのに、ランクが一つ下がっただけでも我慢できない……つまり、生きてけないんだ。Eランクの町なんか町だとも思ってない放浪者もいた」「…………」「プラス、プライドが滅茶苦茶高いってのもあるんだ。これ以上生活を落としてなるものかっていう見栄もある。スピティの一同と、俺たち。初め
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第32話・出てきた答え

「…………」 何て言ったらいいか分からないぼくに、ヴァダーは言葉を続ける。「もしお前がいなかったら、お前なしであいつらと出会ったら、俺たちは早々に分裂して、どっちかがこの町を出て行った」「え? なんで?」「あいつらには失礼を承知で言うが、俺たちはあいつらとは違う人間だと思ってただろう。あいつらは町に住んでいたとしてもSランク、下手をすればそれ以下。俺たちはSSランクの町の住民だったと、選ばれた人間なのだと思い、彼らを見下してただろうな。町として成り立たない。お前の理想、お前の考えがなければ、俺たちはバラバラになっていた」「……そうなの?」「ああ。間違いない」 空を見つめるヴァダーの顎が引いた。頷いたんだろう。「スキルじゃない、人。人を見ると言ったお前の言葉が、俺たちとあいつらを結び付けた。実際付き合ってみたら、気のいい奴らだってことが分かった。そして、あいつらの警戒や嫉妬も分かった」「警戒? 嫉妬?」「お前の頭の中に警戒とか嫉妬とか言う字が入ってないことは知ってるけど、相手が何を考えてるか察する能力は持ったほうがいいぞ」 ヴァダーは呆れたように言い、少しめんどくさそうに言葉を続ける。「あいつらも、こっちがSSランクの町民だったことを知った。そして思う。見下されるんじゃないか。スキルレベルの差で文句を言われるんじゃないか。追い出されるんじゃないか」「……そうだね」「そんな不安からあいつらを守ったのは、お前の契約書だ」「契約書って……みんなと結んだでしょ」「あいつらにとっては、特別な意味を持っていたんだ」 特別……?「あの契約書で、間違いなくあいつらがこの町の町民だと、俺たちと対等な立場なのだと保証してくれた。そして、あいつらの願いをすぐに聞き届け、服や湯処を用意した。そして、あいつらの子供も同じだと……同じ町民だと、成人すらしていない子供とも契約を交わし、間違いなくグランディールの町民だと認め、追い出すことはないと言い切った。SSSランクを目指しながら町民は選ばない、全てを受け入れる、その言葉があいつらにどれだけの安心を与えたか」「……大げさだよ。ぼくは、ただ単に」「その「ただ単」が、お前にしかできないことだったんだ。だから、お前が町長だってみんな認めてるんだ。どんな人間でも受け入れられる。その器こそが、お前の武器。お前しかこ
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第33話・スピティでの気苦労

「おおお!」 デレカート商会長が目を丸くする。「これが、あの設計図の椅子とは……!」 今日はデレカート商会依頼の椅子を納入する日。 反応を見たくてシエルが来たがったけど、シエルは出てきちゃいけないというのでサージュとアパルの意見が一致した。 絶対に引き抜かれる、と。 シエルはいやいやグランディールが一番、何処へ行く気もないけれど評価は聞きたいと言っていたけど、デレカートもトラトーレも気に入ったデザイナーだと知れたら、最悪拉致監禁される可能性だってあると言われて引っ込んだ。いいデザイナーだけど押し付けられると途端にやる気をなくすタイプ。グランディールで好き放題やってた方が楽しいんだと言っていた。「素晴らしい……素晴らしい。グランディールの町スキルは超一級ですな」「それで、こちらも同じデザイナーが陶工と一緒に作ったものですが」 アパルが布でくるまれたものを出す。「先に決めていただきながらトラトーレ商会ともつながりを持つことをお許しいただけた詫び代わりと言っては何ですが」「ほほう……」 デレカート商会長が丁寧に布を取っていく。 金銀と朱色を基調にした陶の飾り皿。不死鳥をモチーフにしてシエルがデザインしてポトリ―が作り上げた芸術品だ。「これを見てもらいたいと、陶工とデザイナーが作り上げたものです」「見てもらいたい?! 売りたいではなく?!」「ええ。少々無茶な願いを聞いていただいた礼に渡してほしいと」「これは……また、素晴らしい贈り物を……」 デレカートは目頭を押さえる。「売れば三十万……いや五十万……いやいや……」「デザイナーと陶工の善意ですから、お値段は」 「……いやいや、こんな素晴らしい芸術品をただいただくわけには」「では、今後とも取引を続けていただくことで納得していただけますか」「無論です。そちらの……町長とデザイナー氏がよしとすればですが」「こちらとしては貴方ともトラトーレとも付き合いを続けていきたいので、それをお許しいただけるのであればいくらでも」 四ヶ月後に作ってもらいたい家具の設計図を受け取り、最後にぼくとデレカート商会長が固く握手して、デレカートとの取引は終わった。 で、昼休憩。 戻ってきたぼくがぐったりしているのに気付いた、牛車の番をしていたアレが、スピティの屋台からパンに厚
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第34話・飛び込み

 ガサッと現れたのは、一人の……二十代半ばの女性だった。茂みを抜けてきたので、あちこち小枝で引っ掻いたらしい傷と、葉っぱがあちこちについている。 銀の髪と藍色の瞳の活動的っぽい女性。体にぴったりフィットした固そうな革鎧をまとう、目がなんかキラキラしてる人。ただ、問題は……腰に、抜いてはいないものの、剣をぶら下げている。 サージュとアパルが腰の剣に手をかけ、アレが御者台で幌の中が見えないように立つ。幌の中にいるのはぼくだ。「あっ、あの……」「……何者だ」「グランディールの牛車さんですよね!」「何者だ」 再び誰何されて、女性は慌てて地面に膝をついた。「失礼しました、名乗りもせず!」 声は見た目以上若く聞こえるけど、もう一つ問題なのはそのポーズ。 地面に片膝をつけて、右手を胸に当てる。……これは、その相手に忠誠を誓うというポーズだ。 当然、その先にいるアパルやサージュ、アレ……ではなく、その奥……。 グランディール町長であるぼくへのポーズ。「わたくしは放浪の騎士、ヴァリエ・ヴァンデラー!」 高らかに告げた声は、ぼくたちを絶句させるには十分だった。「若き町グランディールを治める町長様にお仕えしたく、失礼を承知で参りました!」 ……騎士だって? ……今時? 騎士とは、まだ世界がいくつもの町の集合体を国と呼び、その長を王と呼んでいた頃に大勢居たという。 王に仕え、王のために戦い、王のために死ぬ。その代わりに国では高い位にいた、いわゆる特権階級。 王の圧政に国が分裂して町が増え、各国で国が国として成り立たなくなり王が消えてからは、騎士は特権階級ではなくなった。 国より小さい町の町長に命を預けられないとかなんとかで、騎士を辞める者続出。騎士の家系なんてのはほとんど消えた。 ただ、町に属しない放浪の騎士がいるという。 自分が仕えるに相応しい主を求めて、各町を渡り歩くと言ったらなんかカッコいいけど、事実上入れてもらえる町を探す放浪者の一種。 だけど、騎士がいる町は少しランクが高く見られる。 騎士に選ばれた町長なら、人を導くにふさわしいだろうと。 ミアスト町長が、なんとか騎士を雇い入れようとして失敗しているのはエアヴァクセンにいた頃噂話で聞いた。 だけど……今のグランディールは、騎士を雇い入れるだけの余裕がない。ていうか
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第35話・厄介な取引

 そのままトラトーレ商会へ向かう。 牛車は揺れながら舗装された表通りを行く。 牛車は馬車と比べるとパワーはあってもスピードはないので、舗装された道では邪魔に思われることもあるけれど、そこはそれ、デレカートとトラトーレに認められた気鋭の町の牛車だって示す幌のグリフォンの紋章を見れば、道を譲ってくれる。幌の影から見ていると、「ああ、あの二大商会を落とした……」と覗き見ようとする人だっている。こっちは顔が見られないよう帽子まで被って正体隠し。 トラトーレ商会の前に牛車をつけると、案内人がぼくたちに恭しく頭を下げてぼくを下ろすのを手伝った。使用人がアレに合図して牛車を停める場所に連れていく。「任せたぞ」「はいよお」 アレはのんびり返事して牛車を移動させる。 トラトーレの執務室に入れられる。「こちらの無茶な要求に答えてもらい、ありがとうございます」 恭しく頭を下げるアパルに、灰色の髪のおじさんは笑顔で応える。「いやいや、デレカートに奪われたと思い、がっかりしていたのですよ」 トラトーレは笑う。「そこへあの書状。神は私を見捨てていなかったと感動しましたね。例え四ヶ月に一つでも、欲しがる者は大勢いますよ。事実、あのタンス! あれだけを見にしばらく行列ができましたからな!」「それは良かった」 アパルが如才なく笑う。「早速、注文なのですが……西のメァーナスを御存知で?」「SSランクの芸術の町、最も華やかなる町、ですね」「ええ、その町の俳優、ピーラー・シャオシュ氏が、一ヶ月ほど前、ここを訪れましてな。是非ともグランディールの家具を手に入れたいとこちらに打診してきたのですが……」 ぼくの顔の筋肉が、無意識の内に微かに動いた。 ピーラー・シャオシュと言えば、エアヴァクセンにまで名前が知られている俳優。演技が上手くて、メァーナスで一番のお金持ちで色男だって話。「どのような依頼で?」「こちらです」 トラトーレが差し出した設計図に描かれていたのは、人が三人くらい並んで眠れるような巨大なベッドだった。「大きいですね」 アパルが見て、少し考える。「このサイズでは部屋のドアは入らないでしょう。中で組み立てるしか……」「現物を寄越してくれればそれに合わせて別荘を建てるそうです」「……家具に合わせて別荘を作ると?」「はい」「つまり、ベッドのイメー
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第36話・迫る厄介者

 入口へ向かうと、先回りして入り口前に止められていた牛車が待っていて、それに乗り込んで、ぼくらはさっさと出発することにした。 町に必要なものは、トラトーレ商会が代理として買い込んで、牛車に積んである。親切なことで。 町が見えなくなって、サージュがぼくに尋ねる。「どうして、この仕事を受けたんだ?」「どうしてって」 藪から棒に言われても。「相手の注文は滅茶苦茶で、トラトーレも引き受けなくてもいいと臭わせていた。そんな仕事を何故」 んー。「トラトーレさんが困ってたのが分かったから、かな」 ガラガラと車輪の回る音を聞きながら、ぼくは答える。「無茶な注文だとは、ぼくも思った」 がったんがったん揺れながら、舌をかまないように気を付けて。「トラトーレさんとしてもぼくたちにはさせたくないようだった。だけど、断れない相手だからどうしようって感じもだったし。で、ぼくらは先にデレカートを選んでるっていう負い目もある。受けた方がトラトーレさんの方も先方に言い訳ができるし、何があっても取引は続けてくれるってはっきり言ったから」「なるほど、ね。君なりに考えていたわけだ」 アパルが腕を組む。「そりゃ一応考えるよ。お飾りでも町長だから」「後は食事作法だけだな」「やめて、ご飯が美味しくなくなる」 と、耳に入った音。 いや、声?「……を!」 聞き覚えのある高い声。「お……ちを……お待ちを!」「げ」 ぼくが思わず声を出し、サージュとアパルはぼくの荷物の隙間に押し込んで幌から後ろを見る。 きらきら銀色が街道をこっちに向かって接近してきている。「あの放浪騎士……ついてきたのか?!」「アレ! もっと早くできないか?!」「無茶言うな馬車じゃあるまいし!」「お待ちを……我が君……お待ちを!」「おい、もう主君を決めてるみたいだぞ」「誰も許可出してない!」 アレが牛車の進みを早くする。 向こうは徒歩。こっちは牛車。元野生の突進力に自信がある牛二頭立てとは言え、荷物と人四人を積んでいる。そんなにスピードは出ない。「あの騎士を連れて行ったほうがいいと思う人」 ぼくが見回すと、ぼく含め誰一人として手をあげない。「ここで撒いたほうがいいと思う人」 牛車のスピードを上げるので四苦八苦しているアレも含めて全員手をあげる。「よし、逃げよう」「
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第37話・逃げ切れ逃げ切れ

「我が君、やっと追いつけた……!」 銀のきらきら髪を振り乱し、ヴァリエとか言った女騎士は牛車の前に膝をつく。「んな、馬鹿なっ」 アレが起き上がろうとして、また寝込む。「無理するなアレ」 風を送っていた帽子を慌てて被り直し、アレの様子を伺って、女騎士を無視。 無視された女騎士はあわあわとなりながら言葉を紡ぐ。「失礼しました、我が君の御許可も得ずにスキルを使うなど! しかしここでスキルを使わねば我が君には一生追いつけないと思い、つい……! 申し訳ありません! わたくしのスキルは「追跡」、最後に言葉を交わした相手ならば、何処にいようと転移して追いつけるのです! 一度「追跡」したら言葉を交わし直さなければなりませんが!」「…………!」 アレは悔しい顔をした。自分の「移動」で、逃げ切ったと思ったのに、と。「アレのせいじゃない」「……俺のせいだな」 ぼそっとサージュが呟いた。「迂闊に会話してしまった俺のせいだ。申し訳ない」「いや、悪いのはあの女」 自分が悪い合戦が始まりそうだったので、ぼくは責任を膝をついて頭を下げている女騎士に向けた。「騎士を雇う気はないって言ったのに、スキルまで使ってこんなところまで勝手についてきたあの女が悪い」「我が君!」 女騎士は泣きそうな顔でぼくに訴えた。「貴方はわたくしが唯一の君と見定めた御方! そのような冷たいことを仰らずとも! ……いえ、それより、わたくしめに直々にお言葉をかけていただけませんか! わたくしは我が君の騎士! 我が君の御命令ならば如何様なことにも応じます!」 ぼくは女騎士の方を向かない。サージュも向かない。アパルもアレも声をかけようとしない。 ネタは割れた。わざわざ彼女自身が説明してくれたおかげで。 スピティでサージュと会話して、それから誰とも喋らず牛車の後を追いかけ、そして牛車ごと「移動」したサージュを「追跡」した。 今ぼくの言葉を引き出そうとしているのも、それによって再びの「追跡」をするのを可能としたいんだろう。 だから。「行くよ」 ぼくはサージュに声をかけた。「はい」 サージュは興奮冷めやらぬ牛を東の方へ向ける。「アレ、「移動」次使えるのはいつ頃?」 今度は小声でアレに。「……一刻」 アレのスキル「移動」は、距離はか
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第38話・手の届かないところへ

 グランディールの門前で、ぼくらはしばらくあちこちきょろきょろ見回していた。「お帰り……何してんだ?」 門番をしていたソルダートが不思議そうに聞く。「いや、ちょっと」 しばらく、警戒してきょろきょろ。「……何してんのか、もう一回聞いていいか?」「いや……根性有り余ってるストーカーがな」「そんなのがいるのか?」「いるんだ」「あんな厄介なヤツがいるなんて」 アレが幌から頭を出して、外の空気を吸いながら呟く。「くっそう……低上限スキルだから、レベルを上げて振り切ることはできないし……!」「無茶しなくていいよ、アレ」 解放されたのを確認して、ほっと息を吐く。「会話もしていないし、今度こそ振り切れた、よね?」「多分、な」「ストーカーってのはエアヴァクセンかスピティの追手か?! なら任せろ、俺様が……!」「いや、グランディールの騎士になりたいって言うストーカー女」「騎士?」 ソルダートが目を丸くする。「絶滅モンの生き物がここに来るとはなあ……。町の誉れって言うんじゃねぇの?」「ならないならない。自分が町の代表になろうっていう感覚だから」「なんだそれ」「自分が町民の見本になって、町に相応しい町民にするって」「うえ」 酸っぱい顔のソルダート。「そりゃ、そんな考えで来られたら困るわ」 俺様、戦闘スキルあるけど騎士はなあ、と唸る。「騎士ってやっぱ強いイメージある?」「あるな。昔の戦の華っちゃ騎士の特攻だからな。国を守る騎士が王の危機に己の命と引き換えに……っての、吟遊詩人辺りのサーガで聞いたことね?」「……あるようなないような」「俺様みたいな戦闘スキル持ちは騎士に憧れるよ。たった一人と見定めた相手に忠誠を誓い、何処までも何処までも全力で仕え通すなんてな」「そうなんだ」「ちなみにその放浪の騎士ってのはどんな奴だった?」「銀色のきらきらした髪の女」「美人か?」「歳は分からないし聞いてないけど……三十は行ってない。でも美人って感じじゃなかった。何ていうか……子供っぽいというか……」「少なくとも町長よりは年上だな。イメージは……そうだな、アナイナを丁寧且つ派手にした感じだ」「ごめん俺様それ無理」「何が無理なのー?」 ソルダートがゲ、と顔を歪めると同時に斜めになった。「いでででで」「わたしが無理ってどういう視点
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第39話・なんで?!

 すぅ、と音もなく浮上するグランディール。 いつの間にか町民が門のところに集まって、外の景色を見に来てた。「あんまり前出過ぎないでね。危ないから」 特に子供が身を乗り出すので、一応危険喚起。「うわ、本当に飛ぶんだ」「こりゃすごいわ」「どっちの方向に移動すればいいと思う? スピティから遠ざかる感じがいい?」「ちょっと待て」 サージュが「知識」でこの辺りの情報を手に入れているらしく、しばらく眉間やこめかみに指を当てて目を閉じていたけれど。「もう少し南西に下ろう。ヒゥウォーンから離れる感じで」 ヒゥウォーンはグランディール(元)停泊地から一番近いCランクの町。ぼくたちがそこへ向かっているように見せかけた所だ。「リュー」「はいっす」 呼ばれて出てきたリュー。「場所の特定っすね?」「この辺り」 サージュが地図で目的地を指す。「任せるっす」 地図に指を当て、目を閉じて集中。「何もないっすね。ここを目的地に移動っすか?」「町長、リューのスキルに合わせることは?」 ……あー。 二人以上の人間がスキルを組み合わせて何かすることを「スキル合わせ」という。リューが「場所特定」で確認した場所にアレが「移動」するっていうのが合わせ。これが使えるようになるとスキルの使い幅がより一層広がるので、「合わせ」やすいスキルの持ち主は結構ありがたがられる。 で、もちろんぼくはスキル合わせなんてやったことがない。そもそもこのスキル、誰かに合わせられるのか? 移動手段だけでも大変そうな気が……。「簡単簡単」 アレがあっさりと言ってくれる。「イメージだよ。リューの頭の中の地図を覗いて、そこに行くって感じ。リューのスキルは合わせやすいから、ここで覚えとけ」 んなこと言われても。 困り果ててるぼくに、リューは笑う。「じゃあ、俺が頭の中でこの地図を広げてるってイメージしてみてくださいっす」 イメージね。うん、イメージ。「で、頭の中で見ている地図が拡大されているって思ってくださいっす」 イメージ……ねえ。 おお? 言われた通りやってみると、頭の中のリューが見ている地図がぐんっと大きくなった。「で、俺が「ここ」って思ってるとこ。分かるっすか?」 分かる。何となくだけど。地図の一点にリューが集中しているのがわかる。「そこまでできたらあとは簡単。そ
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第40話・我が君

 地面におろされた女はへなへなと座り込む。「うう……我が君……我が君ィ……」「あと、ぼくのことを我が君とか言うのも禁止」 絶望的な顔をしてぼくを見上げても、彼女が可哀想だとか、そういう考えはちっとも浮かばなかった。「ぼくは誰かに忠誠を誓われるような人間じゃない」「そんな! 我が君はわたくしが唯一の主君と認めた御方! その御方が……!」「グランディールなら入れてくれると思ったんだろ?」 我ながら冷ややかな声だ。「新しい、だけどSランクの町に認められた町。そこなら、自分が入り込めると思ったんだろう?」「いえ、いえ、決して、そのような」「残念ながら」 ぼくはミュースを後ろに従えて、言った。「君は言ったよね。『新しい町には町民の見本となる騎士が必要』と」「は、はい! お任せいただければ、全ての町民を我が君の御為に働く忠義深く誇り高い、この町に相応しい人間へと……!」「それがいらないんだ」「え」 ポカンとする女騎士に、ぼくは、面倒くさいけど、言ってやった。「スキルも、レベルも。この町には関係ない。町が必要で、他のみんなとも仲良くやっていけるなら、それが町民になる資格だ。全町民がぼくの為に忠義深く働く町? そんな町いらない。君は、君の思い込みで町民を改造しようとしているだけだ。ぼくはそんなの望んでいない。今の、わちゃわちゃしてるけどいざって時はこうやって駆けつけてくれるみんなのままでいい。いや、みんなのままがいい。君に躾けられていう通りに動くだけの町は町じゃない。牢獄だ」「町長」「おう、俺も今のままがいい」「ここでなら、穏やかに暮らしていけると思う……!」 町民の同意。「我が……君……」「そして次はぼくからの質問だ。……どうやってグランディールに来た? この宙を移動する町には、ぼくが許可を出した以外にはスキルか飛空獣しか来られないはず。なのになぜ、君はしれっとここにいる? 言葉を交わしたのはサージュだけだったはずなんだけど?」 う、と女騎士は言葉に詰まった。 そして。「申し訳ありません!」 またまた頭を下げた。「わたくしの「追跡」発言条件は言葉を交わすこと。それはつまり、わたくしが言葉を発し、それに反応した言葉が出れば条件は満たされるのです」 ん? 女騎士と初めて出会った時の記憶を掘り出す。 スピティのデ
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