Alle Kapitel von Lv1・Maxからのまちづくり: Kapitel 11 – Kapitel 20

56 Kapitel

第11話・町に必要なのは

「これで、町長はお兄ちゃん。名前もグランディールに決まった」 アナイナは満足そうに言って、みんなを見回した。「これから、どうする?」「住民を集めるんじゃないの?」「いや、必要なものがある」「えー?」 自分の考えを反対されるのに慣れていないアナイナが。割って入って来たアパルさんに口を尖らせる。「何よ」「町の売りだよ」「空飛ぶ町ってのじゃダメなの?」「そうじゃない。ただ空を飛ぶだけじゃ、町の売りにはならないんだ」「なんでー?」「だって、不便なところもあるだろう? 今のところ、下に降りるにはグランディールを下ろしてやらないといけないし、上り下りする時にいちいち動かさなければいけない」「あ、そっか」 納得するしかない言葉を言われて、うん、とアナイナが頷く。「その不便さを背負ってでもこの町に引っ越してきたいという、こう、背中を押す何かがなければ、人は来ない」「じゃあ、みんなが来たいと思う素敵な何かを考えなきゃならないの?」「そう」 さすがのアナイナもこの難問にいつもの適当な答えを出せず、悩んでしまう。「売りはさておいて、人を呼ぶとして足りないものは?」 ヴァダーさんの言葉に、ヒロント長老苦笑い。「足りないものばかりだねえ」「食い物で足りないのは?」「肉。それと、種」 ヴァダーさんの言葉にマンジェさんが即答する。「これまでは森の中だったから獣は狩り放題だったけど、今は違う。鳥を狩る道具もない。あと、畑があって、だん、もとい、長老の「豊作」があっても、植える種がなきゃ穀物や野菜は育たない」「肉や種は買い入れるしかない、そして買うだけの金がない、と」「そういうことだ。ボクの食獣もまず獣がなければ使えない」「獣は「まちづくり」の中に入らないの?」「町民が自動で増えたりしてないから入らないんだろう」 アナイナの単純な疑問とアパルさんの明快な答え。「町民を招き入れる広さはどうなるんだい?」「それは「まちづくり」の中に入るだろう。最初に我々七人が住める町を町長が祈って出てきたのがこれだ、一人入れてみないと分からないが、恐らくは広がるかと」 シエルさんの疑問にこれまたアパルさんが切り返す。「あと、単純に人手が足りない」 これまたマンジェさん。「七人暮らせるだけの畑があったとしても、畑作に関わる人間が少なければ人は養えな
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第12話・森の知識人

 アパルさんと一緒に光の輪に入った瞬間、なんていうか、浮遊感? があって、次の瞬間には森の拓けた場所にいた。 唖然としている、アパルさんを更に真面目にしたような人。「久しぶりだな、サージュ」 アパルさんが軽く手をあげて挨拶する。「アパル……本当にアパルなのか?」「ああ」「あの大きな浮遊物体は何なんだ? 君、あれに乗ってきたのか?」「ああ。グランディール。私たちの町だ」「町?」 不審そうにアパルさんを見て、そしてこっちに視線が移る。それで思い出したように、アパルさんはぼくの腰を押して自分の前に出した。「彼が町長。クレー・マークンだ」「随分と若い……いや幼いというか……」 そりゃ十五になったばかりですから。「町長、彼はサージュ・ビズダム。エアヴァクセンを抜けて、森を拓いて生きている放浪者……私の幼馴染で、師匠だ」 不審そうにぼくを見る目。町長と言うのが納得できないんだろうな。「盗賊団を捨てたのか?」「いや、全員で盗賊をやめた。今はグランディールで待っている」「上でか?」 サージュさん、顔でも態度でも、ぼくが疑わしいと思っている。そりゃあなあ。盗賊団は一番若くてもヴァダーさん十八歳。しかも団長のヒロントさんを差し置いてぼくみたいなのを町長に据えた理由が分からない、と言ったところかな。「町長はあなたの奥さんの同類だ。規模はもっとすごいが」「ファーレの……?」 少し考えて、ピンと来たらしく、目が丸くなった。「低上限レベル?!」「ああ。しかもレベル1でMaxだ」 ひゅっとサージュさんは息を飲みこんだ。「本当か」「本当だ。それで成人式当日に町を放り出された」「町長め」 サージュさんが舌打ちする。「知識の使い方を未だに間違っているのか」「間違っているというか、都合のいいように解釈しているのだな。上限レベルの真の意味も知らない」 アパルさんが露骨に嫌そうに顔を歪める。「知っていればそこの町長君を手放すこともなかったろうな」「偉そうなくせに早とちりで勘違い。所詮俗物。人の上に立つ器ではないさ」 何か勝手に進む会話に、今度はぼくが疑問顔だ。「……ああ失礼。置いてけぼりにしてしまったようだ。改めて自己紹介させてもらう。俺はサージュ。スキルは「知識」で、レベルは1500だ」「ク
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第13話・目指すところ

「ぼくは」 考え考え、ぼくは言葉を綴る。「このスキルだから担ぎ上げられた町長で、正直、みんなの為に何をしてあげられるか分からない」 成人になったばかりのぼくの言葉を、ぼくよりずっと賢いだろうアパルさんとサージュさんが真剣に聞いている。 だから、ぼくも真剣に答える。「だけど、造りたい町は決まってる」 ファーレさんもニコニコと笑いながらぼくの話を聞いている。「スキルも、レベルも、関係ない。みんなが笑って過ごせる町」「役立たずを受け入れるってことかい?」「役立たずなんて、本当はいないと思う」「ほう?」「ミアスト町長はスキルがあいまいだったりレベルが低かったりすると町に相応しくないって追い出すけど、エアヴァクセンを追い出されて、盗賊団の人と出会って、ぼくは思った。スキルのレベルや種類で町民を決めるなんて、間違っているって。……スキルがなくたって、人はちゃんと作れるし耕せるし生きていける」「一つの真理だ」 サージュさんは呟いた。「だが、今の社会はスキルで成り立ってる。町も組織も、生活すら」「だったら、ぼくが変える」 ちょっと喉が渇いていた。背中から汗が流れている。「グランディールで。不要とされたスキルの人たちを集めて。みんなが笑って暮らせる町を造る。もしそれがSSSランクの町よりいい町だとみんなが思ったら、それはミアスト町長や、あちこちの権力者の考えが間違っているって証明になると、思う」 アパルさんは目を細め、サージュさんは軽く口笛を吹いた。「本気かな?」「本気です」 口の中はカラカラだ。 でも、言ったことは本気だった。 エアヴァクセンを出て出会った人たちは、アナイナ以外、スキルが相応しくない、レベルが相応しくない、不要とされた人たち。 でも、ぼくにはそうは思えない。 ミアスト町長が自分から呼び込んでおいて切り捨てたりと滅茶苦茶やっているせいで追い出された盗賊団の人たちは、他の町に行けばすぐにでも受け入れられるだろうスキルの持ち主。だけど、エアヴァクセンを見返すためにもと盗賊団を作った。それはスキルの力じゃない。自分たちの力で組織を作って、エアヴァクセンに対抗してたんだ。たとえそれが小さい力だとしても、エアヴァクセンがその気になれば簡単に潰される程度だとしても、団長……いや長老たちは、本気だった。盗賊に身を落として
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第14話・仲間入り

 サージュさんとファーレさんはちょっと待ってろと小屋に入って荷物をまとめ出した。「サージュを口説き落としたか」 アパルさんが楽し気に笑った。「口説くって」 ぼくは思わず口を尖らせた。「ぼくは真剣に……」「分かってる。その真剣が、あの堅物を口説き落としたんだ」 笑いをひっこめ、アパルさんはぼくを見下ろす。「サージュのスキルは強力だ。限度があるようだが、知りたいと思った瞬間に大体のことは頭に入るんだからな。だからこそ、サージュは共にいる人間を選ぶ。自分に頼り切りになられたら困るからだ」「確かに……頼っちゃいそうなスキルだよね……」「だが、君はそれを否定した。欲しいのはサージュの「知識」ではなく「思考」……スキルではなく、頭の中に思い描く過去図や未来図なんだと……そう言った。だからこそサージュはファーレと共に町に行くことを同意した」 アパルさんはぼくの背中をばん、と叩いた。「あの夫婦は強力なスキルの持ち主だ。「知識」も強力だが、その知識から必要なことを取り込んで「ものづくり」するファーレの力は、限界があるとはいえ「町のこと」しかできない「まちづくり」より便利かもしれない。だが、利用されやすくもある。だからサージュとファーレはこんな森の中で生きてきたんだ。それを引っ張り出したんだから、あの二人と約束したことは守らなければならない。絶対に」 スキルではなく、一緒に考えてくれる人が欲しいと言った、あの言葉。 それをぼくは守らなければならない。……ううん、違う。「ぼくがやらなきゃいけないことは、グランディールに住みたいという人みんなの考えを受け取って、まとめ、そして実行すること」「ああ。覚悟はできているようだね」「難しいと思う。でも、みんなに手伝ってもらって、初めてグランディールはぼくらの町と言えるんだ」 アパルさんは頷いた。 そこへ、夫妻が出てきた。「荷物はまとめた」「家畜は連れて行けるのかしら」 家畜小屋を覗くと、牛が二頭。豚が四頭。鶏の番が三組。「ちょっと待って」 グランディールを頭の中に描く。 ビズダム夫妻の好きそうな家を。家畜が飼える小屋と食べさせられる草原を。 その時、初めて。 手応えを感じた。 できた! と言う感触。望んだものが町にできたという反動。「大丈夫。連れていける。できた」「で
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第15話・分からない

 ぼくのいない間……と言うかぼくが念じた瞬間に変わったのは、新しい家だけじゃない。 ぼくが望んだ通り、家畜小屋や青々とした草の生える広めの草原、それから何故か広がった畑。 畑なんかは住民が生きて行けるだけの広さを常に保つらしい。多分家畜が増えれば草原や家畜小屋も広がるんだろうなあ。 町を造ることに関しては無敵のスキル、のようだ。 少ししてサージュさんが戻ってきた。「おい。何だあの家は」「サージュさん家です」「いや、分かる、分かるけどそうじゃない。なんであの家そっくりそのままの家具ができてるんだ。君、俺たちの小屋の中を覗いたのか?」「あー。あれは驚くな」 ヴァダーさんが呟いた。「ドアを開けたらボクの欲しかった家そのものがでーんとなってたから驚いたよ」 マンジェさんも低い声で呟く。「……てことは、家、全員分?」「はい、全員の家、家具一式は欲しいものが揃っていました」 ぼくは正直に言った。「……レベル低上限のスキルの力か……しかしここまで正確に望みを把握して町民のための家を造るという力は……あり得ない、いや、だけど、あり得ている……」 サージュさん、頭抱えてしゃがみ込まないでください。何か作ったぼくがいたたまれなくなるから。 しばらくサージュさんはしゃがみ込んでいたが、急に立ち上がった。その途端、貧血を起こしたのかふらりとよろける。それをアパルさんとヴァダーさんが支える。「大丈夫か?」「大丈夫、じゃない……」 大丈夫じゃないそうです。「低上限レベルスキルの凄まじさは、ファーレで分かっているつもりだった……んだが……結局分かっていなかったということか……? レベル1Maxで、しかもまちづくり……それは、世界でも最高の町を造るだけのスペックがあるということか……?」「恐らくそうじゃろうな」 長老が来た。「お帰り、町長。首尾よくサージュとファーレを連れてきたようで何より」「すいません、長老。アナイナがご迷惑をかけなかったでしょうか」「なんでわたしが迷惑をかけるのよ」 お前は無自覚に周囲に迷惑をかける天才なんだよ! と言いたいけど黙ってる。口に出すと千倍になって返ってくるから。「なに、大したことはない。ミアストに比べれば、この娘のワガママなど可愛いものじゃ」 ……ミアスト町長と比べられるほどご迷惑をおかけしたとい
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第16話・局地的地震

「ああ……知りたい。スキル「まちづくり」……どこまでの町を造れるのか……どこまで広がるのか……どこまで……」 サージュさんの目が爛々と輝いている。怖い。「少なくともペテスタイは再現したぞ」「ペテスタイ!」 アパルさんに伝説の空飛ぶ町をあげられて、ピーンとサージュさんの背筋が伸びた。「そうか、空飛ぶ町……! 伝説ではあるけれど実在は確かだという町……その再現!」「ああ。町長は造った町全体を飛ばした。しかも、それを、目を閉じて祈るだけで実現させた。レベル1Maxも当然だと思えるじゃないか」「町が……実在していれば、再現できる……」 ああ……アパルさんにあおられてサージュさんの目がおかしくなってる……。 サージュさんはおかしな目のまま、ガバッとぼくの肩を掴んだ。「……樹上の町シルワ……海上の町マル……地底の町オンデゥル……海底の町ズプマリーン……湖の町オーズィア……」 何か呪文唱え出した。怖い。「再現できるのか? できるんだな? ペテスタイが再現できたならその他の町々も……!」 痛い! 痛いですサージュさん! あなたの両手、力入りすぎて肩に食い込んでる! 壊れる! 肩壊れる!「可能性は十分にある。グランディールだけでなく、複数の町を造れる可能性だって」 アパルさん、この状況であおらないで!「すごい! これはすごい! なんてスキルだ! おい、本当に、本当にミアストは愚かだ! SSSランクの町を目指しておいてこんなスキルを手放すなんて!」 今度はがったがた揺すぶられ始めた! 何か酔う! 目が回る!「ねー、ミアスト町長は馬鹿だよねー!」 アナイナが早速話に乗っかってくる!「1レベルってだけで追い出すんだもん! しかも町も紹介してないし! どこかの町でお兄ちゃんが力を使ったら呼び戻す事だって出来たのにねー!」「ああ! 本当にあの男は愚かだ! レベルの高いスキルばかり集めるから! その内容を分かろうとしないから! こんな重要なスキルをみすみす見逃すんだ!」 今度はアナイナの肩を掴んでゆさゆさ。「立派な町になったら、エアヴァクセン行って、ざまー見ろって言いたいよね!」「ああ! グランディールは間違いなく、唯一のSSS、ディーウェスを超えてゆく!」 アナイナまでサージュさんをゆさゆさし始めた。「……局地的地震でも起きて
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第17話・町に必要なもの

「物と人と金か」 やっと冷静に戻ったらしいサージュさんが腕を組んだ。「人はそれほど苦労はしないと思う。エアヴァクセンと、それに並ぼうとするSやAの町が優秀なスキルを手に入れるため低レベルや役に立たないスキルの持ち主を追い出していると聞く。街道や森を探せば来たいという人はいくらでも出てくる」「え、森の中に住んでたのになんでそんなに詳しいんですか」「「知識」で時々最近の情報に更新しているんだ。知識が古いとそれは知識じゃなくなるからね」 なるほど、「知識」は更新しないと使えなくなっちゃうわけだ。「それで、知らない情報を仕入れるわけなんですか」「そう。ファーレの「ものづくり」も、傍で見ていたから知識を蓄えることができた」 サージュさんによると、離れた場所にいても情報が更新されていく知識と近くで観察していないと更新されない知識があるらしく、世界の情勢などは離れていても何となく更新されていくけど、個人の情報……特にスキルの類は近くにいないと更新されないらしい。なるほどね。「じゃあぼくのスキルも近くで見てればそのうち分かってくると」「う~ん」 サージュさん、なんでそこで悩むの?「君のスキルは初見で「町を造る」としか出なかったからな……。そこから今君がスキルでできていることを分かる前に君は先に進んで行ってしまっているだろう」「進むって……レベルはもう上がりませんよ?」「レベルの問題じゃない。スキルに慣れて使える力が増えていくことだ」 …………?「あー、1の1じゃ分からないね」 シエルさんが頭を掻いて教えてくれた。「スキルでできることを増やす方法は二つある。レベルをあげることと、習熟度をあげること」 シエルさんが教えてくれる。「習熟度……?」「簡単に言うと、例えばヴァダー。「水操」で、レベルが上がってできるのは水の流れを地上から空に昇らせるとか地面を抉らせるとか」「習熟度は?」「操れる水の量とか、操れる距離」「あ~、何か分かった気がする」 つまり、数値で測れることが慣れてできるようになること、数値で測れないのがレベルが上がらないとできないこと。この差。 つまり、ぼくはまちづくりに関してはレベルが上がらないとできないことは何もない。だけど、慣れることによってできることは増えていくってこと、かな? 例えば人口が増えた時の
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第18話・家具を作る(グランディール流)

「今は夢を語っても仕方ない。これから実験その二」 サージュさんはガリガリと紙に何か書きだした。「エアヴァクセンの生まれなら、字の読み書きはできるだろう?」 書いた紙をぼくに手渡す。「これは……」 設計図。文字と数字だけだったらどうしようと思ったけど、ちゃんと図解してあって助かった。タンスだ。細かく数値が描かれている。町の偉いさんのお宅に置いてあるような装飾が施されている。「これを作れるか?」「ん~。やってみます」 ん~……うまく把握できないというか想像できないというか……。 そもそもぼく、家具そのものを想像して作ったことないしなあ……。家についてきたものばかりだし……。突然家具作れって言われても……。 その時、ピンと来た。 そうだ。 家具を作るんじゃなくて、家具を作る場所を造ればいい。家具工場とかそういうところを造れば、その中で家具を作るイメージができる。「よし」 気合を入れて、今度はエアヴァクセンにあった工場を思い出す。スキルを持った職人さんが一生懸命作っていたあの工場を。グランディールに相応しいものとして。「ん?」 アパルさんの声に目を開ける。 そこに、とんでもない光景があった。 うにゅ~んと音を立てるように地面が歪んで広がる。そこに床から盛り上がるように石づくりの工場ができた……と言うか生えた。 なるほど、こういう感じで家ができてたんだ。「何だ? 俺は家具を作ってみてくれと……」「……ああ、なるほど」 アパルさんが呟いた。「家具じゃなくて、家具を作る場所、か」「うん。家具を作るのに具体的なイメージがわかないから……まず作る場所から考えようと。そもそも家具はぼくが念じて作ったものじゃないし」「家の付属物として、私たちの望んだものが出てきたんだから、家具だけを作れというのは難しかったんだな」 はい。と言うか、どうやらこのスキル、ぼくが認めた町民のイメージが反映されるみたいなんで、ぼくだけのイメージで何かを作るのは難しいようです。「で、この家具ができるようにって、みんな、念じてみて」 サージュさんから渡された設計図をみんなに見せる。「こういうのができるようにってか?」「あの工場で作っているようなイメージで」「よし、任せとけ。イメージするのは得意だ」 シエルさんが請け負って目を閉じる。「何かよく分から
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第19話・町スキル

 次にできたのは、シエルさんデザインのテーブル。 つやつやして木目のはっきりわかる木材で作られたテーブルは、思わず頬ずりしたくなるほど手触りもよかった。「オレの才能は空中だけじゃないのさ」「うん。すごい。このテーブル、欲しがる人いっぱいいると思う」「高すぎて買えない連中がわんさといるな。最初の内は」 マンジェさんが呟いて、チラリとサージュさんを見た。「こんなもんをぽんぽん作ると、価値も下がるし、たかられる。その辺のところは考えてあるのか?」 マンジェさんは皮肉っぽい言い方を好むけど、言葉は芯を突いている。確かに、最初は高級さと物珍しさから売れるだろうけど、同レベルの品物がどんどん出てくれば価値は落ちる。「グランディール独自のスキルでできると言えばいい」 サージュさんはちゃんと考えていた。「一つの家具を作るのに二ヶ月。スキルを結集させて作る家具。だから二ヶ月に一回、一つの家具。それだけの注文しか受けられない」「ふむ」 ヒロント長老が頷く。「町スキル、ということにするのじゃな?」「そう。実際町スキルなんだから教えるわけにもいかないし」 町スキル。 それは、町の特色。住民のスキルを組み合わせたりして作り出す「何か」。 今話題に上っているスピティは「家具」。家具を作るだけでなく、家具の価値まで見抜く。家具スキルを持っている家具職人が大勢いて、町スキルになっているんだろう。 エアヴァクセンは「鑑定」。ぼくの鑑定式でスキルを見た鑑定士さんを代表とするスキルを組み合わせて(と言ってもどう組み合わせるかは町に永住する住民だけに教えられるので、仮住民だったぼくは知らない)品物などに価値をつける。エアヴァクセンは物や人などに価値をつけるのを得意とする。その代表が鑑定式。他の町はあそこまで露骨にレベルで人を追い出すことはない。小さい町や寄り合いはスキルがなんであれ受け入れることもある。「エアヴァクセンの「鑑定」レベルが下がってくれるとありがたいがな」 アパルさんは悪い顔で笑った。「と言うか、スキル落ちてるんじゃないか? クレー町長っていう、一番役に立ちそうなスキルを上限レベルだけ見て追い出すなんて」 ヴァダーさん、不思議そう。「ああ、それは町長の気分だから。有能な人材を追い出して自分の価値を下げてるんだ」 当たり前の
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第20話・家具の町スピティ

 ぎぃ、ぎぃと車が軋む。 牛二頭が引く荷車で、ゆっくりと。 スピティに向かうのは、サージュ、アパル、ぼく。 アナイナは行きたいと散々駄々をこねたけど、ヒロント長老に宥められ、まだ未成年が商売に絡んでいると舐められるからとファーレさんに説得されて、渋々グランディールに残った。 北の町、スピティの東の断崖地帯。その近くに今、グランディールは停泊している。そこからファーレさん作幌馬車ならぬ幌牛車でスピティを目指す。 何故牛車かと言うと、牛しかないから。うん、単純な答え。 サージュが御者席で牛を操り、アパルがその間に荷台でぼくに色々教えてくれている。 教え込まれているのは、町長らしい振舞い方。 成人したばかりのぼくは、町長らしくない。言動も、考え方も。 スキルで選ばれたから仕方ないっちゃないんだけど、町の名声をあげるためにスピティに向かうのに町長が来ないんじゃ話にならない、と言うのがヒロント長老、アパル、サージュの一致した意見。 で、ゆっくりの牛車の中で、町長らしい言動の勉強中。 まず、相手が年上であろうとも、町長が町民をさん付けするのは好ましくないとのこと。 町中ならともかく、町の外で自分の町民に敬称をつけると町民に尻に敷かれていると評価されるらしい。今から売り込む町の長がそんな評価をされると町の評判も落ちるとか。 詳しい話はサージュさ……じゃなくて、サージュとアパルがする。ぼくの出番は契約の時。グランディールの家具を扱ってもらう契約をスピティの担当者と交わす時にぼくが町の印を押す。それだけ。 それでも頼れる町長を演じるにはぼくは黙って聞いていて、ゆっくりとした仕草で印を押すこと。それ以外では口を開かないこと。 鷹揚、つまりゆったりと威厳がある様を見せないと、それだけでグランディールが舐められる。 だからこそグランディールの頭脳、サージュとアパルが同行してるんだけど。 ぼくは懐から印を出して、眺めた。 いつの間にかぼくの懐にあったそれは、グリフォンだ、とヒロント長老が教えてくれた。 鷹の頭と翼、獅子の体を持つ魔獣グリフォンは、神々の馬車を引くと伝説に言われていて、町民を導くという意味があるとか。 グリフォンを町の紋章にする町は多いけど、実はこれが大変。町の印を作るのは町を造るなり町を継ぐなりした町長が絶対に
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