朝の陽光が校舎の大きな窓から差し込んでいる。このなつかしい景色に実花は目を細める。緊張感を孕む静けさ。政財界の令嬢が通うこの学院では、表向きは平等を掲げていても実際には明確な序列が存在する。家格や資産。才能や成績。人脈と将来性。あらゆる要素が複雑に絡み合い、生徒たちの立ち位置を決めている。本来なら、その頂点にいるのが藤宮実花だった。平安時代までその血筋を遡れるという藤宮家の一人娘。文武に優れた学年首席。容姿も申し分なく、本来ならばこの学院の誰もが頭を下げる存在であった。――本来ならば。「藤宮さん、おはようございます」「おはようございます」廊下ですれ違う生徒たちが挨拶するが、その目には嘲笑が混じっていた。そうだったなと、実花が前世の当時を思い出して苦笑してしまったとき。「実花!」記憶に引っ掛かる声がした。実花が振り返れば、恒一の従兄妹の一ノ瀬智花が取り巻きを連れて立っていた。腕を組んで顎を上げる姿はまるでこの学院の女王であるかのようだ。「見て、またよ」「本当にお優しいわよねぇ」「優しいというか情けないというか……」「仕方ないわよ。智花さんに嫌われたら大変だもの」ひそひそと声が聞こえたが、実花は聞こえないふりをした。否定の言葉はない。彼女たちの言葉は事実だった。実花は智花に気を遣っていた。恒一は従妹でたる智花を大切にしており、実花の言葉よりも智花の言葉を信用してきたからだ。恒一に嫌われないため智花に気を使い、何でも黙って譲ってきた。(その結果がこれ)実花が気を使うから、家格も学業も学院で下のほうの智花が女王のように振る舞うことに誰も文句を言えなかった。(でも、もう気を遣う必要はない)「おはよう」実花の淡々とした挨拶に周囲はざわめき、智花の目が吊り上がった。「平気な顔してよく学校に顔を出せたわね!」「……なんのこと?」怒りを顕にする智花に実花は首を傾げる。「美鈴姉さんのことよ!」「……彼女がどうかしたの?」美鈴がショックを受けたという、恒一が言っていたとあれかと実花は思った。大して興味はないが、取り巻きとともに通路をふさぐように立っている智花を退かすのも面倒だった。「美鈴姉さんはあんたのせいで事故に遭いかけて病院に運ばれたのよ!」「私のせい? どうして?」周囲
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