隣でそれを聞いた梨沙は、胸がどきりとした。けれど、以前、病院で礼都に付き添って一晩過ごしたことを思い出す。部屋が分かれたスイートなら、あのときと大して変わらないだろう。――そう考えて、何も言わなかった。二人はカードキーを受け取って上階へ向かった。礼都が扉を開けると、目の前には狭い空間が広がっていた。彼の眉間に刻まれたしわは、消える気配がない。自分で奥の部屋も確かめに行く。フロントが「スイート」と呼んでいたものが、幅1メートルにも満たない小さなベッドのある部屋だとは思わなかった。少し大きくなった子どもなら、寝るのも難しそうだ。梨沙が説明する。「こういう部屋は、親子三人で泊まる人向けなんです。奥のベッドは、だいたい十四歳以下の子ども用で」「......」礼都は彼女に向き直った。「君は外の部屋を使ってくれ」梨沙は何度も首を振る。「大丈夫です。私のほうが小柄ですし、奥で寝られます。一晩だけですから」だが、礼都は譲らなかった。「先にシャワーを。終わったら、誰かに背中の手当てを頼むよ」本当に平気だと言いかけたものの、有無を言わせない彼の目を見て、梨沙は言葉をのみ込んだ。おとなしく浴室へ向かう。彼女がシャワーを浴びている間に、礼都はフロントへ電話をかけた。「女性スタッフを一人、こちらに寄こしてください。それと、SかMサイズの女性用の服を一式。あと......」最後まで言う前に、フロント係が笑い出した。「お客様、うちを五つ星ホテルだと思っていませんか?一泊4000円の部屋で、高級ホテルのようなサービスをお求めですか?ここは格安ホテルですよ」礼都は唇を結んだ。「今いるスタッフは私一人だけです。フロントを離れられませんので、申し訳ございませんが、ご自身でお願いします」そう言って、係員は容赦なく電話を切った。受話器から規則正しい無機質な音が響く。礼都は小さく息を吸い、ソファに座った。視線は、少し離れたテーブルの上に置いた塗り薬のチューブに向いたままだ。しばらくして、浴室の扉が開いた。梨沙はバスローブを着て、白いタオルを髪に巻いている。身体には、まだ温かな湯気がまとわりついていた。薄いスリッパを履いて出てくると、礼都のじっと見つめる目とぶつかる。部屋の照明はすべて暖色
Read more