梨沙は思わず鼻で笑った。恥を知らない人間は、どこまでも図々しくなれるらしい。海渡は自分こそ散々なことをしておきながら、今さら彼女を責めに来たのだ。いったいどの口が言うのか。梨沙はスマホを握りしめ、問い詰めるような海渡の目を見返した。「あなた、何様のつもり?」二人の視線がぶつかった。かつて愛情に満ちていたその目には、互いを傷つけてでも引かないという意地だけが残っていた。先に気勢を失ったのは海渡だった。「......おばあちゃんはどうしてる?あの人、琉生も連れ出したんだろう。今、どうしてるんだ?二人が心配なんだ」梨沙はあきれたように笑った。「あなたと離れていれば、うちは元気にやっていける。あなたがいないほうが幸せなの」海渡は悔しそうに奥歯を噛みしめた。「そんなことを言うな、梨沙。俺はおばあちゃんに育ててもらったんだ。何があっても、あの人の面倒を見る責任がある。夫婦でいられなくなっても、俺たちは家族でいられると――」乾いた音が響いた。海渡の顔が横を向き、しばらくそのまま動かなかった。振り下ろした梨沙の手のひらも、じんじんと痺れている。怒りで肩を震わせながら、彼女は言った。「あなたにそんな資格はないわ。飛田海渡、もうこれ以上私の家族に近づかないで。これからは私もおばあちゃんも、あなたは死んだものと思って暮らすから」海渡がゆっくりと顔を戻した。「梨沙......俺への気持ちは、もう少しも残っていないのか?」「ええ、そうよ。これっぽっちも、残っていない」梨沙は一語ずつ、はっきりと言った。海渡の顔に苦痛が浮かぶ。梨沙は笑って顔をそむけた。今度は何を演じているのだろう。「梨沙!」声に呼ばれ、梨沙は信じられない思いで振り返った。そこにいたのは秋子だった。小柄な老婦人の服は、すっかり汚れている。梨沙は急いで駆け寄った。「大丈夫ですか?何かあった?」秋子は情けなさそうな顔で訴えた。「あなたたちを捜している途中で転んじゃったのよ。痛くてたまらなくて......でもよかった、やっと会えた。急に引っ越して、行き先も教えてくれないんだもの。ずっと会いたかったの......」梨沙は秋子の手を取った。「こちらの方は――」海渡が尋ねると、梨沙は鋭い声で言った。「どいて
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