梨沙は海渡を鋭くにらんだ。海渡は鼻で笑う。「俺は見たんだ」梨沙の胸がどきりとした。海渡は少しずつ距離を詰める。「君と土岐礼都が一緒にいるところを。梨沙、君はとっくに俺を裏切っていたんだな?」梨沙は平静を装い、冷笑した。「自分が浮気しているからって、誰もが同じだと思わないで。仮に私が浮気していたとしても、あなたがしてきたこととは比べものにならないでしょう?」海渡の目に怒りが走った。「つまり、裏切ったと認めるんだな」「......」――この人、イカれてる。梨沙は背を向けて歩き出した。「梨沙、誓えるか?土岐礼都とは何もないと、誓って言えるのか!?」海渡が鋭い声で叫んでも、彼女は足を止めなかった。ところが、病室から天音が出てきた。泣き腫らした目で、梨沙をまっすぐ見つめている。その目には怒りと憤り、裏切られたような悔しさが浮かんでいた。梨沙は唇を結んだ。「梨沙さん......どうして、そんなことをするの?」「天音、私は――」言いかけた言葉を、天音の問い詰める声が遮る。「私が土岐さんを好きだって知っているのに、どうして横取りするの?」梨沙は心も身体も疲れ切っていた。それでも、力を振り絞って言う。「違うわ。海渡のでたらめを信じないで」梨沙が触れようとすると、天音はその手を振り払った。「じゃあ、どうして誓えないの?」「してもいないことについて、どうして誓わなきゃいけないの?」天音は首を振りながら一歩ずつ後ずさり、嘲るように笑った。「友達だと思っていたのに。何でも話してきたのに、あなたは私を裏切った......がっかりだよ。いい人だと思っていたのに......やっぱり育ちが悪い人は品がないのね」梨沙の目が冷たくなった。天音はすでに、梨沙と礼都には関係があり、自分を陰で笑っていたのだと決めつけている。説明など聞く気もない。自分の思い込みを事実として、言葉を重ねた。「私が必死に追いかけていた人が、実はあなたの浮気相手だった。それを見て楽しかった?私より上だと思った?名家の娘を出し抜いて、いい気になっていたの?」梨沙は深く息を吸った。「土岐さんと私の間に気持ちがあったとしても、節度は守っている。やましいことは何もない。それでも信じられないなら、もう好きにして」
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