脱衣所の扉の前でイッセイは振り返り、少し照れたように笑った。「じゃあ、おやすみ」「おやすみ」 水琴も笑顔で返す。 イッセイは軽く手を振ると、そのまま扉の外へ出ていった。 扉が閉まると、水琴はようやく肩の力を抜く。 胸につかえていたものが、少しだけ軽くなった気がした。「ちゃんと話せてよかったな」 隣で颯馬が言う。「うん」 水琴は頷いた。「ちゃんと謝れてよかった」「イッセイもわかってくれたみたいだしな」 イッセイの足音が遠ざかっていく。 二人だけになった空間は、不思議なくらい静かだった。 しばらく無言で見つめ合っていると、ふいに颯馬が一歩近づいた。 その表情はどこか照れくさそうで、それでも嬉しさを隠しきれていない。「……よかった」 ぽつりとこぼれた声は、水琴に向けたというより、自分自身に言い聞かせるようだった。 次の瞬間、ふわりと体が温もりに包まれる。 颯馬が水琴を抱きしめていた。 驚くより先に、胸がいっぱいになる。 背中に回された腕は力任せではなく、壊れ物を抱えるように優しい。 水琴もゆっくりと腕を伸ばし、颯馬の背中へ回した。「心配かけて、ごめんな」 肩口へ小さくつぶやく。「マジで心配した」 そう返しながらも、責めるような響きは少しもない。「でも、もう終わった」 その一言に、水琴は目を閉じる。 少しだけ名残を惜しむように腕がほどける。 目が合うと、どちらからともなく笑ってしまう。「……行こか」「うん」 二人は並んで脱衣所を後にした。 廊下には、夜らしい静けさが広がっていた。 その時だった。 不意に右手が温かいものに包まれる。「……え?」 思わず足が
Magbasa pa