Alle Kapitel von 24時間生配信の離島軟禁オーディションで、BL演出をやってみた結果: Kapitel 91 – Kapitel 100

100 Kapitel

第91話 疑いたくない

「あと、もう一つ」 社長室を出ようとした颯馬と水琴を、炎が呼び止めた。 二人が振り返ると、炎は閉じたノートパソコンに片手を置いたまま、念を押すようにこちらを見ていた。「この件について誰かに聞かれても、二人からは何も話さないで。相手が記者でもファンでも、他の候補生でも同じ」「候補生にもですか?」「うん。聞かれたら『ノーコメントです』で通して」 すでに映像はSNSで拡散されている。これから何を話しても、その一部分だけを切り取られ、本人たちが意図しない意味を与えられる可能性があった。「恋人なのかって聞かれても?」 水琴が尋ねる。「ノーコメント。映像が本物かどうか聞かれてもノーコメント。誰が撮ったと思うか聞かれても同じ。今は事務所から正式に発表するまで何も言わないで」「……分かりました」「警察に相談する以上、犯人についての憶測も絶対に口にしないこと。いいね?」 二人が頷くと、炎はようやく「戻っていいよ」と告げた。 颯馬は水琴とともに社長室を出た。 ドアが閉まった途端、廊下の静けさが耳についた。 さっきまでスタジオで大音量の曲を聞いていたせいか、空調の低い稼働音までやけに鮮明に聞こえる。 水琴が歩き出さない。「水琴?」 颯馬が振り返る。 俯いた顔は髪に隠れてよく見えなかった。「……あの部屋」「うん」「まさかカメラあるなんて思わなかった」 声が掠れている。「俺、ほんまに……二人だけやと思っとった」 颯馬もそうだった。 二十四時間カメラに囲まれて過ごした島を離れ、ようやく撮影されないホテルに泊まった。誰にも見られないからこそ、あの夜は人目を気にせず水琴に触れた。 それを誰かが見ていた。 自分たちが知らなかっただけで、最初から二人きりではなかった。
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第92話 開演直前

 最終審査当日。 昨日のゲネプロでは、炎の出演パートを含め、本番と同じ曲順、照明、映像、舞台転換まで通して確認した。 合宿所の鏡張りのスタジオで何度も踊った二曲が、巨大なステージと客席を前にするとまるで別の曲のように感じられたものの、一度その広さを身体に覚え込ませてしまえば、戸惑いは消えていった。 そして今日も、開場前のドームで候補生たちの出演部分を中心とした最終リハーサルを終えている。 誰もいない客席に向かって歌うのは今日で最後だった。「ありがとうございました!」 最後の音が消えると、七人は揃って頭を下げた。 颯馬は顔を上げ、客席を見渡した。 何万人もの観客を収容できる座席が、上へ上へと積み重なるように広がっている。今はまだ空席ばかりだが、開演時刻になれば、ここが炎の復帰を待ち続けていたファンで埋まる。 その人たちの前で歌い、踊る。 しかも自分たちにとっては、それがデビューを懸けた最終審査になる。「颯馬」 龍也が隣まで来た。「最後のサビ、どうだった?」「揃ってた。龍也の入りも昨日よりいい」「だよな」 龍也の顔に笑みが浮かぶ。「俺も今日が一番いいと思った」 カゲトラも珍しく自分から会話に加わった。「二番の移動も問題ない」「俺ら、もう直すとこないんちゃう?」 瞬多が汗を拭きながら言う。「いや、探せばあるんだろうけどさ」 彼方が笑う。「本番直前にいじりすぎる方が怖いよね」 凱も大きく頷いた。「ここまで来たら、自分たちを信じるしかないな」 颯馬も同じ気持ちだった。 合宿所で何百回繰り返したか分からない振りも、歌いながら踊れば呼吸が乱れていたパートも、今では身体が勝手に次の動きを選べるほど馴染んでいる。 水琴を見る。 視線に気づいた水琴が笑った。「いけるで、颯馬くん」
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第93話 それでもステージに

 救護スタッフが到着すると、水琴はすぐに控室の奥へ移された。 靴下を脱がせると、足の裏にはカミソリが触れた箇所から細長く傷が走っていた。幸い傷は深くなく、救急搬送が必要な状態ではないという。 それを聞いた瞬間、颯馬の肩からわずかに力が抜けた。 けれど、それはあくまで日常生活を送るなら、という話だった。「傷そのものは深くありません。ただ、足の裏なので、体重をかけるとかなり痛むと思います」 救護スタッフが傷口を消毒し、止血の処置をする。 消毒液が触れた途端、水琴の足先が強張った。「痛い?」 颯馬が尋ねる。「これくらい平気」 そう答えた顔は、平気には見えなかった。 処置を終えると、水琴は椅子の背に手をついて立ち上がった。「ちょっと歩いてみます」「無理しないでください」「はい」 右足を床につき、続いて傷のある足に体重を移す。「っ……!」 水琴の身体が傾いた。 颯馬は反射的に腕を掴んだ。「みー」「大丈夫」「全然大丈夫じゃないだろ」「最初やからびっくりしただけ」 水琴はもう一度足をつこうとした。 今度は声こそ出さなかったものの、眉が寄り、颯馬の腕を掴む指に力が入る。 歩くだけでこれだった。 二曲目の課題曲には、走るような移動も、踏み込んで身体を反転させる振りもある。何より七人で揃えるダンスでは、一人だけ片足を庇えばフォーメーションそのものに影響する。 颯馬は昨日のゲネプロを思い出した。 水琴は完璧だった。 今日のリハーサルでは、それ以上だった。 あと少しで、その成果を何万人もの観客に見せられるはずだった。 だからこそ、今の水琴に「出るな」とは簡単に言えなかった。「鎮痛剤って飲めますか?」 水琴が救護スタッフに尋ねた。
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第94話 夢に見たステージ

 開演時刻を迎え、客席の照明が一斉に落ちた。 舞台裏まで届いていたざわめきが、暗転を境に巨大な歓声へ変わる。控室のモニターには、無数のペンライトが揺れるドームの客席が映し出されていた。 颯馬は水琴の隣で、その光景を見つめている。 ステージ中央に一本の光が落ちる。 炎の姿が浮かび上がった瞬間、歓声がさらに膨れ上がった。『炎ーーーー!』『おかえりー!』 イントロが始まり、炎が歌い出す。 合宿所で候補生たちに軽口を叩いていた時とも、社長室で話していた時とも違う。 その姿を目にし、その歌声を耳にした瞬間から、誰もが圧倒される。 炎が長く第一線で活動してきた一流アーティストなのだという事実を、今この場にいる候補生全員が改めて思い知らされていることだろう。「……すげえ」 龍也がモニターを見ながら呟いた。 一曲目が終われば、間を置かず次の曲が始まる。巨大スクリーンに炎の姿が映し出され、照明がドームの天井まで駆け上がる。 腕を上げれば何万人ものペンライトが揺れ、歌うのをやめてマイクを客席に向ければ、大合唱が返ってくる。 颯馬の手のひらにも汗が滲んだ。 このあと、自分たちがあそこに立つ。 まだデビューすらしていない十四人が、炎の作り上げた熱気を引き継がなければならない。「みー、足どう?」「薬、効いてきたみたい。さっきよりだいぶマシやで」 水琴は代わりの靴を履き、立った状態でモニターを見ている。 その場で軽く足を動かしてみせたが、颯馬は傷を庇っていないか、どうしても足元を見てしまう。「ほんまに大丈夫」「痛くなったらすぐ言えよ」「分かっとる」 何度目か分からない返事だった。 颯馬はそれ以上言わず、モニターに目を戻した。 炎の前半ライブが進むにつれて、舞台裏を行き交うスタッフの数も増えていった。 マイクとイヤーモニターの最終確認が行わ
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第96話 犯人

 炎のライブ後半、最後の曲が終わった。 ステージを覆っていた照明が落ち、炎が深く頭を下げると、ドームを満たす拍手と歓声が舞台裏まで届いた。 このあとには審査結果の発表があり、その後、炎はアンコールでもう一度ステージに戻る予定になっている。そのため、いったん短い休憩が設けられていた。 救護室で再度処置を受けた水琴は、足を床につけないよう椅子に座っていた。「ほんまにもう血ぃ止まったって」「だからって歩くなよ」「颯馬くん、今日それ何回言うん?」「みーが何回も無茶するからだろ」 そのやり取りを聞いていた彼方が笑う。「颯馬、今日は水琴のお母さんみたいになってるよ」「恋人通り越しとるやん」 瞬多まで加わり、水琴が吹き出した。 いつの間にか、二人の関係がBL営業ではなく実際に恋人だということは、メンバー内では公認になっていた。 流出映像の件はノーコメントで貫いているが、颯馬も水琴も、恋人同士のように言われたところでもう否定はしない。「俺の方が風呂掃除うまくできるけどな」「そこ張り合うところ?」 龍也が呆れたところで、ステージ側から歓声がひときわ大きく聞こえた。 炎が舞台を降りてきたらしい。 颯馬が廊下の先を見ると、汗を拭きながら歩いてきた炎にスタッフが駆け寄っていた。 何かを耳元で伝えている。 炎が足を止めた。 別のスタッフがタブレットを差し出す。 画面を見た炎の眉が寄った。 さっきまで何万人もの観客を沸かせていた人間と同じとは思えないほど、その表情が変わる。「……何かあったのかな」 彼方も気づいたらしい。 炎はタブレットを操作し、映像らしきものを何度か確認していた。 やがて顔を上げる。「そら呼んできて」 近くにいたスタッフへ告げた。 颯馬は水琴と顔を見合わせた。「そら?」
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第97話 七人の名前

 結果発表の時刻が近づくと、候補生たちは再びステージ袖に集められた。 そこに、そらと葉月の姿はない。 水琴は救護スタッフから足をつかないよう念を押され、ステージ袖までスタッフに車椅子で運ばれてきていた。結果発表中も無理に立たせないことが決まり、舞台上には水琴用の椅子が用意されている。「ほんまにこれで出るん?」 水琴が車椅子を見下ろして苦笑する。「歩くよりいいだろ」「ステージ出る直前までこれって、なんか恥ずかしいわ」「血まみれの靴で二曲踊った人が今さら何言ってんだよ」「それとこれとは別やん」 いつもの調子で返してくる声に、颯馬は少しだけ安心した。 けれど水琴の手は、膝の上で強く組まれていた。 颯馬自身も同じだった。 結果が出る。 三十日間の合宿も、東京に戻ってからの練習も、今日のステージも、すべてに答えが出る。「緊張するなあ」 彼方が両手を擦り合わせる。「ライブより緊張する」「分かる。踊っとる時は自分でなんとかできるけど、もうなんもできへんからな」 瞬多が客席側を見た。 龍也は落ち着きなく何度もその場で足を動かしている。「まだ?」「じっとしろよ」 凱に言われても止まらない。「無理。こうしてないと死ぬ」「死なねえよ」「分かんねえだろ」「結果待ちで死んだ奴聞いたことないぞ」 彼方が吹き出した。 その少し離れたところで、カゲトラだけは壁にもたれて黙っていたが、組んだ腕の指先が一定の間隔で動いている。 颯馬はそれを見て、カゲトラも緊張するのだと初めて知った。「炎さん、ステージ入ります!」 スタッフの声が飛んだ。 十二人の表情が変わる。 モニターには、再びステージへ向かう炎の後ろ姿が映っていた。  
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第98話 最後はみんなで

 巨大スクリーンに七人の顔と名前が並んでも、颯馬にはまだ現実味がなかった。 水琴の手を握り、龍也たちに背中を叩かれ、何万人もの観客から名前を呼ばれている。 それでも、自分が明日から「デビューする側の人間」になるという事実だけが、身体から少し離れた場所にあるようだった。 やがて颯馬は、少し離れた場所に立つ五人に目を向けた。 日和は拍手をしていた。 いつもの穏やかな笑顔を保とうとしているのに、目からは次々と涙が落ちている。 隣にいたミンソクが肩を抱くと、とうとう顔を伏せた。 響は唇を強く噛んでいた。泣くまいとしているのか、何度も瞬きをしている。 まひろは最初から隠そうともせずに泣いていた。「悔しい……マジで悔しい……」 それでも両手を叩き続けている。「でも、おめでとう……ほんとに……」 イッセイはしばらく俯いていたが、やがて顔を上げると水琴を見た。 目が合う。 イッセイは何も言わず、笑って拍手を送った。 水琴の目から、また涙が溢れた。 颯馬は自分が合格した喜びだけに浸っていられなくなった。 この一か月、十四人で同じ場所を目指してきた。 そのうち二人は、自分たちのしたことによって最後の舞台から姿を消した。 そして今ここにいる十二人のうち、七人が選ばれ、五人は選ばれなかった。 最初から分かっていたことなのに、名前が読み上げられてしまえば、その境界はあまりにもはっきりしていた。  結果を読み上げた男性が一礼してステージを去ると、炎が十二人の前に立った。『まず、十二人ともお疲れさま』 炎は候補生たちを見渡した。『結果は出ました。選んだのはここにいるお客さんたちと視聴者のみんなです。でも、俺からも最後に少しだけ話をさせてください』 会場が静まって
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第99話 俺の彼氏

 その頃、最終審査ライブの生配信では、本番が終わったあともコメントが途切れることなく流れ続けていた。 @miu_39水琴くん途中から足庇ってなかった??? 大丈夫??? @kyoto_luvやっぱりみーくん怪我してたよね? 結果発表のあとずっと座ってたし心配すぎる @7iro_star水琴、最初の曲は普通だったのに二曲目ちょっと動きおかしかった気がする。最後まで踊り切ったのすごいけど無理してたよね? @pinkmoon_05みーくん合格めちゃくちゃ嬉しいけどまず病院行って😭 @somakoto_forever颯馬と水琴ずっと応援してきて本当によかった。二人とも名前呼ばれた瞬間普通に泣いたし、最後ずっと手を繋いでて尊かった❤ @blue_sky728最初はBL営業おもしろwくらいで見始めたのに気づいたら二人とも本気で応援してた。30日間見てきてよかった @SOMA_1pick颯馬に投票しました。仲間思いで、最初から最後まで周りを見て動けるところが好きだった。デビューおめでとう @mikoto_1pick私は水琴に入れた! 歌もダンスも表情も全部好きだけど、この30日でどんどん仲間を大事にするようになったのが一番の理由 @ryuya_beat龍也に投票した!! ラップとボイパで一発で好きになった。名前呼ばれた瞬間叫んだ @kanata_runrun彼方くんに一票! パフォーマンス中の楽しそうな顔が好きすぎる。見てるこっちまで楽しくなる @shunta_oshi瞬多に投票しました。ラップももちろんだけど、合宿中ずっと空気を明るくしてくれて
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第100話 BL営業じゃない、その先へ

 数か月後。 ステージ袖まで届く歓声を聞きながら、颯馬は衣装の裾を引っ張った。 何度確認しても、特に乱れているところはない。それでも手持ち無沙汰になると、つい触ってしまう。「颯馬、さっきからそれ何回目?」 彼方に指摘され、颯馬はようやく手を離した。「そんな触ってた?」「めっちゃ触ってる。緊張してる?」「してないとは言わない」「俺はしてる!」 彼方は隠す気もないらしく、両手を広げてみせた。「ヤバい、めちゃくちゃ楽しみ! 早く出たい!」「お前のそれ、緊張ちゃうやろ」 瞬多が笑いながら突っ込む。「遠足前の小学生やん」「昨日ちゃんと寝たし」「そういうとこまで小学生やな」「うるさいな!」 二人のやり取りを聞きながら、凱が大きな声で笑う。 少し離れたところでは、龍也がイヤーモニターをつけたり外したりしていた。「これ、ちゃんと聞こえてるよな?」「さっき確認しただろ」 カゲトラが言う。「でも急に壊れるかもしれねえじゃん」「本番前に何回確認しても、壊れる時は壊れる」「そういうこと言うなよ!」 龍也が振り返る。「余計緊張すんだろ!」「自分から聞いたんだろ」「お前さあ!」「二人とも、本番前に喧嘩するなって」 颯馬が止めると、龍也が「こいつが変なこと言うからだろ」と訴えてくる。 この光景にも、もうすっかり慣れてしまった。 あの離島で初めて七人のユニットに分けられた頃は、こんなふうになるとは思っていなかった。 七人は今日、オーディション候補生ではなく、一つのボーイズグループとしてステージに立つ。 Top of the rainbow。 それが、自分たちで考えたグループ名だった。「そういや
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