午前中のレッスン室。 いつものボーカル講師に加え、今日は英語の発音指導を担当する講師も来ている。 候補生全員が姿勢を正して並ぶと、ボーカル講師が「では始めます」と声を張る。「今日は英語の歌詞を歌う前に、まず言葉の意味や正しい発音を理解するレッスンを行います。ただ英語らしく発音できればいいという話ではありません。何を伝えたい歌なのか、それを自分の中へ落とし込んでください」 スクリーンには課題曲の歌詞と日本語訳が映し出される。 失ったものへの後悔。 それでも前へ進もうとする決意。 恋愛だけに限らず、大切な存在を想う人間の心が描かれた楽曲だった。 英語講師が前へ出る。「日本語は母音が強い言語ですが、英語は子音で意味が伝わることが多いです。特に語尾を曖昧にすると、感情までぼやけて聞こえてしまいます」 講師はスクリーンに表示された歌詞の一節を指した。「例えばこの部分。 『Even if the world forgets me, I'll remember you』 ここで大事なのは『forgets』と『remember』の子音のつながりです。『ts』と『mb』をはっきり発音しないと、言葉が溶けてしまいます。 皆さん、まずはゆっくり、子音を意識して繰り返してみてください」 候補生たちが講師の後に続いて発音する。「Even if the world for-gets me...」 「I'll re-mem-ber you...」 講師は手を上げて止める。「『forgets』の『ts』が弱いですね。舌を上の歯の裏に軽く当てて、息を止めるイメージで。 もう一度。『forgets me』」 何度も繰り返すうちに、少しずつ音が変わっていく。「次に『remember you』の部分。 『remember』の『r』は巻き舌ではなく、舌を少し後ろに引いて柔らかく。 『you』は『y』から始まるので、唇を丸めて息を長く流す。 感情を乗せるときは、語尾を少し長く伸ばすと、切なさが伝わりやすくなります」 講師は実演しながら続ける。「『I'll remember you』 ここは『you』で声を少し震わせるイメージ。失った人を想う切なさを、声の響きで表現してください」 水琴は繰り返し練習しながら、胸の奥でその言葉を
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