パニックの最中に口走った支離滅裂な言葉たち――何か取り返しのつかない、とんでもないことを言った気がする。「ごめんなさ、」「謝らなくていいの」 すまなそうに身を縮める渚の言葉を遮り、橘は静かに、けれど包み込むような温かい声で言った。「誰も渚ちゃんを責めないし、ここで何を吐き出したっていいのよ」 和樹が手渡してくれた温かいタオルを、橘は渚の震える手にそっと握らせる。じんわりとした温もりが、冷え切っていた指先に少しずつ感覚を取り戻させてくれた。「渚ちゃん」 橘は一度息を整えると、真剣な、それでいてどこか頼もしい眼差しで渚をまっすぐに見つめた。「これからは、一緒に出勤しましょう」「え……?」「その女性がまた現れないとも限らないし、会社の行き帰りも一人にさせないわ。明日から行きも帰りも、私と和樹が一緒だから」 和樹も深く頷き、渚の目線に合わせて優しく微笑みかけた。「うん。車も僕たちが一緒に乗っていくか、橘の車で送迎するよ。渚ちゃんが一人で抱え込む必要なんて、どこにもないんだからね」 二人は、渚が何に傷つき、過去に何があったのかについて一切踏み込んでこなかった。真央の言葉の真偽を問い詰めることも、安易に取り繕って渚の感情を否定することもしない。 ただ、今の渚を脅かす外敵から守るということ。そして、当たり前のように彼女の居場所をここに繋ぎ止めてくれるということ。その徹底した線引きと深い逞しさが、渚の荒み切った心を包んでいく。 でも、上司にそこまで甘えていいものか――……。「私、車があるし」「素直に受け入れなさい!」「あ、でも……」 橘に一蹴されても、渚はなおも縮こまったまま口ごもる。上司カップルの好意にこれ以上甘えるのは心苦しく、申し訳なさがどうしても勝ってしまうのだ。「一人にさせるほうが僕たち心配なんだよ」 和樹が困ったように、けれどどこまでも温かい眼差しで諭すように言った。「でも、一緒に出勤と帰宅してたら、みんなか
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