その一番下。 ライトの光が、その箱の前にしゃがみ込んでいる小さな人影を照らし出した。 スプリングコートを着た、継母の佳乃だった。 彼女は私の足音に気づくと、ビクッと肩を跳ねさせて振り返った。 その手には、桐箱の中から取り出したと思われる、黒い布で包まれた分厚い束が握られていた。「……凛花、さん」 佳乃の声は、カサカサに乾き、震えていた。「お母様」 私はライトを下へ向け、彼女の目を眩ませないようにしながら近づいた。「……外で、お父様の怒鳴り声が聞こえたわ。本当に、帰ってきてしまったのね」 佳乃は布の束を胸に抱きしめ、怯えたような瞳で私を見上げた。「ええ。もう、あそこに縛られる理由はありませんから。……約束のものを、いただきに来ました」 私が両手を差し出すと、佳乃の唇が小刻みに震えた。 これを渡せば、彼女もまた、水科家の破滅に加担することになる。彼女の生活の基盤であった家が、崩壊するのだ。「……本当に、これで……あなたが助かるの?」「私だけじゃありません」 私は彼女の震える目から視線を逸らさなかった。「私がこれを表に出せば、天野が隠してきたものは崩れます。過去に殺された人たちの無念も、そして……お父様の罪も、明るみに出ます」 佳乃の目から、ポロリと大粒の涙がこぼれ落ちた。 彼女は深く、深く息を吸い込み、そして。 震える両手で、その重い黒い布の束を、私の手のひらの上へと押し付けた。 ずっしりとした、古い紙の重み。「……持っていきなさい」 佳乃は泣きながら、それでもはっきりとした声で言った。「私は家を守るためとはいえ……お父様の罪から、ずっと目を背けてきた。あなたを身代わりにすることにも、黙って従った。……私には、これを燃やして捨てる勇
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